●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-29.IX.3:1 ~ T-29.IX.4:8

3. All figures in the dream are idols, made to save you from the dream.
  • figure [fíɡjər] : 「形、形状、形態、姿、人影」
  • idol [áidl] : 「アイドル、偶像、崇拝される人、神像」
  • save [séiv] : 「救う、助ける」
❖ "All figures in the dream ~ "「夢の中に登場する形のあるものはすべて、偶像であって、」"made to save you ~ "「あなたを夢から救うために作られたものである」。ここは、誤解なきように。偶像は、あなたを幻想から直接救ってくれる実相である、という意味ではない。つらくて惨めな現実(本当は幻想、夢なのだが)から、偶像があなたを救ってくれると思って、あなたは夢の中で偶像を作り出しているのだ。たとえば、金持ちになりさえすれば、みんなは自分の存在を認めてくれて、さらに、金で他者を支配出来るかも知れない、と思うのだ。この惨めな夢から、金という偶像があなたを救ってくれると信じるのである。



Yet they are part of what they have been made to save you from.
  • part [pάːrt] : 「一部、部分」
❖ "Yet they are part ~ "「しかし、偶像は、あなたを夢から救い出すために作られた幻想の一部に過ぎない」。幻想世界の偶像は、幻想世界の幻想の一部分に過ぎない。偶像視されない幻想が、偶像を取り囲んでいるのだ。あなたは、惨めな夢から救われるために偶像という、また別の夢を見るのであって、夢自体から救われたのではない。本当の意味で、幻想から、つまり、夢から救われるためには、その幻想すべてを消し去らねばならない。偶像から逃れるだけでは足りないのだ。たとえば、あなたはこの幻想世界で、惨めな自分から逃れるために金を信奉し、金を偶像視したとしよう。しかし、あなたは現実的に、金の奴隷となってしまうのである。寝ても覚めても金という偶像が、あなたにまとわりつく。しかし、その金地獄から抜け出すには、単に金を偶像視しなくなるだけでは足りないのだ。回りの幻想すべてから、あなたは救われる必要がある。



Thus does an idol keep the dream alive and terrible, for who could wish for one unless he were in terror and despair?
  • thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、このようにして」
  • keep [kíːp] : 「〜の状態にしておく、保つ、〜にしておく」
  • alive [əláiv] : 「生存して、生きていて、生き生きとして」
  • terrible [térəbl] : 「恐ろしい、怖い、ひどく嫌な、とても不快な」
  • wish for : 「所望する、〜を欲しがる」
  • unless [ənlés] : 「〜でない限り、〜である場合を除いて」
  • terror [térər] : 「恐怖、テロ」
  • despair [dispέər] : 「絶望、失望、落胆」
❖ "Thus does an idol keep ~ "「こうして、偶像は、夢を生きたものとし、夢を恐ろしいものに維持するのである」。数多くの幻想中で、特にあなたが価値を置いた幻想、あなたの理性的判断が価値ありとした幻想、それが偶像である。偶像は、あなたを惨めな夢から救ってくれるはずであったが、現実は、あなたは偶像に支配され、地獄の責め苦を味わうことになる。つまり、その偶像は、あなたの夢をまるで生きているかのように流動させ、しかも、苦と痛みと恐れを現実のものとするのである。簡単に言えば、あなたが『欲』を抱いた幻想が偶像であり、その欲のために、あなたは苦しみ恐れ、そして、それがこの世で生きていることだと納得するのである。"for who could wish ~ "「なぜなら、恐れと絶望の中にいなかったら、誰がいった夢に望みを託すだろうか」。欲があなたを恐れと絶望に追い込むのだが、追い込まれれば追い込まれるほど、ますます、あなたは欲に溺れ、幻想に埋没していく。たとえば、ギャンブルという偶像に支配された者は、賭けで負け込んでくるとますます賭けに没頭し、背負いきれぬほどの借財を抱えてしまう。恐れと絶望が、ますます、あなたを夢の深みへと陥(おとしい)れていくのだ。



And this the idol represents, and so its worship is the worship of despair and terror, and the dream from which they come.
  • represent [rèprizént] : 「〜を表す、描く、描写する、意味する、象徴する」
  • worship [wə́ːrʃip] : 「崇拝、礼拝、賛美、敬愛」
❖ "And this the idol ~ "「これが、偶像が描く絵図である」。"and so its worship ~ "「したがって、偶像を崇拝することは、絶望と恐れを、そして、それらが生み出された夢を崇拝することである」。絶望と恐れから救われるために偶像を幻想したにも関わらず、偶像は、絶望と恐れの絵図を描いて、あなたをその絵図の中に放り込んでしまう。これが、偶像崇拝の一部始終である。



