●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
●  Workbook精読http://acimworkshop-workbook.blogspot.jp です。
●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-23.IV.5:1 ~ T-23.IV.6:7

5. Be lifted up, and from a higher place look down upon it. From there will your perspective be quite different.

  • lift [líft] up : 「〜を持ち上げる」
  • higher [háiər] : 「一層高い、高等な、より高い水準の」
  • place [pléis] : 「場所、個所、立場、境遇、環境、地域、土地」
  • look down upon : 「〜を俯瞰する、〜を見おろす」
  • perspective [pərspéktiv] : 「展望、物の見方、考え方、観点、視野」
  • quite [kwáit] : 「すっかり、全く、完全に、かなり、とても、非常に」
  • different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
❖ 戦場の上へと"Be lifted up, and ~ "「高く持ち上げられ、その高所から戦場を見なさい」。戦場とは、この幻想世界のこと。"From there will ~ "「高所から見れば、あなたの見るものは、まったく異なって見えるだろう」。幻想世界を鳥瞰すれば、戦場の幻想性がはっきりわかる。



Here in the midst of it, it does seem real. Here you have chosen to be part of it.
  • in the midst [mídst] of : 「〜の真ん中で、〜のただ中で」
  • real [ríəl] : 「現実の、実際の、本物の、実在する」
  • chosen [tʃóuzn] : 「choose の過去分詞形」
  • choose [tʃúːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
  • part [pάːrt] : 「一部、部分、部品」
❖ "Here in the midst ~ "「この戦場のただ中から見れば、戦場は実在しているように見える」。"Here you have ~ "「ここ(戦場)にあっては、あなたは戦いの一部になることを、あなたが選んだのだ」。あなたは幻想の戦いを選び、その戦いの一部となって破壊し殺戮することを選んだのだ。だから、あなたの目にはこの戦いが実にリアルに見えるのである。



Here murder is your choice. Yet from above, the choice is miracles instead of murder.
  • murder[mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • choice [tʃɔ́is] : 「選択、選択肢、選ぶこと」
  • from above [əbʌ́v] : 「上から、上方から、高所から、天から」
  • miracle [mírəkl] : 「奇跡、驚くべきこと、奇跡的な出来事」
  • instead [instéd] of : 〜の代わりに
❖ "Here murder is ~ "「この戦場では、殺害はあなたの選択である」。"Yet from above ~ "「しかし、高所から見れば、選択とは、殺戮ではなく奇跡なのである」。戦場である幻想世界にあっては、殺戮するか殺戮されるか(食うか食われるか)の選択しか出来なかったが、幻想世界の上空から見れば、あなたが選び取れるものは、その戦場に奇跡をもたらすかどうかの選択ということになる。高所(実相)には、奇跡はあるが殺戮は存在しないからだ。ところで、戦場に奇跡をもたらすとは、その戦いが単なる幻想であって、無意味であると認識し、戦いを消し去ること。



And the perspective coming from this choice shows you the battle is not real, and easily escaped.
  • perspective [pərspéktiv] : 「展望、物の見方、考え方、観点、視野」
  • show [ʃóu] : 「示す、見せる、表す」
  • battle [bǽtl] : 「戦い、戦闘」
  • real [ríəl] : 「現実の、実際の、本物の、実在する」
  • easily [íːzili] : 「容易に、たやすく、苦もなく、あっけなく」
  • escape [iskéip] : 「逃げる、ずらかる、脱出する、抜ける」
❖ "And the perspective ~ "「この奇跡を選ぶという選択から、あなたに見えてくることは、戦いは実在ではないということだ」。"and easily ~ "「そして、容易に、戦いから脱出出来るということである」。高所から見れば、戦いは現実ではなく、単なる幻想だと認識出来るのである。幻想だから、戦いから逃れることも簡単だ。目を覚ませばいいだけの話しだから。目を覚ませば、戦いは消滅している。



Bodies may battle, but the clash of forms is meaningless. And it is over when you realize it never was begun.
  • battle [bǽtl] : 「〜と戦う」
  • clash [klǽʃ] : 「戦闘、衝突」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、体つき、外見」
  • meaningless [míːniŋlis] : 「味のない、無益な、価値のない、無意味な、無価値の」
  • over [óuvər] : 「終わって、終了して、完了して」
  • realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、悟る、自覚する、実感する」
  • begun [bigʌ́n] : 「begin の過去分詞形」
  • begin [bigín] : 「始まる、勃発する」
❖ "Bodies may ~ "「肉体は戦うが、形と形の戦闘は意味がない」。戦場で戦うものは、形としての肉体同士、つまり、幻想の肉体と幻想の肉体の戦いである。幻想と幻想が衝突し、戦闘し合って、はたしてそこに意味はあるか。"And it is over ~ "「そして、あなたが、戦いなど決して始まってはいないのだと気が付いたなら、戦いは終わってしまうのだ」。戦いは夢であり、存在しないと宣言すれば、戦いは消滅する。幻想は消え去るのみ、である。



How can a battle be perceived as nothingness when you engage in it?
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • nothingness [nʌ́θiŋnis] : 「存在しないこと、無、非実在、無価値」
  • engage [engéidʒ] : 「従事する、携わる、関与する、交戦する」
  • engage in : 「〜に従事する、〜に携わる」
❖ "How can a battle ~ "「あなたが戦っている最中なら、どうして、戦闘が意味ないものだと知覚出来るだろうか」。戦場の上空から見たときに、戦いは幻想で意味がないと分かるのであって、戦闘のただ中にあっては、それは認識出来るものではない。だからこそ、今、その戦いを止めてしまいなさい。止めて、高見に上がって、その戦場をよく見なさい、ということになる。



How can the truth of miracles be recognized if murder is your choice?
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • choice [tʃɔ́is] : 「選択、選択肢、選ぶこと」
❖ "How can the truth of ~ "「もし殺戮があなたの選択であるなら、どうして、奇跡の真実が認識され得るだろう」。破壊と殺戮という幻想を信じている限り、あなたには奇跡は起こせない。奇跡は実相世界の真実であって、幻想から離れ、実相に目覚めたものでない限り認識出来ないのだ。



6. When the temptation to attack rises to make your mind darkened and murderous, remember you can see the battle from above.
  • temptation [temptéiʃən] : 「誘惑、衝動、誘惑物」
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
  • rise [ráiz] : 「立ち上がる、起立する、起きる」
  • darken [dάːrkən] : 「〜を暗くする」
  • murderous [mə́ːrdərəs] : 「殺人の、殺意のある、残忍な」
  • remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
❖ "When the temptation to ~ "「攻撃したいという衝動が起きて、あなたの心を闇にし、殺意を抱くような時は、」"remember you can ~ "「あなたは戦闘を上空から見ることが出来るのだと、思い出しなさい」。破壊と殺戮という幻想に捕らわれそうなときは、心を上に保って、上空の実相世界から現実世界を見ることが出来るのだと思い出しなさい。



Even in forms you do not recognize, the signs you know. There is a stab of pain, a twinge of guilt, and above all, a loss of peace.
  • sign [sáin] : 「表れ、兆し、兆候、印」
  • stab [stǽb] : 「突き刺すこと、刺し傷、突き傷、刺すような痛み」
  • stab of pain : 「刺すような痛み」
  • twinge [twíndʒ] : 「ズキズキする痛み、うずき、苦痛」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
  • above all : 「中でも、とりわけ、何にもまして、何よりも」
  • loss [lɔ́s] : 「失うこと、紛失、損失、喪失」
  • peace [píːs] : 「平和、安らぎ、平穏、安心、安定」
❖ "Even in forms you ~ "「あなたが認識出来ない(戦いの)形であっても、その兆候は、あなたにもわかる」。表面上は偽物に見えない幻想の形もあろうが、それのもっているうさんくさい雰囲気で、それが嘘の幻想であると知ることが出来る。たとえば、"There is a stab ~ "「刺すような痛みを感じたり、罪のズキズキするうずきを感じたり、」"and above all, a loss ~ "「中でも、平和な心の喪失感を感じたときが、幻想の兆候である」。こんな生活は嘘だ、こんな命はまやかしだ、と、心に痛みやうずきを感じて、平和を失ったとき、あなたは幻想に捕らわれた自分を感じているのだ。



This you know well. When they occur leave not your place on high, but quickly choose a miracle instead of murder.
  • occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる、現れる」
  • leave [líːv] : 「〜から離れる、〜を出る、後にする、去る」
  • high [hái] : 「高い所、高所」
  • quickly [kwíkli] : 「速く、素早く」
  • choose [tʃúːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
  • instead of : 「〜の代わりに」
❖ "This you know ~ "「あなたは、こんな状態になることがよくあると知っている」。"When they occur ~ "「こんなことが起きたら、あなたが居るべき高所を離れてはいけない」。"but quickly choose ~ "「そして、すぐに、殺害の代わりに、奇跡を選択しなさい」。破壊と殺戮という幻想に足下をすくわれることなく、ヒーリングと奇跡の実相をしっかり選択しなさい。



And God Himself and all the lights of Heaven will gently lean to you, and hold you up.
  • gently [dʒéntli] : 「親切に、静かに、優しく、穏やかに」
  • lean [líːn] : 「傾く、体を曲げる、かがむ、もたれる、寄り掛かる」
  • hold up : 「持ち上げる、支える」
❖ "And God Himself and ~ "「神自身が、そして、天の王国の光のすべてが、優しくあなたに寄り添い、あなたを抱きかかえてくれるだろう」。抱きかかえて、あなたを高い場所に連れて行ってくれるのだ。あなたは、その高所から、幻想世界という戦場を鳥瞰すればいい。悪夢の世界のどんちゃん騒ぎがよく分かるだろう。



For you have chosen to remain where He would have you, and no illusion can attack the peace of God together with His Son.
  • chosen [tʃóuzn] : 「choose の過去分詞形」
  • remain [riméin] : 「とどまる、滞在する、残る、残存する」
  • illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
  • together [təɡéðər] : 「一緒に、同時に」
❖ "For you have chosen ~ "「なぜなら、神があなたに居て欲しいと思うところにあなたは居ることを選択したのであり、」"and no illusion can ~ "「神が神の子と共に居る場所を、どんな幻想も攻撃出来ないからだ」。神があなたに居て欲しいと望む場所とは、言うまでもなく、実相世界であり天の王国だ。その実相世界には、幻想の一かけらさえ、侵入することは出来ない。
 
 
 

T-23.IV.5:1 ~ T-23.IV.6:7

3. God does not share His function with a body. He gave the function to create unto His Son because it is His Own.

  • share [ʃέər] : 「〜を分ける、分かち合う、共有する、共用する」
  • function [fʌ́ŋkʃən] : 「職務、役割、機能、作用、働き、効用」
  • gave [géiv] : 「give の過去形」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
❖ "God does not share ~ "「神は、神のもつ機能を肉体と分かち合うことはない」。"His function"「神の機能」とは、創造性、愛や喜びを分かち合い拡張増大させること、等々のこと。これは実相的な活動であって、幻想の肉体がその機能を担うことは不可能だ。"He gave the function ~ "「神は、創造するという機能を神の子に与えた」。"because it is His ~ "「なぜなら、創造するという機能は、神自身のものだからである」。神は、神の子を創造し、神の属性のすべてを神の子に継承した。したがって、神の属性である創造性も、当然、神の子に継承したのだ。我々が創造性をもつことは、神の遺伝子を受け継いだ証拠だと言えるわけだ。



It is not sinful to believe the function of the Son is murder, but it is insanity.
  • sinful [sínfl] : 「罪深い、邪悪な」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • insanity [insǽnəti] : 「狂気、精神病、精神異常」
❖ "It is not sinful ~ "ここは"It ~ to ~ "の構文、「神の子の機能(の一つに)殺害というものがあると信じることは、(それ自体としては)罪深いことではない」。"but it is ~ "「しかし、それは狂気である」。神の子は、実相的な創造という機能を持つと同時に、幻想的な破壊、あるいは殺害するという機能も持つ。しかし、この破壊という能力は幻想世界においてのみ機能するものであって、実相世界の真実を破壊することは不可能だ。その破壊(殺害)という幻想的機能をもっていると信じることは、それ自体として罪なことではないが、殊更、信じた上でそれを使おうとすることは、明白な狂気の沙汰である。



What is the same can have no different function. Creation is the means for God's extension, and what is His must be His Son's as well.
  • same [séim] : 「同じ、同一の、変わらない」
  • different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
  • creation [kriéiʃən] : 「創造、創作、創作物、作品」
  • means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
  • extension [iksténʃən] : 「拡張、伸長、延長、伸展」
  • as well : 「同じに、同様にうまく」
❖ "What is the same ~ "「同じものとは、異なった機能(役割)を持つことは出来ない」。異なった機能や役割をもつなら、それは同じものではなく、異なったものだからだ。"Creation is the means ~ "「創造とは、神の拡張の方法であって、神のものであるものは、同時に、神の子のものであるに違いないのだ」。"God's extension"「神の拡張」とは、天の王国、実相世界の拡張である。神はすべてを包摂する存在(all-encompassing)であり、実相世界全体を包摂する存在が神である。その世界を統一する法が、神の法であり、その一つに、真実は分かち合われることで拡張増大するという原理があるのだ。したがって、「神の拡張」とは、真実の拡張であり、具体的には、創造性の拡張、愛の拡張、喜びの拡張、美の拡張、等々、と考えていい。視覚的に言うなら、あるいは詩的に言うなら、天の王国における光の拡張である。その一端を担うのが、神の子であり、視覚的に言うなら、光の子である。



Either the Father and the Son are murderers, or neither is. Life makes not death, creating like itself.
  • either [íːðər] A or B : 「AかそれともB」
  • murderer [mə́ːrdərər] : 「殺人者、人殺し、殺人事件の犯人」
  • neither [níːðər] : 「どちらも〜ない」
  • life [láif] : 「命、人命、生命、寿命」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
❖ "Either the Father and ~ "「父なる神か、神の子か、そのどちらかが殺害する者であり、両者が殺害者であることはない」。もちろん、神には、幻想的な破壊や殺害という概念はない。この狂気の概念を持ち合わせているのは、神の子のみであり、事実、この幻想世界において破壊、殺戮の限りを繰り返している。神は、決して、そして断じて、破壊、殺戮はしないのだ。したがって、旧約聖書に数々登場する、神による、堕落した世界の破壊行為は、ACIMの神とはまったく無関係の疑似神の仕業である。グノーシスの古文書によれば、破壊の神は、デミウルゴスと呼ばれる低級な神なのだそうだ。ところで、宇宙人飛行士説(Ancient Astronauts Theory)というものがあり、旧約聖書に数々登場する神の破壊行為は、実は、どこぞの星からUFOに乗ってやって来たエイリアンの仕業だそうだ。突飛な説に聞こえるだろうが、聖書の神が殺戮、破壊行為の限りを尽くすという説より、よっぽど理にかなっていると言えまいか。"Life makes ~ "「命は死を作り出すことはなく、命は命を作り出すのだ」。つまり、命そのものである神が、死をもたらすことはなく、神は常に命だけを創造するのである。本文には"like itself"「命に似たもの」とあるが、それは愛であり、喜びであり美であり、つまり、命ある真実の数々、という意味合いである。



4. The lovely light of your relationship is like the Love of God.
  • lovely [lʌ́vli] : 「愛らしい、かわいらしい、素晴らしい、すてきな」
  • light [láit] : 「光、光源、ライト、明かり」
  • relationship [riléiʃnʃìp] : 「関係、結び付き、かかわり合い、関連」
❖ "The lovely light of ~ "「あなたの関係性のもつ愛らしい光は、神の愛に似ている」。ここの"your relationship"「あなたの関係性」とは、この幻想世界でもつ特別な関係性(special relationship)、愛欲による関係性ではなく、実相的な、神聖な関係性(holy relationship)のことである。それは、神の愛に似ていると述べている。つまり、神の愛それ自体と等しいとは言えないが、実相的な真実の愛に非常に近い、という意味合いである。



It cannot yet assume the holy function God gave His Son, for your forgiveness of your brother is not complete as yet, and so it cannot be extended to all creation.
  • assume [əsjúːm] : 「引き受ける、担う、負う、肩代わりする」
  • holy [hóuli] : 「神聖な」
  • forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦、寛容」
  • complete [kəmplíːt] : 「完結した、完成した、完全な、全くの」
  • as yet : 「今のところは」
  • extend [iksténd] : 「広げる、伸ばす、拡張する、拡大する」
❖ "It cannot yet assume ~ "「あなたの神聖な関係性は、神が神の子に与えた神聖な役割を担うことが、まだ、出来ない」。"for your forgiveness of ~ "「なぜなら、あなたの同胞に対する赦しが、まだまだ、不完全だからだ」。"and so it cannot ~ "「したがって、あなたの赦しは、神が創造したもの全体に拡張されてはいないのだ」。あなたの神聖な関係性における赦しは、非常に限定的で、狭いのである。神の赦しは世界全体に広がり、拡張する赦しであって、あなたの赦しもそうなって欲しいという裏の意味合いがある。そのとき初めて、あなたの愛が神の愛と同等になるのだ。つまり、あなたの愛がキリストの愛になるのである。ところで、ACIMの"forgiveness"「赦し」は、我々が普段に使っている意味合いとは完全に異なる。ACIMの赦しは、他者が犯した罪を許してやるという意味ではなく、誰も罪を犯すことは不可能であり、罪を犯したかに見える、その罪は幻想であると認識することなのである。罪を幻想と認識し、受け流してしまうことが真の赦しである。なぜなら、神は罪を犯すことはなく、したがって、神の創造した神の子もまた、罪を犯すことは不可能だからである。実相世界には、罪という概念はないのだ。罪があるのは、この幻想世界だけであって、この世は深い眠りの夢に過ぎない。つまり、この世の罪は、すべて夢なのだ。



Each form of murder and attack that still attracts you and that you do not recognize for what it is, limits the healing and the miracles you have the power to extend to all.
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、現れ、種、種類」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • attract [ətrǽkt] : 「魅惑する、魅了する、引き込む、引き付ける」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
  • limit [límit] : 「限定する、制限する、制限をかける」
  • healing [híːliŋ] : 「治療、回復、治癒、癒やし」
  • miracle [mírəkl] : 「奇跡、驚くべきこと、奇跡的な出来事」
❖ "Each form of murder ~ "「まだあなたを魅了し、あなたが本当の意味を認識していない、様々な形をとる殺害や攻撃は、」"limits the healing and ~ "「ヒーリングや奇跡を制限してる」。"you have the power ~ "「あなたは、そのヒーリングや奇跡を、世界のすべてに拡張出来るパワーを有しているにも関わらず」。一言で言えば、あなたは攻撃や殺害という幻想にまだまだ捕らわれているために、ヒーリングや奇跡という実相的真実を実行するパワーを十分に発揮していない、ということ。



