●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-3.VI.7:1 ~ T.VI.8:10

7. I have spoken of different symptoms, and at that level there is almost endless variation.
  • speak of : 「〜を口にする、〜のことを話す」
  • different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
  • symptom [símptəm] : 「徴候、しるし、症状、症候、兆候」
  • level [lévəl] : 「地位、階級、段階、レベル、高さ、高度、深さ」
  • almost [ɔ́ːlmoust] : 「ほとんど、九分通り、大体」
  • endless [éndləs] : 「終わりのない、永遠の、絶え間のない」
  • variation [vὲəriéiʃən] : 「変化、変化量、変化に富むこと」
❖ "I have spoken ~ "「私は、いろいろ異なる症状について話してきた」。たとえば、知覚について、あるいは判断について、その心理的な症状について語ってきた。"and at that ~ "「そういったレベルにおいては、ほとんど無数のバリエーションがある」。この世という幻想や錯覚のレベルでは、知覚や判断に限らず、いろいろな問題(症状)が無数に発生する、ということ。幻想世界は二元論世界であり、たとえば、愛は対極に憎悪をもっていて、2つのベクトルが互いにせめぎ合って無数のバリエーションを作り出す。また、たとえば、肉体と精神の問題もしかりである。二項対立は無数のコンフリクトを生み出すのだ。



There is, however, only one cause for all of them: the authority problem. This is "the root of all evil."
  • however [hauévər] : 「けれども、しかしながら、また一方」
  • cause [kɔ́ːz] : 「原因、要因」
  • authority [əθɔ́ːrəti] : 「権威、威信、権力」
  • problem [prɑ́bləm] : 「問題、困ったこと、課題、疑問」
  • root [rúːt] : 「根、根元、根底」
  • evil [íːvl] : 「害悪、悪、弊害」
❖ "There is ~ "「しかし、それらすべての原因はただ一つ、権威問題である」。権威問題とは何であるか、それは後述される。"This is  ~ "「これは『すべての悪の元』である」。"the root of ~ "という文章は、パウロによって書かれたと言われている『テモテへの手紙一』6:10に出てくる。参考までに載せておく。

[1 Timothy 6:9~6:10 from King James Bible]
But they that will be rich fall into temptation and a snare, and into many foolish and hurtful lusts, which drown men in destruction and perdition. For the love of money is the root of all evil: which while some coveted after, they have erred from the faith, and pierced themselves through with many sorrows.
金持ちになろうとする者は、誘惑、罠、無分別で有害なさまざまの欲望に陥ります。その欲望が、人を滅亡と破滅に陥れます。金銭の欲は、すべての悪の根です。金銭を追い求めるうちに信仰から迷い出て、さまざまのひどい苦しみで突き刺された者もいます。(新共同訳)



Every symptom the ego makes involves a contradiction in terms, because the mind is split between the ego and the Holy Spirit, so that whatever the ego makes is incomplete and contradictory.
  • involve [invɑ́lv] : 「〜を含む、伴う、必要とする、〜に伴って生じる」
  • contradiction [kὰntrədíkʃən] : 「矛盾、不両立、反対、否定」
  • term [tə́ːrm] : 「用語、言葉、言葉遣い、言い回し、表現」
  • contradiction in terms : 「言葉の矛盾」
  • split [splít] : 「割れた、分割した、分裂した」
  • between [bitwíːn] A and B: 「AとBとの間に、AないしB」
  • so that : 「~できるように、~するために、その結果」
  • whatever [hwʌtévər] : 「〜するのは何でも、どんなものが〜でも」
  • incomplete [ìnkəmplíːt] : 「不完全な、不十分な、出来損ないで」
  • contradictory [kɑ̀ntrədíktəri] : 「相反する、矛盾する、正反対の」
❖ "Every symptom ~ "「エゴが作り出すすべての症状は、言葉の矛盾を含んでいる」。エゴは二元論世界の『権威』であるから、たとえば、愛を分裂させて、愛と憎悪を作り出す。愛と憎悪は矛盾した二つの言葉であるが、エゴにとっては、これが好都合なのだ。"because the mind ~ "「なぜなら、心はエゴとホーリー・スピリットの間に裂かれ、その結果、エゴの作ったものは何でも不完全で矛盾を含んでいるからだ」。心はエゴとホーリー・スピリットの対極に分裂し、それを象徴する形で、エゴは対立概念を作り出す。たとえば、ホーリー・スピリットの愛に対してエゴは憎悪を突きつける。しかし、この二つは対立言語であり、矛盾を生み出す。また、たとえばエゴは、この幻想の世に生きる我々の肉体を作った。しかし、この肉体は病を発症し、やがて老化し、死に至る運命にある。肉体という存在を与えておきながら、死という形でその存在を奪うとは、まさに『言葉の矛盾』である。なぜなら、肉体は生と死が同居した不完全な存在体だからだ。