Judgment is an injustice to God's Son, and it is justice that who judges him will not escape the penalty he laid upon himself within the dream he made.
  • judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、意見、分別」
  • injustice [indʒʌ́stis] : 「不公平、不正、不法、不当」
  • justice [dʒʌ́stis] : 「正義、公正、正当性」
  • escape [iskéip] : 「逃げる、ずらかる、脱出する、抜ける」
  • penalty [pénəlti] : 「刑罰、処罰、違約金、罰金、罰」
  • laid [léid] : 「lay の過去・過去分詞形」
  • lay [léi] : 「〜を横たえる、〜を置く」
  • within [wiðín] : 「〜の中で、〜の内側で」
❖ "Judgment is an injustice ~ "「判断は、神の子にとって不当であり、」"and it is justice ~ "「神の子に判断を下す者は、彼が作った夢の中で、彼自身に下した罰から逃れられない、というのは正当である」。ACIMの言う"judgment"「判断」は、肉体的な頭脳による理性的判断のことで、ここでは、偶像による判断、エゴの判断、エゴの思考システムに照らした判断、と考えていい。いわば、気の利いたように見える善悪判断である。そこで本文は、神の子にエゴ(偶像)による判断を下すことは不当である、ということ。エゴは、神の子が神を裏切ったのだから神の子には罪があり、神の報復を逃れ得ない、と判断する。神の子に罪ありの判断を下すのだ。しかし、神の子は神によって完璧に創造されたものであるから、神同様に、善悪を超越し、罪を持つことなど原理的に不可能なのだ。神の子に、善悪の判断を下すことは不当である。さて、神の子にそんな不当な判断を下す者は、エゴや偶像に支配された者であって、自分で作った夢、つまり、幻想から逃れることが出来ずに、幻想の中で自らに罪という烙印を押して、罰から逃れ得ない者のことである。偶像に支配された者は、エゴが科す罰から逃れ得ないということは、正しい。



God knows of justice, not of penalty. But in the dream of judgment you attack and are condemned; and wish to be the slave of idols, which are interposed between your judgment and the penalty it brings.
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
  • condemn [kəndém] : 「〜に有罪の判決を下す、〜を非難する、責める」
  • wish [wíʃ] : 「望む、願う、祈る」
  • slave [sléiv] : 「奴隷、捕らわれている人」
  • interpose [ìntərpóuz] : 「〜を間に入れる」
  • between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間に」
  • bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜をもたらす」
❖ "God knows of justice ~ "「神は、正当性を知っているが、罰は知らない」。神は、実相的真実の正当性を知っているが、あなたがその正当性から外れたからといって、あなたを罰することはない。神は、判断もしなければ、罰することもしない。善悪を超越しているからだ。神の辞書に、罰という文字は載っていないのだ。"But in the dream of ~ "「しかし、判断という夢の中では、あなたは攻撃し、また、有罪を宣言される」。エゴの思考システムに支配された判断が横行する夢の中では、悪いとあなたが判断した者をあなたは攻撃し、あなたが過ちを犯したと判断されれば、あなたは有罪宣告を受ける。"and wish to be ~ "「偶像の奴隷となることを望んでいるのだ」。あなたは、エゴの支配を望んでいるのだ。なぜなら、エゴを信奉することで、あなたを神の恐れから救ってくれとエゴが囁(ささや)くからである。"which are interposed ~ "「そして、偶像は、あなたの判断と、判断がもたらす罰の間に入り込むのである」。あなたは、エゴの思考システムに則って他者を判断し、その判断に従って他者に罰を下すわけだが、その一連の作業を行うのが、あなたの仮面を付けた偶像である。神の子としての本当のあなたが判断し、罰を加えているのではない。あなたが信奉する偶像が、あなたに代わって判断し、罰しているのである。つまり、偶像は、判断と罰の間に割り込んできているのだ(which are interposed between your judgment and the penalty it brings)。



4. There can be no salvation in the dream as you are dreaming it.
  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
❖ "There can be no salvation ~ "「あなたが夢を見続けている限り、その夢の中に救いはない」。惨めな夢から救われようとして、偶像という幻想を抱いても、あなたは夢から救われることはない。夢から救われるには、すべての幻想から救われる必要があるのだ。幻想すべてということは、事は偶像だけの話ではない、ということである。



