●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-23.I.1:1 ~ T-23.I.2:12

 

I. The Irreconcilable Beliefs
共存出来ない信念
 
 
 
1. The memory of God comes to the quiet mind. It cannot come where there is conflict, for a mind at war against itself remembers not eternal gentleness.
  • memory [méməri] : 「思い出、記憶」
  • quiet [kwáiət] : 「静かな、静粛な、平穏な、穏やかな、平和な」
  • conflict [kɑ́nflikt] : 「摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争、闘争」
  • war [wɔ́ːr] : 「戦争、争い」
  • at war : 「戦争状態で、争って、不和で」
  • against [əgénst] : 「〜に反対して、〜に逆らって、〜に背いて、反抗して」
  • remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、記憶している、〜を思い出す」
  • eternal [itə́ːrnl] : 「永遠の、不変の、永久の、不滅の、無限の」
  • gentleness [dʒéntlnis] : 「優しさ、穏やかさ」
❖ "The memory of ~ "「神の記憶は、静かな心に蘇(よみがえ)る」。"It cannot come ~ "「神の記憶は、コンフリクトがある所に蘇ることはない」。"for a mind at war against ~ "「なぜなら、その心自体に対して争っている心は、永遠の優しさを思い出すことはないからだ」。正しき心と悪しき心のコンフリクトである。実相を求める心と幻想に留まろうとする心の葛藤。ホーリー・スピリットに帰依しようという心と、エゴに支配され続けようとする心の軋轢(あつれき)である。そんな騒々しい心に、永遠の優しさをもつ神の思い出が蘇ることはない。



The means of war are not the means of peace, and what the warlike would remember is not love.
  • means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
  • peace [píːs] : 「平和、安らぎ、平穏、安心、安定」
  • warlike : 「好戦的な、挑戦的な、戦争の、戦闘的な」
❖ "The means of war ~ "「争いの手段が、平和の手段になることはない」。"and what the warlike ~ "「争いを好む心が思い出そうとすることが、愛であるわけはないのだ」。争いを生み出す源は、恐れによる攻撃性である。ともに幻想であり、そんな幻想が、実相の平和を生み出せるわけがない。もちろん、幻想が、実相の愛を思い出すことなど、不可能である。



War is impossible unless belief in victory is cherished.
  • impossible [impɑ́səbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない」
  • unless [ənlés] : 「〜でない限り、〜である場合を除いて」
  • victory [víktəri] : 「勝利、優勝、克服、征服」
  • cherish [tʃériʃ] : 「〜を大事にする、大切にする」
❖ "War is impossible ~ "「勝利への信念が大切にされることのない限り、争いは不可能である」。争いの基本は勝つことである。誰かを憎み、攻撃し、戦い、打ち負かし、勝つことが、争いの基本である。勝利への執念がない限り、争いが成立することはない。負けることを目的として戦うことはないのだ。



Conflict within you must imply that you believe the ego has the power to be victorious. Why else would you identify with it?
  • within [wiðín] : 「〜の中に、〜の内側で」
  • imply [implái] : 「暗に伝える、暗示する、ほのめかす」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • victorious [viktɔ́ːriəs] : 「勝利を得た、勝った、勝利の、戦勝の」
  • identify with : 「〜と同一であるとする、〜に自分を重ね合わせる、〜と一体であると感じる」
❖ "Conflict within you ~ "「あなたの心の中にあるコンフリクトは、that以下を暗示している」。"that you believe ~ "「あなたは、エゴが勝利するパワーを有していると信じている」ことを暗示している。争いを最優先するエゴが、何に対しても勝利する力を有していると信じる気持ちがあなたにあるからこそ、あなたの心の中に、コンフリクトが生じるのだ。つまり、争いと勝利が幻想などではなく、現実だと信じる気持ちがあるから、あなたの心にコンフリクトが生じるのである。"Why else would you ~ "「そうでなかったら、どうしてあなたは、エゴと自分を同一化するだろうか」。あなたは、エゴの思考システムに同化して、自分をエゴと同一視している。しかし、あなたの心の中の正しい部分、かすかに生き残った純粋な部分が、あなたに神の記憶を語るのである。そこに、単純にエゴと共に安住することの出来ない原因がある。コンフリクトの原因があるのだ。ならば、コンフリクトは、実は歓迎していいものである。真実に生きようとする、命の葛藤と考えればいいのだ。そして、その葛藤に勝利し、ホーリー・スピリットの思考システムに鞍替えすればいいだけなのだ。実にシンプルではないか。ACIMがよく言うところの、真実はシンプルである、という好例である。



