●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-14.I.2:1 ~ T-14.I.3:9

2. Indirect proof of truth is needed in a world made of denial and without direction.
  • Indirect [ìndərékt] : 「間接的な、二次的な、曲がった」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
  • proof [prúːf] : 「証拠、立証、証明、証し」
  • need [níːd] : 「〜する必要がある、〜を必要とする」
  • denial [dinái(ə)l] : 「否定、拒否、拒絶、否認」
  • direction [dərék∫n] : 「方角、方向、道順、方位」
❖ "Indirect proof of truth ~ "「否定によって作られ、方向性を持たないこの世界にあっては、真実の間接的な証拠が必要とされる」。さて、いきなり難解な部分に行き当たった。解読しよう。実相世界は一元論の世界であり、対立概念、対極概念の存在しない世界である。愛はあるが憎悪はない。喜びはあるが悲しみはない。ところが、この幻想世界は二元論の世界であり、対立対極概念が存在する。愛も憎悪も、喜びも悲しみも存在する。その事情を、ある概念に対する「否定によって作られた世界」と表現したのであろう。つまり、この世界は否定概念がなければ存在しない幻想世界なのである。しかも、この幻想世界は変化流動する世界であり、神という絶対的な求心力のない世界である。その事情を「方向性を持たない世界」と表現したのであろう。しいて方向性があるとすれば、それは崩壊と消滅である。いずれ、混沌とランダムな確率が支配する世界だ。こういう世界にあって、真実を見出すにはどうしたらいいか? 幻想世界に住む我々は深い眠りの中にいるわけで、実相世界の「叡智(knowledge)」を持ってはいない。あるいは忘れている。叡智があるなら、真実を直覚によって直接把握できるだろうが、幻想世界ではそれは出来ない。そこで、直接的な叡智に頼ることなく、我々は間接的な方法を見つけて真実を把握しなくてはならないのだ。つまり、幻想の世界は具象の世界であるから、抽象の真実を把握するために、具体的な証拠を見つけなくてはならないのである。その事情を「真実の間接的な証拠」と表現したのであろう。たとえば、我々は芸術という手段を通して美という真実に触れ得る。音楽、絵画、詩、舞踊、等々の具象を間接して美という真実に近づくのである。具象でなくても、たとえば、人を愛することでも真実に近づき得る。しかし、この世界の愛は憎悪を対極にもつ愛であるから、個々人の間の愛(特殊な愛)は真実に肉薄する力に欠けているかもしれない。あるいは、自然と触れあうことで真実と接触できるかもしれない。野辺に咲く一輪の名もない草花に神の命を感じることもあろう。だが、いずれにしても、間接であるが故に、限界が存在する。幻想世界の宿命であろうか。



You will perceive the need for this if you realize that to deny is the decision not to know.
  • perceive [pə(r)síːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、悟る、自覚する」
  • decision [disíʒ(ə)n] : 「解決、決定、決意、決心、決議」
❖ "You will perceive ~ "「もしあなたが、否定することは知るまいとする決定だと気付くならば、あなたはこれの必要性を感じ取れるだろう」。これとは、真実を知るための間接的な証拠。たとえば、音楽、絵画、詩、舞踊、等々の芸術が単なるお遊びに過ぎないとして、芸術を否定することは、真実を知ろうとすることの否定である。否定からは何も生まれない。それを知るなら、否定せずに、真実を垣間見せてくれる間接的な証拠(芸術)の必要性を認識して、それを肯定するべきなのだ。たとえ限界があるにしても。



The logic of the world must therefore lead to nothing, for its goal is nothing.
  • lead [li':d] : 「〜を連れていく、導く、案内する」
  • goal [góul] : 「目標、目的地、目的、目指すもの」
❖ "The logic of the world ~ "「したがって、(この幻想)世界の論理は、何ものにも導くことはない」。"for its goal is ~ "「なぜなら、この世界の目的は無であるからだ」。この幻想の世界は無目的であり、したがって、世界自体に精神はない。ヘーゲルの世界精神論はACIMには通じない。幻想の世界は主のいない、したがって意志のない世界である。



