●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-27.I.7:1 ~ T-27.I.8:4

7. The strongest witness to futility, that bolsters all the rest and helps them paint the picture in which sin is justified, is sickness in whatever form it takes.
  • strong [strɔ́ːŋ] : 「強い、力がある、力強い、有能な、優秀な」
  • witness [wítnəs] : 「目撃者、証人、証拠、証言」
  • futility [fjuːtíləti] : 「無益、無用、無価値」
  • bolster [bóulstər] : 「支持する、増強する、強化する」
  • rest [rést] : 「残り、残っているもの、残りの部分」
  • paint [péint] : 「〜を描く、〜を表現する」
  • picture [píktʃər] : 「絵、像、絵画」
  • sin [sín] : 「罪、罪悪、ばかげたこと、過失、罪業」
  • justify [dʒʌ́stəfài] : 「弁明する、正当化する」
  • sickness [síknəs] : 「病気」
  • in whatever form : 「いかなる形であれ」
❖ "The strongest witness ~ "「無益さに対する、もっとも強力な証拠は、」"that bolsters all the rest ~ "「それは、残りのあらゆるものを支持し、罪が正当化される絵図を描くのを助けているのだが、その強力な証拠は、」"is sickness in whatever ~ "「どんな形をとろうとも、病なのだ」。難解で、解釈に苦しむ箇所である。"futility"「無益さ」とは、この幻想世界の無意味さのことである。したがって、先頭部分の主語は、「この幻想世界が無意味であるにも関わらず、意味があり、存在価値があるとする強力な証言は、」という主語になる。もっと単純化して、「幻想を支持する強烈な証言は、」と言い換えていいだろう。"all the rest"「残りのあらゆるもの」とは、無益さ以外の、たとえば無意味さ、不毛さ、幻影、幻覚、虚無、はかなさ、等々、負の価値をもったあらゆるもののこと。あらゆる幻想のことである。したがって、"that bolsters all ~ "の部分は「それは、あらゆる幻想を支持しており、」という意味になる。"and helps them paint ~ "この部分は、「罪は正当化されるという絵図を、幻想が描く助けをしているのだが、」ということ。つまり、罪は実在すると幻想は主張するのだが、その主張を、その証言は支持しているということになる。幻想を支持する証言は、必然的に、幻想が支持する罪の実在性を支持しているという意味である。"is sickness in ~ "ここは、幻想を支持する強烈な証言は、形がどうであれ、病気という形で現れるという意味。心の病であれ、肉体的な病であれ、病と名の付くものはみな、幻想の実在性を信じてそれを証言するが故に、幻想の実在性を象徴して現実化されたものなのだ、という意味である。病自体も幻想であり、幻想が実在すると信じる想念がこの場所に現実化して、幻想の病を発症させるのである。



The sick have reason for each one of their unnatural desires and strange needs.
  • sick [sík] : 「病気で、病気の、不健全な、調子が悪い」
  • reason [ríːzn] : 「理由、動機、原因、根拠、弁明、言い訳」
  • unnatural [ʌnnǽtʃərəl] : 「不自然な、自然に反する」
  • desire [dizáiər] : 「欲望、欲求、願望、念願 、要望」
  • strange [stréindʒ] : 「奇妙な、変わった、変な」
  • need [níːd] : 「必要なもの、必要物、必要性」
❖ "The sick have reason ~ "「病に犯された者は、不自然な欲望や奇妙な必要性の一つ一つに理由を付けているものだ」。心の歪みが、不自然な欲望、たとえば、異常に権力を欲しがるとか、奇妙な要求、たとえば、奇妙なほど異性との愛欲を欲しがるとか、を生み出し、なぜそうなのかと問われれば、心に歪みをもった者は、いちいちその理由を並べ立てるだろう。不自然な欲望も、奇妙な欲求も、彼にはそれなりの存在理由があり、それに執着して、それが叶えられるなら、心や肉体が病に犯されても構わないとさえ思うのである。想念は必ず現実化するから、それは実現し、彼は病に犯されるのである。蛇足になるが、健康に対する異常な執着心も例外ではない。健康のためなら死んでもいいなどと思うほど、主客転倒した思いを抱く者は、ほぼ確実に、形はどうであれ、心か肉体が病む。



