●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-29.IX.7:1 ~ T-29.IX.8:7

7. The real world still is but a dream. Except the figures have been changed. They are not seen as idols which betray.
  • real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
  • except [iksépt] : 「ただし、除いて」
  • figure [fíɡjər] : 「姿、人影、人物、形、形状」
  • change [tʃéindʒ] : 「〜を変える、〜を変更する、〜を変換する」
  • seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
  • idol [áidl] : 「アイドル、偶像、崇拝される人、神像」
  • betray [bitréi] : 「裏切る、背」
❖ "The real world still ~ "「(この段階の)実相世界は、まだ、夢である」。幻想世界から抜けたばかり段階では、まだ、実相世界は、あなたの目にとっては夢である。"Except the figures ~ "「ただし、登場する人物は変わってしまっているが」。夢は夢でも、幻想世界の登場人物と実相世界の登場人物は、まったく異なっている。幻想世界のエゴと実相世界のホーリー・スピリットとを比較すれば、容易に理解出来よう。"They are not seen ~ "「実相世界の登場人物は、裏切りを働く偶像と同じように見えることはない」。実相世界の登場人物は真実の象徴であり、幻想世界の登場人物は、エゴや偶像を見て分かる通り虚偽の象徴である。虚偽は裏切り、騙し、欺くのだ。真実は騙すこともなければ、裏切ることもない。ところで、実相世界が、いまだ夢である、という一文に疑問を感じることがあるかもしれない。実相世界は、完全な想念、抽象の世界であって、本当は、具体的な形というものを持たない世界なのだ。愛、喜び、慈愛、光、美、真理、等々の真実で出来上がっている世界であり、具象的な山や川、太陽や月で出来ている世界ではないのだ。しかも、実相世界は一元論世界であり、すべての真実がたった一つの真実に融合統一される。愛や喜びや慈愛が、たった一つの『神』という真実に収斂(しゅうれん)するのである。さて、それを踏まえて本文を解釈すると、幻想から目覚めたばかりの実相世界は、そこにホーリー・スピリットが存在し、目眩(めくるめ)く光が存在し、愛で満たされている。いわば、かなり具象的な世界が目に入ってくるわけで、そこで、その世界は実相世界と言えども、まだ夢で止まっている、ということになるのだ。幻想世界が虚偽の夢の世界なら、この段階での実相世界は、真実の夢の世界だと考えればいいだろう。



It is a dream in which no one is used to substitute for something else, nor interposed between the thoughts the mind conceives and what it sees.
  • use [juːz] : 「使う、利用する、生かす、働かせる」
  • substitute [sʌ́bstətjùːt] : 「〜を代わりにする、代用する、置き換える」
  • substitute for : 「〜の代わりになる、〜と置き換わる、〜の代理を務める」
  • interpose [ìntərpóuz] : 「〜を間に入れる」
  • between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間に」
  • thought [θɔ́ːt] : 「考え、思考、思索、熟考」
  • conceive [kənsíːv] : 「心に描く、思い付く、着想する」
❖ "It is a dream in ~ "「実相的な夢は、その中に、何か他のものの代用として使われるような登場人物はいないという夢である」。たとえば、幻想世界では、あなたが金を信奉するとき、金を偶像にして、いわば、偶像を金の変わりに置き換えて神格化するのだ。愛を肉欲に置き換え、支配欲を権力欲に置き換え、というように、偶像とは、まさに、置き換えなのである。実相世界では、そのような置き換え、目先のごまかしはない。愛は真実の愛であり、喜びは純粋な喜びである。"nor interposed between ~ "「また、心が抱く思いと、目に見えるものとの間に、何ものも差し挟んだりしない」。幻想世界では、たとえば、目に見える実際の金と、心が金に対して抱く支配欲の間に、金が化けた偶像を差し挟み、偶像が金と支配欲を結びつける役割を果たすのだが、実相世界では、そんなことはあり得ない。純粋な愛は、愛、それのみであって、何かのための愛などということはない。実相的な愛は、手段でもなく目的でもないからだ。愛はそこにあるのみ。世俗的な『欲』が絡まる愛ではないから、あくまでも純粋で神聖なのだ。



No one is used for something he is not, for childish things have all been put away.
  • childish [tʃáildiʃ] : 「子供みたいな、子供じみた、子供っぽい」
  • put away : 「片付ける、しまう、しまい込む、収納する」
❖ "No one is used for ~ "「誰も、そうではない何かのために利用されることはない」。幻想世界では、愛が愛ではないもののために利用されることがある。たとえば、愛が情欲のために使われるのだ。しかし、実相世界では、そんなことは起きない。"for childish things ~ "「なぜなら、子供じみたことは、すべて片づけられてしまったからだ」。思いを対象に投射することで心を与えてしまうようなおもちゃなど、実相世界には存在しない。幻想世界に存在した子供じみたおもちゃは、すべて片づけられてしまったのだ。



