A Course in Miracles
Text - Chapter 31
The Final Vision
最終ヴィジョン
1. The Simplicity of Salvation
救いの容易さ
- simple [símpl] : 「易しい、難しくない、質素な、地味な、単純な」
- salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
- true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の、実際通り」
❖ "How simple is ~ "「救いの、何と容易なことか」。"All it says is what ~ "「救いが語っていることのすべては、真実でなかったものは今も真実ではなく、決して真実になることはない、ということである」。救いは実相的なものであり、変化流動することなく、永遠に不変である。言い換えれば、すでにそこにあり、我々はそれを追体験するだけでいい。実に簡単なことだ。救いは実相的な真実であり永遠不変であるから、かつて真実でなかった幻想が実相的真実に変身することは決してない。
The impossible has not occurred, and can have no effects. And that is all.
- impossible [impάsəbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない」
- occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる、現れる」
- effect [ifékt] : 「結果、影響、効果、効き目、効力」
❖ "The impossible has ~ "「不可能であるものが、かつて起きた例(ためし)はないし、結果を持つことも不可能だ」。"The impossible"「不可能であるもの」とは、夢が現実化すること、あるいは幻想が実相化するという意味合い。"And that is ~ "「ただそれだけだ」。不可能なことは起こり得ない、それだけのことだ。
Can this be hard to learn by anyone who wants it to be true?
- hard [hάːrd] : 「難しい、困難な、つらい」
- learn [lə́ːrn] : 「〜を学ぶ、〜に精通する、分かる、知る」
❖ "Can this be hard to ~ "「真実ではないことが真実になって欲しいと願う者にとって、これを学ぶことは困難であろうか」。幻想を実相にしたいと願う者にとって、それは原理的に不可能なことなのだと学ぶことは難しいことだろうか。難しいと思い込めば難しい。思い込みがなくなれば、それは実に容易なことである。
Only unwillingness to learn it could make such an easy lesson difficult.
- unwillingness [ʌnwíliŋnis] : 「気が進まないこと、不本意」
- easy [íːzi] : 「たやすい、容易な、困難がない」
- difficult [dífikʌ̀lt] : 「困難な、厳しい、苦しい、つらい」
❖ "Only unwillingness to ~ "「それを学ぼうとしない気持ちだけが、いかにも簡単な学びを難しくしているのだ」。夢を現実化したいと望み、それにこだわって不可能性を否定し続けることが、学びを困難にしている。不可能なことは起こり得ないという簡単な原理が、いつまでも分からないのだ。
How hard is it to see that what is false can not be true, and what is true can not be false?
- false [fɔ́ːls] : 「正しくない、誤った、うその、虚偽の」
❖ "How hard is it to see ~ "「嘘が真実になり得ず、本当のことが嘘になり得ないことを理解することは、それほど難しいだろうか」。幻想に埋没している者だけにとって、それは困難である。
You can no longer say that you perceive no differences in false and true.
- no longer : 「もはや〜でない」
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
- difference [dífərəns] : 「相違点、異なる部分、特異点」
❖ "You can no longer say ~ "「あなたは、嘘と真実の違いを知覚出来ないなどと言うことは、もはや出来ない」。ACIMを学び、幻想と実相の違いを知ったあなたには、嘘と真実の違いが分からないなどと、もはや言えまい。
You have been told exactly how to tell one from the other, and just what to do if you become confused.
- told [tóuld] : 「tellの過去・過去分詞形」
- exactly [iɡzǽktli] : 「正確に、厳密に、ぴったり、きっちり」
- become [bikʌ́m] : 「〜になる」
- confused [kənfjúːzd] : 「困惑した、混乱した、複雑な気分で」
❖ "You have been told exactly ~ "「あなたは、どうやって真実を嘘から区別するか、正確に教えてもらっているし、」"just what to do if you ~ "「もし混乱したら、何をすべきか教えてもらっている」。真実と虚偽のと区別の仕方は、一つは、それが永遠不変であるか、変化流動するかどうか、その違いを見ればいい。混乱したなら、自分で判断することを中止して、真偽の判断をホーリー・スピリットに委ねればいい。
Why, then, do you persist in learning not such simple things?
- persist [pərsíst] : 「しつこく主張する、言い張る、貫き通す」
- persist in : 「〜に固執する」
❖ "Why, then, do you ~ "「ならば、どうしてあなたは、そんな簡単なことを学ぶまいと言い張るのか」。あなたが拒んでいるというより、あなたの頭脳的な理性を支配しているエゴがそれを拒んでいる、と言った方がいいだろう。あなたの心の大半を占領しているエゴが、必死に抵抗しているのだ。もちろん、エゴの敵は、あなたの心の中の最も純粋で神聖な部分に住んでいるホーリー・スピリットである。
2. There is a reason. But confuse it not with difficulty in the simple things salvation asks you learn.
- reason [ríːzn] : 「理由、動機、原因、根拠」
- confuse [kənfjúːz] : 「混同する、混乱させる、困惑させる」
- confuse A with B : 「AをBと間違える」
- difficulty [dífikʌ̀lti] : 「困難、難事、難儀、面倒なこと」
- salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
❖ "There is ~ "「(そこには、)理由がある」。簡単な真実を学ぶことを拒んでいるあなたには、あなたなりの理由があろう。"But confuse it not ~ "「しかし、救いがあなたに学ばせようとしている簡単なことについての困難さと、その理由を混同してはいけない」。つまり、簡単な真実を学ぶことを拒んでいる理由は、それを学ぶことが困難だからというわけではない、ということ。あなたが学びを拒んでいる理由は、困難であることと無関係だ。それが同じだと混同してはいけない。
It teaches but the very obvious. It merely goes from one apparent lesson to the next, in easy steps that lead you gently from one to another, with no strain at all.