Yet does the Holy Spirit understand how to increase your little gifts and make them mighty.
  • understand [ʌ̀ndərstǽnd] : 「理解する、了解する、納得する、分かる」
  • how to : 「〜する方法、〜のやり方、〜の仕方」
  • increase [inkríːs] : 「〜を増やす、増大させる、増加させる」
  • gift [gíft] : 「贈り物、プレゼント、特別の能力、天賦の才」
  • mighty [máiti] : 「強力な、力のある、巨大な、重大な、多量の」
❖ "Yet does the Holy Spirit ~ "「しかし、ホーリー・スピリットは、あなたの小さな能力を増大させ、それを大きなものにするための方法を知っているのだ」。あなたの、ヒーリングや奇跡を起こすパワーはまだまだ小さいが(your little gifts)、ホーリー・スピリットはあなたを導いて、それを拡張増大させて、世界を救える力に育て上げる方法を知っている。つまり、あなたを幻想から完全に目覚めさせ、実相世界へと羽ばたかせる方法を、ホーリー・スピリットは知っている、ということ。ヒーリングや奇跡を起こすパワーを十分に発揮することが出来たとき、あなたはキリストになるのだ。その、キリストへの道を、ホーリー・スピリットは知っているのである。そして、あなたをその道に誘(いざな)っているのだ。



Also He understands how your relationship is raised above the battleground, in it no more.
  • raise [réiz] : 「上げる、つり上げる、もたらす」
  • above [əbʌ́v] : 「上側に、〜の上に」
  • battleground [bǽtlgràund] : 「戦場」
  • no more : 「もはや〜しない」
❖ "Also He understands how ~ "「ホーリー・スピリットはまた、どうすれば、あなたの関係性を、もはや戦場の中ではなく、戦場の上空に引き上げることが出来るか、知っている」。あなたの、この幻想世界における特別な関係性を、幻想世界(戦場:battleground)に留めおかずに、実相世界へと引き上げて、神聖な関係性に質転換させる方法を、ホーリー・スピリットは知っている。



This is your part; to realize that murder in any form is not your will. The overlooking of the battleground is now your purpose.
  • part [pάːrt] : 「担、役、役目、役割、一部、部分」
  • realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、悟る、自覚する、実感する」
  • in any form : 「いかなる種類のものであれ」
  • will [wíl] : 「意志、意欲、願望」
  • overlook [òuvərlúk] : 「見渡す、見渡せる、監視する、見過ごす、大目に見る」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
❖ "This is your ~ "「これが、あなたの役割である」。特別な関係性を神聖な関係性に質転換することが、あなたの、この幻想世界における役割だ。あなたがこの世に生まれてきた意味は、この役割を果たすことだと言っていい。"to realize that ~ "「いかなる形の殺害も、あなたの意思ではないと認識すること、」それがあなたの役割である。あなたの特別な関係性において、破壊、殺害を実行することは、実相的な真実の自分の意思ではなく、深い眠りの中にまどろみながらエゴに唆(そそのか)され続けている結果であって、ホーリー・スピリットの導きを受けて、その特別な関係性を神聖な関係性に質転換し、破壊と殺戮の悪夢から抜け出すことが、あなたのこの世における重要な役割である。この世に生まれ、生きている意味がそれなのだ。
 
 
 

T-23.IV.1:1 ~ T-23.IV.2:9

 
 

IV. Above the Battleground
戦場の上にて
 
 
 
1. Do not remain in conflict, for there is no war without attack. The fear of God is fear of life, and not of death.
  • remain [riméin] : 「依然として〜のままである、とどまる、滞在する、残る」
  • conflict [kɑ́nflikt] : 「摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争」
  • war [wɔ́ːr] : 「戦争、争い」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
  • life [láif] : 「人命、生命、寿命」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
❖ "Do not remain ~ "「コンフリクトの中に、居残ってはいけない」。戦場に留まってはいけない。"for there is no ~ "「なぜなら、攻撃の伴わない戦いはないのだから」。あなたの心に攻撃心がなければ、争いは発生することはなく、したがって、コンフリクトを起こすこともない。"The fear of God ~ "「神への恐れは、命への恐れであって、死の恐れではない」。短い文章であるが、非常に重要である。"fear of life"「命への恐れ」とあるが、"fear of love"「愛への恐れ」と考えれば、解釈しやすいだろう。なぜなら、実相世界では、命と愛の区別はほとんどないからだ。神は神の子を至上の愛をもって愛し、神の子もまた、心の奥底で神をこの上なく愛している。しかし、神の子が神から分離した後、神の子は、神の愛と自分の神への愛を封印し、ひたすら、愛という真実から目を逸らしてきたのだ。あたかも、神の愛を目の当たりにすることで、今夢見ている幻想のすべて、幻想世界のすべてが、崩壊し消えてしまうのではないかと、恐れているかのようである。分離を維持するためなのである。確かに、神の子の罪に対する神の罰を恐れる気持ちもあろうが、それ以上に、神の愛の現実を目の当たりにすることの方を恐れるのだ。神の愛によって、あるいは、神への愛によって、分離した自己を否定されてしまうような思いになるのである。もちろん、お気付きのように、この恐れを主導している実体は、神の子の心を支配するエゴである。したがって、神の愛を一番恐れているのは、実はエゴなのだ。エゴにとって、神と神の子の分離は、エゴの生命線であるからだ。



Yet He remains the only place of safety. In Him is no attack, and no illusion in any form stalks Heaven.
  • place [pléis] : 「場所、個所、住所」
  • safety [séifti] : 「安全、安全性、無事、無難なもの」
  • illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
  • in any form : 「いかなる種類のものであれ」
  • stalk [stɔ́ːk] : 「~に忍び寄る、~をこっそり追跡する」
❖ "Yet He remains ~ "「しかし、神は、安全な場所として、留まり続ける」。つまり、実相的な真実の愛と命として神は存在し続ける。永遠不変な真実こそが、一番安全なのだから。神こそが、神の子にとって、一番安全な場所なのだ。"In Him is ~ "「神の中に、攻撃性はない」。"and no illusion ~ "「また、天の王国へ忍び込もうとする、いかなる形の幻想も存在しない」。神の住む天の王国、実相世界は一元論世界であり、真実はその対極概念を持たない。愛はあるが、その対極に憎しみはない。平和はあるが、争いはない。まったく純粋な真実だけの存在する世界に神は住んでいるのだ。神に、つまり、天の王国に、争いや幻想が忍び込む隙間は、完全に皆無なのである。プラトンのイディアの世界を連想すればいいだろう。



Heaven is wholly true. No difference enters, and what is all the same cannot conflict.
  • wholly [hóulli] : 「完全に、全く、全体として、全体的に、すっかり」
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
  • difference [dífərəns] : 「違い、差異、相違」
  • enter [énter] : 「~に入る、~に参加する、~に立ち入る」
  • same [séim] : 「同じ、同一の、変わらない」
  • conflict [kənflíkt] : 「衝突する、争う、抵触する、対立する、矛盾する」
❖ "Heaven is ~ "「天の王国は、完全に真実である」。虚偽という不純物が混じり込む可能性はまったくない。"No difference ~ "「違いというものも、一切、入り込めない」。一元論世界の実相世界では、存在は単一である。違いという概念が存在しないのだ。したがって、序列という概念もない。つまり、実相世界は階層構造をしていないのだ。単一で完全に平等な世界なのだ。男と女の違いもなく、優劣の差もない。大きな真実と小さな真実などという、大小の差もないのである。"and what is all ~ "「すべて、まったく等しいものが、コンフリクトを起こすことはないのだ」。振動数の等しい音は、うなり音を起こさない。波長の等しい光は、干渉し合わないのだ。



You are not asked to fight against your wish to murder. But you are asked to realize the form it takes conceals the same intent.
  • fight [fáit] : 「戦う、競う、格闘する」
  • against [əɡéinst] : 「~に逆らって、~にそむいて、反抗して」
  • fight against : 「~と戦う」
  • wish [wíʃ] : 「願い、望みの物、願望、希望」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺す、殺害する、凶行に及ぶ」
  • realize [ríːəlàiz] : 「~に気が付く、悟る、自覚する」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、現れ」
  • conceal [kənsíːl] : 「隠す、隠匿する、秘密にする」
  • intent [intént] : 「意図、意向、意志、目的」
❖ "You are not asked ~ "「あなたの、殺害したいという思いと戦うようにと、あなたは頼まれているわけではない」。"But you are asked to ~ "「しかし、殺害したいという望みがとる(表面的な)形が、殺害の意図を隠しているのだと認識することを、あなたは要求されているのだ」。人を殺したいという直接的な欲望と戦うのはもちろんのことであって、取り立ててそれを要求されているのではない。そうではなく、一見、殺害と見えないような形をとる攻撃にも、その裏には、殺害したいという意図が隠されていることがあるので、それをしっかりと認識しなさい、ということである。憎しみや攻撃がどんな形をとってその意図を隠そうとしても、殺害という意図は隠しおおせるものではない。



And it is this you fear, and not the form. What is not love is murder. What is not loving must be an attack.
  • fear [fíər] : 「~を恐れる、~を怖がる」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • attack [ətǽk] : 「~を襲う、~を攻撃する、~を非難する」
❖ "And it is this ~ "「そして、あなたが恐れているのは、この殺害の意図であって、表面的な形ではない」。攻撃のとる形が恐ろしいのではなく、攻撃の形が隠しもっている殺害という意図が恐ろしいのだ。"What is not love ~ "「愛でないものは、殺害である」。"What is not loving ~ "「愛さないとは、攻撃に違いないのだ」。愛を失った心が意図することは、究極、攻撃であり、殺害である。したがって、愛を知らないエゴの目的は攻撃であり、究極的には殺害なのだ。エゴの最終目的が、神の子の十字架上の処刑であることを、しっかり、思い出そう。エゴは、神の子を甘言で誘うが、神の子を決して愛してはいない。エゴの思考システムに愛の字はないのだ。



Every illusion is an assault on truth, and every one does violence to the idea of love because it seems to be of equal truth.
  • assault [əsɔ́ːlt] : 「暴力、攻撃、暴行」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理」
  • violence [váiələns] : 「暴力、暴行、暴力行為、乱暴」
  • idea [aidíːə] : 「考え、着想、発想、見解、意見、意図、狙い、目的」
  • equal [íːkwəl] : 「同等の、程度が等しい、均等な、平等な」
  • be of equal ~ : 「等しく〜な」
❖ "Every illusion is ~ "「あらゆる幻想は、真実に対する暴行である」。幻想によって真実を隠そうとする行為は、それもりっぱな攻撃である。"and every one does ~ "「そして、あらゆる幻想は、愛という概念に対する暴力行為である」。"because it seems ~ "「なぜなら、幻想が、等しく真実だと見なされるからだ」。愛や真実という実相の実在に対して、幻想はそれを否定するのだ。幻想自体は自分を実在だと信じ、真実だと思い込んでいるので(it seems to be of equal truth)、幻想に対峙する実相の愛や真実を攻撃するのである。いわば、糞ミソ一緒の混沌状態であって、糞がミソに向かって、オレこそが食える、と主張しているようなものなのだ・・・品格のない例で申し訳ない。



2. What can be equal to the truth, yet different? Murder and love are incompatible.
  • different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
  • incompatible [ìnkəmpǽtəbl] : 「両立しない、相いれない、矛盾した」
❖ "What can be equal ~ "「等しく真実であり、しかも異なっているものとは何か」。そんなものはない。"Murder and love ~ "「殺害と愛は、相いれないのだ」。そんなことはわかっていると言われるかも知れないが、この"Murder"「殺害」を「憎悪」に置き換えてやると、怪しくなる。憎悪と愛を同時に持ってしまうことは、この幻想世界では、日常茶飯事である。二元論世界であり、対極概念を必ず持つ幻想世界では、愛は容易に憎悪に変化する。あるいは、愛と憎悪は交じり合い、奇妙なグラデーションを作る。殺害したいという心と愛したいという心が同居する環境も、さして珍しいものではない。



Yet if they both are true, then must they be the same, and indistinguishable from one another.
  • both [bóuθ] : 「両方ともに、双方ともに」
  • indistinguishable [ìndistíŋɡwiʃəbl] : 「区別ができない、見分けがつかない」
  • one another : 「お互い」
❖ "Yet if they both ~ "「しかし、もしも、殺害と愛の両者共に真実であるなら、殺害と愛は同じものに違いないのだ」。"and indistinguishable ~ "「一方を他方と区別付けることが不可能だということになる」。そんなバカな話しはない。しかし、幻想世界では、こんなことが実際に起こるのである。だから、この幻想世界は狂気の世界だと言われるのだ。糞とミソの区別の付かない世界だから、狂気なのである。



So will they be to those who see God's Son a body. For it is not the body that is like the Son's Creator.
  • those who : 「~する人々」
  • creator [kriéitər] : 「創造者、創作者、創設者」
❖ "So will they be ~ "「そこで、神の子を肉体と見る者達にとっては、殺害と愛は共に、区別の付かない真実だということになるのである」。"those who see God's Son a body"「神の子を肉体と見る者達」とは、幻想を実在だと信じる者達のことである。殺害という幻想を、愛という実相と区別出来ない狂気の者達にとっては、肉体という幻想と心という実相すら区別出来ないのである。そして、肉体も実在で真実、心も実在で真実、と宣言し、おまけに殺害と愛は共に実在の真実でまったく等しいものだと信じるのである。健康な肉体に健康な心が宿る、と世間では言われているが、真っ赤な嘘である。不健康な心が、肉体を幻想しているだけのことだ。不健康な心とは、罪の意識を抱いた、眠れる心のことである。



And what is lifeless cannot be the Son of Life. How can a body be extended to hold the universe?
  • lifeless [láiflis] : 「生命を持たない、活気のない」
  • extend [iksténd] : 「広げる、伸ばす、拡張する、拡大する」
  • hold [hóuld] : 「維持する、保持する、持続する」
  • universe [júːnəvə̀ːrs] : 「宇宙、銀河、万物、森羅万象、全世界」
❖ "And what is lifeless ~ "「命なきものが、命の子であるわけがない」。神は命であり、神の子は神の創造した子であるから、同時に命の子なのだ。神の子に命の欠けているわけがない。"How can a body ~ "「肉体は、どうやって、宇宙を保持するために、拡張していけるだろうか」。肉体に宿る命は幻想の命であって、変化流動し、したがって、宿命的に肉体の命は滅びる。対して、実相の命は、永遠不変の命であって、分かち合われることで拡張増大する。それが、神の法であり、拡張増大する命、愛、喜び、平和、等々によって、実相世界という宇宙は維持されるのである。幻想の肉体が、その肉体的命を拡張して、宇宙を維持することなど不可能なのだ。



Can it create, and be what it creates? And can it offer its creations all that it is and never suffer loss?
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
  • offer [ɔ́ːfər] : 「差し出す、捧げる、提供する」
  • creation [kriéiʃən] : 「創作物、作品、創造、創作」
  • suffer [sʌ́fər] : 「~を許す、耐える、我慢する、苦しむ」
  • loss [lɔ́s] : 「失うこと、紛失、損失、喪失」
  • suffer loss : 「損害を被る、打撃を受ける」
❖ "Can it create ~ "「肉体は創造したり、創造したもの自体になり得るだろうか」。肉体が生殖活動を通して子を生むことは、実相的真実の創造とは言えない。なぜなら、幻想の命を、幻想の肉体を通じて再生産することは単なる疑似創造だからだ。簡単に言えば、肉体は心という真の命を生み出せないのだ。肉体は、心という真実を創造出来ないのである。"And can it offer ~ "「また、肉体は、肉体であるところのものをすべて、その創造したものに提供し、なお、何も失うことがないなどと言えるだろうか」。肉体が生殖活動を通して子を生むとき、その子に、つまり、創造したものに提供するものといったら、一個の卵子と一個の精子だけである。肉体のもっているすべてを、その命も含めて、新しい肉体の命に提供するわけではない。つまり、親のもつ属性のすべてを子に継承することはないし、不可能なのだ。しかし、神が神の子を創造したとき、神は神の子に、神の属性のすべてを与えたのだ。命は勿論のこと、愛や喜び、美への感性、慈しむ心、真理、等々を、神は神の子に惜しげなく継承した。奇跡を起こすパワーも継承したのだ。神は、すべてを神の子に提供したのだが、しかし、神は何一つ失うことはなかった。神の法は、与えることは得ることだからである。神は、神の子の愛、命、喜び、平和、慈しみを、与えることで自ら得たのだ。つまり、かけ算をすればわかるように、愛や命が増大したのだ。これが、真の創造であって、幻想の肉体が成せる業ではない。
 
 
 

T-23.III.5:6 ~ T-23.III.6:12

5. Those who believe that peace can be defended, and that attack is justified on its behalf, cannot perceive it lies within them. How could they know?

