●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-1.I.11:1 ~ T-1.I.20:2

11. Prayer is the medium of miracles. It is a means of communication of the created with the Creator.
  • prayer [prέər] : 「祈り、祈とう、請願、祈願、祈りの言葉」
  • medium [míːdiəm] : 「媒体、媒介物、媒質」
  • means [míːnz] : 「手段、方法」
  • communication [kəmjùːnəkéiʃən] : 「やりとり、連絡、伝達」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
  • creator [kriéitər] : 「創造者、創作者、創設者」
❖ "Prayer is the medium ~ "「祈りは、奇跡の媒体である」。祈りは奇跡を呼び出す。祈りとは、真実を求める意思のことだと思っていい。"It is a means of ~ "「祈りは、創造されたものが創造主である神とコミュニケーションをとるための手段である」。ここの "the created" は「 the + (形容詞・ここでは過去分詞)」であるから「〜のもの」「〜の人」、つまり「創造されたもの」となる。 祈り、つまり、真実を求めるあなたの意思は神に伝わるのだ。少々くどい説明をすると、神は幻想と一切の関わりを持たないから、幻想に埋没して生きるあなたの言葉を直接聞くことはない。しかし、神はホーリー・スピリットをあなたに使者として遣わし、心の最も純粋で神聖な部分にホーリー・スピリットを住まわせた。ここには神の祭壇があって、そこが神とのチャンネルになっている。ホーリー・スピリットはあなたの祈りを聞き、神とのチャンネルを通して、それを神に伝えるのである。また、神の意思はこのチャンネルを通してホーリー・スピリットに伝えられ、ホーリー・スピリットはあなたに神の意思を伝える。つまり、ホーリー・スピリットは神とあなたのコミュニケーションの媒介を果たしているのである。



Through prayer love is received, and through miracles love is expressed.
  • through [θrúː] : 「〜を通じて、〜の手を経て、手を通して」
  • receive [risíːv] : 「受け取る、受ける」
  • express [iksprés] : 「〜を表現する、言葉で表現する」
❖ "Through prayer love ~ "「祈りを通して愛は受け止められ、奇跡を通して愛は表現される」。真実を求める強い意思、つまり、祈りを通して、あなたの愛は神に受け止められる。そして、真実を現実化する奇跡を通して、神は、あなたに対する愛を表現するのだ。具体的に言えば、深い眠りに陥って夢を見続けている神の子に対して、神は愛をもって『さあ、目覚めなさい』と語りかけている。神の子であるあなたは、その神の愛の言葉を受け取って、幻想から目覚めるのである。実相への目覚め、それが奇跡である。
文法的には、"is received"も"is expressed"も受動態。「be動詞+過去分詞」の形である。文の前半と後半が対照的に対をなしていることがわかる。ACIMは詩なのだ。詳しく言うと、弱強五歩格無韻詩と言うそうだ。



12. Miracles are thoughts. Thoughts can represent the lower or bodily level of experience, or the higher or spiritual level of experience.
  • thought [θɔ́ːt] : 「思想、思考、考え、見解」
  • represent [rèprizént] : 「〜を表す、描く、描写する、意味する」
  • low [lóu] : 「低い、高くない」
  • bodily [bάdəli] : 「身体上の、肉体の」
  • level [lévəl] : 「水準、度合い、高さ、高度」
  • experience [ikspíəriəns] : 「経験、体験」
  • high [hái] : 「高い、高位の」
  • spiritual [spíritʃuəl] : 「精神的な、霊的な」
❖ "Miracles are ~ "「奇跡は思いである」。真実を求める意思は崇高な思いであり、祈りである。その祈りによって奇跡は誘発されるのだから、「奇跡は思いである」と表現したのであろう。しかし、思いにも様々あって、"Thoughts can represent ~ "「思いは、経験のより低いレベル、あるいは肉体的なレベルを表現することも出来、また、経験のより高いレベル、あるいはスピリチュアルなレベルを表現することも出来る」。思いは必ず現実化する。あなたの心は幻想を思考し、幻想を体験することも出来るし、実相を思考し、実相を体験することも出来る。虚偽なることを思えば、幻想レベルで、つまりより低い肉体レベルで思いは現実化し、それを体験することになる。真実なることを思えば、実相レベルで、つまりより高い精神的な、あるいは霊的なレベルで思いは現実化し、あなたはそれを体験するのだ。後者が奇跡であって、真実を求める思いが奇跡となって現実化するのである。



