●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-29.IX.1:1 ~ T-29.IX.2:9

 
 
IX. The Forgiving Dream
赦しの夢
 
 
 
1. The slave of idols is a willing slave. For willing he must be to let himself bow down in worship to what has no life, and seek for power in the powerless.
  • slave [sléiv] : 「奴隷、捕らわれている人」
  • will [wíl] : 「〜を望む、意図する、命ずる、決意する」
  • willing [wíliŋ] : 「自発的な、意欲的な、自分から進んで」
  • bow [báu] down : 「おじぎをする、頭を垂れる、従う、屈服する」
  • worship [wə́ːrʃip] : 「崇拝、礼拝、賛美、敬愛」
  • life [láif] : 「人命、生命、寿命」
  • seek [síːk] for : 「〜を探し求める」
  • power [páuər] : 「力、能力、勢力」
  • powerless [páuərlis] : 「効果がない、無能な、力のない」
❖ "The slave of idols ~ "「偶像の奴隷は、自ら進んで偶像の奴隷になったのだ」。偶像を作り出すのはあなたであって、作り出したあなたがその偶像の奴隷となるのだ。何とも皮肉な話しである。"For willing he must ~ "「なぜなら、彼は喜んで、命のないものを崇拝して自らを跪(ひざまず)かせたり、パワーのないものにパワーを見い出そうとするに違いないからだ」。"what has no life"「命のないもの」とは、実相的存在ではないもの、すなわち、幻想のこと。"the powerless"「パワーのないもの」とは、実相的なパワーのないもの、すなわち、これも幻想のこと。実体をもたない夢の中の幻想的存在を崇拝することは、自らを幻想の奴隷に、すなわち、偶像の奴隷にすることなのだ。



What happened to the holy Son of God that this could be his wish; to let himself fall lower than the stones upon the ground, and look to idols that they raise him up?
  • happen [hǽpn] : 「起こる、発生する、降り懸かる」
  • wish [wíʃ] : 「願い、望みの物、願望、希望」
  • fall [fɔ́ːl] : 「落ちる、落下する、倒れる、滅びる」
  • low [lóu] : 「低い、弱い」
  • stone [stóun] : 「石、石材」
  • ground [ɡráund] : 「地面、地べた、地盤、土地」
  • look to : 「〜に目をやる、〜を当てにする、〜に頼る」
  • idol [áidl] : 「アイドル、偶像、崇拝される人、神像」
  • raise [réiz] : 「起こす、立てる、〜を育てる」
❖ "What happened to ~ "ここの"that"は"so that"のこと、「〜するために、その結果」、「このことが、結果的に彼の望みとなったのだが、いったい、神聖な神の子に何が起きたのだろうか」。このこととは、"to let himself ~ "「彼は彼自身を、地面にある石よりも低く屈(かが)ませ、偶像にその身を起こしてもらおうとしているのだ」。そうなったのは、いったい神の子に何が起きたのだろうか。神の子が自らを偶像の奴隷としたのは、いったい、神の子に何が起こったのか。



Hear, then, your story in the dream you made, and ask yourself if it be not the truth that you believe that it is not a dream.
  • hear [híər] : 「〜を聞く、聴く、〜が聞こえる、耳にする」
  • story [stɔ́ːri] : 「物語、話」
  • ask [ǽsk] : 「〜を尋ねる、質問する、聞く、問う」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
❖ "Hear, then, your story ~ "「そこで、あなたが作った夢の中の物語に耳を傾けてみなさい」。"and ask yourself ~ "、ここの"if it be not ~"は"if it should not be ~ "のこと、「そして、自らに、あなたが、それは夢ではないと信じていることは、真実ではなかったらどうか、と尋ねてみなさい」。自分では幻想だと気付いていない、その偶像を良く観察して、偶像は夢ではないと信じている自分が誤っていたらどうかと、考えてみなさい。ここは、その正否を理性で判断しろ、と言っているのではない。あなたの心の中の正気な部分に聞いてみろ、ということだ。だから、あなたの夢の物語に耳を傾けて、自問してみよ、と言っているのだ。あなたが疑いなく、その実在を信じているこの世界が、実は単なる夢だったら、単なる幻想であったなら、あなたはどうするだろうか。