  • those who : 「〜する人々」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • peace [píːs] : 「平和、安らぎ、平穏、安心、安定」
  • defend [difénd] : 「〜を守る、防衛する」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • justify [dʒʌ́stəfài] : 「弁明する、正当化する」
  • on one's behalf : 「〜のために、〜の利益になるように」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • lie [lái] : 「ある、存在する」
  • within[wiðín] : 「〜の中に、〜の内に」
❖ "Those who believe ~ "「平和が守られ得るものだと信じ、また、攻撃は平和のために正当化出来ると信じている者は、」"cannot perceive it ~ "「平和が彼らの心の中に存在すると知覚することが出来ないのである」。彼らの言う平和は、この幻想世界の、争いという対極概念を持つ平和であって、それは守らねばならず、守るためには攻撃も辞さないものである。しかし、実相世界の、真の平和は、争いという対極概念を持たない純粋な平和であって、神聖な心に常に宿るものなのだ。それは、永遠不変の平和であって、守ることも維持することも必要ない。あって、そしてあるだけでのものである。"How could ~ "「そんな彼らに、どうしてそれが分かるだろうか」。幻想しか知らない彼らに、実相的平和が心の中に存在することは理解出来ない。



Could they accept forgiveness side by side with the belief that murder takes some forms by which their peace is saved?
  • accept [əksépt] : 「承認する、認める、容認する、受け入れる」
  • forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦、寛容」
  • side by side : 「並んで」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、体つき、外見」
  • save [séiv] : 「救う、助ける、確保しておく、取っておく」
❖ "Could they accept ~ "「彼らは、彼らの平和を確保するためには、殺害さえ何らかの形をとると信じながら、同時に、赦しを受け入れることが出来るだろうか」。幻想的な平和を固く信じ、それを守るためには人を殺すことさえ厭わないと信じていながら、幻想を幻想として認識し、赦し、受け流すなどということが出来るわけがない。幻想を信じていながら、実相に憧れても無駄なのだ。実相に目覚めるには、つまり、真の赦しを実行するには、まずもって、幻想を惜しげなく捨てなくてはならない。



Would they be willing to accept the fact their savage purpose is directed against themselves?
  • be willing [wíliŋ] to : 「〜する意思がある、進んで〜する」
  • fact [fǽkt] : 「事実、現実、真実、実際、真相」
  • savage [sǽvidʒ] : 「野蛮な、残忍な、粗野な、無礼な、凶暴な、残酷な」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
  • direct [dərékt] : 「〜を方向づける、〜を…で導く」
  • against [əɡéinst] : 「〜に逆らって、〜にそむいて、反抗して」
❖ "Would they be willing to ~ "「彼らは、〜という事実を進んで受け入れようとするだろうか」。"the fact their savage ~ "「彼らの野蛮な目的は、彼ら自身に向けられているという事実」を進んで受け入れようとするだろうか。他者を攻撃することは、自分自身を攻撃することであり、自分の平和を守ろうとして他者を攻撃することは、自分の平和を失うことだと、積極的にその真実を認めることは、彼らには不可能だろう。なぜなら、幻想にどっぷりと浸りきった彼らに、実相世界の自他一如という真実が理解出来るわけがないからだ。



No one unites with enemies, nor is at one with them in purpose.
  • unite [junáit] : 「結合する、一体となる、一体化する、合体する」
  • enemy [énəmi] : 「敵、敵国」
  • at one with : 「〜と一体になって、〜と意見が一致して、〜と気持ちが一つになって」
❖ "No one unites with ~ "「誰も、敵と一体になることはないし、」"nor is at one with ~ "「敵と、目的を一つにすることもない」。自他一如を信じられないから、彼らにとって、敵は憎むべきものであって、手を組む相手ではないのだ。



And no one compromises with an enemy but hates him still, for what he kept from him.
  • compromise [kɑ́mprəmàiz] : 「譲歩する、歩み寄る、妥協する、和解する」
  • hate [héit] : 「〜を憎む、〜をひどく嫌う」
  • still [stíl] : 「それでも、それでもやはり」
  • kept [képt] : 「keep の過去・過去分詞形」
❖ "And no one compromises ~ "ここの"but"は要注意、"And no one compromises with an enemy and doesn't hate him still"のことで、直訳すると、「誰も、敵と妥協しておいて、なお、敵を嫌わないことなどない」、つまり、「誰も、敵と妥協しても、なお敵を嫌うのだ」。表面上は敵と握手するのだが、心の中では不満をもって嫌っているのだ。"for what he kept ~ "「敵が彼から遠ざけているものがあるせいである」。つまり、敵は、妥協したとは言え、すべてを明け渡したのではなく、与えずに隠しているものがあるからだ、という意味合い。



6. Mistake not truce for peace, nor compromise for the escape from conflict.
  • mistake [mistéik] : 「誤る、間違える」
  • truce [trúːs] : 「停戦、休戦」
  • escape [iskéip] : 「逃避、回避、逃亡、脱出」
  • conflict [kɑ́nflikt] : 「摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争」
❖ "Mistake not truce ~ "「停戦を平和と勘違いしてはいけない」。"nor compromise ~ "「また、妥協を、コンフリクトからの脱出だと勘違いしてもいけない」。一時のごまかしをしてはいけない、といういこうと。どうせ、停戦は再び戦いに戻り、コンフリクトの妥協はすぐ崩れてしまうだろう。



To be released from conflict means that it is over. The door is open; you have left the battleground.
  • release [rilíːs] : 「解放する、自由にする、放つ、離す」
  • mean [míːn] : 「〜を意味する、…とは〜を指す」
  • over [óuvər] : 「終わって、終了して、完了して」
  • left [léft] : 「leave の過去・過去分詞形」
  • leave [líːv] : 「〜から離れる、〜を退く、〜を残す」
  • battleground [bǽtlgràund] : 「戦場」
❖ "To be released from ~ "「コンフリクトから解放されるとは、(妥協ではなく)、コンフリクトが終わってしまうことを意味するのだ」。その時、"The door is ~ "「扉は開いている」。"you have left ~ "「あなたは戦場を後にしたのだ」。コンフリクトが終わった状態は、あなたが心の中の戦いから解放され、戦場を後にしたことを意味する。平和への扉が開いたのだ。



You have not lingered there in cowering hope that it will not return because the guns are stilled an instant, and the fear that haunts the place of death is not apparent.
  • linger [líŋɡər] : 「長居する、居残る、ぐずぐずする、残存する」
  • cower [káuər] : 「縮こまる、小さくなる、萎縮する、すくむ」
  • return [ritə́ːrn] : 「戻る、帰る、返還する」
  • gun [gʌ́n] : 「銃、ピストル、鉄砲、号砲、礼砲」
  • still [stíl] : 「〜を静める、静かにさせる、〜を和らげる、鎮静化させる」
  • instant [ínstənt] : 「瞬間、一瞬」
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」 haunt [hɔ́ːnt] : 「〜に出没する、立ち現れる」
  • place [pléis] : 「場所、個所、土地、広場」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
  • apparent [əpǽrənt] : 「明らかな、明白な、明瞭な」
❖ "You have not ~ "「あなたは、戦いが戻って来ることはないだろうと、恐る恐る平和を望みながら、戦場に居残ることはなくなったのだ」。"because the guns ~ "「なぜなら、この瞬間、号砲は静まり返り、」"and the fear that ~ "「死の戦場に出没する恐れが消えてしまうからだ」。



There is no safety in a battleground. You can look down on it in safety from above and not be touched.
  • safety [séifti] : 「安全、安全性、無事、無難なもの」
  • look down on : 「〜を見下ろす」
  • in safety : 「安全に、無事に」
  • from above [əbʌ́v] : 「上から、上方から、高所から、天から」
  • touch [tʌ́tʃ] : 「〜に手をつける、手出しをする」
❖ "There is no safety ~ "「戦場に、安全など存在しない」。"You can look down ~ "「上空からなら、あなたは、安全に戦場を見下ろすことが出来、何の影響も受けない」。戦場から離れてしまえば、あなたは安全だ。戦場にいる限りは、危険は常に付きまとう。たとえ、一時的に戦火が収まったように見えたとしても。



But from within it you can find no safety. Not one tree left still standing will shelter you.
  • from within [wiðín] : 「〜の中から、内側から、内部から」
  • find [fáind] : 「見つける、発見する、見いだす」
  • tree [tríː] : 「木、樹木」
  • left [léft] : 「leave の過去・過去分詞形」
  • leave [líːv] : 「〜を残す、〜をそのままにしておく」
  • stand [stǽnd] : 「立っている、立ち上がる、立つ」
  • shelter [ʃéltər] : 「〜を保護する、避難する、かくまう」
❖ "But from within it ~ "「しかし、戦場の中には、あなたは安全を見つけることは出来ないのだ」。コンフリクトを心に持っている限り、心の平和は確保出来ない。"Not one tree left ~ "「戦場に、なお残った立ち木でさえ、あなたを守れないのだ」。



Not one illusion of protection stands against the faith in murder.
  • illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
  • protection [prətékʃən] : 「保護、守ること、擁護、防御、防衛」
  • stand against : 「〜に立ち向かう、〜に刃向かう、〜に抵抗する」
  • faith [féiθ] : 「信頼、信用、信じること、信仰、信条、信念、確信」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
❖ "Not one illusion of ~ "「守られているという幻想は、殺害という信念に対抗出来ない」。変な訳になってしまったが、要するに、戦場の殺戮に対して、自分は何かに守られているなどという楽観論(幻想)は、何の役にも立たない、ということ。心にコンフリクトを抱きながら、そのコンフリクトからの影響を回避することが出来るだろうなどという楽観論は無意味だ。また、他者を憎み、他者を攻撃して、その心を殺害しようなどという試みに対して、自分は何ら影響を受けず、守られているなどという楽観論も、同様に無意味だ。



Here stands the body, torn between the natural desire to communicate and the unnatural intent to murder and to die.
  • torn [tɔ́ːrn] : 「tear の過去分詞形」
  • tear [tέər] : 「〜を引き裂く、引っかく、むしり取る、分裂させる、裂く」
  • between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間に」
  • natural [nǽtʃərəl] : 「自然の普通の、ありのままの」
  • desire [dizáiər] : 「欲望、欲求、願望、念願」
  • communicate [kəmjúːnikèit] : 「連絡する、通信する、交信する」
  • unnatural [ʌ̀nnǽtʃərəl] : 「不自然な、自然に反する、不思議な、異常な」
  • intent [intént] : 「意図、意向、意志、目的」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺す、殺害する、凶行に及ぶ」
  • die [dái] : 「死ぬ、死亡する」
❖ "Here stands ~ "「ここで、肉体は、〜という状態に立ち至る」。"torn between the natural ~ "「(他者と)コミュニケーションしたいという自然な望みと、殺害し、そして死んでしまいたいという不自然な意図との間に引き裂かれた状態に」肉体は立ち至る。他者と和合したいという実相的望みと、他者を、死に至らしめるまでに分離し、排他したいという幻想的望みとに、分裂するのだ。本文には、"body"「肉体」が分裂状態になる、と書かれてあるが、「幻想としての存在が、分裂状態になる」と捉えた方がいいだろう。



Think you the form that murder takes can offer safety? Can guilt be absent from a battlefield?
  • think [θíŋk] : 「考える、思う、熟考する」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、現れ」
  • offer [ɔ́ːfər] : 「差し出す、捧げる、提供する」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
  • be absent from : 「〜を欠席している、〜に不在である」
❖ "Think you the form ~ "「殺害のとる形が、安全を提供してくれると、あなたは思っているのか」。ある種の殺害は、あなたに安全をもたらしてくれる可能性があると、あなたは考えているのか。"Can guilt be absent ~ "「戦場に、罪の意識が不在になることがあり得るだろうか」。殺し、殺される戦場には、常に罪の意識が存在する。殺害にしても、攻撃にしても、不自然な分離や排他は、幻想を加速するのだ。幻想の根本には罪の意識が隠されており、加速された幻想の罪の意識は肥大化していく。
 
 
 

T-23.III.3:1V ~ T-23.III.4:8

3. Salvation is no compromise of any kind. To compromise is to accept but part of what you want; to take a little and give up the rest.

  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
  • compromise [kάmprəmàiz] : 「譲歩、妥協、歩み寄り、和解、示談」
  • of any kind : 「いかなる種類の」
  • compromise [kάmprəmàiz] : 「譲歩する、妥協する、和解する」
  • accept [æksépt] : 「承認する、認める、容認する、受け入れる」
  • part [pάːrt] : 「一部、部分」
  • give up : 「あきらめる、手放す、断念する、放棄する」
❖ "Salvation is no ~ "「救いは、いかなる種類の妥協でもない」。"To compromise is ~ "「妥協するとは、あなたが望んでいることの一部だけを受け入れることである」。"to take a little ~ "「つまり、ほんの少しを取って、残りを諦めることなのだ」。したがって、実相的な救いは、一部を救い、一部を救わない、というようなのもではなく、全的に、トータルに救うことである。



Salvation gives up nothing. It is complete for everyone.
  • complete [kəmplíːt] : 「完結した、完成した、完全な、全くの」
❖ "Salvation gives up ~ "「救いは、何も諦めたりしない」。"It is complete ~ "「救いは、誰にとっても、完全であらねばならないのだ」。救いとは、幻想世界から実相世界への目覚めであり、幻想世界を脱して、実相世界に入ることである。したがって、体の一部を幻想世界に残して、他の部分だけ実相世界に入っても意味がないのだ。心の一部が実相世界に目覚め、他の部分が幻想世界の夢にまどろんでいるようではならない。



Let the idea of compromise but enter, and the awareness of salvation's purpose is lost because it is not recognized.
  • idea [aidíːə] : 「考え、着想、発想、意図、狙い、目的」
  • enter [énter] : 「〜に入る、〜に参加する、〜に立ち入る」
  • awareness [əwέərnis] : 「認識、自覚、気付いていること、意識性」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
  • lost [lɔ́st] : 「lose の過去・過去分詞形」
  • lose [lúːz] : 「〜を失う、見失う、喪失する、なくす」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
❖ "Let the idea of ~ "「妥協という考えを(心の中に)入り込ませると、」"and the awareness of ~ "「救いという目的の意識性が失われしまう」。"because it is not ~ "「なぜなら、救いは認識されなくなってしまうからだ」。つまり、妥協してもよいと考えてしまえば、是が非でも実相世界に目覚めたいという救いへの意識性、強いモティベーションが薄らいでしまい、結果、救いは成就しない。それどころか、成就する前に、救われたいという望みが自体が消えてしまい、救いは認識されなくなってしまうのだ。



It is denied where compromise has been accepted, for compromise is the belief salvation is impossible.
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • impossible [impɑ́səbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない、無理な」
❖ "It is denied where ~ "「妥協が受け入れられた時、救いは否定される」。心に妥協してもいいという思いが忍び込むと、救いを否定してしまいかねない。"for compromise is ~ "「なぜなら、妥協とは、救いは不可能だと信じることだからである」。きっと救いは無理だから、救われなくてもいいや、と思ってしまうのである。救われる変わりに、その回避策、妥協案を模索するわけである。



It would maintain you can attack a little, love a little, and know the difference.
  • maintain [meintéin] : 「〜と主張する、〜を保持する、維持する」
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
  • difference [dífərəns] : 「違い、差異、相違」
❖ "It would maintain ~ "「妥協は、〜と主張する」。"you can attack ~ "「あなたは、少しだけなら攻撃していいし、少しでも愛すればいい、」"and know ~ "「(それがほんの少しでも)、違いはあると知っている」と、妥協は主張する。妥協は、絶対攻撃しない、とは言わない。少しなら攻撃してもいいと言う。少しの攻撃なら、多くの攻撃と違って、大丈夫だろう、と主張するのだ。妥協は、愛さないよりは、少しだけでも愛した方がいいと言う。少し愛することは、まったく愛さないことと違うではないか、と主張するのだ。



Thus it would teach a little of the same can still be different, and yet the same remain intact, as one. Does this make sense? Can it be understood?
  • thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、だから」
  • teach [tíːtʃ] : 「〜を教える、指導する」
  • same [séim] : 「同じ、同一の、変わらない」
  • remain [riméin] [SVC] : 「依然として〜のままである」
  • intact [intǽkt] : 「損なわれていない、変わっていない、無傷の、そのまま」
  • make sense : 「意味をなす、道理にかなう、うなずける」
  • understood [ʌ̀ndərstúd] : 「understand の過去・過去分詞形」
❖ "Thus it would teach ~ "「こうして、妥協は、〜と教えるだろう」。"a little of the same ~ "「同じものだって、少しは違ってもいいし、」"and yet the same ~ "「それでも、同じものは同じものとして損なわれずに一つなのだ」と教えるだろう。"Does this ~ "「こんなことが、意味を成すだろうか」。"Can it be ~ "「理解され得るだろうか」。結局、妥協には、純粋とか神聖とかという概念が完全に欠落しているのだ。少々濁ってもいい、少々神聖でなくてもいい、そういう思想である。



4. This course is easy just because it makes no compromise. Yet it seems difficult to those who still believe that compromise is possible.
  • course [kɔ́ːrs] : 「コース、進路、課程、講座、科目、単位」
  • easy [íːzi] : 「たやすい、やさしい、容易な、簡単な」
  • difficult [dífikʌ̀lt] : 「難しい、困難な、難解な、厳しい」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る」
❖ "This course is easy ~ "「このACIMは、単に、一切の妥協をしないから、(かえって) 容易なのだ」。"Yet it seems difficult to ~ "「しかし、妥協が可能であると、なお信じている者達にとっては、ACIMは難しく思えるだろう」。ACIMは、白黒はっきりしている。白を選ぶか黒を選ぶか、非常に簡単な選択なのだ。しかし、妥協を赦してしまえば、白に黒を混ぜて、無数のグラデーションをもった灰色が出来上がってしまう。その中から、自分の灰色を選ぶとなると、基準が何もないから、非常に難しく感じてしまうのである。



They do not see that, if it is, salvation is attack. Yet it is certain the belief that salvation is impossible cannot uphold a quiet, calm assurance it has come.
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • certain [sə́ːrtn] : 「確実な、確かな、確信して、間違いのない、疑う余地のない」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • uphold [ʌphóuld] : 「支持する、支える、上げる、持ち上げる」
  • quiet [kwáiət] : 「静かな、静粛な、平穏な、穏やかな、平和な」
  • calm [kɑ́ːm] : 「穏やかな、静かな、平穏な、冷静な、落ち着いた」
  • assurance [əʃúərəns] : 「確かさ、確実さ、確信、断言」
❖ "They do not see ~ "「妥協の可能性を信じる者達は、that以下をわかっていない」"that, if it is, salvation ~ "「もし、妥協が可能なら、救いは攻撃になるかもしれない」とわかっていない。先ほどの、白と黒の例で言うなら、救いという白色に、攻撃という黒色を混ぜることが妥協であり、白の救いに黒の攻撃をどんどん混ぜていくと、白は灰色に転じ、黒に限りなく近くなって、救いは攻撃に質転換てしまうのだ。したがって、救いという白色は、断じて、純白でなければならない。妥協を少しでも許してしまうと、純白は汚され、救いは攻撃へと堕落するのである。