One makes the physical, and the other creates the spiritual.
  • physical [fízikəl] : 「 物質の、物質的な、身体の、肉体の」
  • other [ʌ́ðər] : 「もう一方のもの、片方、他方」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
  • spiritual [spíritʃuəl] : 「精神の、霊的な」
❖ "One makes ~ "「低いレベルの思考は、物質を作り出し、」"and the other ~ "「他方の高いレベルの思考は、スピリチュアルなものを創造する」。片や物質という幻想を生み出し、片や霊性という実相を生み出す。ACIMの"spiritual"という言葉は非常に難解な言葉で、単に「精神の、霊的な」という訳では真意が伝わらない。我々が日常使う意味とは随分かけ離れているのだ。"spiritual"は"Holy Spirit"の"spirit"なのだが、神が命と愛を吹き込んだ真実の総体、それが具現化し、人格化したものがspiritであると捉えておこう。心(mind)が実相レベルまで昇華したものがスピリット(spirit)。ACIMを読み進むにしたがい、"spirit"の全容が理解出来るようになる。ただし、言葉で表現出来るものではない。解釈のレベルを超越しているのだ。仏教的な言い方をすれば、"spirit"は不立文字(ふりゅうもんじ)である。



13. Miracles are both beginnings and endings, and so they alter the temporal order.
  • both [bóuθ] A and B : AもBも、ABいずれも」
  • beginning [bigíniŋ] : 「初め、開始、始まり」
  • ending [éndiŋ] : 「終わり、終了、終点、末尾」
  • alter [ɔ́ːltər] : 「変える、変更する、改める」
  • temporal [témpərəl] : 「一時的な、時の、時間の、時間的な」
  • order [ɔ́ːrdər] : 「順序、順番、順位、序列」
❖ "Miracles are both ~ "「奇跡は、初めであり終わりである」。"and so they ~ "「したがって、奇跡は、時間的な序列を変える」。難解な部分であるが、" beginnings and endings " を「原因と結果」と考えると理解しやすい。真実で構成される実相世界は無空間の世界であり、時間も存在しない。真実のすべてが一瞬にして立ち現れ、その一瞬が永遠に続く。あらゆる可能性がホログラフィック的にすべて記録さており、時間と空間は記録の中に畳み込まれる。そして、その記録をいわば逆変換することで、この現象世界を時間軸に沿って追体験することになる。時間に依存して流れる幻想としてイメージ化するのだ。したがって、この世界の物理的因果律は時間の秩序を乱さないが、奇跡はその因果律を超越し、始めと終わり、原因と結果を変更し得る。奇跡は時間的な初めと終わりを包含し(both beginnings and endings)、時間的な秩序(temporal order)を超越して、因果律を覆(くつがえ)すことが出来るのだ。時間の流れ(時間の序列)を変え得るのである。



They are always affirmations of rebirth, which seem to go back but really go forward. 
  • always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、日夜、以前からずっと、常にいつでも」
  • affirmation [æ̀fərméiʃən] : 「肯定形式の表現、断言、肯定、主張」
  • rebirth [ribə́ːrθ] : 「再生、蘇生、更生、新生、復活」
  • seem [síːm] : 「〜のように見える、〜するように思われる」
  • go back [bǽk] : 「後退する、逆戻りする」
  • really [ríəli] : 「実際には、ほんとうは、確かに、本当に」
  • go forward [fɔ́ːrwərd] : 「前進する」
❖ "They are always ~ "「奇跡は、常に、再生の肯定的宣言である」。"which seem ~ " 「それは、一見、後退に見えるが、実際は前進である」。"rebirth"「再生」とは、たとえば、あなたは過去に何かの誤りを犯したとしよう。それは既成事実であって、取り返しの付かないことだとあなたは信じている。しかし、時間を逆転出来る奇跡は、その過去の事象を現在に引きずり出して、あなたの過ちを取り消してくれるのだ。因果律的に過去に存在する原因を、奇跡は時間を超越して現在に引っ張り出し、原因を消滅させる。これが『再生の肯定的宣言』という意味である。過去を現在に引っ張り出すのだから、一見、後退しているように見えるが、それを書き換えて肯定してくれるので、つまり、過ちに赦しを与えてくれるので、現実的には前進である。
時間に依存した事象はことごとく幻想である。過去の過ちも時間に依存し、しかも形をもった事象であるから、当然、幻想である。奇跡は幻想を幻想として赦し、赦すことで幻想を消滅させる。幻想を消滅させ、あなたを真実として再生してくれるのだ。これほどの前進が他にあろうか。