Surely you realize the ego is at war with God. Certain it is it has no enemy.
  • surely [ʃúərli] : 「疑いなく、しっかりと、確かに、確実に、必ず」
  • realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、悟る、自覚する、実感する」
  • at war with : 「〜と交戦中で、戦争中で、不和で、敵対して」
  • certain [sə́ːrtn] : 「確信している、確実な、確かな、確信して」
  • enemy [énəmi] : 「敵、敵国」
❖ "Surely you realize ~ "「確かに、あなたは、エゴが神と対立していることを知っている」。神の対極にエゴがいると言っていい。しかし、"Certain it is it has ~ "「エゴに敵はいないということは、確かなことだ」。おや?っと思われるかも知れない。エゴにとって最大の敵が神ではないかと。確かに、エゴの側に立って見れば、それは正しい。しかし、神の側に立って見れば、神にとって、エゴなど敵でも何でもなく、目にさえ入らないのだ。幻想のエゴが、勝手に敵を作ったつもりになって、戦っているだけであって、それすら幻想である。つまり、実相的視野に立って見れば、幻想のエゴが実相の敵を持つことなど、原理的に不可能なのである。



Yet just as certain is its fixed belief it has an enemy that it must overcome and will succeed.
  • fixed [fíkst] : 「固定した、定着した、一定の、不変の」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • overcome [òuvərkʌ́m] : 「克服する、乗り越える、乗りきる、切り抜ける」
  • succeed [səksíːd] : 「成功する、うまくいく」
❖ "Yet just as certain ~ "「エゴが、克服し(戦いに)成功しなければならない敵をもっているという、固定観念があることも、確かである」。エゴの思考システムの根幹は、罪と恐れと、憎しみと攻撃である。その思考システムを正常に機能させるには、常に敵を作って、その敵と戦い、勝利しなくてはならないという固定観念、むしろ狂信、が必要なのだ。世界史の中に散在する宗教戦争を見れば、このメカニズムが容易に納得出来ると思う。



2. Do you not realize a war against yourself would be a war on God? Is victory conceivable?
  • victory [víktəri] : 「勝利、優勝、克服、征服」
  • conceivable [kənsíːvəbl] : 「想像できる、考えられる、あり得る」
❖ "Do you not realize ~ "「あなたは、あなた自身への戦いが、神への戦いであると気付かないのだろうか」。"Is victory ~ "「そんな戦いに勝利出来ると思っているのだろうか」。神は神の子を無条件に愛している。その神に愛された神の子が自分自身と戦うことは、神の愛と戦うことを意味するのだ。ところで、"a war against yourself"「あなた自身との戦い」とは、どういうことか? 神の子が神の子と戦うことであり、神の子は単一の存在であるから、たとえば、あなたが同胞と争うことも、実は、自分自身との戦いであるのだ。神と神の子も、実相世界では融合しているので、エゴに支配されたあなたが神と戦うことも、自分自身との戦いであると言えるのである。そう考えていくと、争いや戦いは、究極、自分自身との争い、戦いということになる。コンフリクトとは、そういうことなのである。



And if it were, is this a victory that you would want? The death of God, if it were possible, would be your death. Is this a victory?
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る」
❖ "And if it were, is ~ "「もし、あなた自身との戦いが神の戦いであるなら、これが、あなたの欲する勝利なのか」。神の子を無条件に愛する神に戦いを挑んで、その神に勝利したいと、あなたは思っているのか。"The death of God, ~ "「神の死は、もしそれが可能であったしたら、あなたの死でもあるのだ」。神と神の子は分離してはいない。実相世界では、神と神の子は融合しているのだ。だから、それは不可能ではあるが、もし、神に死があるとすれば、それは神の子の死でもある。"Is this a ~ "「こんなものが、勝利だと言えるだろうか」。