If you decide to have and give and be nothing except a dream, you must direct your thoughts unto oblivion.
  • decide [disáid] : 「 〜しようと決心する、〜することに決める」
  • except [iksépt] : 「 〜を除いて、〜以外に」
  • direct [dərékt] : 「〜を方向づける、〜を…で導く」
  • thought [θɔ́ːt] : 「思考、思索、熟考、考え、見解」
  • oblivion [əblíviən] : 「忘れられている状態、忘却、無意識の状態」
❖ "If you decide to have ~ "「もしあなたが、夢だけの何かを持ち、夢だけの何かを与え、夢の中だけの存在になろうと決心したのなら、」"you must direct ~ "「あなたは、あなたの思考を忘却へと向かわせなくてはならない」。あなたが幻想の世界にとどまりたいのであれば、実相の世界にあったときの記憶を忘却の彼方に追いやらなくてはなるまい。神と共にあった時の思い出は、幻想の世界にとどまりたい者にとっては障害になるのである。



And if you have and give and are everything, and all this has been denied, your thought system is closed off and wholly separated from the truth.
  • close [klóus] : 「〜を閉じる、〜を閉める、〜を閉鎖する」
  • close off : 「閉鎖する」
  • wholly [hóu(l)li] : 「完全に、全く、全体として、全体的に」
  • separate [sépərèit] : 「分ける、分離する、隔てる、引き離す、切り離す」
❖ "And if you have and give ~ "「もしあなたが、すべてのものを持ち、すべてのものを与え、あなたがすべての存在でありながら、」"and all this has ~ "「このことが否定されるなら、」"your thought system is ~ "「あなたの思考システムは閉ざされ、完全に真実から遊離してしまうだ」。真実の否定は何も生み出さない。実相世界の否定は、闇の世界に幽閉されることを意味する。



This is an insane world, and do not underestimate the extent of its insanity.
  • insane [inséin] : 「正気でない、精神障害の、非常識な」
  • underestimate [ʌ̀ndə(r)éstəmèit] : 「過小評価する、低く見積もる、見くびる、甘く見る」
  • extent [ikstént] : 「広さ、物の広がり、範囲、程度、限界、限度」
  • insanity [insǽnəti] : 「狂気、精神病、精神異常」
❖ "This is an insane ~ "「ここは狂気の世界である」。"and do not underestimate ~ "「狂気が拡大することを過小評価してはいけない」。意志的方向性を持たない確率と偶然の世界は、混乱とコンフリクトが渦巻く狂気の世界である。



There is no area of your perception that it has not touched, and your dream is sacred to you.
  • area [é(ə)riə] : 「地域、区域、範囲、領域、分野」
  • perception [pə(r)sép∫n] : 「知覚、知見、見識、感じ方」
  • touch [tʌ́t∫] : 「〜に触れる、、及ぶ、影響を及ぼす」
  • sacred [séikrid] : 「神聖な、宗教的な」
❖ "There is no area of your ~ "「あなたの知覚に狂気が影響を及ぼさない部分などない」。"and your dream ~ "「あなたにとって、あなたの夢は聖域なのである」。狂気があなたの知覚を犯し、幻想を幻想とも感じなくなってしまった。そして、夢に過ぎないこの幻想の世界こそが、あなたにとって真に実在する神聖な空間であると思い込んでいる。ちょうど、ウジ虫にとって腐肉が神聖な空間であるように。



That is why God placed the Holy Spirit in you, where you placed the dream.
  • place [pléis] : 「〜を置く、設置する、取り付ける」
❖ "That is why God placed ~ "「それが、神があなたの心の中にホーリー・スピリットを置いた理由である」。"where you placed ~ "「その場所に、あなたは夢を置いたのである」。神は、ホーリー・スピリットにあなたの知覚を修正する使命を与え、あなたの心の中に住まわせた。幻想を幻想と知覚する正しい知覚に修正するためである。



