●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-8.VIII.1:1 ~ T-8.VIII.2:7

VIII. The Body as Means or End
手段、あるいは目的としての肉体



1. Attitudes toward the body are attitudes toward attack. To the ego the body is to attack with. 
  • attitude [ǽtitjùːd] : 「態度、考え方、姿勢」
  • toward [tɔ́ːrd] : 「〜の方へ、〜に向かって」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • attack [ətǽk] : 「〜を攻撃する、〜を非難する」
❖ "Attitudes toward ~ "意訳する、「肉体を偏重する態度は、攻撃を偏重する態度である」。"To the ego ~ "「エゴにとって、肉体は、それをもって攻撃することを意味する」。



Equating you with the body, it teaches that you are to attack with. The body, then, is not the source of its own health. 
  • equate [ikwéit] : 「〜を同等と見なす、〜と同一視する」
  • equate with : 「〜と同一視する、同等に扱う」
  • source [sɔ́ːrs] : 「もと、源、原因」
  • health [hélθ] : 「健康、健全」
❖ "Equating you with ~ "分詞構文、理由、「あなたを肉体と同一視しているので、」"it teaches that ~ "「エゴはthat以下を教えている」。"that you are to ~ "「あなたは肉体をもって攻撃しなくてはならないのだ」と教える。"be to do"は「〜すべきだ、〜できる、〜する運命にある」などの意味。"The body, then ~ "「したがって、肉体は、肉体自身の健全さの源ではない」。攻撃と防御に明け暮れし、分離を維持しようとする肉体に平和はない。平和を生み出すこともない。



The body's condition lies solely in your interpretation of its function. 
  • condition [kəndíʃən] : 「事情、状態、状況」
  • lie [lái] : 「ある、横たわる」
  • solely [sóulli] : 「もっぱら、一人だけ、単に」
  • interpretation [intə̀ːrprətéiʃən] : 「解釈、説明、解説」
  • function [fʌ́ŋkʃən] : 「機能、作用、働き、役割」
❖ "The body's condition ~ "「肉体の状態は、ひとえに、肉体の機能をあなたがどう解釈するかにかかっている」。肉体を、分離を維持するための攻撃と防御の道具に使うか、分離を解消し幻想から目覚めるための学びの道具として利用するか、それはあなたの選択次第だ。それによって肉体の状態が決まる。



Functions are part of being since they arise from it, but the relationship is not reciprocal. 
  • part [pɑ́ːrt] : 「一部、部分、部品」
  • being [bíːiŋ] : 「存在、実在、生存、生命」
  • arise [əráiz] : 「起こる、生じる、発生する」
  • arise from : 「〜から生じる、〜に起因する」
  • relationship [riléiʃnʃìp] : 「関係、結び付き、関わり合い」
  • reciprocal [risíprəkl] : 「お互いの、相互の、相互交換の」
❖ "Functions are ~ "「機能というものは存在するものの一部である」。"since they arise ~ "「なぜなら、機能は存在するものから生じるからだ」。"but the relationship ~ "「しかし、その関係は相互的ではない」。非常に分かりにくい部分である。"being(存在)"を肉体として考えてみよう。肉体の機能、たとえば攻撃する機能を取り上げてみると、攻撃するという機能は肉体の一部であることに疑はない。なぜなら、攻撃は肉体が生み出すからだ。では攻撃する機能と肉体の関係は1対1の相互関係にあるだろうか? つまり、機能が決まれば肉体が決まり、肉体が決まれば機能が決まるという相互関係があるだろうか? お分かりのように、そこには1対1の相互関係はない。肉体は、攻撃の機能だけでなく、コミュニケーションの手段という機能も備えている。そうなれば、肉体と機能を関係づける重要なものは、肉体を心がどう解釈するか、ということになる。肉体をエゴの道具と解釈すれば、肉体は攻撃の機能を帯び、ホーリー・スピリットの道具と考えればコミュニケーションの手段になる。



The whole does define the part, but the part does not define the whole. 
  • whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の」
  • define [difáin] : 「決める、〜を定義する」
❖ "The whole does ~ "「全体が部分を定義するのであって、」"but the part does not ~ "「部分が全体を定義するのではない」。部分が全体を構成するのだから、部分を知れば全体を知ることが出来ると思われている。科学的な分析はこれでいい。しかし、たとえば、あなたという人格を知るために、あなたを細分化して多くの項目を評価し、それを総合してあなた全体を再構成したものが本当にあなた自身であろうか?