This untenable position is the result of the authority problem which, because it accepts the one inconceivable thought as its premise, can produce only ideas that are inconceivable.
  • untenable [ʌnténəbl] : 「支持できない、受け入れ難い」
  • position [pəzíʃən] : 「位置、場所、立場、境遇、地位」
  • result [rizʌ́lt] : 「結果、結末、成り行き、効果、成果」
  • accept [əksépt]: 「受け入れる、承認する」
  • inconceivable [ìnkənsíːvəbl] : 「想像もできない、考えも及ばない」
  • thought [θɔ́ːt] : 「 考え、見解、思想」
  • premise [prémis] : 「前提、仮定」
  • produce [prədjúːs] : 「〜を作り出す、生産する、製造する、産出する、産む」
❖ "This untenable ~ "「この受け入れがたい状況は、権威問題の結果である」。肉体の生と死に見られるような、矛盾した状況は決して受け入れがたいものだが、それは権威問題の結果である。"because it accepts ~ "「なぜなら、権威問題は前提条件として受け入れがたい一つの考えを容認しているからだ」。前提条件として、エゴに権威を与えてしまったために、すべての受け入れがたい状況が生まれてしまった、ということ。権威問題とは、簡単に言えば、誰がいったい一番の権利をもっているか、という問題である。では、この世界の最高の権威者は神であろうか? しかし、ACIMは、神がこの世界を創ったのではないと主張する。では誰がこの世界を作ったか? 我々の心に潜むエゴが、幻想としてこの世界をでっち上げたのだ。しかも、その幻想世界に住む我々は、エゴに最高の権威を与えてしまった。エゴを偶像崇拝しているのだ。しかしその結果、我々は受け入れがたい状況に直面する。この世に横行する不幸と絶望、その悲惨さを見れば、他に証明はいらない。永遠であるべき命さえ、エゴによって肉体の中に閉じ込められ、死という運命を与えられてしまったかに見えるのだ。
ACIMは、我々の心の悲惨さは最高の権威をエゴに与えてしまったところから生じると言う。これが権威問題である。そこで、我々が本来あるべき姿に回帰するには、権威をエゴから奪取し、我々を創造した神に返還する必要があるわけだ。なぜなら、真に存在する実相世界はエゴの世界ではなく、神とスピリットの世界だからだ。エゴは幻想の世界の錯覚(偶像)に過ぎない。我々は、存在さえしないエゴに騙されて生きているのである。むしろ、我々は、エゴという偶像をでっち上げ、エゴを崇拝することで自分自身を騙しているのだ。偶像に支配されれば、自分の責任から逃れることが出来るからだ。



8. The issue of authority is really a question of authorship. When you have an authority problem, it is always because you believe you are the author of yourself and project your delusion onto others.
  • issue [íʃuː] : 「 問題、論点、争点」
  • question [kwéstʃən] : 「質問、疑問、問い、質疑、課題、問題」
  • authorship [ɔ́ːθərʃìp] : 「著述業、原作者」
  • always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、以前からずっと、常にいつでも」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、確信する、信頼する」
  • project [prɑ́dʒekt] : 「 〜を投影する、イメージを与える」
  • delusion [dilúːʒən] : 「 誤った信念、誤った考え、思いこみ、妄想」
❖ "The issue of ~ "「権威の問題は、実際、原作者が誰であるかという問題である」。権威問題は、誰がこの世界を創造したか、誰が人間を創造したか、その問いかけである。"When you have ~ "「あなたが権威問題に巻き込まれるとき、」"it is always ~ "「それはいつも、〜であるからだ」。"because you ~ "「あなたがあなた自身の創造者だと信じ、あなたの妄想を他者に投影しているからだ」。あなたが自分で自分を創造したという思い込みは、とりもなおさず、自分が、つまりエゴが、神に代わる権威者だという妄想である。あなた自身がそう思い込んでいるというより、エゴによってそう信じ込まされている。しかし、このエゴに毒されたあなたの思い込みには、"a contradiction in terms"『言葉の矛盾』である。なぜなら、自分が存在する前にどうして自分を創造出来るだろうか?
妄想を他者に投影するとは、たとえば、あなたの心の中の罪の意識を他者に投影し、他者を罪ある悪者に仕立て上げるのだ。実相的な自他一如の観点に立てば、あなたは他者に自分を映し出しているのである。さて、総括しよう。あなた(神の子)を創造したのは神である。深い眠りの中で神から分離したあなたは、夢の中でこの世界を偽創造した。あなたは神の怒りを恐れ、その恐れに耐えきれなくなって自己を解離し、エゴいう新たな自分を偽創造した。そして、エゴを神に代わる権威者に位置づけ、エゴを偶像崇拝するに至った。この世界も物質も時間も空間も、また他者もすべて、あなたの心が作り出し、心の外に投射したイメージである。