- teach [tíːtʃ] : 「〜を教える、指導する、学ばせる、悟らせる」
- obvious [άbviəs] : 「明らかな、疑う余地のない」
- merely [míərli] : 「ただ単に、単に」
- apparent [əpǽrənt] : 「容易に見える、明らかな、明白な」
- easy [íːzi] : 「たやすい、容易な、困難がない」
- lead [líːd] : 「導く、案内する、先導する」
- gently [dʒéntli] : 「親切に、静かに、優しく、穏やかに」
- another [ənʌ́ðər] : 「もう一つ、もう一人」
- strain [stréin] : 「緊張、負担、重圧、試練」
- at all : 「全く〜ない、全然〜ない」
❖ "It teaches but ~ "「救いは、非常に明白なことを教えているだけだ」。真実は常に、非常に明白で、単純である。"It merely goes from ~ "「救いはただ、一つの明白なレッスンから次のレッスンへ進んでいく」。"in easy steps ~ "「それは、あなたを優しく一つのレッスンから他のレッスンへ導いてくれる容易なステップである」。"with no strain ~ "「重圧はまったくない」。幻想世界から実相世界へ救われるためのレッスンは、まず初めに、知覚の不確実性を教える。目で見てそこにあると信じることは不確実であり、知覚のトリックに騙されてはいけないと教える。次のステップでは、真実は永遠不変であることを教える。逆に、変化流動するものは真実とはかけ離れた幻想であると教える。したがって、知覚がその存在を信じているこの世界は、実は幻想であると教えるのだ。次のステップは、幻想から目覚めるために、その幻想と戦ってはいけないと教える。夢と戦っても夢は夢に過ぎず、ありもしないものと戦っても意味はない。幻想と戦うのではなく、幻想を幻想と認めて、それを受け流してしまえと教えるのだ。それが、幻想を赦すことである。ただし、このステップは一人で悪戦苦闘する必要はなく、ホーリー・スピリットの手助けを求めよ、と教える。判断を中断し、その判断をホーリー・スピリットに委ねて、気軽にホーリー・スピリットの導きに従えばいい。と、まあ、簡単に言えば、こういうことになる。ホーリー・スピリットが導いてくれる救いのレッスンは、重圧を課すことなく、優しく、そして、簡単なことなのだ。
This cannot be confusing, yet you are confused. For somehow you believe that what is totally confused is easier to learn and understand.
- confusing [kənfjúːziŋ] : 「混乱させるような、分かりにくい、入り組んでいる」
- somehow [sʌ́mhàu] : 「どういうわけか、どうしたものか」
- believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する」
- totally [tóutəli] : 「とても、本当に、全く、完全に」
- understand [ʌ̀ndərstǽnd] : 「理解する、分かる、把握する」
❖ "This cannot be ~ "「こんなことは、混乱させるようなものではないが、あなたは混乱している」。簡単な真実であるがゆえに、かえってあなたは混乱している。"For somehow you believe ~ "「なぜなら、どうしたわけか、あなたは、完全に混乱しているものほど、学んだり理解したりし安いと信じているからだ」。真実は謎めいて理解しがたいと信じているから、本当の単純な真実を理解出来ないのだ。難しい謎解きと、苦しい学問修業によって、やっと真実が把握出来るものだと思い込んでいるのである。
What you have taught yourself is such a giant learning feat it is indeed incredible.
- taught [tɔ́ːt] : 「teachの過去・過去分詞形」
- giant [dʒáiənt] : 「巨大な」
- feat [fíːt] : 「技巧、技能、妙技、業績」
- indeed [indíːd] : 「実に、本当に、確かに、いかにも」
- incredible [inkrédəbl] : 「信じられない、信じ難い、信用できない」
❖ "What you have taught ~ "「あなたがあなた自身に教えてきたことは、あまりにも大きな学びの業績であるので、まったくもって信じがたいほどだ」。あなたがこの幻想世界で真実を求め、苦学し、真実の謎を身を削ってまでも解き明かそうとしてきことは、驚愕に値する。哲学、科学、宗教、等々の分野において、大きな学びの業績を上げてきたことは、驚きである。しかし、それは本当に、実相的な真実に近づく学びであっただろうか?
But you accomplished it because you wanted to, and did not pause in diligence to judge it hard to learn or too complex to grasp.
- accomplish [əkάmpliʃ] : 「成し遂げる、達成する、果たす、成就する」
- pause [pɔ́ːz] : 「中止する、ためらう、休止する」
- diligence [dílidʒəns] : 「勤勉、不断の努力、熱心さ」
- judge [dʒʌ́dʒ] : 「判断する、〜だと思う」
- hard [hάːrd] : 「難しい、困難な、つらい」
- complex [kəmpléks] : 「複雑な、複合の、込み入った」
- grasp [ɡrǽsp] : 「把握する、理解する」
❖ "But you accomplished ~ "「しかし、あなたは、〜であったから、学びの偉業を達成した」。もちろん、幻想的な偉業を達成したに過ぎないのだが・・・。"because you wanted ~ "「あなたはそうすることを望んだのであり、真実は学び難く、複雑過ぎて把握出来ないと判断したために、勤勉さを中断することがなかったから、」あなたは、学びの偉業を達成した。確かに、人類の学びの歴史を見れば、真理追求の旅は、まさに勤勉さに裏打ちされた偉業だと言えよう。ACIMは、それをけなしているのではない。その努力を認めた上で、しかし、方向が違ったのだと言っているのだ。幻想世界で幻想の真実を追究したところで、本当の実相的な真実を掴むことは不可能なのだと言っているのだ。この点を誤解してはいけない。