●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-31.V.3:1 ~ T-31.V.4:4


3. This aspect can grow angry, for the world is wicked and unable to provide the love and shelter innocence deserves. 

  • aspect [ǽspekt] : 「様子、外見、局面、状況、側面、特徴」
  • grow [ɡróu] : 「〜の状態になる、成長する」
  • angry [ǽŋɡri] : 「立腹して、怒って、憤りを感じて」
  • wicked [wíkid] : 「ひどく悪い、不道徳な、意地が悪い」
  • be unable to : 「〜することができない」
  • provide [prəváid] : 「提供する、もたらす、与える」
  • shelter [ʃéltər] : 「避難所、シェルター、保護、安全」
  • innocence [ínəsəns] : 「無罪、潔白、無邪気、無垢、純潔、純真」
  • deserve [dizə́ːrv] : 「〜を受けるに値する、〜の価値がある、〜にふさわしい」

❖ "This aspect ~ "「この側面は、怒りへと変化し得る」。この側面とは、あなたの自己概念の偽善的側面のこと。他者への偽善的思いやりは、往々にして怒りへ変化してしまうことがある。怒りや憎悪に容易に変化するから偽善的なのだ。"for the world is ~ "「なぜなら、この世界は性悪(しょうわる)であり、罪なき者が受けるに値する愛や保護を提供出来ないからだ」。あなたは他者に対して、思いやりやいたわり、哀れみや慰めを与えてやり、それをもって自分は罪なき善人だと思い込んでいる。だから、世界はそんな自分に対して、見返りとして、愛や保護を提供してくれるはずだと期待しているのだ。しかし、世界は非情で性悪なので、あなたの期待する見返りは決して与えてくれない。そこであなたは、世界のもつ不条理に対して怒りを覚えるのである。



And so this face is often wet with tears at the injustices the world accords to those who would be generous and good. 

  • wet with tears : 「目が潤む」
  • injustice [indʒʌ́stis] : 「不公平、不正、不当な処置」
  • accord [əkɔ́ːrd] : 「与える、認める、許容する」
  • generous [dʒénərəs] : 「寛大な、寛容な」

❖ "And so this face is ~ "「そこで、(偽善的側面の)この顔は、往々にして、世界が、寛大で良き者達に向かって与える不公正に対して、涙するのだ」。こんなに善行を積んでいるのに、世界は自分に幸せを約束するどころか、苦と痛みしか与えてくれない、と言って、悔し涙にくれるというわけだ。なんと世界は不公正であり不条理に満ちているのか、と、非情な世界を罵倒するのである。



This aspect never makes the first attack. But every day a hundred little things make small assaults upon its innocence, provoking it to irritation, and at last to open insult and abuse.

  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • assault [əsɔ́ːlt] : 「攻撃、暴行」
  • make an assault on : 「〜を急襲する、〜に猛攻撃をかける」
  • provoke [prəvóuk] : 「〜を引き起こす、招く、起こさせる、誘発する」
  • irritation [ìrətéiʃən] : 「焦燥、苛立ち、立腹」
  • at last : 「最後に、ついに、とうとう」
  • insult [ínsʌlt] : 「侮辱的言動、侮辱、無礼な言動」
  • abuse [əbjúːz] : 「虐待、酷使、嫌がらせ」

❖ "This aspect ~ "「この側面は、決して第一攻撃を仕掛けない」。自己の偽善的側面は、自分から先制攻撃を仕掛けることはない。自己防衛に徹するというわけである。彼が悪いから彼を憎むのであり、彼女が奪ったから彼女から奪うのである。他者が裏切ったから他者を攻撃するのであって、悪いのは自分ではなく他者である。決して、こちらから攻撃を仕掛けることはないのだが、"But every day ~ "「しかし、毎日、その(自己概念のもつ偽善的)潔癖さに対して多くの小さな攻撃が仕掛けられる」。あなたが信じている自分の潔癖さ、善良さに対して、日常的な小さな攻撃が数多く仕掛けられる。小さな裏切りが多発するのだ。"provoking it to ~ "「苛立ちを引き起こし、ついには、あからさまな侮辱や嫌がらせを惹起させるのである」。あなたの偽善的側面は、小さな日常的攻撃に晒され、怒りや苛立ちが引き起こされて、ついには憎悪へと変化する。こうして、あなたは、いたたまれずに攻撃する側へと回ることになる。



4. The face of innocence the concept of the self so proudly wears can tolerate attack in self-defense, for is it not a well-known fact the world deals harshly with defenseless innocence? 