For who could live a life so soon cut short and not esteem the worth of passing joys?
  • live a life : 「生活する、生きる」
  • cut short : 「〜を途中で止める、遮る、急に終わらせる」
  • esteem [istíːm] : 「〜を尊重する、重んじる、尊ぶ、尊敬する」
  • worth [wə́ːrθ] : 「価値、財産」
  • passing [pǽsiŋ] : 「つかの間の、一時的な、過ぎて行く」
  • joy [dʒɔ́i] : 「喜び、歓喜、喜びの種」
❖ "For who could live a life ~ "「なぜなら、一体誰が、つかの間の喜びの価値を尊重せずに、途中でブッツリと切られる命を生きることが出来るだろうか」。世俗の人々は、はかなく消える命を惜しんで、つかの間の快楽に興じるのが常である。彼らには、蜻蛉(かげろう)のような命を惜しんで、つかの間の生を謳歌したいという正当な理由がある。不自然な欲望も、奇妙な欲求も、彼らには存在価値があるのだ。だが、本当に、つかの間の命に過ぎないのだろうか。蜻蛉のような命なのだろうか。幻想世界がそうであるという理由で、命までそうであるに違いないと信じることは、正当であろうか。



What pleasures could there be that will endure? Are not the frail entitled to believe that every stolen scrap of pleasure is their righteous payment for their little lives?
  • pleasure [pléʒər] : 「喜び、楽しみ、快楽、楽しいこと」
  • endure [indjúər] : 「耐える、持ちこたえる、持続する」
  • frail [fréil] : 「虚弱な、もろい、壊れやすい」
  • entitle [entáitl] : 「〜に資格を与える、〜に権利を与える」
  • stolen [stóulən] : 「steal の過去分詞形、盗まれた」
  • scrap [skrǽp] : 「くず、かけら、スクラップ、くず鉄、小片、断片」
  • righteous [ráitʃəs] : 「道理のある、もっともな、当然の、公正な、正しい」
  • payment [péimənt] : 「支払い、納付、償い、報い、報酬、報復」
❖ しかし、"What pleasures could ~ "「いつまでも続く、どんな快楽が存在するだろうか」。つかの間の命が求める快楽もまた、つかの間の快楽に過ぎない。"Are not the frail entitled ~ "「脆弱な者たちには、盗み取ったわずかのあらゆる快楽は彼らの短い命と引き換えに出来るという正当性があると信じる権利はないだろうか」。確かに、その権利はあるのだ。しかし、それは、心が脆弱な者たちには、という条件が付いている。つまり、病に犯された者達には、それは許されるし、権利として主張してもおかしくない。だが、病を克服して癒されたいと願う者たちには、それは最善の道ではない。それは、病を助長して、死を早める道ではあるが、病という幻想を消滅させる方法ではないのだ。



Their death will pay the price for all of them, if they enjoy their benefits or not.
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
  • pay [péi] : 「〜を支払う」
  • price [práis] : 「値段、価格、対価、代価、代償」
  • enjoy [indʒɔ́i] : 「〜を楽しむ、〜を味わう、〜に恵まれている」
  • benefit [bénəfit] : 「利益、収益、利点、メリット、便益、利得」
❖ "Their death will pay ~ "「彼らが、(つかの間の快楽を謳歌するという)利権を楽しむかどうかは分からないが、彼らは、死をもって、すべての払いを済ませることになる」。死という幻想を受け入れて、つかの間の命を快楽に委ねて生きたのだから、その代償として死を受け入れても当然である。死をもって、ご破算にするのである。これが、世俗の人々の、極く一般的な生き方である。死を前提にした生き方なのだ。しかし、くどいようだが、死が幻想であったなら、そんな前提を信じて生きるのは、狂気の沙汰ではないだろうか。肉体は幻想だから、肉体が崩壊するのは当然である。しかし、心は実相であるから、心は永遠不変に生きるのである。ならば、永遠の心を前提に生きるという生き方の方が、ずっと健全ではないだろうか。つかの間の快楽を追求するよりも、永遠の喜びを追求する方が、賢者の望みに近くはないだろうか。病に甘んじて死を待つよりも、病を赦して、赦すことで病を消し去った方がずっと賢くはないか。



