V. The Only Purpose
ただ一つの目的
1. The real world is the state of mind in which the only purpose of the world is seen to be forgiveness.
- real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
- state [stéit] : 「状態、形勢、情勢、状況」
- purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
- seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
- forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦、寛容」
❖ "The real world is ~ "「実相の世界とは、この世界における唯一の目的が赦しであると見なされる心の状態のことである」。この世界に生まれてきた目的は、この世界が幻想であって、その幻想性をしっかり認識し、受け入れ受け流して赦することである。赦すことで幻想を消滅させ、実相世界に目覚めることなのだ。あなたの心がそのことを知ったとき、あなたの心は実相的になったのであり、その実相的な心の延長線上に実相世界は存在する。
Fear is not its goal, for the escape from guilt becomes its aim.
- fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
- goal [góul] : 「目標、目的地、目的、目指すもの」
- escape [iskéip] : 「逃亡、脱出、逃避、回避」
- guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
- become [bikʌ́m] : 「〜になる」
- aim [éim] : 「的、狙い、目標、目的、照準、見当」
❖ "Fear is not its ~ "「恐れは、世界の目的ではない」。この世界に生まれてきた目的は、この世界で恐れを抱いて生きることではない。もちろん、罪の意識を抱いて生きることでもない。"for the escape from ~ "「なぜなら、罪の意識から逃れることが、この世界の目的になったからだ」。恐れも罪の意識も幻想である。その幻想を赦して消滅させることで、恐れも罪の意識も消える。それがこの世界に生きる目的である。
The value of forgiveness is perceived and takes the place of idols, which are sought no longer, for their "gifts" are not held dear.
- value [vǽljuː] : 「価値、値打ち、真価、有用性、重要性」
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
- take the place of : 「〜の代わりをする、〜に取って代わる」
- idol [áidl] : 「アイドル、偶像、崇拝される人、神像」
- sought [sɔ́ːt] : 「seek の過去・過去分詞形」
- seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
- no longer : 「もはや〜でない」
- gift [gíft] : 「贈り物、プレゼント」
- held [héld] : 「hold の過去形」
- dear [díər] : 「愛情こめて, やさしく」
- hold dear : 「大切にする」
❖ "The value of forgiveness ~ "「赦しの価値は知覚され、偶像にとって代わる」。赦しは幻想を消滅させ、真実を開示してくれると知ることが出来るようになり、世俗的な期待を裏切る偶像は必要とされなくなる。"which are sought ~ "「偶像の与える『贈り物』は大切にされることはなくなるので、偶像はもはや求められなくなる」。たとえば、物質的豊かさが心の平和を与えてくれるはずだと期待して、金という偶像を崇拝しても、偶像はその期待を叶えてくれることはない。偶像は期待を裏切り、金に対する渇きや更なる欲を、贈り物として与えてくれるだけだ。そんな偶像を、これ以上求める気にはなれない。
No rules are idly set, and no demands are made of anyone or anything to twist and fit into the dream of fear.
- rule [rúːl] : 「規則、ルール、規定、法則、規範」
- idly [áidli] : 「何もしないで、怠けて、無駄に、無益に」
- set [sét] : 「定める、配置する、設定する」
- demand [dimǽnd] : 「要求、必要、要望、ねだり」
- twist [twíst] : 「ひねる、ねじる、巻く、曲げる」
- fit [fít] : 「適応させる」
- fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
❖ "No rules are ~ "「どんなルールも、無益に設定されることはない」。"and no demands are ~ "「ねじ曲げて、恐れの夢にフィットさせるような要求は、誰にも、何にも、なされることはない」。偶像が要求することは、あなたの正しい心をねじ曲げ、あなたが苦と痛みの夢に引きずり込まれることである。しかし、幻想から目覚めれば、もはや、そんな要求を突きつける者はいない。無益なルールを強いる者もいなくなる。
Instead, there is a wish to understand all things created as they really are.
- instead [instéd] : 「代わりに、それよりむしろ、そうしないで」
- wish [wíʃ] : 「願い、望みの物、願望、希望」
- understand [ʌ̀ndərstǽnd] : 「理解する、了解する、納得する、分かる」
- create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
- really [ríəli] : 「実際には、ほんとうは、確かに、本当に」
❖ "Instead, there is ~ "「その代わり、創造されたものすべてを、実相そのままに理解出来る望みがある」。神が創造したものを、幻想という眼鏡を通さずに、ありのままに、真実の姿として知覚し、理解出来る希望が生まれる。
And it is recognized that all things must be first forgiven, and then understood.
- recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
- first [fə́ːrst] : 「初めて、最初に」
- forgiven [fərɡívn] : 「forgive の過去分詞」
- forgive [fərɡív] : 「許す、容赦する、勘弁する」
- understood [ʌ̀ndərstúd] : 「understand の過去・過去分詞形」
❖ "And it is recognized ~ "「そして、あらゆるものは、まず最初に赦され、その後理解されなくてはならないと認識される」。幻想によって曖昧にされたものはすべて、まずはその幻想性を認識し、受け入れ受け流して赦し、幻想を消滅させた後で、本当の姿はどうなのか、それを理解するという道筋、あるいはプロセスが正しいのだと認識することが出来るようになる。
2. Here, it is thought that understanding is acquired by attack.
- thought [θɔ́ːt] : 「think の過去・過去分詞形」
- understanding [ʌ̀ndərstǽndiŋ] : 「理解、理解力、知力、把握、納得」
- acquire [əkwáiər] : 「手に入れる、獲得する、取得する」
- attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
❖ "Here, it is thought that ~ "「この幻想世界では、理解は攻撃によって獲得するものだと思われている」。この幻想世界では、Aを理解するにはアンチAを設定し、アンチAによってAを攻撃し、二つを戦わせて、弁証法的にAを理解する、という方法をとる。この幻想世界は二元論世界であるから、たとえば愛を考えるときは、必ず対立概念である憎悪を引き合いに出して、愛と憎悪を戦わせて、愛を理解しようとするのである。
There, it is clear that by attack is understanding lost. The folly of pursuing guilt as goal is fully recognized.
- clear [klíər] : 「明らかな、明瞭な、はっきりした」
- lost [lɔ́st] : 「lose の過去・過去分詞形」
- lose [lúːz] : 「〜を失う、見失う、喪失する、なくす」
- folly [fɑ́li] : 「愚かなこと、愚劣、愚かさ、愚行」
- pursue [pərsúː] : 「〜を追跡する、〜を追いかける」
- fully [fúli] : 「十分に、完全に、全く、すっかり」
❖ "There, it is clear that ~ "「向こうの実相世界では、攻撃によって理解は失われることは明白なのだ」。実相世界にあっては、対極概念がないから、AとアンチAを戦わせて理解するなどという愚行は存在しない。厳密な意味で、理解などいうことは、実相世界では必要ないのだ。あえて理解という言葉を使うなら、実相世界では、叡智(knowledge)による理解がすべてである。叡智による直覚的、全的把握が、理解のすべてである。"The folly of pursuing guilt ~ "「目的として罪を追求することの愚かさは、完全に認識されている」。"pursuing guilt as goal"「目的として罪を追求すること」とは、幻想に埋没して、結果として罪の意識に嘖まれてしまうということ。罪の意識に嘖まれるとは、生きることが苦と痛みの連続であると知覚してしまうことである。この世界で生きることが苦と痛みの連続であり、まさに生き地獄である理由は、自分に罪があり、それゆえに神が罰として苦と痛みを与えているに違いないと思ってしまうのだ。そんな認識は、いかにも愚かである。
And idols are not wanted there, for guilt is understood as the sole cause of pain in any form.
- sole [sóul] : 「唯一の、たった一つの」
- cause [kɔ́ːz] : 「原因、要因」
- pain [péin] : 「痛み、痛覚、疼痛」
- form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造」
- in any form : 「いかなる種類のものであれ」
❖ "And idols are not ~ "「実相世界では、偶像は求められない」。実相世界で、偶像という幻想が必要とされるわけがない。"for guilt is understood ~ "「なぜなら、罪の意識は、いかなる種類の痛みであっても、その唯一の原因であると理解されているからだ」。罪の意識とは幻想である。だから、罪を感じているうちは幻想から抜け出さない。幻想から抜け出せないから、生きることが苦であり痛みであると感じてしまうのだ。
No one is tempted by its vain appeal, for suffering and death have been perceived as things not wanted and not striven for.