3. Seeing is always outward. Were your thoughts wholly of you, the thought system you made would be forever dark.
  • Seeing : 「見ること、視覚、視力」
  • always [ɔ́ː(l)weiz] : 「いつも、常に」
  • outward [áutwə(r)d] : 「外へ向かう、外側にある、外側の」
  • wholly [hóu(l)li] : 「完全に、全く、全体として、全体的に」
  • forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
  • dark [dɑ́ː(r)k] : 「暗い、闇の、暗黒の」
❖ "Seeing is always ~ "「見るという行為は常に外に向かう」。"Were your thoughts ~ "仮定法過去、もともとは"If your thoughts were wholly of you"であったものが、"If"を省略し、倒置されたもの、「もし、あなたの思考がすべてあなたのものであったなら、」"the thought system ~ "「あなたが作った思考システムは永遠に闇であろう」。しかし、事実はそうでない。さて、いったいどういう意味であろうか? あなたが思考し、あるいは思いを馳せるとき、あなたは、自分の頭脳が理性的に思考し思いを巡らしているのだと理解しているだろう。しかし、それは誤りだ。あなたの心の中のホーリー・スピリットがあなたの思考や思いを調整してくれているのである。もちろん、ホーリー・スピリットの使命はあなたの知覚を修正することであるが、思考の修正も兼ねていると理解していいだろう。そうでなかったら、あなたは真理や美や愛に無関心な人間になってしまうだろうし、幻想の世界で夢を見続けることを第一義とするであろう。しかも、あなたは無意識のうちにエゴの思考思考システムに従うようにエゴに唆(そそのか)され、永遠に幻想という闇の中に埋もれてしまいかねないのである。したがって、あなたがACIMに出会ったことは偶然ではなく、ホーリー・スピリットの導きによるものだと判断してまず間違いあるまい。なぜなら、あなたは自分の知覚がどこかおかしいと薄々感じていただろうからだ。そして、正しい導きを待ち望んでいただろうから。



The thoughts the mind of God's Son projects or extends have all the power that he gives to them.
  • project [prədʒékt] : 「〜を投影する、発射する、投げ出す」
  • extend [iksténd] : 「広げる、伸ばす、拡張する、拡大する」
❖ "The thoughts the mind ~ "「神の子の心が投影し、あるいは拡張する思考は、神の子がその思考に与えたすべてのパワーを持ってる」。想念は、それが単に思われるだけに終わらず、現実化することを忘れはいけない。実相世界にはポジティヴな想念だけが存在するから、たとえば愛や喜びが分かち合われることで拡張し増大するので特に問題は発生しないが、幻想世界ではネガティヴな想念も存在するので注意が必要だ。たとえば憎しみや嫌悪は相手に向けられる想念であるが、そのパワーは相手に止まることはなく、憎しみや嫌悪を抱いた本人にも及ぶ。肉体的痛みや病気となって現象化、現実化する可能性が大いにあるのだ。「人を憎まば、穴二つ」という言葉は、この事情をよく表している。憎むという想念には、墓穴を二つ掘るだけのパワーがあるわけだ。もちろん、憎まれた者と憎む者の墓穴二つである。



The thoughts he shares with God are beyond his belief, but those he made are his beliefs.
  • beyond [bi(j)ɑ́nd] : 「〜の域を越えて、〜を超越して」
❖ "The thoughts he shares ~ "「神の子が神と分かち合っている思考は、神の子の信念を超えている」。"but those ~ "「しかし、神の子が作った思考の方が神の子の信念になっている」。神は神の子の心の中にホーリー・スピリットを置き、神の思いを、ホーリー・スピリットを通じて我々に伝えている。我々の心の中のもっとも神聖な部分、もっとも純粋な部分であるキリストのヴィジョンがそれである。そのキリストのヴィジョンが想念する思考は、我々の頭脳が取り仕切る理性的思考を遙かに超越している。なぜなら、それは叡智(knowledge)による思考体系であるからだ。しかし、我々はその事実に気づくことは希(まれ)であり、幻想世界の日々の暮らしの中で、我々は頭脳が作り出す理性的思考が唯一の信念体系であると信じている。