Yet to know in part is to know entirely because of the fundamental difference between knowledge and perception. 
  • in part : 「一部分において、一つには」
  • entirely [entáiərli] : 「全く、完全に、全体に」
  • fundamental [fʌ̀ndəméntl] : 「基本の、基礎の、根本的な」
  • difference [dífərəns] : 「違い、差異、相違」
  • between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間の」
  • knowledge [nɑ́lidʒ] : 「知識、認識、知恵」
  • perception [pərsépʃən] : 「知覚、見識、感じ方」
❖ "Yet to know ~ "「しかし、叡智と知覚の間の基本的な違いゆえに、一部を知るとが全体を知ることにつながる」と思われている。一般に私達が何かを知るには、その物の部分を知覚し(perception)、多くの知覚情報を統合して、その物の全体像を推論して行く。対して、叡智(knowledge)による物の把握はまったく異なる。これは直覚であり、部分を分析的に把握するのではなく、一気に全体が明示されるという形をとる。ひらめき、天啓に近いものである。知覚と叡智は、その方向性が逆なのだ。



In perception the whole is built up of parts that can separate and reassemble in different constellations. 
  • built [bílt] : 「build の過去形、過去分詞形」
  • build [bíld] up : 「築き上げる、作り上げる」
  • separate [sépərèit] : 「分かれる、分離する」
  • reassemble [riəsémbl] : 「再び集まる」
  • constellation [kὰnstəléiʃən] : 「一群、物の集まり、星座」
❖ "In perception ~ "「知覚においては、全体はパーツによって組み立てられている」。そのパーツを関係代名詞thatで説明し、"that can separate ~ "「分解し、異なった一群として再び組み立てられることの出来る」パーツで、全体は組み立てられている。時計をイメージすればいい。ここから、いわゆる還元主義が生まれる。たとえば、脳ミソを多くの部分に分け、各々の機能を総合すれば人間の意識が理解できるに違いない、などという見方だ。ACIMは分析的な手法が誤りであると言っているのではない。そこには限界があり、しかも、あまりにも狭い範囲に制限された把握の仕方だと教えているのだ。批判と否定を取り違えてはいけない。



But knowledge never changes, so its constellation is permanent. 
  • permanent [pə́ːrmənənt] : 「永続する、恒久的な」
❖ "But knowledge never ~ "「しかし、叡智は決して変化しない」。"so its constellation ~ "「よって、叡智によって知られた一群は永遠である」。叡智による把握は、部分の分析と再構成という形をとらず、全体を一気に直覚するので、時と場所によって把握内容が異なることはない。不変であり、永遠である。
 しかし、ここに論理の飛躍を感じてしまうのは無理もない。人は叡智を捨てて、知覚という擬似的な手法をこの世界にもたらした。感覚器官が知覚したものを頭脳で再構成し、もの全体を理解しようとす手法に慣れ親しんできたからだ。しかし、般若心経で言うように、知覚したものも、知覚それ自体も『空』であったなら、つまり、存在しないなら、いったいそこに何の意味があるだろうか。



The idea of part-whole relationships has meaning only at the level of perception, where change is possible. 
  • relationship [riléiʃnʃìp] : 「関係、関わり合い」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意図、真意」
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、あり得る」
❖ "The idea of ~ "「部分と全体の関係を軸にする思考は、知覚レベルにおいてのみ意味をもつ」。"where change ~ "「知覚レベルでは、変化が可能である」。部分が全体を構成しているように見えるのはこの二元論世界でのこと。そこでは分離が前提とされる。部分を知覚した内容が変化すれば、再構成された全体像も必然的に変化する。対して、一元論世界では全体も部分もない。部分を知覚することは意味をなさず、したがって変化は不可能なのだ。



Otherwise, there is no difference between the part and whole.
  • otherwise [ʌ́ðərwàiz] : 「さもなければ、そうしないと」
❖ "Otherwise, there ~ "「知覚レベルの外では、部分と全体に違いはない」。一部が全体を反映している例として、ホログラムをイメージすればいいかもしれない。ホログラムは、その一部を再現すれば全体が見えてくる。鮮明さには欠けるが、確かに一部が全体の情報を再現してくれる。実はこのACIMの記述方法は非常にホログラムに似ている。読者は、ACIMの何処から読み始め、何処で読み終えても全体像がつかめるように書かれてある。確かに一部を読んだだけでは、その鮮明さに欠けるが、ACIMの部分は全体を反映していて、ちょうど多重塗りをしているような印象を受ける。部分を個々に論じ、それを構成して最終的に結論に至る、というような従来の線形的な記述の仕方ではない。



2. The body exists in a world that seems to contain two voices fighting for its possession. 
  • exist [igzíst] : 「存在する、生きている」
  • contain [kəntéin] : 「〜を含む、包含する」
  • fight for : 「〜のために争う」
  • possession [pəzéʃən] : 「所有、所持」
❖ "The body exists ~ "「肉体は、所有権を争う二つの声を含んでいるかに見える世界に存在している」。エゴとホーリー・スピリットの二つの声が肉体の所有権を争っているように見える。