The ego always marches to defeat, because it thinks that triumph over you is possible. And God thinks otherwise.
  • always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、常に、いつでも」
  • march [mάːrtʃ] : 「行進する、進行する、前進する、進展する」
  • defeat [difíːt] : 「負かす、倒す、破る、打倒する、勝つ」
  • think [θíŋk] : 「考える、思う、熟考する」
  • triumph [tráiəmf] : 「勝利、大成功、大業績、勝利の喜び」
  • otherwise [ʌ́ðərwàiz] : 「別なように、違うふうに」
❖ "The ego always marches ~ "「エゴは、(敵を)打ち負かすために、行軍するしかない」。"because it thinks that ~ "「なぜなら、エゴは、あなたに勝利することは可能だと思っているからだ」。エゴに支配されたあなたが、あなた自身に勝利することが可能だと信じていることは、つまり、神に勝利出来るとエゴが信じていることを意味する。"And God thinks ~ "「と同時に、神は、まったく異なったことを思っているのだ」。もちろん、神は、戦いが幻想であると、ちゃんと知っている。



This is no war; only the mad belief the Will of God can be attacked and overthrown.
  • mad [mǽd] : 「気が狂って、怒って、頭にきて、発狂して」
  • will [wíl] : 「意志、願望、意欲」
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
  • overthrown : 「倒した、倒す、転覆する」
❖ "This is no ~ "「こんなことは、戦いでも何でもない」。"only the mad belief ~ "「神の意思が攻撃され、打ち負かされる可能性があると信じる、狂った思いに過ぎないのだ」。つまり、幻想が実相を打ち負かすことが出来ると信じる狂気である。夜見る夢の中で、あなたがどんなに攻撃され、打ち負かされたかに見えても、夢から醒めれば、あなたはかすり傷一つ負っていることはない。幻想が、現実を破壊することは出来ないのだ。幻想が実相を敵に回すという発想は、したがって、狂った妄想である。



You may identify with this belief, but never will it be more than madness.
  • more than : 「〜を超える、〜より多い、〜だけではない、単に〜にとどまらない」
  • madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
❖ "You may identify ~ "「あなたは、こんな信念と自己を同一化しているのかも知れないのだ」。つまり、あなたはエゴと自己同一化してるということ。エゴの思考システムにどっぷりと浸かっているのだ。"but never will it ~ "「しかし、こんな信念は、狂気以外の何ものでもない」。



And fear will reign in madness, and will seem to have replaced love there.
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
  • reign [réin] : 「支配する、主権を握る、大流行する、行き渡」
  • reign in : 「〜に影響力を及ぼす」
  • madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
  • replace [ripléis] : 「〜を取り換える、交換する、差し替える」
❖ "And fear will ~ "「そして、恐れが狂気を支配するのである」。"and will seem ~ "「その狂気の中で、恐れは、愛を置き換えてしまうかに見えるだろう」。恐れが愛を駆逐し、愛なき狂気の世界が出来上がるように見えるだろう。もちろん、これも、単なる錯覚なのだが。だが、愛なき狂気の世界という錯覚が、この世界に蔓延していることも事実である。



This is the conflict's purpose. And to those who think that it is possible, the means seem real.
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
  • means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
  • real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
❖ "This is the ~ "「これが、コンフリクトの目的である」。コンフリクトの結果、そうなる(愛が駆逐される)、ということ。"And to those who ~ "「それが可能だと思っている者達にとって、手段は現実となるのだ」。心にコンフリクトを起こし、その結果、世界が愛なき狂気となってしまうと信じる者にとっては、手段であるコンフリクトは現実のように見えるのである。言い換えれば、心の中のエゴが神に戦いを挑み、この世界を愛なき狂気の世界に変えることが出来ると信じる者にとっては、その幻想が現実化して、彼の目には世界が愛なき狂気の世界と見えるのだ。世界を闇に変える手段としての心のコンフリクトもまた、現実化して、あなたをどん底まで苦しめるのである。狂気を支配する恐れとは、そういうことである。
 
 
 

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