They undo the past in the present, and thus release the future.
  • undo [ʌndú] : 「 〜を元に戻す、元どおりにする、取り消す 」
  • past [pǽst] : 「過去、昔」
  • present [préznt] : 「現在」
  • thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、このようにして」
  • release [rilíːs] : 「〜を解放する、自由にする」
  • future [fjúːtʃər] : 「未来」
❖ "They undo the past ~ "「奇跡は、過去を現在において取り消してくれる」。過去は幻想である。奇跡は、過去という幻想を幻想として赦し、赦すことで幻想を消滅させる。取り消しにするのだ。"and thus release ~ "「こうして、奇跡は、未来を解放するのである」。奇跡によって取り消された過ちを、あなたはもはや未来に引きずることはない。あなたの未来は幻想から解放されたのだ。時間秩序と因果律に束縛されたこの幻想世界の事象を、奇跡は超克するのである。奇跡が物理法則を破るとは、そういうことだ。



14. Miracles bear witness to truth. They are convincing because they arise from conviction.
  • bear [bέər] : 「持つ、有する、生む、生じる」
  • witness [wítnis] : 「証拠、証言」
  • bear witness to : 「〜を証言する」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
  • convincing [kənvínsiŋ] : 「信じられる、信じるに足る」
  • arise [əráiz] from : 「〜から生じる、〜に起因する」
  • onviction [kənvíkʃən] : 「信念、確信」
❖ "Miracles bear witness ~ "「奇跡は、真実を証言する」。奇跡は幻想を消滅させ、真実を現実化する、という意味。"They are convincing ~ "「奇跡は確信から生じるのだから、奇跡は信じるに足る」。真実だけが実在し、真実以外は存在しないという確信から奇跡は生じる。したがって、奇跡が生み出すものはすべて真実あって、幻想との妥協の産物は生み出さない。奇跡は信じるに足るのだ。



Without conviction they deteriorate into magic, which is mindless and therefore destructive; or rather, the uncreative use of mind.
  • without [wiðáut] : 「〜なくして、〜を持たずして」
  • deteriorate [ditíəriərèit] : 「悪化する、退化する、衰弱する、衰退する」
  • magic [mǽdʒik] : 「魔術、魔法、奇術、手品」
  • mindless [máindlis] : 「愚かな、思慮のない」
  • therefore [ðέərfɔ̀ːr] : 「それ故に、そのために、従って、だから」
  • destructive [distrʌ́ktiv] : 「破壊的な」
  • rather [rǽðər] : 「それどころか、むしろ、もっと正確に言えば」
  • uncreative [ʌnkriéitiv] : 「創造的でない」
  • use [júːs] : 「使うこと、利用、使用」
❖ "Without conviction ~ "「確信がなければ、奇跡は魔術に成り下がってしまう」。"which is mindless ~ "「魔術は心を伴わず、したがって破壊的であり、心を創造的に使うことはない」。真実だけを現実化するのだという確信がなければ、それは耳目を驚かすだけの魔術に過ぎない。人の耳目を騙すだけの魔術は、愛も心も伴わず、したがって、真実を破壊する行為のようなものであって、真実を創造するという心の使い方ではない。つまり、魔術に溺れた心は、真実を生み出すことはない。
ここの"which"は関係代名詞、先行詞は"magic"、"which"の前に","があるので非制限用法、「そしてそれは」、と訳せばよい。



