●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-2.V.1:1 ~ T-2.V.1:11

V. The Function of the Miracle Worker
奇跡を行う者の役割



1. Before miracle workers are ready to undertake their function in this world, it is essential that they fully understand the fear of release.
  • before [bifɔ́ːr] : 「以前に、前に、早く、先に」
  • miracle worker : 「奇跡の人、奇跡を起こす人」
  • be ready [rédi] to : 「いつでも〜できる、すぐに〜できる」
  • undertake [ʌ̀ndərtéik] : 「企てる、始める、〜に着手する、〜に取り掛かる」
  • function [fʌ́ŋkʃən] : 「機能、作用、働き、効用、職務、役割」
  • essential [isénʃəl] : 「必須の、最も重要な、肝心な、本質的な」
  • fully [fúlli] : 「十分に、完全に、全く、すっかり、全体に」
  • understand [ʌ̀ndərstǽnd] : 「理解する、分かる、把握する」
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖、懸念、心配、不安」
  • release [rilíːs] : 「解放、解き放すこと」
❖ "Before miracle workers ~ "「奇跡を行う者がこの世界における彼らの役割を理解する準備が出来る前に、」"it is essential that ~ "「解放に対する恐れを十分理解することが必須である」。恐れから解放することが奇跡を行う者の役割なのだが、恐れから解放されること自体に対する恐れが存在することを十分に理解しておく必要がある。恐れからの解放がさらなる恐れを生むようでは逆効果なのだ。



Otherwise they may unwittingly foster the belief that release is imprisonment, a belief that is already very prevalent. 
  • otherwise [ʌ́ðərwàiz] : 「さもなければ、そうしないと」
  • unwittingly [ʌ̀nwítiŋli] : 「知らずに、うっかり、無意識に」
  • foster [fɔ́ːstər] : 「〜を育てる、育成する、助成する、助長する」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • imprisonment [impríznmənt] : 「投獄、禁固、監禁」
  • already [ɔːlrédi] : 「すでに、とっくに〜済み」
  • prevalent [prévələnt] : 「広く行き渡った、流行した、流行している」
❖ "Otherwise they may ~ "「さもなければ、知らず知らずのうちに、解放は投獄だという信念を育ててしまいかねない」。その信念は、"a belief that ~ "「すでに広く蔓延している信念である」。人は、今いる環境がたとえ十全でなくても、より良い環境へ移行するよりも、その環境の中に止まっていた方が安全だと考える。その意味で、人は保守的である。改革への逡巡は、下手に改革して以前よりも環境が悪化しないかという恐れに起因する。解放に対する恐れも同然で、解放を求めて投獄されるより、奴隷の身分に止まっていた方が安全だと考えるのだ。今まで幻想世界に生きて築いてきた生活のすべてを、真実を知ることで失ってしまうのではないと恐れる。それこそ、地獄に突き落とされたも同然だと信じるのである。ならば、生ぬるい嘘の生活を守って生きた方が無難であると思うのだ。



This misperception arises in turn from the belief that harm can be limited to the body.
  • misperception [mìspərsépʃən] : 「誤解、誤った知覚」
  • arise [əráiz] : 「起こる、生じる、現れる、生まれる、発生する」
  • in turn : 「入れ替わりに、立ち代わって、交代で、次々に」
  • harm [hάːrm] : 「害、損害、危害、悪意、被害、痛手」
  • limit [límit] : 「限定する、制限する、制限をかける」
❖ "This misperception arises ~ "「この誤った知覚は、肉体だけが傷つけられ得ると信じることから次々に起こってくる」。正しい知覚は、肉体は決して傷つけられない、という信念を生み出す。なぜなら、肉体は幻想であって、そもそも存在していないのだから、傷つけられ得ないのだ。ところが、肉体は幻想ではなく実在すると誤って知覚してしまうと、肉体が傷つけられるかもしれないという恐れを抱く。恐れは、肉体が実在するという誤った知覚から生じるのである。そして、解放によって、肉体的な犠牲を強いられるのではないかという恐れが生じるのだ。