The end of life must come, whatever way that life be spent. And so take pleasure in the quickly passing and ephemeral.
  • whatever [hwʌtévər] : 「どんな〜が〜でも」
  • spent [spént] : 「spend の過去・過去分詞形」
  • spend [spénd] : 「使う、費やす、浪費する、〜を過ごす」
  • and so : 「そこで、それだから、それで」
  • take pleasure in : 「〜を好む」
  • quickly [kwíkli] : 「速く、すぐに」
  • ephemeral [ifémərəl] : 「はかない、短命の、一日限りの」
❖ "The end of life must ~ "「どのように命を使っても、命の終わりは必ず訪れる」。肉体という幻想、死という幻想を信じている限り、どんな生き方をしても、死は必ず訪れる。あなたは、死は選択の余地なく、どんなことをしても逃れることも出来ず、必ず訪れるものと信じている。そして、"And so take pleasure ~ "「だから、つかの間のはかない命の続く限り、快楽をむさぼろうとするわけだ」。ACIMは、それは不当だと言っているわけではない。頭ごなしに否定しているわけではないのだ。ただ、それは、幻想によって盲目になった、病んだ心が求めていることだ、と主張するのである。そして、そんな幻想から目覚めたなら、あるいは病から目覚めたなら、まったく異なった光景が目の前に広がって、まったく異なった生き方が出来るのだと教えているのである。そういう奇跡的な生き方を、今、ここで、あなたは学んでいるのだ。そういう現在の自分を信じる勇気を持ってみてはいかがだろう。どうであろう、たまに自分自身に乾杯してみてはいかがだろうか。



8. These are not sins, but witnesses unto the strange belief that sin and death are real, and innocence and sin will end alike within the termination of the grave.
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
  • innocence [ínəsəns] : 「無罪、潔白、無邪気、無垢、純潔、純真」
  • alike [əláik] : 「同様に、一様に」
  • within [wiðín] : 「〜の中で、〜の内側で」
  • termination [tə̀ːrmənéiʃən] : 「終了、終結、終止、終わり、終息」
  • grave [gréiv] : 「墓、墓所、死に場所」
❖ "These are not sins, but ~ "「罪などというものは存在しないが、」"but witnesses unto ~ "「that以下という、奇妙な信仰に対する証言者は存在している」。"that sin and death ~ "「罪や死は実在し、潔白さも罪深さも、墓場という終着駅をもって、同様に終了する」という、奇妙な信仰に対する証言者は存在している。実相的な視野から見れば、罪は幻想であって存在していないのだが、現実に罪は存在しているに違いないとと頑(かたく)なに証言する者たちは大勢いる。そして、この世で罪を犯そうが、正直に生きようが、どっちにしても、最後は墓場に入って終わりだと主張するのである。この世で真実を知ろうが、幻想に溺れたままで生きようが、死んでしまえば、どちらも変わりあるまいと信じているのだ。



If this were true, there would be reason to remain content to seek for passing joys and cherish little pleasures where you can.
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
  • remain [riméin] : 「依然として〜のままである」
  • content [kɑ́ntent] : 「満足している」
  • seek for : 「〜を探し求める」
  • cherish [tʃériʃ] : 「〜を大事にする、大切にする」
❖ "If this were true, there ~ "「もし、これが真実なら、つかの間の快楽を追い求めることに満足し続け、出来ることなら、ささやかな快楽を大切にしようという理由は存在するのだ」。潔白さも罪深さも、墓場という終着駅をもって、同様に終了するということが真実なら、ささやかでつかの間の快楽を追い求め、それを大切にする生き方も、正統な理由を持っていることになる。