For idols must be part of it, to save you from what you believe you have accomplished, and have done to make you sinful and put out the light within you.
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • accomplish [əkάmpliʃ] : 「成し遂げる、成就する、達成する」
  • sinful [sínfəl] : 「罪深い、邪悪な」
  • put out : 「消す、追い出す」
  • light [láit] : 「光、光源、ライト、明かり」
❖ "For idols must be ~ "「なぜなら、あなたが成し遂げたと信じていること、つまり、あなたを罪深い者とし、あなたの心の中の光を消してしまえたと信じていることから救われるには、偶像(からの救い)はその救い(全体)の一部であるに違いないからである」。あなたが、この幻想世界から救われるには、もちろん、偶像から救われる必要があるのだが、それで十分というわけではない。幻想全体を消滅させ、幻想全体から救われる必要がある。そのとき、あなたの罪の意識も幻想として消滅し、心の中の実相の光は、闇が消滅することで、再び、あなたの目に見えてくるのである。



Little child, the light is there. You do but dream, and idols are the toys you dream you play with.
  • toy [tɔ́i] : 「おもちゃ、玩具」
  • play with : 「〜で遊ぶ、〜をおもちゃにする、〜と戯れる」
❖ "Little child ~ "「幼子(おさなご)よ、光はそこにあるのだ」。あなたの心の最も純粋で神聖な部分に、実相の光は消えずに存在している。闇に隠れて見えないだけだ。"You do but ~ "「あなたは夢を見ているだけだって、」"and idols are ~ "「偶像は、あなたが夢の中で遊んでいるおもちゃに過ぎない」。非常に分かりやすい部分であり、この例に、すべて尽きる。偶像は、あなたが幻想する夢の中のおもちゃに過ぎない。



Who has need of toys but children? They pretend they rule the world, and give their toys the power to move about, and talk and think and feel and speak for them.
  • children [tʃíldrən] : 「child の複数形」
  • pretend [priténd] : 「〜のふりをする、〜だと偽る、見せかける」
  • rule [rúːl] : 「統治する、支配する、牛耳る」
  • power [páuər] : 「力、能力、勢力」
  • move [múːv] about : 「〜をあちこちに動かす、転々と住所を変える、動き回る」
  • talk [tɔ́ːk] : 「話す、口を開く、論じる」
  • think [θíŋk] : 「思う、考える」
  • feel [fíːl] : 「感じがする、感じる」
  • speak for : 「〜の代弁をする、〜に代わって話す」
❖ "Who has need of ~ "「おもちゃを必要とするのは、子供でなくて誰だろうか」。おもちゃが必要なのは子供だけであって、偶像を必要とする者も、実相的な視点に立てば、子供に過ぎない。精神的に成長しきれていない者が、偶像を必要とするのだ。"They pretend they ~ "「(おもちゃで遊ぶ)子供は、世界を支配しているつもりになり、」"and give their toys ~ "「彼らのおもちゃに、彼らに代わって、動き回り、話しをし、考え、感じるパワーを与えているのだ」。ここも、分かりやすくて、いい例である。あなたは夢の中で、あなたに代わって偶像に、動き回り、話しをし、考え、感じるパワーを与えているのだ。あなたが、この世界でやっていることは、子供のおもちゃ遊びと同じなのである。子供の、おもちゃを使った空想遊びと同じなのだ。



Yet everything their toys appear to do is in the minds of those who play with them.
  • appear [əpíər] : 「〜のように見える、〜と思われる、〜らしい」
  • those who : 「〜する人々」
❖ "Yet everything their ~ "「しかし、子供のおもちゃがやっているように見えることはすべて、おもちゃで遊んでいる子供の心の中にある」。子供が心の中で空想し、おもちゃを動かして遊んでいるのである。同様に、あなたの心が幻想し、偶像を動かして遊んでいるのだ。



But they are eager to forget that they made up the dream in which their toys are real, nor recognize their wishes are their own.
  • be eager [íːɡər] to : 「しきりに〜したがっている」
  • forget [fərɡét] : 「〜を忘れる、見落とす」
  • make up : 「作り上げる、考え出す」
  • real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
  • wish [wíʃ] : 「願い、望みの物、願望、希望」
❖ "But they are eager to ~ "「しかし子供は、彼らのおもちゃが本物に見える夢を作り上げているということを、必死に忘れようとする」。子供は、おもちゃ遊びが現実だと信じて、自分の空想の産物だとは認識しないのだ。"nor recognize their ~ "「さらに、おもちゃの望みは、彼ら自身の望みだとは認めようとしない」。おもちゃがあまりにもリアルに見えて、子供は、おもちゃが生きて、おもちゃ自身が自分の意思や望みをもっているものと錯覚する。その意思や望みが、本当は自分の意思であり望みだとは認識しないのだ。もちろんここも、子供をあなたに、おもちゃを偶像に、あるいはエゴに置き換えて見ることが出来る。大人は、子供のおもちゃ遊びを笑うが、その大人も、自分の人生で、おもちゃ遊びと同じことをしているのである。
 
 
 


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