That is because of the underlying fear that the mind can hurt itself. None of these errors is meaningful, because the miscreations of the mind do not really exist.
  • underlying : 「基礎をなす、内在する、第一の、下に横たわる」
  • hurt [hə́ːrt] : 「〜を傷つける」
  • error [érər] : 「誤り、間違い」
  • meaningful [míːniŋfəl] : 「意味のある、意味深長な、重要な」
  • miscreation [kriéiʃən] : 「誤った創造」
  • really [ríəli] : 「実際には、ほんとうは、確かに、本当に」 
  • exist [igzíst] : 「存在する、生きている、生存する」
❖ 肉体は実在であって、傷つけられ得るという信念の背景には、"That is because of ~ "「それは、心が心自体を傷つけ得るという恐れが内在しているからである」。ここの"mind"「心」は、いわば『小さな心』であって、幻想に支配された心、エゴに支配された心である。エゴ的心は傷つけられ得ると信じることで、そのエゴ的心が幻想として偽創造した肉体もまた傷つけられ得ると信じてしまう。"None of these ~ "「これらの誤りはどれも意味がない」。"because the miscreations ~ "「なぜなら、(小さな)心による誤った創造は、実際には存在しないからだ」。肉体もエゴの支配も、傷つけられるという思い込みも、それに伴う恐れも、すべて幻想である。夢の中の出来事に過ぎない。夢の中で、あなたがどんなに肉体を傷つけられても、あるいは心がずたずたに引き裂かれても、夢から目覚めれば、あなたは心身ともに無傷であることに気付く。それと同じことである。夢で感じた恐れさえも消え去ってしまう。



This recognition is a far better protective device than any form of level confusion, because it introduces correction at the level of the error.
  • recognition [rèkəɡníʃən] : 「認識、認証、真価を認めること」
  • far [fάːr] : 「はるかに、大いに、ずっと」
  • better [bétər] : 「より良い、より望ましい」
  • protective [prətéktiv] : 「保護する、保護用の、保護の」
  • device [diváis] : 「装置、道具、手段」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、現れ、姿、体つき」
  • level [lévəl] : 「地位、階級、段階、レベル、高さ、高度、深さ」
  • confusion [kənfjúːʒən] : 「混乱状態、混乱、錯乱状態」
  • introduce [ìntrədjúːs] : 「取り入れる、取り込む、導入する、招く」
  • correction [kərékʃən] : 「訂正、矯正、修正、是正」
❖ "This recognition is ~ "「この認識は、どんな形のレベルの混乱よりもはるかに優れた防衛装置である」。この認識とは、心による誤った創造は存在しないから、心は傷つくことはない、という認識。つまり、心が傷つくと思うことは幻想であり誤創造だから、心は決して傷つかないという認識。ここのレベルの混乱とは、肉体レベルと心的レベルの混乱のことで、肉体は実在であるから肉体を暴力から守るには相手の肉体を暴力をもって攻撃するに限る、という誤った認識のこと。そんなレベル・コンフュージョンによる防衛論よりもはるかに優れているのは、肉体も心も傷つき得ないという認識である。この認識を『優れた防衛装置』と表している。"because it introduces ~ "「なぜなら、この認識は、誤りが犯されたレベルにおいて、修正を取り入れるからだ」。誤りが犯されたレベルで、すなわち肉体が実在するという誤りを、直接この認識は修正してくれる。肉体は実在しなから、実相レベルから見れば肉体は傷つかない。誤創造する小さな心は実在しなから、実相レベルから見れば心もまた傷つかないのだ。
本当の心は、つまり『大きな心』は、誤創造しない。したがって、たとえば、病気は心の創造物ではない。心が病気を創造するという誤認識、心の歪みが、幻想としての病気を作り出しているのだ。心が誤認識を捨てて、歪みを正し、心が神の拡張の延長線上に存在することを知れば、心は外部からのあらゆる攻撃に対して、傷を受けることはない。これこそ、攻撃性のない真の防御なのである。
蛇足を一つ言おう。この病んだ世界は神の創造ではない。なぜなら、神は誤創造出来ないからだ。したがって、どんな悲惨な戦争も、どんなにむごい災害も、神にまったく無関係である。神が与えた戒めでも、神が与えた試練でもない。神は、罰も試練も与えない。神は、夢の中の出来事が神の子を傷つけることは出来ないと知っている。



It is essential to remember that only the mind can create, and that correction belongs at the thought level. 
  • essential [isénʃəl] : 「必須の、最も重要な、肝心な、本質の、本質的な」
  • remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
  • belong [bilɔ́ːŋ] : 「属する、所属する」
  • thought [θɔ́ːt] : 「思い、考え、思考、思索、思想、見解」
❖ "It is essential to ~ "「心だけが創造出来、そして、修正は思考のレベルに属しているということを思い起こすことは必須である」。ここの心はもちろん大きな心のこと。小さな心がすることは誤創造。その小さな心が犯した誤創造を修正するには、小さな心のレベル、つまり思考レベルにおいてである。前文の"correction at the level of the error"「過ちが犯されたレベルでの修正」を思い出そう。