You then perceive the situation as one in which others are literally fighting you for your authorship.
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • situation [sìtʃuéiʃən] : 「状況、場所、状態、立場、事情」
  • literally [lítərəli] : 「文字どおり、逐語的に、そっくりそのまま」
  • fight [fáit] : 「 〜と戦う、〜に対抗する」
❖ "You then perceive ~ "「そこで、あなたは、状況を〜のように知覚する」"as one in which others ~ "ここの"one"は"situation"のこと、「他者が、あなたの権威を奪おうと、あなたと文字通り戦うという状況」を知覚する。あなたは他者に自分の心を投射し、他者を作り出しているのだが、その他者は他者で、心を投射してあなたを作り出す。他者はあなたの敵という立ち位置を作る。あなたと他者は攻撃し合い、奪い合い、憎しみ合い、どんどん分離と孤立を深めていく。神の子の分離を維持させようとするエゴの策略である。エゴにとって、幻想はますます安泰となるわけだ。



This is the fundamental error of all those who believe they have usurped the power of God. This belief is very frightening to them, but hardly troubles God.
  • fundamental [fʌ̀ndəméntl] : 「基本となる、基本の、基礎の、基本的な」
  • error [érər] : 「誤り、間違い」
  • usurp [juːsə́ːrp] : 「侵害する、暴力で奪う、横領する」
  • frightening : 「恐ろしい、ゾッとするような、肝をつぶすような」
  • hardly [hɑ́ːrdli] : 「ほとんど〜ない、とても〜ない」
  • trouble [trʌ́bl] : 「〜を困らせる、悩ます、乱す、迷惑をかける」
❖ "This is the fundamental ~ "「これは、神の力を奪い取ったと信じる者たちすべての根本的な誤りである」。神の力を奪い取ったとは、神の権威を奪い取ったということ。神の真の創造力を奪い取ったと信じ、こんな幻想世界を偽創造したわけだ。しかも、神の権威を奪ってエゴ(自分自身)に与えたのだ。"This belief is ~ "「こう信じることは彼らにとってはとても恐ろしいことであるが、神はまったく意に介さない」。神を裏切り、神から分離してこの幻想世界を偽創造したことに対して罪の意識を感じ、神はきっと罰を与えるだろうと恐れるに至った。しかし、それは神の子の思い込みに過ぎず、夢を見ているだけである。そんな夢の中の罪と罰に対して、神は一切関わりを持たない。神は人間の傲慢さなど意に介さない。ただ、悪夢に苦しむ神の子を、その夢から目覚めさせてあげたいと願うばかりである。



He is, however, eager to undo it, not to punish His children, but only because He knows that it makes them unhappy.
  • eager [íːgər] : 「切望している、熱心な、熱望している」
  • undo [ʌndú] : 「〜を元に戻す、元どおりにする、取り消す」
  • punish [pʌ́niʃ] : 「罰する、懲らしめる、処罰する、処刑する」
  • unhappy [ʌnhǽpi] : 「不運な、不幸な、惨めな、悲しい、不満で」
❖ "He is, however ~ "「しかし、神はそれ(誤り)を取り消そうと熱望している」。神の力を奪い取ろうとした人間の傲慢な誤りを神は取り消しくれる。"not to punish ~ "「神は、神の子を罰したいなどと思っていない」。"but only because  ~ "「なぜなら、神はその誤りが我々を不幸にしていることを知っているからである」。神は神の子を罰するのではなく、誤りを取り消しにして、その不幸から救い出そうと願っているだけだ。悪夢にうなされる我が子を、その夢から目覚めさせようとする母親のようなものである。『怖い夢を見ただけなのよ、目を覚ましなさい』と、優しく語りかけている。