Forgiveness cannot be withheld a little. Nor is it possible to attack for this and love for that and understand forgiveness.
  • forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦、寛容」
  • withheld [wiðhéld] : 「withhold の過去形、過去分詞形」
  • withhold [wiðhóuld] : 「与えないでおく、〜を抑える、差し控える」
❖ "Forgiveness cannot ~ "「赦しを、少しだけ与えずにおくなどと言うことは出来ない」。赦しを与えるなら、全的に与える必要がある。赦しを全的に与えるとは、幻想すべてを幻想として認識することである。世界は幻想だが、肉体は幻想でない、などと、ちぐはぐな赦しではいけないのだ。彼の肉体的存在は幻想だが、自分の肉体は幻想ではない、などと思ってもいけない。真実以外はすべて幻想であり、その幻想すべてを受け入れ赦し、静かに流してやるのである。流し残してはいけない。"Nor is it possible ~ "「同様に、これは攻撃し、あれは愛し、その上、赦しを理解することなど不可能なのだ」。すべてを愛することが基盤となって赦しが成立し、赦しが理解出来るのである。妥協の混じり込んだ赦しは、真実の赦しではない。真実ではない赦しが理解出来ようか。ここでは、話しが救いから赦しに転じているが、妥協を許さないという原則は等しい。



Would you not want to recognize assault upon your peace in any form, if only thus does it become impossible that you lose sight of it?
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
  • assault [əsɔ́ːlt] : 「暴力、攻撃、暴行」
  • peace [píːs] : 「平和、安らぎ、平穏、安心、安定」
  • in any form : 「いかなる種類のものであれ」
  • lose sight of : 「〜を見失う」
❖ "Would you not want ~ "「いかなる形であれ、あなたの平和の上に加えられた攻撃を認識したいと、あなたは思わないだろうか」。"if only thus does ~ "ここは"it ~ that ~ "の構文、「もし、こうすることによってのみ、」攻撃を認識することによってのみ、「あなたが平和を見失うということが不可能になってくれるなら、」いかなる形であれ、あなたの平和の上に加えられた攻撃を認識したいと、あなたは思わないだろうか。平和を見失わないためには、あなたの平和に加えられる攻撃を正しく認識する必要がある。それがどんな形であれ、とあるから、一見攻撃と認識されないような、巧妙な攻撃であっても、あなたはきちんと正しく認識する必要があるのだ。



It can be kept shining before your vision, forever clear and never out of sight, if you defend it not.
  • kept [képt] : 「keep の過去・過去分詞形」
  • keep [kíːp] : 「〜の状態にしておく、〜の状態を保つ、〜にしておく」
  • shining [ʃáiniŋ] : 「光る、輝く、きらめく、明るい」
  • vision [víʒən] : 「視覚、視力、洞察力、想像力、展望、構想」
  • forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
  • clear [klíər] : 「きれいな、澄んだ、透明な、明らかな」
  • defend [difénd] : 「〜を守る、防衛する」
❖ "It can be kept ~ "「平和は、あなたのヴィジョンの前で輝き続けることが出来るし、」あなたの正しい心が実相を見る、その視界(ヴィジョン)に、平和が輝いて見えるのだ。"forever clear and ~ "「平和は永遠に清らかで、決して視界から消えない」。"if you defend ~ "「もし、あなたが、平和を守ろうとしないならば」。さて、これはいったいどうしたことだろう? 平和を守ろうとするなら、と書いてくれたなら、何の疑問も抱かずに読み過ごすことが出来るのだが、ここには確かに、平和を守ろうとしないなら、と書いてある。これは、平和は守るものだ、という固定観念が我々にあるために、疑問に感じる部分なのだろう。平和を守るとは、形を変えた攻撃である、という思想が隠されているのだ。実際、平和は真実であり、永遠不変の実相世界のものであるから、平和は永遠に変化せず、常に、そこにあり続けるものなのだ。変化せず、そこにあるだけの存在なら、どうして守る必要があるだろう。守らなくては崩壊してしまう平和は、この幻想世界の平和であって、偽の平和である。争いという対極概念をもつ、二元論世界の平和である。したがって、平和を守る行為は、平和の対極にある攻撃なのだ。一元論世界である実相世界の平和は、対極概念をもたない、絶対的な平和である。純粋に光輝く平和とは、この絶対的な実相的平和であって、攻撃や防御という概念の範疇を超越して存在するものなのだ。したがって、平和は守らなくてはならないと信じている我々は、真の平和を知らないということになる。平和を攻撃することが出来るなどと信じる我々のレベルは、非常に低いということになる。たとえば、核武装して平和を守るという核抑止論を、イエスはどう感じているだろうか? いや、ACIMに政治を持ち込むのはやめよう。次元とレベルがあまりにも違い過ぎるのだ。下品な表現で申し訳ないが、糞と味噌を一緒にしてはいけない。いかに似ていても、レベルが違い過ぎるのだ。『世の中は澄むと濁るで大違い、ハケに毛があり、ハゲに毛がなし』と言うではないか。幻想的平和と実相的平和、幻と実の字の違いだけだが、雲泥の差だ。同じ土俵で論ずることは出来ないのだ。
 
 
 

T-23.III.1:1 ~ T-23.III.2:6

 
 

III. Salvation without Compromise
妥協なき救い
 
 
 
1. Is it not true you do not recognize some of the forms attack can take?
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、種、種類、型、姿」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
❖ "Is it not true you ~ "直訳すると、「攻撃がとるある種の形を、あなたが認識していないというのは、正しくないのではないか」。つまり、あなたが攻撃だとは認識出来ない攻撃の形が存在する、ということ。たとえば、権力は攻撃だと認識する人は少ないが、権力がやっていることを詳細に見れば、権力が明白な攻撃であると認識出来る。ある人にとっては、重税は攻撃であろう。人種差別や性差別は、言うまでもない。親のいき過ぎた躾(しつ)けも、子供にとっては明らかな攻撃である。教師の指導も、時には、生徒に対する攻撃と化すことがある。



If it is true attack in any form will hurt you, and will do so just as much as in another form that you do recognize, then it must follow that you do not always recognize the source of pain. Attack in any form is equally destructive.
  • in any form: 「いかなる種類のものであれ」
  • hurt [hə́ːrt] : 「〜を傷つける、〜に害を与える、〜に苦痛を与える」
  • another [ənʌ́ðər] : 「別の、ほかの」
  • follow [fάlou] : 「次に起こる、〜ということになる」
  • always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、常に」
  • source [sɔ́ːrs] : 「もと、源、起点、原因」
  • pain [péin] : 「痛み、痛覚、疼痛、苦痛、苦悩」
  • equally [íːkwəli] : 「等しく、同様に、一様に、均一に」
  • destructive [distrʌ́ktiv] : 「破壊的な、破壊主義的な」
❖ "If it is true attack ~ "「もし、いかなる形の攻撃であれ、それがあなたを傷つけるということが真実なら、」"and will do so ~ "「そして、あなたが(攻撃であると)認識する別の形(の攻撃)と同様に、その攻撃があなたに影響を与えるなら、」"then it must ~ "「そのときはthat以下という結論が引き出せるのだ」。"that you do not always ~ "「あなたはいつでも、痛みの原因を認識しているわけではない」という結論が引き出せるのだ。あなたが、攻撃とは認識出来ない攻撃もあり、しかし、それも同様に、あなたに痛みを与え得るのである。あなたは、あなたの心の痛みの原因をすべて把握出来るわけではないのだ。それが、痛みや苦悩からの解放を困難にしているのだろう。"Attack in any ~ "「いかなる形の攻撃でも、それは等しく、破壊的である」。したがって、破壊的であり、痛みを伴い、苦悩を生むなら、その根底に、認識されていない攻撃が隠されていると思っていいのだ。



Its purpose does not change. Its sole intent is murder, and what form of murder serves to cover the massive guilt and frantic fear of punishment the murderer must feel?
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
  • change [tʃéindʒ] : 「変わる、変化する、変遷する」
  • sole [sóul] : 「唯一の、たった一つの」
  • intent [intént] : 「意図、意向、意志、目的」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、種、種類、姿」
  • serve [sə́ːrv] : 「〜の役目をする、〜の役目を果たす、〜に役立つ」
  • cover [kʌ́vər] : 「〜を覆う、〜に覆いを付ける」
  • massive [mǽsiv] : 「とても大きな、大規模な、巨大な、膨大な」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
  • frantic [frǽntik] : 「取り乱した、半狂乱の、狂乱した、気違いじみた、血迷った」
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
  • punishment [pʌ́niʃmənt] : 「罰すること、罰、刑罰、処罰、懲罰」
  • murderer [mə́ːrdərər] : 「殺人者、人殺し、殺人事件の犯人」
  • feel [fíːl] : 「感じがする、感じる」
❖ "Its purpose does ~ "「攻撃の目的は、変わることはない」。"Its sole intent ~ "「攻撃の唯一の意図は、殺すことでる」。"murder"「殺すこと、殺人」を、肉体的な殺害とだけ見る必要はない。精神的な殺害、心の殺害も、もちろん、含むのである。たとえば、いじめという攻撃は、他者の心をなぶり殺しにする行為である。"and what form of ~ "「どんな形の殺害が、巨大な罪の意識や、殺害者が感じるに違いない罰に対する半狂乱の恐れを、隠し通すことが出来るだろうか」。攻撃の目的は殺害であり、殺害によって、罪の意識と罰への恐れが確実に生まれる。それを隠し通すことは、誰にも出来ない。



He may deny he is a murderer and justify his savagery with smiles as he attacks.
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する」
  • justify [dʒʌ́stəfài] : 「弁明する、正当化する」
  • savagery [sǽvidʒri] : 「残忍性、残虐性、残虐な行為」
  • smile [smáil] : 「ほほ笑み、笑顔」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
❖ "He may deny ~ "「殺す者は、自分が殺害者だと認めることはないし、攻撃するとき、薄笑いを浮かべて、残虐行為を正当化するかも知れない」。殺害の瞬間は、自分は正しいことをしていると思っているのだ。罪の意識と罰への恐れが殺害者を襲ってくるのは、殺害の後である。



Yet he will suffer, and will look on his intent in nightmares where the smiles are gone, and where the purpose rises to meet his horrified awareness and pursue him still.
  • suffer [sʌ́fər] : 「苦しむ、苦痛を感じる、不快な経験をする」
  • look on : 「〜を見る」
  • intent [intént] : 「意図、意向、意志、目的」
  • nightmare [náitmὲər] : 「恐ろしい夢、悪夢」
  • gone [ɡɔ́ːn] : 「go の過去分詞形」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
  • rise [ráiz] : 「出る、出てくる、立ち上がる、起立する」
  • meet [míːt] : 「〜に会う、〜と会合する、〜と接触する」
  • horrified [hɔ́ːrəfàid] : 「恐怖に襲われた、怖がっている」
  • awareness [əwέərnis] : 「認識、自覚、気付いていること、意識性」
  • pursue [pərsúː] : 「〜を追跡する、〜を追いかける」
  • still [stíl] : 「常に、いつでも、今後さらに、もっと」
❖ "Yet he will suffer ~ "「しかし、殺害者は苦しむことになろうし、悪夢の中に、彼の(殺害の)意図を見ることになろう」。攻撃し、殺害する瞬間は、アイツが一方的に悪いからだと言って、自己正当化するであろうが、殺害後、自分の攻撃が、単に自分の憎悪や強い嫌悪から出たものであること、あるいは、単なる嫉妬から出たものであることがわかってきて、罪の意識に苦しむのだ。"where the smiles ~ "「そこでは、薄笑いは消え去り、」"and where the purpose ~ "「(殺害の)目的が、恐怖という意識と共に浮かび上がって来て、いつまでも、彼にまとわりつくのである」。こうして、彼は罪と罰の地獄に転落していく。



For no one thinks of murder and escapes the guilt the thought entails. If the intent is death, what matter the form it takes?
  • think of : 「〜のことを考える、〜しようかと考える」
  • escape [iskéip] : 「逃げる、ずらかる、脱出する」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
  • thought [θɔ́ːt] : 「考えること、思考、思索、熟考」
  • entail [entéil] : 「〜を伴う、必要とする、引き起こす、課す」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
  • matter [mǽtər] : 「重要である、重要になる、問題である」
❖ "For no one thinks of murder ~ "「なぜなら、誰も、殺害を思いつき、その思いが引き起こす罪の意識から逃れることは出来ないからである」。"If the intent ~ "「もし、その意図が死であるなら、」"what matter ~ "「殺そうとする意図がとる形など、問題ではないのだ」。どんな形の攻撃であれ、どんな形の殺害も、その形が問題なのではなく、攻撃であり殺害である、その事実だけが重要なのだ。



2. Is death in any form, however lovely and charitable it may seem to be, a blessing and a sign the Voice for God speaks through you to your brother?
  • in any form : 「いかなる種類のものであれ」
  • however [hauévər] : 「どんなに〜でも、いかに〜であろうとも」
  • lovely [lʌ́vli] : 「愛らしい、かわいらしい」
  • charitable [tʃǽrətəbl] : 「寛大な、慈悲深い、情け深い」
  • blessing [blésiŋ] : 「祝福、恩恵、幸運」
  • sign [sáin] : 「表れ、兆し、兆候、印、標示」
  • for : 「〜の代わりに」
  • speak [spíːk] : 「〜を話す、〜について口を開く」
  • through [θruː] : 「〜を通じて、〜の手を経て、手を通して」
❖ "Is death ~ "「いかなる形の死であれ、それは〜であろうか」。"however lovely and ~ "「死が、いかに愛らしく慈悲深いものに見えようとも、」"a blessing and ~ "「あなたを通して同胞に語られる神の声の印であり祝福あろうか」。神が死を祝福するわけがない。なぜなら、神には死という概念がないからだ。神は幻想に対して一切の関係をもたない。"the Voice for God"「神の声」と訳したが、正確には、神が直接発する声という意味ではなく、神に代わって神の意思を語る声のことである。したがって、ホーリー・スピリットの声ということになるのだが、ここでは、それほど厳密に考える必要はなく、単に、神の声として解釈しても差し支えあるまい。



The wrapping does not make the gift you give. An empty box, however beautiful and gently given, still contains nothing.
  • wrapping [rǽpiŋ] : 「包装材料、包装紙」
  • gift [gíft] : 「贈り物、プレゼント」
  • empty [émpti] : 「中身のない、空の、空いている、空っぽの」
  • beautiful [bjúːtəfl] : 「美しい、素晴らしい、見事な、すてきな」
  • gently [dʒéntli] : 「親切に、静かに、優しく、穏やかに」
  • given [gívn] : 「give の過去分詞形」
  • contain [kəntéin] : 「〜を含む、包含する、収容できる」
❖ "The wrapping does ~ "「包装が、あなたが与える贈り物を形作るのではない」。贈り物とは、その外側が問題なのではない。"An empty box ~ "「空の箱は、いかに美しく、それが優しく与えられるとしても、なお、何も含んでいないのだ」。空なものは、あくまでも空。包装が美しくても、何の意味もない。つまり、ここでは、幻想のことを言っているのだ。幻想がいかに美しく、いかに優しくあなたに提示されても、幻想は空っぽの箱と同然である。



And neither the receiver nor the giver is long deceived. Withhold forgiveness from your brother and you attack him.
  • neither [níːðər] A nor B : 「AでもなくBでもない、AとBのどちらも〜ない」
  • receiver [risíːvər] : 「受取人、受領者、受信者」
  • giver [ɡívər] : 「与える人、贈与者、寄贈者」
  • long [lɔ́ːŋ] : 「長く、長い間、長々と」
  • deceive [disíːv] : 「欺く、惑わす、だます、裏切る」
  • withhold [wiðhóuld] : 「与えないでおく、〜を抑える、差し控える」
  • forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦、寛容」
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
❖ "And neither the receiver ~ "「そして、与え手も受け手も、いつまでも騙され続けることはない」。空の箱は、いずればれる。"Withhold forgiveness ~ "「あなたの同胞に赦しを与えないでおいてみなさい」。"and you attack ~ "「それは、あなたが同胞を攻撃していることを意味するのだ」。赦しという中身の詰まった贈り物を与えることなく、空箱だけを与え続けることは、同胞への攻撃である。ACIMの赦し(forgiveness)とは、幻想であると見抜いて、その幻想を幻想として受け入れて、受け流してしまうこと。したがって、ここでは、同胞があなたに対して何か悪いことをした時、それが幻想に過ぎないと受け流し赦してしまうことなく、いつまでも同胞の罪に怒りを感じていることは、同胞への攻撃である、という意味合いだ。



You give him nothing, and receive of him but what you gave.
  • receive [risíːv] : 「〜を受ける、受け取る、受領する、入手する」
  • gave [géiv] : 「give の過去形」
❖ "You give him ~ "「あなたは、同胞に何も与えていないのだ」。空箱を与えることは、何も与えていないことを意味する。与えないから、受け取れないのである。"and receive of him ~ "「あなたは、あなたが与えたものしか受け取ることは出来ないのである」。もし、あなたが、同胞の罪を幻想だとして赦してしまえば、つまり、赦しという贈り物を与えたなら、あなた自身が赦しを受け取ることになる。あなたの罪も幻想として赦されるのだ。
 
 
 

T-23.II.21:1 ~ T-23.II.22:13

21. From the belief in sin, the faith in chaos must follow.

  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • sin [sín] : 「罪、罪悪、ばかげたこと、過失、罪業」
  • faith [féiθ] : 「信頼、信用、信じること、信仰、信条、信念、確信」
  • chaos [kéiɑs] : 「無秩序、混乱状態、混沌」
  • follow [fάlou] : 「〜に続く、〜の次に来る、〜の後について行く」
❖ "From the belief ~ "「罪を信じる気持ちから、混沌を信じる気持ちが後に続くのだ」。神の子が神から分離した後、罪と罰から逃避するために幻想世界が投射されて作り出され、その幻想世界が混沌の世界である。混沌の始まりは、罪の意識なのだ。その世界を支配するものが、混沌の法であり、エゴの思考システムである。