To amplify an earlier statement, spirit is already perfect and therefore does not require correction.
  • amplify [ǽmplifài] : 「〜を増幅する、拡大する、〜を詳述する」
  • earlier [ə́ːrliər] : 「より前の」
  • statement [stéitmənt] : 「声明、メッセージ、陳述、述べたこと、発言」
  • spirit [spírit] : 「霊、魂、霊魂、精霊、精神、気分、気迫」
  • already [ɔːlrédi] : 「すでに、とっくに〜済み」
  • perfect [pə́ːrfikt] : 「申し分がない、完全な、完璧な」
  • therefore [ðέərfɔ̀ːr] : 「それ故に、そのために、従って、だから」
  • require [rikwáiər] : 「〜を必要とする、求める、〜に要求する、命じる」
  • correction [kərékʃən] : 「訂正、矯正、修正、是正」
❖ "To amplify an earlier ~ "「前に述べたことを強調すれば、スピリットはすでに完璧であり、したがって、修正を必要としない」。大きな心はスピリットであり、実相そのものである。誤創造しないから修正の必要はない。
小さな心とは、いわば夢に埋没した心であって、妄想をもって誤創造するのである。一方、大きな心は目覚めた心であって、妄想を弄(もてあそ)んだりしない。実相的な真実の実在をしっかりと把握している。これが神の子が本来もっていたスピリットである。神の子が神から分離した後、神の子は自らの心を小さな心と大きな心に分裂させた。小さな心と書いたが、心の大半はこれであって、エゴが強力に支配している。一方、大きな心は心の片隅に追いやられ、しかし、そこにこそ、ホーリー・スピリットが宿っている。



The body does not exist except as a learning device for the mind. This learning device is not subject to errors of its own, because it cannot create.
  • exist [iɡzíst] : 「存在する、生きている、生存する」
  • except [iksépt] : 「ただし、除いて」
  • learning device [diváis] : 「学びの装置、学びのための道具」
  • subject [sʌ́bdʒikt] : 「主題、題目、教科、対象、被写体」
  • be subject to : 「〜の支配を受ける、〜の影響下にある」
❖ "The body does ~ "「肉体は、心にとって学びのための補助装置である以外に存在の余地はない」。肉体は心が生みだした幻想であって実在はしないが、実相に目覚めるための学びの補助装置としての存在価値はある。"This learning device is not ~ "「この学びための補助装置は、それ自体の誤りの支配を受けることはない」。肉体という補助装置がたとえ誤りを犯したかに見えたとしても、それは肉体の責任ではない、ということ。"because it cannot ~ "「なぜなら、肉体は創造出来ないからだ」。肉体は誤りさえ作り出せないのだ。誤りを作り出すのは、誤った心である。例えば、肉体は肉体的な病を作り出せない。病んだ心が肉体に病を発症させるのである。



It is obvious, then, that inducing the mind to give up its miscreations is the only application of creative ability that is truly meaningful.
  • obvious [ɑ́bviəs] : 「明らかな、明白な」
  • induce [indjúːs] : 「〜を生じさせる、引き起こす、誘導する、誘発する」
  • give up :  「あきらめる、断念する、降伏する」
  • application [æ̀pləkéiʃən] : 「適用、応用、活用、利用、充当」
  • creative [kriéitiv] : 「創造力がある、創造性に富んだ、独創的な」
  • ability [əbíləti] : 「能力、才能、できること」
  • truly [trúːli] : 「全く、本当に、真に、正確に」
  • meaningful [míːniŋfəl] : 「意味のある、意味深長な、重要な」
❖ "It is obvious ~ "「よって、that以下は明白である」。"that inducing the mind ~ "「心に誤創造を諦めさせることは、唯一の真に意味のある創造的能力の応用であること」は明白である。心が幻想を生み出すことが誤創造である。心は眠りの中でこの世界を創造したと思い込んでいるが、この世界は幻想であって、したがって、心は誤創造、あるいは偽創造しただけなのだ。しかし、実相的に正しい心はその誤りを修正出来る。眠った心を目覚めさせればいいのだ。心を目覚めさせること、それが、心に誤創造を諦めさせるという意味である。そうすることによって幻想は消滅し、真実が蘇る。真実が現実化するのだから、それは創造である。意味のある創造的能力の応用である。
 
 
 


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