15. Each day should be devoted to miracles. The purpose of time is to enable you to learn how to use time constructively.
  • each day : 「毎日、日々」
  • devote [divóut] : 「〜をささげる、充てる、向ける」
  • be devoted to : 「〜に努力をささげる、〜に専念する」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、目標、狙い」
  • enable [enéibl] : 「出来るようにする、〜を可能にする」
  • enable +(人)+ to do : 「(人)が〜することができるようにする」
  • learn [lə́ːrn] : 「〜を学ぶ、〜であると分かる」
  • how to do : 「〜するための方法、〜のやり方、〜の仕方」
  • use [juːz] : 「使う、利用する、生かす」
  • constructively [kənstrʌ́ktivli] : 「前向きに、建設的に、発展的に」
❖ "Each day should ~ "「毎日は、奇跡のために向けられるべきである」。毎日を、真実として生きよ、ということ。幻想を払拭する奇跡とともに、毎日を真実に捧げて生きよ、ということ。"The purpose of ~ "「時間の目的は、いかに時間を創造的に使うか、その方法をあなたが学ぶことを可能にすることである」。時間は幻想であるが、その幻想の時間を真実の創造に利用することが出来る。時間に限らず、この幻想世界のあらゆる事象は、幻想から実相へと、つまり、虚偽から真実へと目覚めるために利用することが出来るのだ。赦しの実践に役立てることが出来る。赦しとは、幻想を幻想として認め、受け入れ、受け流して消滅させることである。真実を顕現化(けんげんか)させることであって、時間はその創造に役立て入ることが出来る。時間は、赦しを学ぶための道具なのだ。



It is thus a teaching device and a means to an end. Time will cease when it is no longer useful in facilitating learning.
  • teaching [tíːtʃiŋ] : 「教えること」
  • device [diváis] : 「装置、道具、デバイス」
  • means [míːnz] : 「手段、方法、手法」
  • end [énd] : 「目的、目標」
  • means to an end : 「目的を達成するための手段」
  • cease [síːs] : 「終わる、やむ、止まる」
  • no longer : 「もはや〜でない」
  • useful [júːsfəl] : 「役立つ、便利な、有益な、価値ある」
  • facilitate [fəsílətèit] : 「容易にする、手助けする」
  • learning [lə́ːrniŋ] : 「習うこと、学ぶこと、学習」
❖ "It is thus a teaching ~ "「このように、時間は教えのための道具であって、目的を達成するための手段である」。"teaching device"「教えのための道具」とあるが、"learning device"「学びのための道具」と考えた方がいいだろう。実相世界では、学ぶことと教えることは同一なのだから。時間は、赦しを学ぶための道具、赦しを教えるための道具である。幻想から実相へと目覚める方法を学び、教える道具である。よって、"end"「目的」とは、幻想から実相へと目覚めること、覚醒、再生、である。"Time will cease ~ "「時間が学びの手助けにもはや役立たなくなったとき、時間は終わる」。時間は幻想である。幻想の時間が、その役割を終えれば、消滅してしまうのだ。存在の意味がなくなるからだ。もちろん、時間だけではなく、この幻想世界も、その役割を終えれば、消滅する。宇宙は消えてなくなるのだ。そして、実在する実相世界が、あなたの目の前に立ち現れる。神の住む天の王国である。



16. Miracles are teaching devices for demonstrating it is as blessed to give as to receive.
  • demonstrate [démənstrèit] : 「実際にやってみせる、実演する、はっきり示す、実証する」
  • as A as B : 「Bと同じくらいA、Bと同様にA」
  • blessed [blésid] : 「祝福された、神聖な、聖なる、楽しい、喜ばしい」
  • give [ɡív] : 「与える、贈る」
  • receive [risíːv] : 「もらう、受ける」
❖ "Miracles are teaching ~ "「奇跡は、〜を実証してみせるための教えの道具である」。"demonstrating it is ~ "「与えることは受け取ることと同様に祝福されることだと実証してみせる」ための教えの道具である。"blessed"という言葉は意味がとり難いのだが、「神が承認してくれるような、神が喜んでくれるような」という意味合いが込められている。神が喜んで承認してくれるのるのだから、神の祝福であり、神聖なのだ。さて、神の法においては、与えることと得ることは同一である。教えることと学ぶことは同一であり、ヒーリングすることとヒーリングされることも同一である。赦すことと赦されることは同一であり、真実に目覚めさせることと真実に目覚めることも同一である。奇跡を体験することで、それが真実であると学び取ることが出来るのだ。
そもそも、真実の実相世界は一元論世界であり(Non-Dualism or Monolism)、与える者と得る者という分離した概念はない。そこには分かち合い(sharing)だけが存在する。したがって、与えて減る、得て増えるというような現象も存在せず、分かち合いによって、すべては拡張増大するだけである。
愛を想定すれば意味が通じるだろう。誰かを心から愛し、愛を与えたからといって、あなたの愛は減るだろうか? あなたは愛することで愛を与えられ、愛を与えられてますます愛するのである。これが、神の法である。愛に限らず、喜びも平和も静寂も美も、真実であるものは分かち合われて拡張増大していくのだ。逆に、与えて減るようなものは真実ではない、幻想である。お金を他人に与えれば、あなたの財布の中のお金は減る。したがって、お金は幻想である。あなたが他者の地位を奪えば、他者は地位を失う。したがって、地位は幻想である。あなたが他者を支配すれば、他者は自由を奪われる。したがって、支配は幻想である。
物理の世界にはエネルギー保存則がある。エネルギーは与えると減るのだ。したがって、エネルギーは幻想である。逆に、心のパワーは、与えることでますます増える。元気は与えることでますます増える。パワーも元気も幻想ではない、実在である。



