●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-31.V.1:1 ~ V-31.V.2:9


V. Self-Concept versus Self
本当の自己と、それに対する自己概念

 
 
1. The learning of the world is built upon a concept of the self adjusted to the world's reality. It fits it well. 

  • built [bílt] : 「buildの過去形」
  • concept [kάnsept] : 「概念、観念、考え」
  • adjust [ədʒʌ́st] : 「適合させる、順応させる」
  • reality [riǽləti] : 「現実性、実在性、実在」
  • fit [fít] : 「合う、適合する、一致する」

❖ "The learning of ~ "「この世界の学びは、世界の現実性に適応させられた自己の概念の上に構築される」。"It fits it ~ "「学びは、自己概念によく合うのだ」。この幻想世界の現実、それは幻想に過ぎないのだが、その現実に適応するように自分を形作っていく課程が、この世界での学びになっている。自己概念も、それを形成する学びも、この幻想世界の現実に適合するようになされるのだ。その結果、自己概念と学びと幻想世界の現実は、奇妙なほどよくマッチするのである。



For this an image is that suits a world of shadows and illusions. Here it walks at home, where what it sees is one with it. 

  • image [ímidʒ] : 「イメージ、画像、像、映像」
  • suit [súːt] : 「合う、適合する」
  • shadow [ʃǽdou] : 「影」
  • illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
  • at home : 「くつろいで、気楽に」

❖ "For this an image ~ "「これによって、影と幻想のこの世界にピッタリ合うイメージが形成される」。ここの"image"とは、肉体的な感覚器官が捉えた目に見える現象、あるいは、理性的な頭脳が捉えた心象という意味であろう。簡単に言えば、見たり感じたり考えたりすることすべてが、幻想世界の現実にピッタリ合う、ということ。違和感を感じさせないのだ。違和感を抱かないように処世術を学び、自己概念を形成してくのである。したがって、"Here it walks ~ "「ここでは、イメージは居心地よく進行していく」。"where what it ~ "「イメージと世界とが一体であると見ているからだ」。目に見え感じたままが世界の現実だと思い、それに適合した自分もまた現実そのものだと信じているからだ。ひょっとしたら、この世界は嘘の世界であり、それに適合した自分も嘘の自分であるかも知れないと、誰も考えることはない。幻想の世界に幻想の自分を泳がせ、それ以外の可能性を思い浮かべることはないのである。



The building of a concept of the self is what the learning of the world is for. 

  • build [bíld] : 「築く、作り上げる、建てる、組み立てる」

❖ "The building of ~ "「自己の概念を形成していくことは、世界についての学びが何のためにあるかということに等しい」。世界について学んでいくことは、その世界に適合するように自己を形成していくことに等しい。虚偽の幻想に慣れる処世術を学ぶことが、自己を形成していくことなのだ。つまり、虚偽の自己概念を形成することこそ、この世界の学びの目的なのである。



This is its purpose; that you come without a self, and make one as you go along. 

  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、目標、狙い」
  • go along : 「進行する、進む」

❖ "This is its ~ "「これが、学びの目的である」。"that you come ~ "「つまり、あなたは(本当の)自己を持たないようになること、」"and make one ~ "「そして、長ずるにしたがい、(本当の自己をもたない)自分を作っていくことなのである」。幻想世界の幻想にピッタリ適合した幻想の自分を形成してくことが、あなたの生きている目的になっている。実相的な真実の自分に気付かないような、つまり、夢から覚めないような生き方をしているのである。



And by the time you reach "maturity" you have perfected it, to meet the world on equal terms, at one with its demands.

  • by the time : 「〜する時までに」
  • reach [ríːtʃ] : 「達する、至る、着く、到着する」
  • maturity [mətʃúərəti] : 「成熟、成熟ぶり、完成、十分な成長」
  • perfect [pərfékt] : 「完全なものにする、仕上げる、完成させる」
  • meet [míːt] : 「合う、満足させる、かなえる、満たす」
  • on equal terms : 「対等に、同じ条件で、同等に」
  • at one with : 「〜と一体になって」
  • demand [dimǽnd] : 「求めるもの、要求」

❖ "And by the time ~ "「そして、あなたが『成熟期』に到達するまでには、あなたはそれを完成させる」。あなたが大人になる頃には、あなたは幻想世界に適合した嘘の自分を完成させてしまうのだ。"to meet the world ~ "「世界に対して同等になるように自分を合わせ、世界の要求と一体になるのである」。あなたは、幻想世界と同化し、あなた自身が幻想世界そのものと化してしまう。幻想世界の要求はあなたの欲望そのものとなる。



2. A concept of the self is made by you. It bears no likeness to yourself at all. 

  • bear [bέər] : 「〜を身につける、持つ、有する」
  • likeness [láiknis] : 「似ていること、類似」
  • at all : 「全く〜ない、全然〜ない、少しも〜ない」

❖ "A concept of ~ "「自己の概念はあなたによって作られる」。あなたが世界に合わせて自分自身を形成する。"It bears no likeness ~ "「それは、本当のあなた自身とまったく似ても似つかない」。実相的な本当のあなた自身とは、あなたが神によって創造された神の子であるということ。幻想世界で生きるあなたは、神の子である本当のあなた自身と似ても似つかない。それに気付くこともない。



It is an idol, made to take the place of your reality as Son of God. 