It is because it follows that it seems to be a logical conclusion; a valid step in ordered thought.
  • follow : 「〜に従う、追随する」
  • logical [lɑ́dʒikl] : 「論理にかなった、論理上の、論理的な」
  • conclusion [kənklúːʒən] : 「結論、決定、結末、結果、終末」
  • valid [vǽlid] : 「正当な、根拠のある、主張の正しい」
  • step [stép] : 「階段、段、階、段差」
  • ordered [ɔ́ːrdərd] : 「正しく並べられた、順序付けられた」
  • thought [θɔ́ːt] : 「考え、思考、思索、熟考」
❖ "It is because it ~ "「それは〜だからだ」。"it follows that ~ "「それは論理的な結論のように見え、秩序立った思考の正当なステップである」からだ。神を裏切ったという罪の実在を信じる気持ちが初めにあり、神からの罰の恐れがそれに続き、罪と罰からの逃避のために幻想世界を投射し、混沌の世界こそが現実だと信じ込む。罪から幻想への筋書きでありシナリオなのだが、それなりに秩序立った論理構成となっている。もちろん、逆は必ずしも真ではない。つまり、秩序立った論理構成であるから、罪と罰は真実であるとは言えないのだ。ところで、神への裏切りと神からの罰、と書いたのだが、これを、現実の生活場に置き直して考えてもいい。たとえば、子供が、親を裏切ったという罪を感じ、親から罰せられると恐れ、そんな自分から逃避するために別人格の自分を幻想し、混沌の中に暮らす。また、たとえば、自分が、自分自身を裏切ったという罪を感じ、どうしても自分が許せずに自分を罰し、さらに自己崩壊する恐れを感じ、実際に自己を乖離し、幻想世界に住む自分を偽創造して、混沌の現実を生きる。しかし、いずれにせよ、象徴的出来事は、神と神の子の間で起きた分離なのである。



The steps to chaos do follow neatly from their starting point.
  • neatly [níːtli] : 「きちんと、こざっぱりと、巧妙に」
  • starting point : 「出発点、開始点、始点」
❖ "The steps to chaos ~ "「混沌へのステップは、巧妙に、そのスターティング・ポイントから続いているのだ」。初めに混沌ありきではなく、混沌への筋書きがちゃんとある。初めにあったのは、神の子の神からの分離であり、神への裏切りに対する神の子の罪の意識である。



Each is a different form in the progression of truth's reversal, leading still deeper into terror and away from truth.
  • different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、種、種類」
  • progression [prəɡréʃən] : 「前進、進行、発達、発展、連鎖、連続」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
  • reversal [rivə́ːrsəl] : 「逆転、逆戻り、反転、転倒」
  • lead [líːd] : 「〜を導く、案内する、〜を誘う」
  • still [stíl] : 「今後さらに、もっと」
  • deep [díːp] : 「深い、深さがある、深甚な、深遠な」
  • terror [térər] : 「恐怖」
  • away from : 「〜から離れて」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
❖ "Each is a different form ~ "「真実を逆転させる発展過程において、一つ一つのステップは、異なった形をとる」。しかし、"leading still deeper ~ "「一つ一つのステップは、より深く恐怖へと、より真実からかけ離れるようにと、(あなたを)導いて行くのである」。混沌の度合いが深まるにつれ、あなたはますます恐れを抱き、ますます真実が目に入らなくなってしまう。"the progression of truth's reversal"「真実を逆転させる発展過程」とは、したがって、実相世界からますます離れ、幻想世界にますますはまっていく過程、という意味にとっていいだろう。真実に論駁して、真実を虚偽に逆転させる、という意味合いではない。



Think not one step is smaller than another, nor that return from one is easier.
  • think [θíŋk] : 「〜を考える」
  • small [smɔ́ːl] : 「小さい、小規模の小さめの、つまらない、取るに足りない」
  • another [ənʌ́ðər] : 「もう一つ、もう一人」
  • return [ritə́ːrn] : 「帰ること、返すこと、帰郷、帰還」
  • easy [íːzi] : 「たやすい、やさしい、容易な、簡単な」
❖ "Think not one step ~ "「あるステップが、他のステップより小さいなどと考えてはいけなし、」"nor that return ~ "「あるステップから引き返すのは他のステップから引き返すより簡単だ、などと考えてもいけない」。混沌の幻想から抜け出すことは、そう簡単なことではない。



The whole descent from Heaven lies in each one. And where your thinking starts, there must it end.
  • whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の、丸ごとの」
  • descent [disént] : 「降下、低下、下降、落下、転落、下り坂、堕落」
  • lie [lái] : 「ある、存在する」
  • start [stάːrt] : 「始まる、着手する、事を起こす、出発する、歩きだす」
❖ "The whole descent ~ "「天の王国から完全に墜落する(危険性)は、各々のステップに存在する」。"And where your ~ "「したがって、あなたの思考が始まった時点で、」"there must ~ "「そこで、終わらなくてはならない」。連鎖的にステップは深まっていくので、その連鎖地獄にとらわれないために、混沌の幻想的な思考を開始した時点で、つまり、第一のステップを踏み出しだ時点で、その危険性に気付いて、進むことを終わらせなくてはならない。さもなければ、実相世界に目覚めるどころか、ますます混沌の幻想世界に捕らわれて、抜け出すことがどんどん困難になってしまうのだ。たとえば、大金持ちになった者、絶大な権力を握った者、高い社会的地位に登りつめた者、そういった連中は、完全に幻想に捕らわれて、実相世界に目覚めることはほぼ絶望的であろう。混沌の幻想を夢見たまま、死んでいくしかあるまい。まあ、それもまた人生であるか。



22. Brother, take not one step in the descent to hell. For having taken one, you will not recognize the rest for what they are. And they will follow.
  • take a step in : 「〜に足を踏み出す、〜に足を踏み入れる」
  • descent [disént] : 「降下、低下、下降、落下、転落、下り坂、堕落」
  • hell [hél] : 「地獄、ひどい体験、修羅場、生き地獄」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
  • rest [rést] : 「残り、残っているもの、残りの部分、残余」
❖ "Brother, take not ~ "「同胞よ、地獄へ落ちるステップの一段でも踏み出してはいけない」。"For having taken ~ "「なぜなら、一段でも踏み出してしまえば、」"you will not ~ "「あなたは、残りのステップを、そのあるがままに認識することが出来なくなるからだ」。"And they ~ "意訳する、「残りのステップは、(一段目に続いて次々と)連鎖していくのである」。幻想地獄へ墜落していくステップは、いわば、麻薬のようなものである。幻想は、一度それを味わえば、次々に手を出して連鎖は止まらず、結果、幻想中毒になるのだ。金の亡者、権力の亡者、等々、幻想中毒患者は社会にごろごろいる。



Attack in any form has placed your foot upon the twisted stairway that leads from Heaven.
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • in any form : 「いかなる種類のものであれ」
  • place [pléis] : 「〜を置く、設置する」
  • foot [fút] : 「feet の複数形:足」
  • twisted [twístid] : 「ねじれた、ひん曲がった」
  • stairway [stέərwei] : 「階段、段」
  • lead [líːd] : 「〜を導く、案内する、通じている」
❖ "Attack in any form ~ "「いかなる形の攻撃であれ、それは、天の王国から下へ下りるねじれた階段に、あなたの足を置いたことを示す」。攻撃は、地獄の階段の第一歩である。



Yet any instant it is possible to have all this undone. How can you know whether you chose the stairs to Heaven or the way to hell?
  • instant [ínstənt] : 「瞬間、一瞬」
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る」
  • have : 「〜を〜の状態にする」
  • undone [ʌndʌ́n] : 「undo の過去分詞形」
  • undo [ʌndú] : 「〜を元に戻す、元どおりにする、取り消す」
  • whether [hwéðər] : 「〜かどうか、〜であろうとなかろうと」
  • chose [tʃóuz] : 「choose の過去形」
  • choose [tʃúːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
  • stair [stέər] : 「階段、段」
  • hell [hél] : 「地獄、ひどい体験、修羅場、生き地獄」
❖ "Yet any instant ~ "「しかし、いかなる瞬間であれ、このすべてを取り消しにすることは可能なのだ」。幻想地獄から目覚めることは不可能ではない。ちょうど、麻薬中毒から助かる可能性があることに似ている。非常に困難であることは、覚悟しておかなくてはなるまい。大金持ちに、金への執着心を捨てろ、というようなものだからだ。しかし、大金持ちでさえ、その幻想から救われる可能性は十分あるのだ。"How can you know ~ "「どのようにすれば、あなたは、天の王国への階段を選んだのか、地獄への道を選んだのか、知ることが出来るだろうか」。あなたは今、天の王国へ向かっているのか。それとも、地獄へ向かっているのか。ところで、余談になるが、ACIMでは、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の住む地獄、悪魔や悪霊の住む地獄という概念はない。ACIMの地獄(hell)は、幻想と混沌の極地のことであって、仏教の言う無明の世界という概念に近い。



Quite easily. How do you feel? Is peace in your awareness? Are you certain which way you go?
  • quite [kwáit] : 「とても、非常に」
  • easily [íːzili] : 「容易に、たやすく、苦もなく、あっけなく」
  • feel [fíːl] : 「感じがする、感じる」
  • peace [píːs] : 「平和、安らぎ、平穏、安心、安定」
  • awareness [əwέərnis] : 「認識、自覚、気付いていること、意識性」
  • certain [sə́ːrtn] : 「確信している、確実な、確かな、確信して」
❖ "Quite easily"「いたって、簡単である」。"How do ~ "「あなたは、(何を)どう感じるか」。"Is peace in ~ "「あなたの意識に平和はあるか」。あなたの心が平和を感じているか、ということ。"Are you certain ~ "「どっちに向かって進んでいるか、確信がもてるか」。つまり、地に足がついて、心が平和であるなら、あなたは正しい方向に進んでいるのだ。愛と喜びを感じているなら、あなたは正しい方向に進んでいるのだ。あなたの心に争いの胸騒ぎがし、愛が萎えしぼみ、喜びがその火を消し、不安と憎しみがたぎっているなら、あなたは確実に、天の王国への道の逆方向へ進んでいる。



And are you sure the goal of Heaven can be reached? If not, you walk alone.
  • sure [ʃúər] : 「確信して、確信している、固く信じている」
  • goal [góul] : 「目標、目的地、目的、目指すもの」
  • reach [ríːtʃ] : 「〜に達する、〜に至る」
  • walk [wɔ́ːk] : 「歩く、歩行する」
  • alone [əlóun] : 「独りで、単に」
❖ "And are you sure ~ "「そして、あなたは、天の王国という目的地が到達可能だと確信を持てるだろうか」。天の王国へ、絶対辿り着くのだ、という固い意思力が必要だ。信じれば、必ず叶うのである。想念が現実化するというのは、神の法である。"If not, you ~ "「もしそうでなかったら、あなたは一人で(幻想世界を)彷徨(さまよ)っているのだ」。



Ask, then, your Friend to join with you, and give you certainty of where you go.
  • ask [ǽsk] : 「〜を頼む、依頼する、〜してほしいと頼む」
  • join [dʒɔ́in] : 「加わる、加入する、参加する、交わる、一緒になる」
  • certainty [sə́ːrtnti] : 「確信、確実なこと、必然」
❖ "Ask, then, your ~ "「そうなら、あなたの同胞に加わってもらい、あなたがどこに向かっているのか、確信をもてるようにしてもらいなさい」。あなたが一人、幻想世界を彷徨っているのなら、同胞の助けを借りて、天の王国へ向かう道を教えてもらい、その道を確信をもって進みなさい。"your Friend"を「あなたの同胞」と訳したが、「あなたの友」ということなので、ホーリー・スピリット自身と考えてもいい。むしろ、その方がこの場では意味が通じやすい。つまり、幻想世界で道に迷ったら、ためらうことなくホーリー・スピリットの力を借りて、天の王国へ続く道へと導いてもらいなさい、という意味合いになる。
 
 
 

T-23.II.19:1 ~ T-23.II.20:7

19. There is no life outside of Heaven. Where God created life, there life must be.

  • life [láif] : 「人命、生命、人生」
  • outside [áutsáid] : 「外側に、外部に」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
❖ "There is no life ~ "「天の王国の外に、命はない」。ここで言う「命」とは実相世界の命のことであって、したがって、天の王国の命である。この世界の生物の命のことではない。この世界の生物の命は、幻想世界の命であって、いわば、夢の中の生き物の命である。したがって、現実の実在する命ではないのだ。混乱を回避するために、次のように、簡単に考えればいいだろう。肉体が死ぬことで命が終わると考えられるような命は幻想の命であって、肉体の死によっても永続する命が実相の命である。"Where God created ~ "「神が命を創造したところに、命は存在するに違いないのだ」。神は、幻想世界に命を偽創造したりしない。神は天の王国、実相世界に命を創造したのだ。だから、実在の命は、そこにしかない。



In any state apart from Heaven life is illusion. At best it seems like life; at worst, like death.
  • state [stéit] : 「状態、形勢、情勢、状況」
  • apart from : 「〜から離れて、〜は別として」
  • illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
  • at best : 「よくても、せいぜい」
  • at worst : 「最悪の場合でも、最悪の状態で」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
❖ "In any state ~ "「天の王国からかけ離れた状況下の命は、幻想である」。"At best it ~ "「よく言って、命らしきもの」。"at worst, like ~ "「悪く言えば、そんな命は死である」。したがって、私たちの、この幻想世界における命は、実在の命ではなく、命らしきもの、幻想の命であって、究極的には生きていると言えないのだ。夢の中で生きているように感じる、そんな命に過ぎない。



Yet both are judgments on what is not life, equal in their inaccuracy and lack of meaning.
  • both [bóuθ] : 「両方、双方」
  • judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、意見、分別」
  • equal [íːkwəl] : 「〜と等しい、〜に相当する」
  • inaccuracy [inǽkjərəsi] : 「不正確、誤り、間違い」
  • lack [lǽk] : 「不足、欠乏、欠如、欠落」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義、目的、意図」
❖ "Yet both are ~ "「しかしどちらも、命ではないものに対する判断に過ぎない」。天の王国の外の命らしきものは、生きているとも死んでいるとも判断出来る。どちらも、存在しないものに対する判断に過ぎない。"equal in their inaccuracy ~ "「どちらも共に、不正確な判断であり、意味を欠いているのだ」。あなたは、夜見る夢に出てきた人物を、生きていると判断するだろうか。それとも、夢に過ぎないから、生きてはいないと判断するだろうか。どちらの判断も、正確だとは言えまいし、そもそも、夢の中の存在の生死を論ずること自体、意味がないのだ。この議論を、幻想世界と実相世界にスライドしてやれば、本文の意味が掴(つか)めるだろう。



Life not in Heaven is impossible, and what is not in Heaven is not anywhere.
  • impossible [impɑ́səbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない」
  • anywhere [énihwὲər] : 「どこでも、どこかに、どこへでも、どこにも」
❖ "Life not in ~ "「天の王国以外の命は、不可能なのだ」。"and what is not ~ "「そして、天の王国に存在しないものは、どこにも存在しない」。存在、あるいは実在は、実相世界だけであって、その他の世界、幻想世界は、正確な意味で、存在、実在しない。したがって、真実の命は実相世界の命だけであって、その他の世界の命は、疑似的な命、幻想の命である。生きてもいなければ死んでもいない。生死という判断可能領域をはみ出しているのだ。いわば、劇画の世界の生死だと思えばいい。劇画の主人公は生きているのか、死んでいるのか、と問い掛けるのは無意味である。



Outside of Heaven, only the conflict of illusion stands; senseless, impossible and beyond all reason, and yet perceived as an eternal barrier to Heaven.
  • conflict [kɑ́nflikt] : 「衝突、対立、論争、摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争」
  • stand [stǽnd] : 「立ち上がる、立つ、立っている」
  • senseless [sénslis] : 「無分別な、非常識な、常識がない、愚かな、無意味な」
  • beyond [bijάnd] : 「 〜の域を越えて、〜を越えて、〜を過ぎて」
  • reason [ríːzn] : 「理性、理知、良識、分別、正気」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • eternal [itə́ːrnl] : 「永遠の、不変の、永久の、不滅の」
  • barrier [bǽriər] : 「障害、障壁、柵、垣根」
❖ "Outside of Heaven ~ "「天の王国の外では、幻想間のコンフリクトだけが立ち上がる」。幻想と幻想が、その優劣、真偽を競って衝突し、激しいコンフリクトを起こす。勝った幻想が真実を宣言するのである。 "senseless, impossible ~ "「無分別で、不可能で、あらゆる理性の範囲を越えている」。"and yet perceived ~ "「しかし、同時に、天の王国に対する永遠の障害物として知覚されるのである」。つまり、コンフリクトを起こしている幻想が、天の王国への道を塞いでいるのだ。したがって、天の王国へ昇るには、その道を塞いでいる幻想という障害物を取り払わなければいけない。どこぞの宗教のように、幻想を抱いたまま、天の王国に憧れるだけでは、天の王国へ回帰出来ないのだ。まず第一に、幻想から目覚める作業が必要とされるのである。



Illusions are but forms. Their content is never true.
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、現れ、姿」
  • content [kɑ́ntent] : 「入っているもの、内容、中身、在中物」
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
❖ "Illusions are ~ "「幻想とは、形だけでしかない」。幻想は、表面的な側(がわ)だけの存在であり、中身は空っぽである。空っぽだから、"Their content is ~ "「幻想の内容は、決して真実ではないのだ」。無であり空であることは意味を持たない。意味のないものは真実ではない。後世の仏教は、空(くう)という概念に玄学的な意味を追求したが、空は幻想そのものであり、したがって、意味のないものに意味を持たせようとする行為は意味はないのだ。



20. The laws of chaos govern all illusions. Their forms conflict, making it seem quite possible to value some above the others.
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
  • chaos [kéiɑs] : 「無秩序、混乱状態、混沌」
  • govern [ɡʌ́vərn] : 「支配する、統治する、統率する、治める、管理する」
  • conflict [kənflíkt] : 「衝突する、争う、抵触する、対立する、矛盾する」
  • quite [kwáit] : 「かなり、なかなか、とても、非常に」
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る」
  • value [vǽljuː] : 「〜を高く評価する、重視する、大事にする、尊重する」
  • above [əbʌ́v] : 「上側に、〜の上に、〜を超えて」
❖ "The laws of chaos ~ "「混沌の法は、あらゆる幻想を支配する」。つまり、エゴの思考システムである幻想の法は、この幻想世界を牛耳(ぎゅうじ)っている。"Their forms ~ "「幻想の形はコンフリクトを起こし、」形だけの幻想は互いにコンフリクトを起こし、"making it seem quite ~ "意訳する、「ある幻想が他の幻想よりずっと価値があるなどという価値付けを完全に可能にしているように見える」。ある幻想と他の幻想が対立し、勝った方が価値があり、したがって、真実だと信じ込むのである。分離分裂した世界では、多数のものに序列を設けて整理整頓しないことには、何が何だかわけがわからなくなるのだ。実相世界は一元論世界であり、存在は単一であるので、序列をつける必要はない。