They simultaneously increase the strength of the giver and supply strength to the receiver.
  • simultaneously [sàiməltéiniəsli] : 「同時に」
  • increase [inkríːs]: 「〜を増やす、増大させる、増加させる」
  • strength [stréŋkθ] : 「力、強さ」
  • giver [ɡívər] : 「与える人、贈与者、寄贈者」
  • supply [səplái] : 「供給する、支給する、提供する」
  • receiver [risíːvər] : 「受取人、受信者」
❖ "They simultaneously ~ "「奇跡は、与える者の力を増大させ、同時に、受け取る者に力を与えるのだ」。ここの"strength"「力」は、心のパワーと考えていい。真実を信じる力と思ってもいい。決して、肉体的な強さを意味してはいない。



17. Miracles transcend the body. They are sudden shifts into invisibility, away from the bodily level. That is why they heal.
  • transcend [trænsénd]: 「超える、〜を超越する」
  • sudden [sʌ́dn] : 「突然の、いきなりの」
  • shift [ʃíft] : 「交代、変更、変化、転換」
  • invisibility [invìzəbíləti] : 「不可視性、目に見えないこと」
  • away from : 「〜から離れて」
  • bodily level : 「肉体的レベル」
  • heal [híːl] : 「治す、治癒する、治療する、癒やす、救う」
  • why they heal : 「なぜ奇跡が癒せるかということ」
❖ "Miracles transcend ~ "「奇跡は、肉体をも超越する」。時間も幻想なら、肉体も幻想である。肉体は時間依存し、変化流動して死に至る。幻想の属性を完全に有している。実相の奇跡は、当然、幻想の肉体を超越するのだ。つまり、肉体的な変化を誘発することが出来る。病を癒せるのである。"They are sudden ~ "「奇跡は、肉体レベルから離れた、見えざるものへの突然のシフトである」。ここの"invisibility"「見えざるもの」とは、目には見えない心のレベル、スピリットのレベルということ。奇跡は、形のある現象(肉体的レベル)を超越して、形のない精神レベルに移行する。むしろ、奇跡が我々を形のある世界から形のない世界へ運んでくれる、と捉えた方がいいだろう。つまり、あなたは幻想の肉体への関心を捨て、実相の心の有り様に関心を移すのである。"That is why ~ "「それが、奇跡が(肉体を)ヒーリング出来る理由である」。病は幻想である。なぜなら、病の宿る肉体自体が幻想なのだから、病も幻想なのだ。ACIMは、肉体の病の真の原因は心が病んでいることに帰着すると説明する。心の歪みが、幻想として、つまりイメージとして具現化したものが病だと言う。奇跡は、その病んだ心に直接働きかけて心を癒すのである。心がヒーリングされるから、病もヒーリングされる。
心が幻想に惑わされるとき、たとえば、怒り、憎悪、嫉妬、悲観、絶望、卑下、恨み、等々の幻想に惑わされたとき、それが現象として病の形で肉体の上に具現化される。したがって、怒り、憎悪、嫉妬、悲観、絶望、卑下、恨み、等々の思いが、幻想に過ぎないことを奇跡が心に知らしめれば、そして、心がその幻想を赦すことが出来れば、病は自然に癒えるのだ。病という幻想は消滅するのである。
当然、ここで反論が出る。自分の風邪は心が作った幻想ではなく、単に風邪のウィルスに感染しただけであると。しかし、これは誤りである。風邪のウィルスも幻想の産物であって、実在はしない。あなたは夢(幻想)の中で風邪のウィルスが存在すると信じ、それに感染すると風邪を引くと信じているから、その思いが現実化するだけなのだ。幻想を信じる心、それが心の歪みなのである。