  • concept [kάnsept] : 「概念、観念」
  • proudly [práudli] : 「誇らしげに、自慢げに、得意になって」
  • wear [wέər] : 「身に着けている、〜を表している」
  • tolerate [tάlərèit] : 「〜を大目に見る、我慢する、耐える」
  • self-defense : 「自衛、自己防衛、護身、正当防衛」
  • well-known : 「よく知られている、なじみ深い、周知の、既知の」
  • fact [fǽkt] : 「事実、真相、現実、実際」
  • deal [díːl] with : 「〜を扱う、〜を取り扱う、〜に対応する」
  • harshly [hάːrʃli] : 「厳しく、厳正に、苛酷に、荒々しく」
  • defenseless [difénslis] : 「無防備の、防御手段がない」

❖ "The face of innocence ~ "「自己概念が誇らしげに装っている潔癖さという顔は、自己防衛としての攻撃を大目に見る」。自己の偽善的な側面は、暴力を強く否定はするが、他者からの攻撃に対する自己防衛は容認する。"for is it not ~ "「というのも、この世界が防衛能力をもたない潔癖な者に対して過酷な扱いをするということは、よく知られた事実ではないだろうか」。この不条理な世界は、潔白な者を守ってはくれないので、他者の攻撃に対して自分で自分を守らなくてはならない。したがって、偽善的な側面は、暴力を否定していながら、自己防衛のための攻撃、暴力は肯定するのである。



No one who makes a picture of himself omits this face, for he has need of it. The other side he does not want to see. 

  • omit [oumít] : 「除く、除外する」

❖ "No one who makes ~ "「自分自身の姿を描く者達は誰も、この顔を除外することはない」。エゴの思考システムにしたがって自己概念を描く者達は、暴力を否定しながら、自己防衛という暴力は肯定するという側面(顔)を自己概念から除外することはない。"for he has ~ "「なぜなら、それが必要だからだ」。過酷なこの世界で生きていくには、自己を守るための暴力は必要なのだと信じている。"The other side ~ "「他の側面は、彼は見ようともしない」。"the other side"「他の側面」とは、非情に難しいのだが、イエス・キリストが示した暴力に対する究極の対処の仕方であると考えていいだろう。イエスは単なる攻撃も、そして自己を防衛する暴力さえも否定した。右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ、とさえ言った。この難解な対処法の真の意味に目を向ける者はいない。



Yet it is here the learning of the world has set its sights, for it is here the world's "reality" is set, to see to it the idol lasts.

  • learning [lə́ːrniŋ] : 「習うこと、学ぶこと、学習」
  • sight [sáit] : 「照準器、視野、視界」
  • set one's sights : 「狙いを定める、照準を合わせる」
  • reality [riǽləti] : 「現実性、実在性」
  • see to it : 「取り計らう、面倒を見る、引き受ける」
  • idol [áidl] : 「偶像、虚像、幻想」
  • last [lǽst] : 「続く、存続する、持続する」