Yet each one rests as surely on the belief the laws of chaos are the laws of order as do the others.
  • rest [rést] : 「ある、置かれている」
  • surely [ʃúərli] : 「疑いなく、しっかりと、確かに、確実に、必ず」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • order [ɔ́ːrdər] : 「秩序、治安、体制、順位、序列」
❖ "Yet each one ~ "「しかし、幻想一つ一つは、〜という信念の上にしっかりと安住している」。"the laws of chaos ~ "「混沌の法は、他の法と同じく、秩序の法を成している」という信念の上にしっかりと安住している。法とは、秩序を維持するための道具である。混沌の法も、他の法同様、秩序を保ってくれるものだと信じられ、その信念の上に幻想が居座っている。



Each one upholds these laws completely, offering a certain witness that these laws are true.
  • uphold [ʌphóuld] : 「守る、支持する、支える、上げる、持ち上げる」
  • completely [kəmplíːtli] : 「全に、十分に、全面的に、全く、徹底的に」
  • offer [ɔ́ːfər] : 「差し出す、捧げる、提供する」
  • certain [sə́ːrtn] : 「確実な、確かな、確信して」
  • witness [wítnəs] : 「証拠、証言、証人、参考人」
❖ "Each one upholds ~ "「幻想一つ一つが、完全にこれらの混沌の法を遵守し、」"offering a certain ~ "「これらの混沌の法が真実であるという、確かな証言を提供している」。混沌の法と幻想が、混ざり合い、馴れ合い、互いに騙し合い、もたれ合い、もつれ合っているのだ。



The seeming gentler forms of the attack are no less certain in their witnessing, or their results.
  • seeming [síːmiŋ] : 「外観上の、外見だけの、見せかけの、うわべの」
  • gentle [dʒéntl] : 「優しい、寛大な、穏やかな」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • no less : 「実に、確かに、まさに、まさしく」
  • witness [wítnəs] : 「〜を証言する、〜を証明する」
  • result [rizʌ́lt] : 「結果、結末、成り行き、効果、成果、成績」
❖ "The seeming gentler ~ "意訳する、「見かけ上穏やかな攻撃の形もまた、確かに、(混沌の法は真実であると)証言し、その結果(である秩序)を保証している」。激しい攻撃は秩序を乱してしまうように見えるが、穏やかな、攻撃とも思えないような攻撃は、逆に、秩序を維持し、法を遵守しているかに見えるのだ。穏やかな攻撃の例を上げるなら、権力というものがその代表格だろう。権力による支配は、秩序を維持し、法を遵守しているかに見える。しかし、元を正せば、権力による支配は、表面上穏やかな攻撃に過ぎない。



Certain it is illusions will bring fear because of the beliefs that they imply, not for their form.
  • bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜を連れて来る、〜をもたらす」
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
  • because of : 「〜のために、〜のせいで」
  • imply [implái] : 「暗に伝える、暗示する、ほのめかす」
❖ "Certain it is illusions ~ "「幻想が恐れをもたらすということは、確かなことだ」。"because of the beliefs ~ "「幻想の形ではなく、幻想が暗に意味する信念によって、恐れをもたらすのである」。幻想が、その表面上、見かけが恐ろしいのではない。幻想とは、罪と罰の恐れから逃避するために心が投射した幻影である。幻想が暗に意味する信念とは、したがって、罪と罰の存在である。幻想によって、いかに罪と罰から逃れようとしても、幻想には罪と罰が幽霊のようにまとわりついてくるのである。



And lack of faith in love, in any form, attests to chaos as reality.
  • lack [lǽk] : 「不足、欠乏、欠如、欠落」
  • faith [féiθ] : 「信頼、信用、信じること、信仰、信条、自信、信念、確信」
  • in any form : 「いかなる種類のものであれ」
  • attest [ətést] : 「証言する、証明する」
  • attest to : 「証拠立てる、証言する、証明する、立証する」
  • reality [riǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
❖ "And lack of ~ "「そして、愛を信じる気持ちの欠如は、形がどうであれ、」"attests to chaos ~ "「混沌が現実であると証言しているのである」。一言で言えば、愛なき心に混沌が生まれるのだ。愛という真実の実在を信じきれないところに、幻想が侵入し、実相を駆逐し、混沌を生み出し、恐れ吹き出すである。
 
 
 

T-23.II.17:1 ~ T-23.II.18:9

17. How can some forms of murder not mean death? Can an attack in any form be love?

  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、種、種類、型、現れ、姿」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • mean [míːn] : 「~を意味する、…とは~を指す」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり」
  • in any form : 「いかなる種類のものであれ」
❖ "How can some forms ~ "「何らかの形の殺人は、死を意味しないなどということが、どうしてあり得ようか」。殺人は形がどうであれ、死を意味する。"Can an attack ~ "「何らかの形の攻撃が、愛であることが出来ようか」。攻撃は形がどうであれ、愛に逆行するものである。



What form of condemnation is a blessing? Who makes his savior powerless and finds salvation?
  • condemnation [kὰndemnéiʃən] : 「激しい非難、糾弾、有罪宣告」
  • blessing [blésiŋ] : 「祝福、恩恵、幸運」
  • savior [séiviər] : 「救助者、救い手、救済者、救い主」
  • make : 「~の状態を作り出す、~にする」
  • powerless [páuərlis] : 「効果がない、無能な、力のない」
  • find [fáind] : 「見つける、発見する、見いだす」
  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
❖ "What form of ~ "「どんな形の非難が、祝福であろうか」。非難は祝福に逆行する。"Who makes his savior ~ "「一体誰が、救い主からパワーを奪い、かつ、救いを見つけようなどとするだろうか」。救いを求める者は、救い主にパワーを与えるはずだ。パワーを奪う者は、救いを放棄しているに違いない。



Let not the form of the attack on him deceive you. You cannot seek to harm him and be saved.
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • deceive [disíːv] : 「欺く、惑わす、だます、裏切る」
  • seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
  • harm [hάːrm] : 「害する、阻害する、~に危害を加える」
❖ "Let not the form of ~ "「攻撃の形をしたものが、あなたを騙すことがないようにしなさい」。あなたやあなたの同胞を攻撃する、その攻撃がどんな形をとろうとも、その形に騙されてはいけない。攻撃は、どんな形をとろうとも、攻撃に変わりはないのだ。愛のための攻撃など存在しない。騙されてはダメだ。"You cannot seek ~ "「誰かに危害を加えた上で、救われようとしても無駄である」。幻想の攻撃を信じて他者に危害を加えておきながら、幻想から救われて実相に目覚めようなどと求めることは不可能だ。



Who can find safety from attack by turning on himself? How can it matter what the form this madness takes?
  • safety [séifti] : 「安全、無事、無難なもの」
  • turn on : 「~に反抗する、~に敵意を示す、~を攻撃する」
  • matter [mǽtər] : 「重要である、重要になる」
  • madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
❖ "Who can find safety ~ "「自分自身を攻撃することで、攻撃からの安全を見い出すことなど、誰が出来ようか」。「自分自身を攻撃する」とは、おかしとお思いであろうが、実相世界においては自他一如であるから、他者への攻撃は自分自身への攻撃と同じなのだ。したがって、この文章は、「他者を攻撃することは自分自身を攻撃することなので、他者を攻撃していれば、攻撃されずに安心だというのは正しくない」という意味合いになる。"How can it matter ~ "「この狂気がいかなる形をとるか、どうして重要だろうか」。攻撃という狂気がどんな形をとるか、それは重要なことではない。形がどうであれ、攻撃は狂気であり、それ以上でもそれ以下でもない。狂気の幻想である。



It is a judgment that defeats itself, condemning what it says it wants to save.
  • judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、意見、分別」
  • defeat [difíːt] : 「負かす、倒す、破る、打倒する」
  • condemn [kəndém] : 「~を非難する、責める、罵倒する、糾弾する」
❖ "It is a judgment ~ "「判断自体を打ち消しているのは、その判断である」。"condemning what it says ~ "分詞構文、理由、「救いたいと言っている者に有罪を宣告しているのだから」。非常に意味がとり難い箇所である。無生物の抽象語「判断」が主語になっているので理解し難いのだ。判断を下しているのは、ここではエゴであるので、思い切って、判断という主語をエゴに置き換えてみよう。そうすると、おおよそ、次のような意味合いになる。エゴは、あなたを罪から救ってあげたいと言ってあなたを唆(そそのか)しているが(it says it wants to save)、同時に、あなたに対して、あなたは罪があると有罪を宣告しているのである(condemning)。エゴの言っていることとやっていることは、真っ向から対立している、矛盾しているのだ(It is a judgment that defeats itself)。なぜ、判断(judgment)という言葉が出てきたのかというと、救いたいという判断と有罪を宣告するという判断が、真っ向からぶつかり合っているからだ。だから、判断が判断を打ち負かしている(It is a judgment that defeats itself)となる。



Be not deceived when madness takes a form you think is lovely. What is intent on your destruction is not your friend.
  • deceive [disíːv] : 「欺く、惑わす、だます、裏切る」
  • think [θíŋk] : 「~を考える、〜と思う」
  • lovely [lʌ́vli] : 「愛らしい、かわいらしい」
❖ "Be not deceived ~ "「狂気が、あなたが愛らしいと思うような形をとったとしても、それに騙されないようにしなさい」。狂気が、張り子のトラのように、外面をどんなに愛らしく見せかけても、その中身は空っぽなのだと、騙されずに認識出来るようにしないさい。



18. You would maintain, and think it true, that you do not believe these senseless laws, nor act upon them.
  • maintain [meintéin] : 「~と主張する、支持する、持続する」
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • senseless [sénslis] : 「無分別な、非常識な、愚かな、無意味な」
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
  • act upon : 「~に従って行動する」
❖ "You would maintain ~ "「あなたは、that以下を主張し、またその主張は正しいと思うかもしれない」。"that you do not ~ "「あなたは、こんな無分別な法を信じていないし、そんな法に従って行動もしていない」と主張し、それは正しいと思っているかも知れない。あなたの正気さが健在なら、そう主張するだろう。



And when you look at what they say, they cannot be believed. Brother, you do believe them.
  • look at : 「~を見る~を調べる、~を考察する、考える」
❖ "And when you look at ~ "「あなたが、無分別な法が何を言っているのか調べてみれば、」"they cannot be ~ "「それは、到底、信じることの出来るものではない(とわかるはずだ)」。これまた、あなたの正気さが健在なら、無分別の法が信じられないとわかるはずだ。しかし、"Brother, you do ~ "「同胞よ、あなたは、この無分別の法を信じているのだ」。残念ながら、あなたの正気さは正しく機能してはいないようだ。



For how else could you perceive the form they take, with content such as this? Can any form of this be tenable?
  • else [éls] : 「別の方法で、ほかに、さもなければ、さもないと」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、~に気付く、~を見抜く」
  • content [kɑ́ntent] : 「容量、含有量、容積、体積」
  • tenable [ténəbl] : 「持ちこたえられる、防御できる、維持できる、支持できる」
❖ "For how else could you ~ "「なぜなら、さもなければ、どうやってあなたは、こんな中身をもった無分別な法がとる形を知覚できようか」。形を信じてしまうので、本当は中身の空な無分別は法を、あたかも中身が詰まっているかのように錯覚して(知覚して)、その形もろともに信じてしまうのだ。"Can any form ~ "「こんな形など、維持出来るだろうか」。中身のない、側(がわ)だけの形というものは、存続し得るだろうか。



Yet you believe them for the form they take, and do not recognize the content.
  • recognize [rékəgnàiz] : 「~を認識する、~を認証する、認める、受け入れる」
❖ "Yet you believe them ~ "「しかし、あなたは、無分別な法がとる形ゆえに、その法を信じているのだ」。"and do not recognize ~ "「そして、内容は認識していないのである」。見栄えのするきらびやかな法である。そのきらびやかな形に騙されて、中身が空であることを知らずに、その法を信奉しているのだ。エゴの思考システムを信じるとは、そういうことなのである。無神論も唯物論も虚無主義の論も、論としての形は非常に構築的で堅固で、きらびやかな学術的色彩を帯びているが、しかし、その中身は空虚である。空なのだ。愛も喜びも平和も美も、静寂さえない。かしましい議論があるだけだ。



It never changes. Can you paint rosy lips upon a skeleton, dress it in loveliness, pet it and pamper it, and make it live?
  • change [tʃéindʒ] : 「変わる、変化する、変遷する」
  • paint [péint] : 「塗る」
  • rosy [rouzi] : 「バラのような、健康そうな、楽観的な」
  • lip [líp] : 「唇」
  • skeleton [skélətn] : 「骨格、骸骨」
  • dress [drés] : 「~に服を着せる、~を飾り付ける」
  • loveliness [lʌ́vlinis] : 「愛らしさ、素晴らしさ」
  • pet [pét] : 「~をかわいがる、愛撫する」
  • pamper [pǽmpər] : 「〜を甘やかす」
  • live [lív] : 「生きる、生存する、生き永らえる」
❖ "It never ~ "「それは決して、変わりない」。無分別の法は、形こそ様々だが、空っぽという点では、まったく変わりない。"Can you paint rosy ~ "「髑髏(しゃれこうべ)の唇にばら色の紅を塗り、かわいげな服を着せ、愛撫し、甘やかし、そして、生きているようにしようなどと、あなたは、そんなことが出来るだろうか」。無分別の法を信じるとは、そういうことなのだ。



And can you be content with an illusion that you are living?
  • be content [kɑ́ntent] with : 「~に満足している」
  • illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
❖ "And can you be content ~ "「そして、はたしてあなたは、あなたが生きているという幻想に満足出来るのだろうか」。無分別の法を信じるとは、幻想に生きることを意味する。幻想に生きるとは、夢の中に埋没することであって、本当は生きていると言えない。まるで、夢見る植物人間なのだ。それでも、あなたは、生きているという幻想に満足していると主張するのか。
 
 
 

T-23.II.15:1 ~ T-23.II.16:7

15. These do not seem to be the goals of chaos, for by the great reversal they appear to be the laws of order. How could it not be so? Chaos is lawlessness, and has no laws.

  • goal [góul] : 「目標、目的地、目的、目指すもの」
  • chaos [kéiɑs] : 「無秩序、混乱、混沌」
  • great [gréit] : 「大きな、巨大な、偉大な、卓越した」
  • reversal [rivə́ːrsəl] : 「逆転、逆戻り、反転」
  • appear [əpíər] to : 「〜するように見える、〜するように思える」
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
  • order [ɔ́ːrdər] : 「秩序、道理、治安、体制、順位、序列」
  • lawlessness [lɔ́ːlisnis] : 「無法、法律に反すること」
❖ "These do not seem to ~ "「混沌という目的があるようには見えない」。混乱の法は、無秩序を目的にしているようには見えない。"for by the great ~ "「なぜなら、大逆転によって、混乱の法は秩序の法のように見えてくるからだ」。"the great reversal"「大逆転」とは、前段落で述べられた、正気と狂気、真実と虚偽、等々の逆転。つまり、幻想が実相で、実相が幻想であると思い込み、信じ込むこと。"How could it not ~ "「そう見えないことがあろうか」。混沌にも、秩序の法があるように見える。しかし、実際は、"Chaos is lawlessness ~ "「混沌は、無法状態のことであり、法というものを持っていないのだ」。



To be believed, its seeming laws must be perceived as real. Their goal of madness must be seen as sanity.
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • seeming [síːmiŋ] : 「外観上の、外見だけの、見せかけの、うわべの」
  • perceiveb [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
  • madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
  • seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
  • sanity [sǽnəti] : 「正気、健全さ」
❖ "To be believed ~ "「それが信じられるように、混沌のもつ見せかけの法は、現実的なものとして知覚されなければならない」。つまり、現実に役立つ法のように思われなくてはならない。"Their goal of ~ "「狂気の目的は、正気であるかのように見られなくてはならないのだ」。狂気が正気に見えてくるから、世の人々の多くは、混沌の法に騙されて、それこそが真実であると思い込んでいるのである。あなたは、目の前に見える現実を実在だとは思わないだろうか。目の前の現実が真実だと思わないか。そうなら、あなたはまんまと騙されているのだ。幻想が実相で、実相が幻想であると思い込んでいるのである。



And fear, with ashen lips and sightless eyes, blinded and terrible to look upon, is lifted to the throne of love, its dying conqueror, its substitute, the savior from salvation.
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
  • ashen [ǽʃən] : 「灰の、灰色の、灰白色の、青白い」
  • lip [líp] : 「唇」
  • sightless [sáitlis] : 「目に見えない、盲目の」
  • blind [bláind] : 「〜を盲目にする、〜を見えなくさせる」
  • terrible [térəbl] : 「恐ろしい、怖い、ひどく嫌な、とても不快な」
  • look upon : 「〜を見る」
  • lift [líft] : 「持ち上げる、高める」
  • throne [θróun] : 「王位、国王、王座」
  • dying [dáiiŋ] : 「死にかけている、臨終の、消えかけている」
  • conqueror [kάŋkərər] : 「征服者、勝利者」
  • substitute [sʌ́bstətjùːt] : 「代わりのもの、代用品」
  • savior[séiviər] : 「救助者、救い手、救済者、救い主」
  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
❖ "And fear, with ~ "「恐れは、血の気を失った唇と何も見えない目をもって、」"blinded and terrible ~ "「盲目となり見ることを恐れているが、」"is lifted to the ~ "「その恐れは、愛の王位へと引き上げらるのだ」。"its dying ~ "「それは、死を目の前にした愛の征服者であり、愛に代わるものであり、救いからの救い主なのだ」。混沌の法を信じる者にとっては、愛は不必要であり、愛に代わって恐れが一番の主役となる。盲目の、そして、死神のような血の気のない唇をした恐れの姿である。混沌からの救いは必要ではなく、恐れが混沌をますます深めてくれるのだ。