  • idol [áidl] : 「偶像、崇拝の対象、虚像、幻想」
  • take the place of : 「〜の代わりをする、〜に取って代わる」

❖ "It is an idol ~ "「(あなたが形成した)自己概念は、偶像であり、」"made to take ~ "「神の子としてのあなたの実存に置き換えて作られたものなのだ」。この世界で生きるあなたは偽りのあなたであって、いわば着ぐるみを着た偶像である。偶像の親玉はエゴであるから、あなたは、エゴに迎合するように自分を作りかえた偶像である。



The concept of the self the world would teach is not the thing that it appears to be. 

  • teach [tíːtʃ] : 「〜を教える、指導する」
  • appear [əpíər] : 「〜のように見える、〜と思われる」

❖ "The concept of ~ "意訳する、「この世界が教える自己概念は、それらしく見えるものとは異なる」。この世界が教えるあなたの自己概念とは、言い換えれば、エゴがあなたに教えるあなた自身のことであって、エゴの思考システムに毒されたあなたは表面的な見掛け通りの姿ではない。非常に複雑で巧妙な自己を形成する。この世界は二元論世界であって、すべての概念は二つの対立概念に二分化され、その二つの力のせめぎ合いによってダイナミックに変化流動する。あなた自身の自己概念も例外ではなく、例えば、あなたの自己概念は善と悪の二極に分離し、右に左に変化流動するのである。美と醜の間を行き来し、生への憧れと死への憧れが交錯し続ける。愛と憎悪を合わせ持つ自分を見ることになる。「それらしく見える」善良なあなたは、実は、悪意を隠し持ったくせ者かもしれない。



For it is made to serve two purposes, but one of which the mind can recognize. 

  • serve [sə́ːrv] : 「〜に仕える、〜に役立つ」
  • recognize [rékəɡnàiz] : 「〜を認識する、認める、受け入れる」

❖ "For it is made ~ "「なぜなら、自己概念は、二つの目的に仕えるように作られるからだ」。二極化した価値観の両者に都合よく振る舞うように自己を形成するのである。"but one of which ~ "「しかしその一方だけを、心は受け入れることが出来る」。心は実相世界の存在であり、一元論世界の価値観をもつ。二極化しないのだ。したがって、心は、善は受け入れるが悪は受け入れることはない。美は存在するが、心にとって醜は存在しない。心には、愛という概念はあるが、憎悪という概念はない。心は生を生きるが、死することはない。



The first presents the face of innocence, the aspect acted on. It is this face that smiles and charms and even seems to love. 

  • present [préznt] : 「示す、提示する、伝える、述べる」
  • innocence [ínəsəns] : 「無罪、潔白、無邪気、無垢、純潔」
  • aspect [ǽspekt] : 「様子、外見、顔つき、姿、表情、局面、状況、側面」
  • act on : 「〜に従って行動する」
  • smile [smáil] : 「ほほ笑む、微笑する」
  • charm [tʃάːrm] : 「魅力的である」

❖ "The first presents ~ "「第一の自己は、無邪気な顔を表し、行動によって示すという側面をもつ」。エゴの思考システムによって二分化されたあなたの自己のうち、例えば人を愛すという側面は、見るからに無邪気で温厚な表情を見せ、それを行動で表す。"It is this face ~ "「微笑みかけ、魅力的で、愛しているかにさえ見える顔は、この第一の自己である」。表面的にはそう見えるが、その奥には憎悪という感情が隠されている。つまり、あなたがエゴの思考システムに従って自己を形成している限り、あなたがどんなに善を実行しようとも、その影には常に悪が潜んでおり、あなたは『偽善』というワナから逃れることは出来ないのだ。



It searches for companions and it looks, at times with pity, on the suffering, and sometimes offers solace. It believes that it is good within an evil world.

  • search [sə́ːrtʃ] : 「探る、うかがう、探す」
  • companion [kəmpǽnjən] : 「仲間、友、連れ」
  • at times : 「時々、折々、時たま、時には」
  • pity [píti] : 「哀れみ、かわいそうなこと、同情」
  • suffering [sʌ́fəriŋ] : 「苦しみ、苦痛、悩み」
  • offer [ɔ́fər] : 「差し出す、捧げる、提供する」
  • solace [sάləs] : 「慰め、安堵、癒やし」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • within [wiðín] : 「〜の中で、〜の内側で」
  • evil [íːvəl] : 「不道徳な、よこしまな、邪悪な、悪意ある」

❖ "It searches for ~ "「第一の自己は、愛する対象(連れ)を求め、」"and it looks ~ "「時には哀れみをもって、苦しむ者に目を向け、」"and sometimes ~ "「時には慰めを差し出す」。まさに、偽善を堂々と提示するのだ。"It believes that ~ "「第一の自己は、この邪悪な世界にあっては、慰めは良いことだと信じているのである」。この苦と痛みの世界にあっては、他者を非情に扱うよりは、同情をもって接した方がずっと良いと信じている。もちろん、これは誤った信念ではない。しかし、実相的な真実に照らし合わせてみると、偽善であることは明白である。なぜなら、悪より善を成した方が価値があるだろうと、二極化した二つの概念を理性で判断しているからだ。したがって、あなたが同情をもって接した他者が、たとえばあなたを裏切るようなことをしでかせば、あなたの同情は簡単に憎しみに変わってしまうのである。あなたは、その時々の判断によって善と悪を選んでいるだけであって、真実の善を求めているわけではない。エゴに支配された心ではあるが、本当の真善美を求める心の一部が失われたわけではないので、その心の一部を、あたかもなだめるかのように、エゴの思考システムは、あなたに善悪の判断を許し、あなたに偽善を行う自由を与えている、というわけである。エゴがいかに頭の良い、巧妙な策士であるかが理解出来よう。
 
 
 



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