18. A miracle is a service. It is the maximal service you can render to another.
  • service [sə́ːrvis] : 「奉仕、世話、貢献」
  • maximal [mǽksəml] : 「 最大(限)の、極大の、最高の」
  • render [réndər] : 「〜を与える、提供する」
  • another [ənʌ́ðər] : 「もう一つ、もう一人」
❖ "A miracle is ~ "「奇跡は、(他者への)貢献である」。奇跡は、あなた個人の領域に留まるものではない。分かち合われ拡張増大するものであって、当然、他者へも波及する。したがって、奇跡は他者への貢献、奉仕なのだ。"It is the maximal ~ "「奇跡は、あなたが他者に与え得る最大の貢献である」。奇跡は愛同様、他者への最大の贈り物である。"~ service you ~ "この二語の間に、関係代名詞"that"が省略されている。目的格の代名詞は省略可能。



It is a way of loving your neighbor as yourself. You recognize your own and your neighbor's worth simultaneously.
  • way [wéi] : 「方法、手段」
  • neighbor [néibər]: 「隣人、近所の人、隣席の人」
  • recognize [rékəgnàiz]: 「〜を認める、認識する、認知する」
  • own [óun] : 「自分自身の、独自の、自らの」
  • worth [wə́ːrθ] : 「価値」
  • simultaneously [sàiməltéiniəsli] : 「同時に、いっせいに」
❖ "It is a way of loving ~ "「奇跡は、あなたの隣人をあなた自身のように愛する方法である」。眠れる単一存在の神の子が、その夢の中で自己を分裂させ、無数の自己を偽創造した、その結果があなたであり他者である。したがって、実相世界では、あなたと他者は同一なのだ。自他一如(じたいちにょ)である。奇跡によって真実に目覚めれば、自他一如が自ずから理解出来るようになり、あなたは他者を自分として愛することが出来るようになる。"You recognize ~ "「あなたは、あなた自身の価値とあなたの隣人の価値を同時に認識するのである」。自他一如であるあなたと隣人は、無価値な存在ではない。神が創造し、神に最も愛される存在である。神が、無価値な存在を愛するわけがない。神があなたも隣人も愛している以上、あなたも隣人も共に実相的な存在価値があり、あなたが奇跡によって真実に目覚めれば、それが認識出来る。



19. Miracles make minds one in God. They depend on cooperation because the Sonship is the sum of all that God created.
  • make : 「〜の状態を作り出す、〜にする、〜になる」
  • depend [dipénd] on : 「〜を信頼する、〜によって決まる、〜しだいである」
  • cooperation [kouὰpəréiʃən] : 「協力、協調」
  • sonship [sʌ́nʃip] : 「息子であること」
  • sum [sʌ́m] of : 「〜の総和」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
❖ "Miracles make minds ~ "「奇跡は、神の中で心を一つにする」。ここの"make"は使役動詞で、ある対象を〜の状態にする、という意味。今後、ACIMでは頻繁に登場するんで、しっかり覚えよう。前文で説明したように、神の子が神から分離した後、神の子は自己を分裂させて、散り散りになった心を肉体の一つ一つに閉じこめた。もちろん、それは神の子の幻想である。奇跡は、その幻想を払拭し、無数の肉体に閉じこめられた無数の心は、神の元では(in God)一つであることを教えてくれるのだ。"They depend on ~ "「神の子は、神が創造したすべての総体であるから、奇跡は協調することに依存している」。あなたも他者も神が創造した神の子であり、幻想世界にあっては分離しているように見えても、その総体は実相的には見れば単一の神の子である。したがって、分裂した神の子の心を一つにすることは、あなた一人の役割ではない。あなたも他者も共に、奇跡によって真実に目覚め、心を単一なものとして再生させなくてはいけない。奇跡は、あなた一人の単独によるのではなく、あなたと他者との協調に依存するのである。
なお、蛇足になるが、"Sonship"「息子であること」は、実相世界には男女の区別はないから、「神の子」と解釈した方がいい。また、"God"「神」も、性別はない。したがって、"Father"は「父なる神」と訳すのだが、「母なる神」と解釈してもいい。ACIMは、キリスト教の伝統に従って用語を選択しているだけであって、その内容はキリスト教の解釈とは無縁ある。キリスト教の教義に縛られた解釈をすべきではない。また、大文字の使用であるが、実相世界の実在に対しては、それを人格化したときに大文字を振っているようである。SonshipもGodもHoly Spiritも人格化された実相的な実在を表す。したがって、幻想の中に住まう我々個々人はsonshipであるが、それが神の元で一つになったとき、真に実在するSonshipになるのである。