And what was once a dream of judgment now has changed into a dream where all is joy, because that is the purpose that it has.
  • once [wʌ́ns] : 「あるとき、かつて、以前」
  • judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、意見、分別」
  • joy [dʒɔ́i] : 「喜び、歓喜、喜びの種」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
❖ "And what was once ~ "「かつて、分別だらけの夢だったものが、今やすべたが喜びである夢に変えられたのだ」。肉体的頭脳による判断、つまり、分別だけで生きていた夢が、今や、真実であふれた夢に変わり、喜びで満たされるのだ。"because that is ~ "「なぜなら、それが、実相世界のもつ目的だから」。実相世界は、愛や喜びや慈悲などの真実の世界であるから、いわば、愛や喜びや慈悲が目的とされた世界である。実相世界が喜びで満たされるのは、当然の成り行きである。



Only forgiving dreams can enter here, for time is almost over.
  • forgive [fərɡív] : 「許す、容赦する、勘弁する」
  • forgiving [fərɡíviŋ] : 「寛大な、寛容な」
  • enter [énter] : 「〜に入る、〜に参加する、〜に立ち入る」
  • almost [ɔ́ːlmoust] : 「ほとんど、九分どおり、大体、一種の」
  • over [óuvər] : 「終わって、終了して、完了して」
❖ "Only forgiving dreams ~ "「赦しという夢だけが、この実相世界に入って来れる」。"for time is almost ~ "「なぜなら、時間は、ほとんど終わりかけているからだ」。幻想を幻想として認め、受け入れて受け流すことがACIMの赦しである。したがって、実相世界には、本来、赦しという概念は存在しない。実相世界では、赦す必要がないからだ。しかし、赦しとは、幻想世界から実相世界への、いわば橋渡しであって、その意味では、赦しは実相世界に入って来るのである。もちろん、赦しが終えた後は、幻想が消滅すると同時に、赦しも必要なくなり消えてしまう。実相は無時間の世界であるから、赦しの瞬間は半分実相世界に入ったようなものだから、大方、時間は消滅しかけている。



And the forms that enter in the dream are now perceived as brothers, not in judgment, but in love.
  • form [fɔ́ːrm] : 「姿、形、外形」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
❖ "And the forms that ~ "「実相の夢に入って来れる登場人物は、今や、同胞であって、」"not in judgment ~ "意訳する、「それは、判断の対象ではなく、愛の対象となるのだ」。あなたが赦すことで、幻想は消滅し、実相が目の前に開けてくる。その光景に登場するのは、もちろん偶像などではなく、あなたの同胞なのだ。しかも、同胞は、あなたが敵だと判断した攻撃目標ではなく、愛する対象に変化する。なぜなら、今あなた見ている夢は真実の夢であって、同胞の真実の姿は、あなたと同一の神の子であるからだ。



8. Forgiving dreams have little need to last. They are not made to separate the mind from what it thinks.
  • have need to do : 「〜する必要がある」
  • last [lǽst] : 「続く、存続する、持続する、耐える」
  • separate [sépərèit] : 「分ける、分離する、隔てる、引き離す、切り離す」
❖ "Forgiving dreams ~ "「赦しの夢は、長く続く必要はほとんどない」。"They are not made ~ "「赦しの夢は、心を、心が思っていることから分離するために作られるものではないのだ」。実相的な赦しを実行することは、心が思っていることを心の外に投射して幻想の偶像を作り上げることではない。しかも、赦しが実行されると幻想は消滅するので、その時点で赦しの目的は果たされ、赦しの夢は終わる。



They do not seek to prove the dream is being dreamed by someone else.
  • seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
  • prove [prúːv] : 「証明する、〜となる、〜であると分かる」
❖ "They do not seek to ~ "「赦しの夢は、夢が、他の誰かによって夢見られているなどと証明しようとしない」。証明する必要がないからだ。なぜなら、赦しの夢は、他の誰かが夢見ているものではないと、初めから分かっているから。ところで、幻想の夢の構造は、次のようになる。たとえば、あなたは、心が描いた思いを外部に投射し、幻想の世界、つまり夢を見るのだが、その夢に、あなたが思い描いた通りの同胞を登場させる。と同時に、他者である同胞が同じように夢を見、その夢にあなたは登場させられのだ。あなたは主体として夢を見ると同時に、客体として、他者の夢も見ているのである。自分の夢を見ると同時に、他者が夢見た夢を見ているのだ(the dream is being dreamed by someone else)。この幻想世界、つまり夢世界は、このように複雑な構造を描いているように見えるのだが、実は単純である。単一の神の子が実相世界で深い眠りに落ちて夢を見ている。その夢の中で、単一の神の子は自己を分裂させ、数多くの個人(神の子)を作り上げる。その数多くの神の子が、それぞれに、勝手な夢を見ているのだ。一つの夢の中で、多数の夢が多重に見られているわけである。これが、幻想という夢である。ところが、赦しの夢、いわば、実相の夢は、そのような複雑な夢の構造をもってはいない。他者の夢に登場するなどということはないのだ。あながが幻想を幻想として認識し、受け入れ受け流して赦すとき、その実相的な夢は、確かにあなたが見ている夢であって、他者が見ているものではない。他者の赦しの夢に、あなたが登場しているのではないのだ。もちろん、赦しを偶像化して、偶像に赦しを実行させているものでもない。あなた自身が主体となって、あなた自身の赦しの夢を見ているのだ。