In this perceived constellation the body is seen as capable of shifting its allegiance from one to the other, making the concepts of both health and sickness meaningful. 
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く」
  • constellation [kὰnstəléiʃən] : 「星座、一群、集まり」
  • be capable of : 「〜の能力がある、〜ができる」
  • shift [ʃíft] : 「移す、切り替える」
  • allegiance [əlíːdʒəns] : 「忠誠、忠実」
  • concept [kɑ́nsept] : 「概念、観念、考え方」
  • both A and B : 「AもBも両方」
  • health [hélθ] : 「健康、健全」
  • sickness [síknəs] : 「病気、病」
  • meaningful [míːniŋfəl] : 「意味のある、重要な」
❖ "In this perceived ~ "「この知覚された一団においては、」ここは、"in a world"「この世界においては、」と同じ意味だと思っていい。"the body is seen as ~ "「肉体は、一方から他方へと、その忠誠をシフト出来るものとして見られている」。"making the concepts ~ "分詞構文、単純接続、「そして、肉体は、健康と病気の両方の概念を意味あるものにしている」。非常に難しい言い回しをしているのだが、要するに、肉体はエゴに付くこともホーリー・スピリットに付くことも出来、両者の右腕になって忠実に働くことが出来るが、エゴに付けば、肉体は病気という概念を具体化するであろうし、ホーリー・スピリット付けば、肉体は健康という概念を具体化するであろう、ということ。



The ego makes a fundamental confusion between means and end as it always does. 
  • fundamental [fʌ̀ndəméntl] : 「基本の、基礎の」
  • confusion [kənfjúːʒən] : 「混乱、当惑、混同」
  • between a and B : 「AとBの間の」
  • means [míːnz] : 「手段、方法」
  • end [énd] : 「目的、目標、結果」
❖ "The ego makes ~ "「エゴは、いつものように、手段と結果の間の基本的な混乱をきたしている」。エゴは、苦しみから解放されるには肉体を攻撃のために使えと教えるのだが、肉体を攻撃のために使うと、肉体は病を発症して苦しみは増すだけである。手段と結果の混乱があるからだ。お金を得るためにお金をギャンブルに投資し、すべてのお金を失うようなものだ。



Regarding the body as an end, the ego has no real use for it because it is not an end. 
  • regard [riɡάːrd] : 「見なす、思う、考える」
  • real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の」
  • have no use for : 「〜の必要がない、〜は役に立たない」
❖ "Regarding the body ~ "分詞構文、譲歩、「肉体を目的と見なしているのだが、」"the ego has ~ "「エゴには肉体は実際に役に立たない」。"because it is ~ "「なぜならば、肉体は目的ではないからだ」。肉体を目的とするとは、一体どういうことだろう。ここでは単純に考えて、たとえば肉体的快楽の追求と見てみよう。食欲や性欲から始まって、美しくありたい、スマートでいたい、健康でありたい、長生きしたい、等々、肉体にまつわる快楽志向はきりがない。エゴはその追求を肉体の分離と攻撃を基盤として実現しようとする。しかし、それは絶対に成功しない(the ego has no real use for it)。なぜなら、肉体的快楽は決して実在の目的にはなり得ないからだ(because it is not an end)。つまり、肉体は幻想であるから、幻想の快楽を追求することは水面に映った月影をすくい取ろうとすることに等しく、手に入れたと思った瞬間、月影は指の間から水と共に失われる。では、何を目的にすべきなのか? それは実際に存在するものの目的でなくてはならない。もちろん、心を除いて外にない。



You must have noticed an outstanding characteristic of every end that the ego has accepted as its own. 
  • notice [nóutəs] : 「〜に気が付く、〜に注意する」
  • outstanding [àutstǽndiŋ] : 「目立った、顕著な」
  • characteristic [kæ̀rəktərístik] : 「特徴、特性、特色」
  • accept [əksépt] : 「認める、受け入れる」
❖ "You must have ~ "「あなたは、エゴが自分のものとして受け入れるすべての目的の顕著な特徴に気が付いているに違いない」。どんな特徴か? 次の文を読もう。



When you have achieved it, it has not satisfied you. 
  • achieve [ətʃíːv] : 「獲得する、得る、成し遂げる」
  • satisfy [sǽtisfài] : 「〜を満足させる、満たす」
❖ "When you have ~ "「あなたがそれを獲得したとき、」"it has not ~ "「それはあなたを満足させない」。水面に映った月影は、すくい取った瞬間に指の間から水と共に失われる。



This is why the ego is forced to shift ceaselessly from one goal to another, so that you will continue to hope it can yet offer you something.
  • force [fɔ́ːrs] : 「〜を強要する、強いる、無理にさせる」
  • be forced to : 「〜せざるを得ない」
  • shift [ʃíft] : 「変わる、移る、転換する」
  • ceaselessly [síːslisli] : 「絶え間なく、頻繁に」
  • continue [kəntínjuː] : 「〜を続ける、継続する」
  • so that : 「〜するために、その結果」
  • offer [ɔ́fər] : 「差し出す、捧げる、〜を提供する」
❖ "This is why ~ "「これが、エゴが一つの目的から別の目的へと絶えず移って行かざるを得ない理由である」。"so that you ~ "「その結果、あなたは、エゴがまだ何かをあなたに提供できるだろうと希望し続けるだろう」。水面に映った月影が手に入らないなら、次は星影にしよう、というわけだ。肉体的快楽追求は結局単なる欲であり、欲の連鎖にはきりがない。欲は永遠に満たされることはない。したがって、欲は欲を呼び、欲は常に渇きを伴う。仏教で言うところの煩悩である。






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