❖ "Yet it is here ~ "「しかし、この世界が狙いを定める学びがここにある」。"for it is here ~ "「なぜなら、偶像が永続するように取り計らうために、この世界の『現実』がセットされるのはここだからだ」。非常に難解な箇所ではあるが、同時に非常に重要な箇所でもある。"to see to it the idol lasts"「偶像が永続するように取り計らうため」とは、偶像のエゴがいつまでも存続出来るように取り計らうため、ということ。簡単に言えば、幻想が消滅させられることなく永続出来るように取り計らうため、ということ。目に見える過酷で非情な不条理の世界こそが現実であり、実在であり、錯覚などではないと、世界(エゴ)は人々に学ばせているのだ。世界(エゴ)が狙いを定めた学びの目的とは、世界の幻想性を隠し通すことなのである。目に見える世界は現実であり、肉体も現実の実在であり、攻撃も反撃も現実だと教え込み、身をもって体験させ、世界や肉体の幻想性に目を向けることを阻止しようとしているのだ。
しかし、2000年前、イエスただ一人が、世界や肉体、この現象界の幻想性を暴いたのである。イエスは、右の頬を叩かれた肉体は幻想であり、その暴力もまた幻想であると知ったのである。ならば、左の頬を差し出すことは、その幻想に巻き込まれない最善の方法ではないか。自己防衛は、幻想を助長するだけのことでしかないと知っていたのである。イエスは幻想を幻想として認識し、受け入れ受け流して赦し、幻想を消滅させた。イエスの心は幻想の肉体から解放されたのだ。頬を叩かれた肉体は、イエスの心が抜け果てたワラ人形に過ぎず、イエスの心は痛みさえ感じることはない。痛みを感じるのは幻想の肉体であって、それはイエスにとっては消滅してしまった肉体なのだ。
蛇足になるが、イエスの磔刑を少し考察しよう。同じラインで考えればいい。イエスは磔刑という悲劇的現実を受け入れたのではない。磔刑という幻想性を受け入れ、赦しただけなのだ。十字架上のイエスの肉体は、心が抜け果てたワラ人形であり、イエスの心(スピリット)は、もうそこにはいない。なるほど、現象としては、磔刑上のイエスの肉体は血を流し、痛みに身もだえしたであろうが、それもまた夢であり、イエスの心(スピリット)は痛みさえ感じない。
イエスの罪状はローマ軍への反乱罪であり、ローマ軍の刑法に従って磔刑となったのが、鏨(たがね)のような太い釘を、腕の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃこつ)の間、そして両足の踝(くるぶし)の下に、非情にも打ち付けられた。何とも残虐な光景であり、キリスト教者は、その悲劇性に心を揺さぶられるのである。福音書を書いたヨハネでさえ、その悲劇性に感動して、磔刑上のイエスに「わが神、わが神、どうして私を見捨てられたのですか」と言わしめている。しかし、これは、ヨハネの完璧な創作である。なぜなら、ヨハネが福音書を書いたのは、イエスの死後100年前後の頃であり、よしんばヨハネが、誰かがイエスの最期の言葉を耳にしたと伝え聞いたとしても、一体誰が、ゴルゴダの丘の上のローマ兵で囲まれた磔刑上、数メートルにも及ぶ十字架上でかすかにつぶやく瀕死のイエスの最期の言葉を聞き取れたであろうか。ヨハネは、イエスが肉体として処刑されたと判断し、その悲劇性に感動して、キリスト物語を創作したのである。イエスの心(スピリット)が、イエスの肉体を抜け出し、肉体を消滅させたなどと、よもやヨハネは思わなかったのだ。
イエスの復活もまた、多くのキリスト教者の誤解がまとわりつく出来事である。イエスの肉体が血と肉を伴って復活したのではない。肉体など、イエスにとってはどうでもよいものだった。なぜなら肉体は幻想に過ぎないからだ、古い革袋そのものだからだ。イエスは、心(スピリット)として復活したのであり、幻想の肉体を超越したのだ。その真実、事実を理解出来ない同胞のために、イエスはわざわざ想念を現実化して、あたかも再び肉体をまとったかのように復活して見せただけである。イエスの復活に意味などない。イエスは心(スピリット)に回帰しただけなのだ。それが重要なのである。そして、このACIMは、イエスのような肉体的悲劇を伴わずして、すべての同胞が心(スピリット)に回帰出来ることを保証する。その導きを提示しているのである。
 
 
 


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