2. A dream of judgment came into the mind that God created perfect as Himself.
  • judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、意見、分別」
  • create [kriéit] : 「〜を創造する、創り出す」
  • perfect [pə́ːrfikt] : 「完璧な、完全な」
❖ "A dream of judgment ~ "「判断という夢は、神同様に完璧に創造した心の中に侵入した」。あなたの心の中の正気な部分、つまり、最も神聖で純粋な部分は実相であって、神が完璧に創造した心の一部分である。もちろん、元々は、心全体が純粋で神聖で完璧であったのだが、エゴが心に侵入し、占領し、心を狂気化したのだ。したがって、"A dream of judgment"「判断の夢」とは、エゴの思考システムと考えていい。肉体的な頭脳が判断を任された領域である。理性の領域である。もちろん、エゴも、その思考システムも、そして、それを信奉する頭脳も、頭脳が司る判断も、すべて、幻想の産物である。あなたが夢に描いている空想の産物である。



And in that dream was Heaven changed to hell, and God made enemy unto His Son.
  • change [tʃéindʒ] : 「〜を変える、〜を変更する、〜を変換する」
  • hell [hél] : 「地獄、ひどい体験、修羅場、生き地獄」
  • enemy [énəmi] : 「敵、敵国、かたき」
❖ "And in that dream ~ "「その夢の中で、天の王国は地獄に変えられた」。"and God made ~ "「そして、神は神の子の敵とされたのだ」。幻想世界にあって、エゴという偶像に支配され、エゴの思考システムを信じるあまり、エゴの言いなりになって、神を敵に回し、天の王国を地獄と勘違いしているのだ。つまり、天の王国に回帰したりしたら、この世で築いた幸せも富も奪われ、絶対的な神に支配されて、惨めな奴隷と化す、と脅かされているわけだ。しかし、今、あなたは、絶対的なエゴに支配され、惨めな奴隷に化してしるのだ。あなたは今、この世の苦と痛みと悲惨さを味わっているのだが、その第一容疑者、第一原因が、幻想のエゴであり、幻想の偶像なのである。神は、まったく関わりをもっていない。神は、神の子が疑似創造した幻想世界に、指一本たりとも関与していないのだ。



How can God's Son awaken from the dream? It is a dream of judgment.
  • awaken [əwéikn] : 「目を覚まさせる、目覚める、呼び起こす」
❖ "How can God's Son ~ "「どうやって、神の子は夢から目覚めることが出来るのだろうか」。"It is a dream ~ "「それは、判断するという夢である」。非常に難解な箇所ではある。ACIMで使われる"judgment"「判断」という言葉は、肉体的頭脳が理性を働かせて思考し、判断している、という意味合いである。判断は、したがって、幻想世界の行為である。感性豊かな心を度外視して、冷徹な価値判断をすることなのだ。"a dream of judgment"「判断するという夢」とは、したがって、肉体的頭脳の理性によって、実相的心を殺す夢、心を黙殺する幻想、と解釈していいだろう。では、その夢、幻想から目覚めるにはどうしたらいいのか。



So must he judge not, and he will waken. For the dream will seem to last while he is part of it.
  • judge [dʒʌ́dʒ] : 「〜を判断する、〜を裁く」
  • waken [wéikn] : 「目覚める」
  • last [lǽst] : 「続く、存続する、持続する、耐える」
  • part [pάːrt] : 「 一部、部分」
❖ "So must he judge ~ "「よって、彼が判断することを止めれば、彼は夢から醒めるのである」。"For the dream will ~ "「なぜなら、夢というものは、彼がその夢の一部である間は、存続するように見えるからだ」。あなたが、肉体的頭脳の理性による価値判断を存続している限りは、幻想の一部としてその幻想に参加していることになり、あなたは幻想から目覚めることは出来ない。なぜなら、幻想を抱いていることにさえ、あなたは気付かないからだ。肉体的頭脳の理性による価値判断を中止し、幻想から一歩退いて幻想を眺めてみれば、自分が幻想していることが理解出来る。心に耳を傾けよ、というのは、そういう意味である。そうなって始めて、あなたは幻想から目覚める準備が出来たと言えるのだ。