God's creations are given their true Authorship, but you prefer to be anonymous when you choose to separate yourself from your Author.
  • creation [kriéiʃən]: 「創造、創作、創作物、作品」
  • given [ɡívən] : 「giveの過去分詞形」
  • prefer [prifə́ːr] : 「〜を好む、むしろ〜の方を好む、〜の方を選ぶ 」
  • anonymous [ənɑ́nəməs] : 「匿名の、名前を伏せた、無名の、作者不明の」
  • choose [tʃúːz] : 「 〜を選ぶ、〜を選択する」
  • separate [sépərèit] : 「離す、分ける、分離する、分解する」
  • author [ɔ́ːθər] : 「作者、著者、執筆者、作家」
❖ "God's creations ~ "「神が創造したものには、真の権威者が与えられている」。"true Authorship"「真の権威者」とは、もちろん神自身である。"but you prefer ~ "「しかし、あなたがあなたの創造者から自分を切り離すことを選んだとき、あなたは、創造者不明である方を好む」。神の子が神から分離するとき、神の子は創造者である神を捨てたのだ。卑近な例ではあるが、家出する子が親を捨てるようなもの。自分を生み育ててくれた親の権威を否定するわけだ。こうして、子は苦と痛みの放浪を続け、そしてある時、気づきの瞬間を経験する。子は親の愛を知り、親元へ回帰する。聖書によれば、親は放蕩息子を、愛をもって向かい入れるのだ。



Being uncertain of your true Authorship, you believe that your creation was anonymous.
  • uncertain [ʌnsə́ːrtn] : 「不確かな、不明確な、不安定な、変わりやすい」
❖ "Being uncertain ~ "分詞構文、理由、「あなたの真の権威者が誰なのか、不確かなので、」"you believe ~ "「あなたは、あなたを創造したものは誰なのかわからないと信じている」。権威者がはっきりしないので、創造者もはっきりしない。そこで、エゴは、傲慢にも我々自身が我々を作ったのだと耳元でささやく。幻想の中で偽創造しただけなのに、それが本当の創造だと信じ込ませようとしている。



This leaves you in a position where it sounds meaningful to believe that you created yourself.
  • leave [líːv] : 「ほっておく、放置する、ある状態のままにしておく」
  • position [pəzíʃən] : 「立場、位置、地位、身分」
  • sound [sáund] : 「〜に聞こえる、〜に思われる」
  • meaningful [míːniŋfəl] : 「意味のある、意味深長な、重要な」
❖ "This leaves you ~ "「このことがあなたを、that以下を信じることが意味をなすように思われるポジションに置く」。"that you ~ "「あなたがあなた自身を創造した」と信じることが意味をなすように思われるポジションに、あなたを置く。意味をなすとは、それが真実である、という意味。



The dispute over authorship has left such uncertainty in your mind that it may even doubt whether you really exist at all.
  • dispute [dispjúːt] : 「論争、口論、争議、議論」
  • left [léft] : 「leaveの過去・過去分詞形」
  • uncertainty [ʌnsə́ːrtnti] : 「確信のないこと、疑念、不確実なこと」
  • doubt [dáut] : 「〜に疑惑を抱く、〜を不確かだと思う」
  • whether [hwéðər] : 「〜かどうか、〜であろうとなかろうと」
  • exist [igzíst] : 「 存在する、生きている、生存する」
  • at all : 「一体、そもそも」
❖ "The dispute over ~ " ここは、"such ~ that ~ "の構文「あまり〜なので、〜である」、「(創造者は誰かという)権威に関する議論があなたの心にあまりに大きな不確実性を残したので、あなたは、一体、真に存在するかどうかさえ疑いたくなってしまうだろう」。権威問題で混乱しているの、自分の存在さえ不確かになってしまう。命にさえ、肉体の死をもって消滅するかもしれないという不確かさを与えてしまった。
 
 
 



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