- tempt [témpt] : 「〜を誘惑する、を唆す、〜する気にさせる」
- vain [véin] : 「無駄な、無益な、無価値な、空虚な」
- appeal [əpíːl] : 「懇願、魅力」
- suffering [sʌ́fəriŋ] : 「苦しむこと、苦しみ、苦痛、苦難、苦悩」
- death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
- striven [strívn] : 「strive の過去分詞形」
- strive [stráiv] : 「努力する、努める」
- strive for : 「〜のために懸命に努力する、〜を得ようと努力する」
❖ "No one is tempted by ~ "「もはや誰も、偶像の無益な魅力に誘惑されることはない」。実相に目覚めた者は誰でも、もはやこの幻想世界で、偶像が餌として投げかける地位や名誉や金や快楽などの無益なものに魅力を感じることはなくなる。"for suffering and ~ "「なぜなら、苦痛と死は、もはや求められるものでも、努力して得ようとするものでもないと知覚されたからだ」。偶像が餌として投げかける地位や名誉や金や快楽などは、結局、苦と痛みを生み出す結果に終わることが分かったからだ。
The possibility of freedom has been grasped and welcomed, and the means by which it can be gained can now be understood.
- possibility [pɑ̀səbíləti] : 「可能性、見込み、将来性、実現性」
- freedom [fríːdəm] : 「自由、解放、自主、独立」
- grasp [grǽsp] : 「〜を握る、つかむ」
- welcome [wélkəm] : 「温かく迎え入れる、歓迎する、喜んで受け入れる」
- means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
- gain [géin] : 「得る、獲得する」
❖ "The possibility of freedom ~ "「自由解放の可能性は、しっかり把握され、暖かく迎え入れられた」。苦と痛みの幻想世界から解放されて、実相世界で自由を獲得出来るという望みが信じられるに至った。"and the means ~ "「そして、自由解放を得るための手段が、今や理解されたのだ」。その手段とは、この世界の幻想性をはっきり認識し、その幻想を赦すこと。幻想は赦されることで消滅し、したがって、幻想世界から解放されるのだ。
The world becomes a place of hope, because its only purpose is to be a place where hope of happiness can be fulfilled.
- become [bikʌ́m] : 「〜になる」
- place [pléis] : 「場所、個所、住所、席」
- hope [hóup] : 「希望、望み」
- happiness [hǽpinəs] : 「幸福、喜び、幸せ」
- fulfill [fulfíl] : 「果たす、全うする、かなえる、満たす」
❖ "The world becomes ~ "「世界は、希望の場所となる」。"because its only purpose ~ "「なぜなら、この世界がもつ唯一の目的は、幸せへの望みが叶えられる可能性のある場所となることだからだ」。この幻想世界がもつ目的があるとすれば、それは唯一、自己消滅することなのだ。幻想が赦されて消滅し、そこに解放と自由の幸せが訪れるのだ。
And no one stands outside this hope, because the world has been united in belief the purpose of the world is one which all must share, if hope be more than just a dream.
- stand [stǽnd] : 「立っている、立ち上がる、立つ」
- outside [áutsáid] : 「〜の外に、〜の外側に」
- unite [junáit] : 「〜を結合させる、一つにする、結び付ける」
- belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
- purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
- share [ʃέər] : 「〜を分ける、分かち合う、共有する、共用する」
- more than : 「〜だけではない、単に〜にとどまらない」
❖ "And no one stands ~ "「誰も、この望みの外に立っている者はいない」。誰にでも、幻想を消滅させ、自由と解放の幸せを得る可能性がある。誰もがそれを望んでいる。"because the world ~ "「なぜなら、世界は、〜を信じて、一つに結びついたからだ」。"in belief the purpose ~ "「もし、望みが単なる夢以上のものであるなら、この世界の目的は、みんなが分かち合わねばならない目的であると信じて、」世界は、一つに結びついたからだ。"if hope be more ~ "ここの"be"は"should be"のことで、「もし、望みが単なる夢以上のものであらねばならないのなら、」「もし、望みが単なる夢以上のものであるに違いないのなら、」といったニュアンスを含む。もちろん、そうであるに違いないし、そうであるようにしなくてはいけないのだ。苦と痛みの夢は終わった。今から始まる真実の夢は、望みに満ちたものであるに違いない。世界は、その望みを信じて統一され、誰一人、その目的から除外されることはない。