How lovely do the laws of fear make death appear. Give thanks unto the hero on love's throne, who saved the Son of God for fear and death!
  • lovely [lʌ́vli] : 「愛らしい、かわいらしい、美しい、すてきな」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり」
  • thank [θǽŋk] : 「感謝、謝意、謝辞」
  • hero [híərou] : 「英雄、偉人」
  • save [séiv] : 「救う、助ける」
❖ "How lovely do the laws ~ "「恐れの法は、どんなにか死を愛らしく見せてくれるだろう」。"Give thanks unto ~ "「(愛を蹴落とし、)愛の王座に就いた恐れと言うヒーローに感謝するがいい」。"who saved ~ "「そのヒーローこそが、恐れと死のために、神の子を救ったのだ」。恐れが、恐れと死を温存するために、あえて神の子を殺すことなく、いつまでも恐れに捕らわれているようにと、罪という名の牢獄に閉じこめたのだ。その事情を、皮肉を込めて、「神の子を救った」と表現したのである。つまり、無に自己を同一化して虚無に生きることより、罪に同一化して、恐れを抱きつつその罪と戦う生き方の方が、エゴの考えでは、救いとなるのだ。自由を与えられて、罪という野に放たれるより、罪を背負ったまま牢獄で暮らす方が、エゴの考えでは、楽なのである。このテーマは、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」に詳しい。特に、「大審問官」の章は圧巻である。たまにはACIMをちょっと離れて、ドストエフスキーを読んでみるのも、いい勉強になる。



16. And yet, how can it be that laws like these can be believed? There is a strange device that makes it possible.
  • strange [stréindʒ] : 「奇妙な、変わった、変な、見知らぬ」
  • device [diváis] : 「機器、装置、道具、発明品、仕掛け、工夫」
  • possible[pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る」
❖ "And yet, how can ~ "「しかし、どうすれば、このような法が信じられるのだろうか」。"There is a strange device ~ "「それを可能にする奇妙なトリックがあるのだ」。エゴは、手品師のように巧妙にトリックを使う、トリックの名手である。誰でも騙されるのだ。騙されたあなたが悪いのではない。エゴがあなたの先を行っているだけなのだ。



Nor is it unfamiliar; we have seen how it appears to function many times before.
  • unfamiliar [ʌnfəmíljər] : 「よく知らない、知られていない、なじみのない」
  • seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
  • appear to : 「〜するように見える、〜のように思われる」
  • function [fʌ́ŋkʃən] : 「働く、機能する」
  • many times : 「何度も」
  • before [bifɔ́ːr] : 「以前に、前に、早く、先に」
❖ "Nor is it ~ "「決して、(エゴのトリックは)馴染みのないものではない」。"we have seen how ~ "「私たちは、以前何度も、それがどのように機能らしきことをしているか、見てきた」。答えを先取りするようで申し訳ないが、そのトリックとは、張り子のトラのことだ。中身の空っぽの、側(がわ)だけが立派な存在感のあるもののことだ。内容はなく形だけもの。内容主義ではなく、形式主義というトリックである。エゴは、混沌の法にこれを使う。



In truth it does not function, yet in dreams, where only shadows play the major roles, it seems most powerful.
  • in truth [trúːθ] : 「実のところ、実際には」
  • dream [dríːm] : 「夢、夢現象、夢うつつの状態」
  • shadow [ʃǽdou] : 「影、暗がり、人影、陰」
  • major [méidʒər] : 「主要な、重要な、専攻の、大きい方の」
  • role [róul] : 「役、役目、役割、任務、職務」
  • major role : 「主要な役割、主役」
  • powerful [páuərfəl] : 「強い、強力な、力強い、迫力のある」
❖ "In truth it ~ "「本当は、機能しているのではない」。"yet in dreams, where ~ "「しかし、夢の中では、影だけが主役を演じているので、」"it seems most ~ "「それは、最も力のあるものに見えるだけなのだ」。中身がないので、それは影のような存在である。しかし、側(がわ)は堅固なので、表面的には力がありそうなのだ。その張り子のトラは、夢の中で暴れまくる。



No law of chaos could compel belief but for the emphasis on form and disregard of content.
  • compel [kəmpél] : 「屈服させる、無理に従わせる」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • emphasis [émfəsis] : 「強調、重要性」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、体つき、現れ」
  • disregard [dìsriɡάːrd] : 「無関心、無視、軽視」
  • disregard of : 「〜の無関心、〜の無視、〜の軽視」
  • content [kɑ́ntent] : 「内容、中身」
❖ "No law of chaos ~ "ここは"No ~ but ~ "とあるので、解釈に気を付けること、つまり、"No A but B "は「BではないAはない」、つまり「すべてのAはBだ」という意味になる、「すべての混沌の法は、形を強調し内容を無視するので、無理やりにも信じさせるのである」。まさに、張り子のトラということだ。混沌の法は、内容はめちゃくちゃなのだ。矛盾と虚偽だらけだ。真実の内容はない。しかし、表面的には、非常に堅固な論理で武装して、立派な建造物に見えるのだ。その側(がわ)をもって、騙すのである。信じさせるのだ。まさにトリックである。



No one who thinks that one of these laws is true sees what it says. Some forms it takes seem to have meaning, and that is all.
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
  • see [síː] : 「理解する、わかる」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義、目的、意図」
❖ "No one who thinks ~ "「これらの混沌の法の一つでも正しいと思っている者は誰も、その法が何を言わんとしているか、わかっていない」。内容がないから、言わんとしていることなど、混沌の法には、そもそもないのだ。混沌の法を信奉する者も、内容を問うことはない。立派な御殿が目の前に見えるだけで安心するのだ。お気付きのように、奇っ怪な新興宗教、カルト教団のトリックとそっくりではないか。"Some forms it takes ~ "「混沌の法がとる形のいくつかは、意味をもっているように見えるかも知れない」。"and that is ~ "「が、そう見えるだけの話しだ」。何もないのだ。混沌の法は、幻想の法であって、相手が幻想なのだから、そもそも実在する内容などないのだ。無であり、空である。無であり空であるから、意味すらない。しかし、その無と空を覆う殻に、人々は騙されるのである。空っぽの貝殻に、人は実在を感じてしまうのだ。張り子のトラに恐怖を覚えるのである。
 
 
 

T-23.II.13:1 ~ T-23.II.14:8

13. Never is your possession made complete. And never will your brother cease his attack on you for what you stole.

  • possession [pəzéʃən] : 「所有、所持、占有、所有権」
  • make : 「〜の状態を作り出す、〜にする」
  • complete [kəmplíːt] : 「全部そろった、完全な、全部の」
  • cease [síːs] : 「〜をやめる、よす、中止する」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • stole [stóul] : 「steal の過去形」
  • steal [stíːl] : 「盗む、盗み取る」
❖ "Never is your possession ~ "「あなたの所有は、決して完結することはない」。奪って手に入れても、満足感は長続きせず、すぐに、また何かが欲しくなる。また、あなたが他者から奪えば、当然、他者はあなたから奪おうとし、"And never will your ~ "「あなたが盗んだために、同胞はあなたへの攻撃を止めることはないだろう」。いわば、奪い奪われの争奪戦が繰り広げられるわけだ。



Nor will God end His vengeance upon both, for in His madness He must have this substitute for love, and kill you both.
  • vengeance [véndʒəns] : 「復讐、仕返し、報復」
  • both [bóuθ] : 「両方、双方」
  • madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
  • substitute [sʌ́bstətjùːt] : 「代わりのもの、代用品、代替」
  • kill [kíl] : 「殺す、葬る、始末する」
❖ "Nor will God end ~ "「神は、二人への報復を終わらせることはないだろう」。"for in His madness ~ "「なぜなら、神は狂気の中にあって、愛に代わるものを持つに違いないし、あなたと同胞の両者を殺すだろうからだ」。もちろん、ここで語られている『神』は、実相的な真実の神ではない。幻想の中で奪い奪われしているあなたと同胞の目から見たときの神の姿である。幻想の神の姿だ。神を裏切って罪を背負ったあなたと同胞を、神は罰するであろうし、復讐するであろう。狂気の中で怒り狂って、あなたと同胞を殺すであろう。神自身が、愛に代わる虚無主義を持とうとするだろう。つまり、愛を捨て、憎悪に燃え上がるのだ。こんな神の虚像を、あなたと同胞は抱いてしまうのだ。



You who believe you walk in sanity with feet on solid ground, and through a world where meaning can be found, consider this: These are the laws on which your "sanity" appears to rest.
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • walk [wɔ́ːk] : 「歩く、歩行する」
  • sanity [sǽnəti] : 「正気、健全さ」
  • feet [fíːt] : 「foot の複数形」
  • foot [fút] : 「足」
  • solid [sɑ́ləd] : 「硬い、頑丈な、確固とした、揺るぎない」
  • ground [gráund] : 「地面、地べた、地盤、土地、用地」
  • through [θruː] : 「〜を通り抜けて、経て、〜の中を通って」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義、目的、意図」
  • found [fáund] : 「find の過去・過去分詞形」
  • find [fáind] : 「見つける、発見する、見いだす」
  • consider [kənsídər] : 「〜と考える、〜を考慮する」
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
  • appear [əpíər] : 「〜のように見える、〜と思われる」
  • rest [rést] : 「ある、置かれている」
❖ "You who believe you ~ "「堅固な大地を両足で踏みしめながら、正気さを保って歩いていると信じているあなたは、」"and through a world ~ "「そして、意味が見つかる可能性をもった世界を渡り歩いていると信じているあなたは、」"consider this ~ "「次のように考えている」。"These are the laws ~ "「これこそが、あなたの『正気さ』が宿るかにみえる法なのだ」と。確実に存在するのは、この世界の物質であり、その物質とともに存在する自分は確実に正気であると、あなたは思っている。神とか愛とか真実とか、目にも見えないものを廃して、目に見える確実さだけを世界は提示してくれるし、そこにこそ意味がある。そういう、明白なもので作り上げられる法こそが、意味のある確実な法なのだ。これがあなたの主張であり、あなたの背後であなたを操っているエゴの思考である。



These are the principles which make the ground beneath your feet seem solid. And it is here you look for meaning.
  • principle [prínsəpl] : 「原則、原理、公理、原論、法則、方式」
  • beneath [biníːθ] : 「〜の真下に、〜のすぐ下に」
  • solid [sɑ́ləd] : 「固体の、固形の、硬い、頑丈な」
  • look for : 「〜を探す」
❖ "These are the principles ~ "「これらは、あなたの足下の大地を固く見せる原理である」。あなたは、本当は幻想の中で夢を見、いわば、錯覚の中にふわふわ浮いているような存在なのだ。しかし、その夢こそが現実だと主張するとき、あたかもあなたは、堅固な大地に立っている自分を錯覚するのである。幻想を実在と主張する原理が、あなたを、堅固に存在するかに見えるこの世界に留め置くのである。"And it is here you ~ "「そして、こここそが、あなたが意味を見いだせる場所だとするのである」。神や愛や真実などの抽象概念の中に、生きる意味を求めても意味はない。この大地、完璧なほどの具象の中にこそ、あなたの命の意味はある。それを、この世界で見つけられるはずなのだ。なぜなら、この世界以外に、天の王国など存在するはずもなく、それは単なる希望という名の作り事なのだから。こういう、エゴの囁きが聞こえてこないだろうか。



These are the laws you made for your salvation. They hold in place the substitute for Heaven which you prefer.
  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
  • hold [hóuld] : 「維持する、保持する、持続する」
  • in place [pléis] : 「適当な位置に、適所に、所定の場所に、定位置に」
  • prefer [prifə́ːr] : 「〜を好む、むしろ〜の方を好む」
❖ "These are the laws ~ "「これは、あなたが自分の救済のために作った法である」。あなたという仮面をかぶったエゴが作った法である。エゴの思考システムであり、無神論(唯物論)と虚無主義の要塞である。"They hold in place ~ "「その法は、適当な場所に、あなたの好む天の王国の代わりを保持するのだ」。唯物論的エゴの法は、あなたが幸せを感じられるように、天の王国に代わる極楽を、この世界の適所に用意してくれる。それは、金儲けであったり、出世であったり、権力であったり、愛欲であったり、等々、この世の快楽のすべてを、エゴは用意してくれるのだ。その、極楽にあなたが達したとき、あなたは、この世で救われたと思うのである。あなたは、成功者となり、負け犬の同胞を軽蔑の目を持って見下すことだろう。



This is their purpose; they were made for this. There is no point in asking what they mean. That is apparent.
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
  • no point : 「意味がないこと」
  • mean [míːn] : 「〜を意味する、…とは〜を指す」
  • apparent [əpǽrənt] : 「明らかな、明白な」
❖ "This is their ~ "「これが、それの目的である」。"they were ~ "「このために、それは作られたのだ」。真実の天の王国に代わって、この地上に、快楽の極楽を作り出すことが、目的である。あなたの救済を歌う極楽であり、そのために、混沌の法が作られたのだ。"There is no point in ~ "「いったい、そんなものが何を意味するのか、訊ねてみる意味さえない」。"That is ~ "「それは、明らかなのだ」。幻想を存続させること、それ以上の意味はないのだ。実相に気付かせないようにすること、それに尽きる。神に背を向け(無神論)、物質の世界(唯物論)こそが極楽を提供してくれると誘い、それが手に入らなかったら負け犬になれ(虚無主義)と言っている、それが、混沌の法である。幻想に数々の味付けをして、あなたの目の前に、その料理を出すのである。飢えたあなたは、その幻想の料理をむさぼり食うのである。飽くことなく食い続けるのだ。これが、仏教で言うところの『餓鬼(がき)の世界』である。



The means of madness must be insane. Are you as certain that you realize the goal is madness?
  • means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
  • madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
  • insane [inséin] : 「正気でない、精神障害の、非常識な」
  • certain [sə́ːrtn] : 「確信している、確実な、確かな、確信して」
  • realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、悟る、自覚する、実感する」
  • goal [góul] : 「目標、目的地、目的、目指すもの」
❖ "The means of madness ~ "意訳する、「狂気の手段とは、狂った振る舞いをすることだ」。狂気として生きるには、狂気の思考システムを信じて、狂気を演ずればいい。"Are you as certain ~ "「目的は狂気なのだと、あなたは認識していると確信が持てるだろうか」。お気付きだろうが、"madness"「狂気」を"illusion"「幻想」に置き換えても意味は通じる。いわば、狂気の幻想である。エゴの狂った思考システムの目的は、狂気の幻想を存続させること、それに尽きる。なぜなら、エゴ自体が狂気の幻想だからだ。



14. No one wants madness, nor does anyone cling to his madness if he sees that this is what it is.
  • cling [klíŋ] : 「執着する、しがみつく」
  • cling to : 「〜に固執する、〜に粘着する」
❖ "No one wants ~ "「誰も、狂気など望みはしなし、」"nor does anyone cling ~ "「もし、狂気が、どんな正体をしているか知ったなら、誰も、狂気にしがみつくことはないのだ」。エゴの、狂気の思考システムの全貌が明らかになったら、その奇っ怪でおぞましい正体を目の当たりにして、誰もエゴを信じることはすまい。



What protects madness is the belief that it is true. It is the function of insanity to take the place of truth.
  • protect [prətékt] : 「保護する、守る、防御する」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
  • function [fʌ́ŋkʃən] : 「職務、役割、機能、作用、働き、効用」
  • insanity [insǽnəti] : 「狂気、精神病、精神異常」
  • take the place of :「 〜の代わりをする、〜に取って代わる」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
❖ "What protects madness ~ "「狂気を守っているものは、その狂気が真実であるという狂信である」。"It is the function ~ "「真実に取って代わること、それが、狂気の役割である」。数々の奇っ怪な幻想を狂信することで、その幻想が唯一の真実だと信じ込むのである。ありもしない現実を信じることなので、『狂信』なのだ。



It must be seen as truth to be believed. And if it is the truth, then must its opposite, which was the truth before, be madness now.
  • seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
  • opposite [ɑ́pəzit] : 「反対、正反対のもの、逆の物」
  • before [bifɔ́ːr] : 「以前に、前に、早く、先に」
❖ "It must be seen ~ "意訳する、「狂気は、信じるに足る真実と見なされるに違いない」。"And if it is ~ "「もし、狂気が真実であるなら、」"then must its ~ "「その時は、狂気の反対である正気さが、」"which was ~ "「それは、前までは真実だったのだが、」"be madness ~ "「その正気さは、今や、狂気ということになってしまう」。 白黒が逆転してしまうのだ。光と影が逆転してしまうのだ。あなたが、狂気の幻想を信じた瞬間、世界の白黒、世界の光と影が逆転し、あなたは白を黒として、影を光として生きて行かなくてはならなくなる。実在と非実在を完全に取り違えて生きて行くのだ。それを悲劇だと、あなたは感じないだろうか。



Such a reversal, completely turned around, with madness sanity, illusions true, attack a kindness, hatred love, and murder benediction, is the goal the laws of chaos serve.
  • reversal [rivə́ːrsəl] : 「逆転、逆戻り、反転」
  • completely [kəmplíːtli] : 「完全に、十分に、全面的に、全く、徹底的に」
  • turn around : 「向きを変える、方向転換する」
  • kindness [káindnis] : 「親切、親切心、思いやり」
  • hatred [héitrid] : 「強い嫌悪、憎しみ、憎悪、嫌悪、毛嫌い」
  • murder [mə́ːrdər] : 「殺人、謀殺」
  • benediction [bènədíkʃən] : 「祝福、感謝の祈り」
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
  • chaos [kéiɑs] : 「無秩序、混乱、混沌」
  • serve [sə́ːrv] : 「〜に仕える、〜のために働く」
❖ "Such a reversal ~ "「このような逆転、」"completely turned ~ "「完全に180度の反転は、」"with madness ~ "「狂気と正気、幻想と真実、攻撃と思いやり、憎しみと愛、殺人と祝福、等々に見られるが、それは、」"is the goal the laws ~ "「混沌の法が仕える目的である」。つまり、実相世界の実在、その真実を、完全にひっくり返すことが、混沌の法の目的だ、ということ。



These are the means by which the laws of God appear to be reversed.
  • appear [əpíər] to : 「〜するように見える」
  • reverse [rivə́ːrs] : 「反対方向に向ける、逆転させる、裏返す」
❖ "These are the means ~ "「これらは、神の法を逆転させるかにみえる手段である」。混沌の法は、神の法にも勝(まさ)って、神の法を逆転させる勢いをもつかのようだ。もちろん、それは幻想世界から見た光景であって、神の法が実相世界で揺らぐことはない。無神論も唯物論も、虚無主義も、この幻想世界にはびこることは出来るが、そして、現に、すごい勢いではびこっているのだが、実相世界に、その根を伸ばすことは出来ないのだ。