Miracles therefore reflect the laws of eternity, not of time.
  • therefore [ðέərfɔ̀ːr] : 「それ故に、従って」
  • reflect [riflékt] : 「〜を映す、示す、反映する」
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
  • eternity [itə́ːrnəti]: 「永遠、無限」
❖ "Miracles therefore ~ "「したがって、奇跡は、時間の法ではなく、永遠の法を反映している」。先に時間は錯覚であると言ったが、真の実在には時間はない。二元論として対立概念をもつものだけが、二つの力のせめぎ合いを通して、時間軸上を変化流動していく。神は対立概念を持たないから神の存在自体は永遠なのだ。したがって、神の元で一つになる心は神同様に永遠の存在となる。奇跡は時間を取り消し、永遠の法則の中に我々を投げ込むのだ。



20. Miracles reawaken the awareness that the spirit, not the body, is the altar of truth.
  • reawaken [riəwéikən] : 「再び目を覚まさせる」
  • awareness [əwéərnəs]: 「認識、自覚」
  • spirit [spírət] : 「霊、魂、精神、心」
  • altar [ɔ́ːltər] : 「祭壇、聖餐台」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
❖ "Miracles reawaken ~ "「奇跡は、肉体ではなくスピリットが真実の祭壇であると再び気付かせてくれる」。神の子が神から分離した後、神の子は心を分裂させ、分離の象徴であるエゴを偶像して祭り上げ、自らの心をエゴに支配させた。神は、幻想と一切の関わりをもたないから、神自身がこの事態に直接手を下すことはない。そこで神は、ホーリー・スピリットを神の使者として我々に遣わせ、心の最も神聖で純粋な部分にホーリー・スピリットを住まわせた。そこに神の祭壇があって、この祭壇を通して神とコミュニケーションをとることが出来る。神の祭壇は、神の子がホーリー・スピリットを通して神と接触出来るチャンネルである。
本文の"altar of truth"「真実の祭壇」とは、神の祭壇のことだと思っていい。エゴによって支配された心ではあるが、奇跡を通して真実に目覚めれば、心の最も純粋で神聖な部分にホーリー・スピリットが住んでいることに気付く。そして、その部分こそが本当の心(Mind)であって、あなたの心は神聖なスピリット(spirit)に生まれ変わるのだ。つまり、あなたはホーリー・スピリット(Holy Spirit)と同体だと知るのである。あなたが神から分離して以来、忘れていた本当の自分を、奇跡が再び思い出させてくるのである(reawaken the awareness)。



This is the recognition that leads to the healing power of the miracle.
  • recognition [rèkəɡníʃən]: 「認識、承認」
  • lead [líːd] : 「導く、案内する」
  • healing [híːliŋ] : 「治療、治癒、回復」
❖ "This is the recognition ~ "「これが、奇跡のもつヒーリング・パワーへと導く認識である」。あなたが心の中のホーリー・スピリットの存在に気付き、そのホーリー・スピリットと一体であると認識して、あなたの心が神聖なスピリットとして再生されたとき、奇跡はヒーリングのパワーを獲得する。"healing"「ヒーリング、癒し」という言葉は、我々が日常使う意味合いとは異る。幻想の中で眠っているばらばらの心を覚醒させることがヒーリングである。目覚めた心は、分離した心は実は単一の心であって、神から一歩も離れていなかったことに気が付くのだ。神からの分離は夢に過ぎず、心は常に神と共にあると認識することがヒーリングであり、奇跡なのである。奇跡とヒーリングは、神への回帰なのだ。
 
 
 
 

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