Judge not, for he who judges will have need of idols, which will hold the judgment off from resting on himself. Nor can he know the Self he has condemned.
  • hold off : 「寄せ付けない、撃退する、阻止する、離れている」
  • rest [rést] : 「ある、置かれている」
  • condemn [kəndém] : 「〜に有罪の判決を下す、〜を非難する、責める」
❖ "Judge not ~ "「判断することを止めなさい」。"for he who judges ~ "「なぜなら、判断する者は、偶像を必要としているからだ」。肉体的頭脳の理性による価値判断によって、たとえば、金に価値ありと判断すれば、その金が偶像となって、あなたは金という幻想に支配されることになる。理性的価値判断は、偶像を必要とし、偶像を産むのだ。幻想からの目覚めは、当然、遠ざかる。



Judge not, because you make yourself a part of evil dreams, where idols are your "true" identity, and your salvation from the judgment laid in terror and in guilt upon yourself.
  • evil [íːvl] : 「悪い、害を与える、邪悪な」
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
  • identity [aidéntəti] : 「自我同一性、正体、身元」
  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
  • laid [léid] : 「lay の過去・過去分詞形」
  • lay [léi] : 「〜を横たえる、〜を置く」
  • terror [térər] : 「恐怖、テロ」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
❖ "Judge not ~ "「判断してはいけない」。"because you make ~ "「なぜなら、あなたはあなた自身を、悪しき夢の一部にしてしまうからだ」。"evil dreams"「悪しき夢」とは、幻想の偶像に支配され、奴隷化された夢、ということ。たとえば、金の奴隷になって、一生を金に縛られて終わるのである。そんな一生は、悪しき夢以外の何ものでもない。"where idols are your ~ "「その悪しき夢の中では、偶像があなたの『本当の』自分自身ということになる」。金という偶像に支配されれば、あたかもあなた自身が、金の化身であるかのように思われてしまう。金イコール自分、という図式が出来てしまうのである。"and your salvation ~ "「そして、偶像は、恐怖と罪の意識の中で、あなた自身の上に下される判断からの救いとなるわけである」。"judgment laid in terror and in guilt upon yourself"「恐怖と罪の意識の中で、あなた自身の上に下される判断」とは、頭脳的理性による判断、エゴの判断であって、神を裏切って神から分離した罪があなたにはあり、最後の審判において、神はあなたを断罪し、裏切りを報復し、恐怖におののくあなたを地獄に落とすだろう、という判断のこと。エゴはさらに続けて、神の報復から逃れるためには、たとえば金という偶像を信じて金をため込み、あなたが神そのものになって、金で他者を支配し、金で他者の罪を断罪し、金で報復を図れ、という言うのである。神を裏切ったあなたは、神を否定し偶像を信奉することで、罪と恐れから解放されるのだと囁(ささや)くのだ。何ともちゃちなトリックではないか。しかし、トリックは、ちゃちであるほど、人を騙(だま)しに嵌(は)めるのである。
 ところで、余談になるが、"The Last Judgement"「最後の審判」なるものを、ACIMは否定する。そんなものは、過去現在未来を通じて存在しない。最後の審判は、まさに"judgment"「判断」であって、エゴの巧妙な(あるいは、ちゃちな)作り事である。そもそも、神が判断するわけがないのだ。天の王国には、判断という概念はない。判断は真実ではないからだ。真実でもなく、ありもしない判断を、神が、最後の審判と称してわざわざ持ち出し、あなたを断罪し、愛する神の子を地獄の責め苦に合わせるはずがないではないか。最後の審判を持ち出してあなたを脅し、あなたを改宗させようとするような宗教は、したがって、似非宗教であり、偶像を信奉するエゴの宗教である。『死後、裁きにあう』などと宣言する宗教は、ACIMから見れば笑止千万である。ついでながら、ACIMは、俗にいう地獄の存在を否定する。そんなものはない。あるとすれば、この幻想世界、この世のことである。魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)し、劫火(ごうか)であなたを焼き殺すような地獄など存在しない。地獄を持ち出してあなたを脅し、あなたを改宗させようとするような宗教は、したがって、似非宗教であり、偶像を信奉するエゴの宗教である。『神を信ぜざる者、地獄に落ちる』などと宣言する宗教は、ACIMから見れば笑止千万である。
 
 
 


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