And it is these, and not the truth, that he has chosen to defend and love. They will not be taken from him.
  • chosen [t∫óuzn] : 「choose の過去分詞形」
  • choose [t∫úːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
  • defend [difénd] : 「を守る、防衛する、〜を擁護する」
  • taken [téikn] : 「take の過去分詞形」
❖ "And it is these, and ~ "「神の子が、守り、そして愛することを選んだのは、こういった自分で作った信念体系であり、決して真実を選んだのではない」。"They will not be taken ~ "「その神の子が自分で作った信念体系は、神の子から奪い取られることはないであろう」。神の子の心にあるキリストのヴィジョンは、真実を基盤とする信念体系である。ホーリー・スピリットの思考システムのことである。しかし、神の子が養護し、また愛しているのは、真実を基盤とする信念体系ではなく、キリストやホーリー・スピリットから離れた地点で自ら作った信念体系、つまり、頭脳が作った理性的信念体系である。それは真実を優先させるのではなく、自己の利益を優先させる信念である。しかし、ACIMはその信念体系を頭ごなしに否定しているわけではない。積極的に放棄せよと言っているわけではない。したがって、その信念体系は、神の子から奪われてしまうことはないであろう。ただ、神の子は、自分で作った理性的信念体系の他に、心の中にホーリー・スピリットの思考システム(叡智による信念体系)が存在していることに気づくべきではあるのだ。その上で、二者択一の選択を行えばいいわけなのである。このとき、気を付けなくてはならないことは、自分で作った理性的信念体系の中に、エゴの思考システムが介入してこないようにすることである。なぜなら、エゴの思考システムは幻想の思考システムであり、幻想世界においてのみ成立するシステムに過ぎないからだ。



But they can be given up by him, for the Source of their undoing is in him.
  • given [gívn] : 「give の過去分詞形」
  • give up : 「あきらめる、断念する、放棄する、捨てる、見捨てる」
  • Source [sɔ́ː(r)s] : 「もと、源、起点、原因、出所、出典」
  • undo [ʌndú] : 「〜を元に戻す、元どおりにする、取り消す」
  • undoing : 「ほどくこと、解くこと、取り消し」
❖ "But they can be ~ "「しかし、神の子が自分で作った信念体系は、神の子によって放棄される可能性はある」。"for the Source of ~ "「なぜなら、その信念体系の取り消しを推し進める源(ソース)は、神の子の心の中にあるのだから」。神の子の心の中に住まうホーリー・スピリットが、神の子が作った理性的信念体系を取り消しにして、新たにホーリー・スピリットの思考システムを導入する手助けをしてくれる。ましてや、エゴの思考システムが混入しているときは、なおさらである。ところで、"the Source"を「源」と訳したが、ACIMで使われる"the Source"はもっと意味が深い。「神」そのものを指すときもあり、ここでは「ホーリー・スピリット」を指していると考えていいだろう。



There is nothing in the world to teach him that the logic of the world is totally insane and leads to nothing. Yet in him who made this insane logic there is One Who knows it leads to nothing, for he knows everything.
  • logic [lɑ́dʒik] : 「論理、論理学、論法、ロジック、道理」
  • totally [tóut(ə)li] : 「全体的に、全体として、すっかり、何から何まで」
  • insane [inséin] : 「正気でない、精神障害の、非常識な」
  • lead [li':d] : 「〜を導く、案内する、〜を連れていく、」
  • lead to : 「〜につながる、結果として〜に導く、結局〜となる」
❖ "There is nothing ~ "「この幻想の世界に、神の子にthat以下を教えてくれるものは何もない」。"that the logic of ~ "「この世界の論理は全く狂っており、無に導く以外ない」と教えてくれるものは何もない。"Yet in him who made ~ "「しかし、この狂った論理を作った神の子の中に、その論理が無に導く以外ないことを知っている者がいる」。"for he knows ~ "「なぜなら、その者はすべてを知っているからである」。"One"は「神」のことであるが、ここでは「ホーリー・スピリット」と考えていいだろう。あるいは「キリスト」と考えてもいい。いずれ、ホーリー・スピリットは叡智(knowledge)をもってすべてを直覚的に知っている存在である。神の子の無謀な論理が狂っていることも、それが無へ帰結することも知っているのだ。
 
 
 


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