Yet in this picture is the body not perceived as neutral and without a goal inherent in itself.
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜を理解する、〜を把握する」
  • neutral [njúːtrəl] : 「中立の、無色の、中間色の」
  • without [wiðáut] : 「〜なしで、〜を持たないで、〜なしに」
  • goal [góul] : 「目標、目的地、目的、目指すもの」
  • inherent [inhíərənt] : 「生まれつきの、生得の、生来の、先天的な、特有の、固有の」
❖ "Yet in this picture is ~ "「しかし、このように描かれた絵図の中では、肉体は、もはやニュートラルなものとして知覚されることはなく、それ自体として生来の目的を持たないものになってしまう」。肉体は幻想に過ぎないのだが、その幻想から目覚めるための道具になり得ることで、実相的な意味がある。つまり、肉体は幻想と実相の中間地点に位置することで、その性質はニュートラル(neutral)なのだ。そして肉体は、ホーリー・スピリットの目的に沿う形で、幻想の目覚めに利用出来るという、本来の存在目的を持っているのである。しかし、それは、死は幻想であって、幻想を越えたところに実相が存在し、実相的な命は永遠不変に存在するのだという真実を基盤にして成り立つことなのだ。潔白さも罪深さも、墓場という終着駅をもって、同様に終了するという信仰を持っている限り、つまり、死の先は無であると信じている限り、肉体のもつニュートラルな性質も、実相世界から目覚めるための道具という生来の目的も、共に、犠牲にされてしまうのだ。



For it becomes the symbol of reproach, the sign of guilt whose consequences still are there to see, so that the cause can never be denied.
  • become [bikʌ́m] : 「〜になる」
  • symbol [símbl] : 「象徴、記号、シンボル、表象、符号」
  • reproach [ripróutʃ] : 「非難、非難の的、叱責、恥辱、不面目」
  • sign [sáin] : 「標示、サイン、標識、記号、符号、兆候、印」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
  • consequence [kɑ́nsəkwèns] : 「結果、結論、結末、成り行き、帰結、因果関係」
  • cause [kɔ́ːz] : 「原因、要因、理由」
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する」
❖ "For it becomes ~ "「なぜなら、肉体は、恥辱の象徴、罪の印になってしまうからであり、」"whose consequences still ~ "「その結果は、今なお目にすることの出来るものであって、」"so that the cause ~ "「したがって、(結果を生んだ)原因は、決して否定されて得ないものになっているのだ」。非常に難解な箇所である。肉体の発生から考えないと解釈出来ない。神の子はその昔、神なしで神のごとくに存在出来ないものかと、ささいな狂気を心に抱いた。その想念は、一瞬にして現実化し、神の子は神から分離し、いわば、神の子は天の王国から自ら追放されたのだ。そこで神の子は、実相世界に代わる世界を心の外部に投射して偽創造せざるを得なくなったのだ。その投射された幻想世界が、この世界である。しかし、同時に神の子は、父なる神を裏切ってしまったという罪の意識を心に抱くことになる。そして、その裏切りは、必ずや神の報復を受けるに違いないという恐れを生み出すことになった。罪の意識と罰への恐れに耐えかねて、神の子は自己を乖離する。つまり、本来の自分ではない自分を作り上げて、幻想世界に住まわせる道を選んだのである。つまり、夢の自分を夢の世界に住まわせるのだ。この乖離した自分が、エゴを人格とした、肉体をもった自分である。つまり、肉体は、罪の意識と罰の恐れを自分の目から隠すために作り上げられたものであり、言い換えれば、肉体は、罪という恥辱のシンボルであり、生まれながらに罪の烙印を押された存在なのだ(the symbol of reproach, the sign of guilt)。罪の意識と罰の恐れを原因(cause)にして生み出された肉体は、言い換えれば、罪と罰の結果(consequence)であって、その原因が否定され、消し去られない限り(the cause can never be denied)、結果である肉体は消滅するわけもなく、いつまでも目の前に存在し続けるのである(consequences still are there to see)。したがって、死という幻想を乗り越えるには、肉体のもつ罪と罰という幻想を乗り越えることが必要であって、その肉体を利用して、遠い昔の勘違い、つまり、神への裏切りと神の罰への恐れが幻想であると赦し、罪と罰を消滅させることが肝要なのだ。原因が消滅すれば結果も自ずから消滅し、肉体は役割を終えて消滅する。
 
 
 


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