And in these dreams a melody is heard that everyone remembers, though he has not heard it since before all time began.
  • melody [mélədi] : 「メロディー、旋律、音楽、音調 」
  • heard [hə́ːrd] : 「hear の過去・過去分詞形」
  • remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
  • though [ðóu] : 「〜にもかかわらず、たとえ〜でも」
  • since [síns] : 「〜してからあとに、〜して以来、〜のときからずっと」
  • before [bifɔ́ːr] : 「〜する前に、〜より前に、〜より先に」
  • began [bigǽn] : 「begin の過去形」
❖ "And in these dreams ~ "「赦しの夢の中では、誰もが覚えているメロディーが聞こえてくる」。"though he has not ~ "「あらゆる時間が始まる前からずっと、そのメロディーを聞くことがなかたとしても」。夢に陥り、時間の存在する幻想を心の外部に投射するまでは、神の子は実相世界にあって、実相世界のメロディーを聞いていたのだ。今、赦しの瞬間にあって、あなたも同胞の、その懐かしいメロディーを聞くことになる。この実相のメロディーとは、天の王国の歌、真実が奏でる音楽、神の息吹が奏でる和音、調和融合の喜びの合唱、等々、と考えられるが、これだけは、実際に経験してみないと何とも言えない。少なくとも、この幻想世界にあっては聞くことの出来ないメロディーである。



Forgiveness, once complete, brings timelessness so close the song of Heaven can be heard, not with the ears, but with the holiness that never left the altar that abides forever deep within the Son of God.
  • forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦、寛容」
  • once [wʌ́ns] : 「あるとき、かつて、以前」
  • complete [kəmplíːt] : 「完結した、完成した、完全な、全くの」
  • bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜をもたらす」
  • timelessness [táimlisnis] : 「時間がないこと、無時間、永久」
  • close [klóus] : 「近い、接近した、近接した、緊密な」
  • ear [íər] : 「耳」
  • holiness [hóulinəs] : 「神聖、高潔」
  • left [léft] : 「leave の過去・過去分詞形」
  • leave [líːv] : 「〜から離れる、 〜を退く」
  • altar [ɔ́ːltər] : 「祭壇、聖餐台」
  • abide [əbáid] : 「とどまる、居住する」
  • forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
  • deep [díːp] : 「深く」
  • within [wiðín] : 「〜の中に、〜の内側に」
❖ "Forgiveness, once complete ~ "ここは"that"の省略された"so that"構文、「ひとたび赦しが完成されれば、その赦しは、無時間性を極く近くに運んでくるので、天の王国の歌を聴くことが出来るのである」。赦しによって幻想が消滅していくと同時に、時間という幻想も消えていき、実相世界の無時間性が目の前に展開する。その無時間の中にあって、天の王国の歌、懐かしいメロディーが聞こえてくるのだ。"not with the ears ~ "「それは耳で聞くものではなく、」"but with the holiness ~ "「神の子の心の中深くに永遠に存在する祭壇から決して去ることのなかった神聖さが、天の王国の歌を聞くのである」。あなたの心の中の最も純粋で神聖な部分に神の祭壇があって、そこが天の王国とのチャンネルになっている。その最も純粋で神聖な心の部分が、天の王国の歌を聞くのである。



And when he hears this song again, he knows he never heard it not. And where is time, when dreams of judgment have been put away?
  • again [əɡéin] : 「再び、かさねて」
  • put away : 「片付ける、しまう、しまい込む、収納する」
❖ "And when he hears ~ "「彼が再びこの歌を聞くとき、」"he knows he ~ "「その歌を絶対聞いたことがあると知るのである」。赦しによって幻想が消滅し、実相の記憶が段々鮮やかになって来るにしたがい、天の王国の歌もはっきりと思い出されてくる。"And where is time ~ "「判断の夢が片づけられてしまったなら、時間はどこに存在出来るだろうか」。頭脳による価値判断で作り上げられた夢、つまり、分別の幻想が消滅してしまったのだ。同時に、幻想の時間も消滅していく。時間はどこにもない。時間は永遠に置き換わったのだ。
 
 
 


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