Here do the laws of sin appear to hold love captive, and let sin go free.
  • hold [hóuld] : 「とどめておく、〜の状態にしておく」
  • captive [kǽptiv] : 「囚人の、閉じ込められた、捕らわれの、監禁の」
  • go free : 「釈放になる、自由の身になる、釈放される」
❖ "Here do the laws ~ "「ここでは、罪の法は、愛を檻の中に閉じこめ、罪をはびこらせているように見えるのである」。実相世界の真実の愛は、その存在に気付かれないように監禁される。愛だけではなく、喜びも平和も、慈しみも美も、真実の抽象概念はすべて封印されて、牢獄の中に閉じこめられる。何しろ、物質だけが実在で、神はなく、虚無のはびこる世界に、愛や美が必要だろうか。殺伐とした幻想世界は愛を駆逐するのである。
 
 
 

T-23.II.11:1 ~ T-23.II.12:12

11. And now there is a vague unanswered question, not yet "explained. "

  • vague [véig] : 「ぼんやりした、はっきりしない、曖昧な」
  • unanswered : 「返答のない、返事のない、うやむやにされた」
  • question [kwéstʃən] : 「質問、問題、疑問、問い、質疑、疑義」
  • explain [ikspléin] : 「〜を説明する、明らかにする、釈明する」
❖ "And now there is ~ "「今や、まだ答えられても、『説明』されてもいない曖昧な疑問が残った」。曖昧なだけあって、難解である。難解なだけあって、重要である。慎重に読み進もう。



What is this precious thing, this priceless pearl, this hidden secret treasure, to be wrested in righteous wrath from this most treacherous and cunning enemy?
  • precious [préʃəs] : 「高価な、貴重な、重要な、大事な」
  • priceless [práislis] : 「値段が付けられないほど高価な」
  • pearl [pə́ːrl] : 「真珠、真珠色」
  • hidden [hídn] : 「隠された、秘密の」
  • secret [síːkrət] : 「秘密の、内緒の、ひそかな、機密の」
  • treasure [tréʒər] : 「宝、富、宝物、財宝、貴重品、重要なもの」
  • wrest [rést] : 「ねじり取る、もぎ取る、奪い取る、力ずくで手に入れる」
  • righteous [ráitʃəs] : 「道理のある、もっともな、当然の、公正な、正しい」
  • wrath [rǽθ] : 「激怒、憤怒、復讐、報復」
  • treacherous [trétʃərəs] : 「不誠実な、裏切りをする」
  • cunning [kʌ́niŋ] : 「ずるい、悪賢い、狡猾な、抜け目のない」
❖ "What is this ~ "「この貴重なものとは、いったい何か」。あなたが他者から奪い取りたいと思うもの。奪ったものを、他者の目から隠し通そうとするものは何か。"this priceless ~ "「値の付けれないほど高価な真珠」。"this hidden ~ "「この隠された、秘密の宝」。"to be wrested ~ "「最も不誠実で抜け目のない敵から、怒るのも当然だと言って、奪い取られるべき」ものとは何か。その正体を知った上で、あなたは他者から奪い取ろうとしているのだろうか。あるいは、理由はともかく、衝動的に奪おうとしているのか。なぜ、それほど欲しがるのか。それとは、いったい何か。



It must be what you want but never found. And now you "understand" the reason why you found it not.
  • found [fáund] : 「find の過去過去分詞形」
  • understand [ʌ̀ndərstǽnd] : 「理解する、了解する、納得する、分かる」
  • reason [ríːzn] : 「理由、動機、原因、根拠」
❖ "It must be what ~ "「それは、あなたが欲しいと思うものであるが、まだ見つけていないものに違いない」。"And now you ~ "「そして、今や、あなたは、なぜそれが見つけられないのか、その理由を『理解』するのである」。しだいに、核心に迫ってきた感がある。先に進もう。



For it was taken from you by this enemy, and hidden where you would not think to look.
  • taken [téikn] : 「take の過去分詞形」
  • enemy [énəmi] : 「敵、敵国」
  • hidden [hídn] : 「hide の過去分詞形」
  • hide [háid] : 「隠す、隠蔽する、秘密にする」
❖ "For it was taken ~ "「なぜなら、それは、この敵にによって、あなたから奪われ、」"and hidden ~ "「あなたが探そうとも思わない場所に隠されたからなのだ」。もともとあなたのものだったものが奪われたのだから、あなたは、それが価値があろうがなかろうが、必死になって探し回る。しかし、慎重に隠された、そのあなたのものだったものは、探し出されることはない。



He hid it in his body, making it the cover for his guilt, the hiding place for what belongs to you.
  • hid [híd] : 「hide の過去・過去分詞形」
  • cover [kʌ́vər] : 「〜を覆う、〜に覆いを付ける」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
  • place [pléis] : 「場所、個所、住所、席」
  • belong [bilɔ́ːŋ] to : 「〜に属する、〜の所有物である」
❖ "He hid it ~ "「(あなたから奪った)彼は、それを、彼の肉体の中に隠したのだ」。"making it ~ "分詞構文、単純接続、「そして、罪の意識を隠すために、(肉体という)覆いを掛けたのだ」。"the hiding place ~ "「その肉体こそが、あなたのものであったものを隠す場所なのである」。この段落(T-23.II.11)はおしなべて、非常に難解である。難解さに負けずに解読しよう。神の子が神から分離する以前は、神の子は単一の存在であった。一つの心として、神の子は存在していたのだ。しかし、神の子が神から分離すると、神の子は自らも、分離、分裂した。ここが重要なのだ。本来一つであった神の子の心は散り散りに分裂し、無数の神の子の断片、側面が出現したのである。これによって、神の子の心の完璧性、完全性、全体性(wholeness)が、崩壊したのである。そして、完全性を欠いた神の子の心は、それを、他の神の子が奪ったからだと思ったのである。自分の心の空虚感、渇きは、完全な心から、愛、喜び、平和等々の宝物が奪われた結果であると信じ込んだのである。そこで、神の子は、本来自分のものであった完全性を取り戻すべく、他の神の子から奪い取りたいと欲するのである。もちろん、これは、すべて無意識の領域で動く心理作用である。あなたは、原因も理由も知らずに、奪うという欲望だけをもって走っているのだ。ところで、奪われたと信じた神の子が、奪ったと思われる神の子から、それを奪回したと思っても、そこに、何の変化もないことは、お分かりだろう。神の子は本来が自他一如であるから、奪うという行為は、見かけ上の変化であって、実質的変化ではない。しかし、奪うという行為は存在したわけで、そこに罪の意識が生まれるのだ。神からの分離という行為も同様に、罪の意識を生み出した。したがって、神から分離した神の子は、動けば動くほど、どんどん罪の意識をため込んで来るのである。こうして、罪の意識に耐えきれなくなると、自己を乖離するのだ。罪の意識を無意識の領域に押しやり、エゴという別人格を作り上げる。それを、肉体という幻想の中に隠し入れて、心の外側に投射するのだ。こうして、神の子の肉体が、この幻想世界に出現したのである。あたかも、肉体それ自体が罪であるかのように、無意識は思っているのだ。



Now must his body be destroyed and sacrificed, that you may have that which belongs to you.
  • destroy [distrɔ́i] : 「破壊する、崩壊させる」
  • sacrifice [sǽkrəfàis] : 「犠牲にする、生け贄にする」
❖ "Now must his body ~ "「今や、敵の肉体は破壊され、犠牲にされねばならないくなった」。"that you may have ~ "ここの"that"は"so that"のことで、「その結果、〜するために」、「その結果、あなたのものであったものを、あなたは取り返すことが出来ると思っているのだ」。あなたから奪った者は、あなたの敵であり、肉体の中に隠し持っているとわかったあなたは、敵を殺し、肉体を破壊してまで、それを取り戻そうとするのである。しかし、お分かりのように、肉体は幻想であり、幻想の肉体が幻想の罪を背負っているだけなのだ。幻想の肉体を破壊したからといって、あなたのものが返ってくるわけではないのだ。そのカラクリに、あなたは気付いていない。



His treachery demands his death, that you may live. And you attack only in self-defense.
  • treachery [trétʃəri] : 「不信、裏切り、背信、不実、謀反」
  • demand [dimǽnd] : 「求める、要求する」
  • death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
  • self-defense [diféns] : 「自衛、自己防衛、護身、正当防衛」
❖ "His treachery ~ "「彼の裏切りが、彼の死を求める」。"that you ~ "「その結果、あなたは生きるであろう」。彼(敵)は、あなたから奪ったのだから、あなたを裏切ったのだ。それは死に値する。彼の肉体は破壊するに値するというわけである。そして、彼の肉体を犠牲にすることで、あなたは生き延びていけると信じている。"And you attack ~ "「そして、あなたは、正当防衛という理由だけで、攻撃するのである」。奪った方が戦いを仕掛けたのだ、奪い返す攻撃は正当な自己防衛である。こう信じることで、少しでも罪の意識を軽減しようとするわけだ。



12. But what is it you want that needs his death? Can you be sure your murderous attack is justified unless you know what it is for?
  • sure [ʃúər] : 「確信して、確信している、固く信じている」
  • murderous [mə́ːrdərəs] : 「殺意のある、残忍な、殺人的な」
  • justify [dʒʌ́stəfài] : 「弁明する、正当化する」
  • unless [ənlés] : 「〜でない限り、〜である場合を除いて」
❖ "But what is it ~ "「しかし、敵の死を必要とする、あなたの望みとは、いったい何なのか」。"Can you be sure ~ "「何のためかも知らずして、あなたの残忍な攻撃が正当化されるとあなたは確信出来るだろうか」。奪い返したいものの正体を知らないで攻撃し、死に至らしめることは、はたして正当化できるだろうか。あなたは、あなた自身を知る必要があると思わないか。



And here a final principle of chaos comes to the "rescue. "It holds there is a substitute for love.
  • final [fáinl] : 「最後の、最終の、決定的な、確定的な」
  • principle [prínsəpl] : 「原則、原理、公理、原論、法則、方式」
  • chaos [kéiɑs] : 「無秩序、混乱、混沌」
  • come to : 「結果として〜になる、〜に及ぶ、〜の話になる」
  • rescue [réskjuː] : 「救助、救出、救済、救援」
  • hold [hóuld] : 「心に抱く、〜であると考える」
  • substitute [sʌ́bstətjùːt] : 「代用品、代理人、置換、代わりになるもの」
❖ "And here a final principle ~ "「そしてここに、最後の混沌の原理が、『救済』という地点に辿りつくのである」。"It holds there ~ "「その最後の混沌の原理は、それが愛に代わるものであると、考えているのだ」。愛に変わるものによって、あなたの空虚、渇きが癒されると主張する。それは、敵の肉体を破壊する罪からも解放してくれるだろう。もちろん、エゴの思考システムの囁きである。それは何か?



This is the magic that will cure all of your pain; the missing factor in your madness that makes it "sane. "
  • magic [mǽdʒik] : 「魔法、奇術、魔術、手品、呪術、魔力」
  • cure [kjúər] : 「治す、〜を治療する、癒す」
  • pain [péin] : 「痛み、痛覚、疼痛、苦痛、骨折り、苦労」
  • missing [mísiŋ] : 「紛失した、欠けている、見つからない、見当たらない」
  • factor [fǽktər] : 「要因、要素、因子、原因」
  • madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
  • make : 「〜の状態を作り出す、〜にする」
  • sane [séin] : 「正気の、分別ある、良識のある、思慮分別のある」
❖ "This is the magic that ~ "「これは、あなたの(心の)痛みのすべてを癒してくれる魔術である」。"the missing factor ~ "「狂気を『正気』に見せかける、あなの狂気の中の失われた要因である」。狂気は、すべてを破壊することに専念していると思われていたが、狂気が癒しをもたらすという、今まで知られていなかった狂気の一面が顔を出す。あたかも、その一面をもって、狂気が正気に様変わりするかのようだ。しかし、それは、魔術であり、魔法であり、手品に過ぎない。エゴのトリックなのだ。



This is the reason why you must attack. Here is what makes your vengeance justified.
  • vengeance [véndʒəns] : 「復讐、仕返し、報復」
  • justify [dʒʌ́stəfài] : 「弁明する、正当化する」
❖ "This is the reason ~ "「これが、あなたが攻撃しなくてはならない理由である」。"Here is what makes ~ "「ここに、あなたの復讐を正当化してくれるものがあるのだ」。さて、"final principle of chaos"「混沌の法の最終原理」とは何か? これを解釈するのは時期尚早かも知れないが、それをある程度知っておかないことには、その他の部分の解釈が行き詰まってしまう。あえて、説明を加えよう。一言で言えば、無神論であり、虚無主義である。実相世界は存在しない、神も存在しない。愛、喜び、平和、慈しみ、真理、美、真実、静寂、等々は幻想であって、この混沌の世界が、実在する唯一の世界だ。混沌と分離、これ以外の実在はない。弱肉強食の世界であるから、得るために奪うのは当然であり、生きるために殺すのは当然である。神は存在しないのだから、いくら殺戮を繰り返しても、それを罰する者は存在しないのだ。罪すら感じる必要はない。愛も慈しみも存在しないのだから、罪を感じることは馬鹿げているのだ。神のいない世界、だから、罪も罰も存在しない。単なる、サルから進化した生物に過ぎない人間が、自然の法に従って、生存していくだけなのだ。心も存在しない。あるのは、進化した脳である。心が存在しないのだから、善悪もない。だから、生き延びるために、草を食う動物になるか、草を食う動物を食う動物になるか、その選択を選択をするだけでいい。それが、現実で、それ以外の現実はない。無神論と虚無主義、これが究極の実存である。・・・これが、エゴの思考システムの根幹である。無神論と虚無主義、これをしっかりと押さえよう。



Behold, unveiled, the ego's secret gift, torn from your brother's body, hidden there in malice and in hatred for the one to whom the gift belongs.
  • behold [bihóuld] : 「見守る、注視する」
  • unveiled : 「ベールを脱いだ、覆いを取り去った、暴露された」
  • secret [síːkrət] : 「秘密の、内緒の、ひそかな、機密の」
  • gift [gíft] : 「贈り物、プレゼント」
  • torn [tɔ́ːrn] : 「tear の過去分詞形」
  • tear [tíər] : 「〜を引き裂く、引っかく、むしり取る、分裂させる」
  • hidden [hídn] : 「hide の過去分詞形」
  • malice [mǽlis] : 「悪意、恨み、犯意」
  • hatred [héitrid] : 「強い嫌悪、憎しみ、憎悪、嫌悪、毛嫌い、嫌忌」
  • belong [bilɔ́ːŋ] : 「属する、所属する」
❖ "Behold, unveiled, the ego's ~ "「ベールを剥ぎ取られた、エゴの秘密の贈り物を見つめてみなさい」。"torn from your brother's ~ "「それは、同胞の肉体から引き裂かれたものであり、」"hidden there in malice and ~ "「贈り物を与えた者に対する恨み憎しみの中に隠されたものである」。ここも非常に難解な部分である。あなたが、エゴの贈り物、つまり、最終の混沌の法、無神論と虚無主義を信じきって、同胞から奪うべく攻撃し、そして殺したとしよう。しかし、エゴの贈り物(無神論と虚無主義)によって、あなたの行為は正当化されるのだ。と同時に、エゴの混沌の法が正しいことを証明したことにもなる。つまり、「同胞の肉体から引き裂かれた(同胞の肉体を犠牲にして得られた)」正当化であり、同胞の肉体の崩壊をもって証明された、エゴの法(贈り物)ということになる。そして、無念に殺されていった同胞の「贈り物を与えた者に対する恨み憎しみ」、つまり、混沌の法を与えたエゴに対する同胞の恨みと憎しみは、行き場を失って、彷徨うことになる。その恨みと憎しみは、エゴの法(贈り物)に対する無念さを秘めている。エゴの贈り物には、その恨みと憎しみが染み込んでいるのだ。



He would deprive you of the secret ingredient that would give meaning to your life.
  • deprive [dipráiv] A of B : 「AからBを奪う、AにBを与えない」
  • ingredient [ingríːdiənt] : 「材料、原料、構成要素、要因」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義、意図、真意」
❖ "He would deprive you ~ "「同胞は、あなたの命に意味を与えてくれる秘密の要因を、あなたに与えることはないだろう」。あなたが奪い殺した同胞が、その死をもって、あなたの命の意味を教えてくれることがあるだろうか。むしろ、命には意味がないということだけが、そこに残存することになろう。虚無主義の極地である。



The substitute for love, born of your enmity to your brother, must be salvation. It has no substitute, and there is only one.
  • substitute [sʌ́bstətjùːt] : 「代用品、代わりのもの」
  • born of : 「〜から生まれる、〜のもとに生まれる」
  • enmity [énməti] : 「憎しみ、恨み、敵意、悪意、反目」
  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
❖ "The substitute for ~ "「愛に代わるもの、あなたの同胞に対する敵意から生まれたものは、」"must be ~ "「救済であるに違いはない」。確かに、無神論も虚無主義も、それを貫けば、その人にとっては救いにもなろう。なぜなら、同胞を殺しても罪を抱く必要はないからだ。少なくとも、罪の意識からは救ってくれるなずだ。"It has no substitute ~ "「その愛の代用物には、代わるものはない」。"and there is ~ "「愛に代わるものといったら、それしかないのだ」。神の子がとれる救いの道は、愛と神へ向かう道か、あるいはまったく逆方向の、無神論と虚無主義へ向かう道、その二つしかない。その他の代わり、その他の抜け道はない。



And all your relationships have but the purpose of seizing it and making it your own.
  • relationship [riléiʃnʃìp] : 「関係、結び付き、かかわり合い、関連」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
  • seize [síːz] : 「を捕まえる、捕らえる、手に入れる、獲得する、強奪する、奪う」
❖ "And all your relationships ~ "意訳する、「そして、あなたがこの幻想世界で築く特別な関係性のすべては、エゴの思考システムである混沌の最終原理を獲得し、あなたのものにしようという目的以外の目的を持たないのである」。だから、あなたとパートナーの築く特別な関係性は、常に、他者を排他し支配し、相手の心を殺害し、愛を殺し、空虚と渇きに突き進むのである。肉体的に結びついているうちは、まだ、気付くことはあるまい。しかし、肉体の関係にひびが入ってしまうと、虚無という毒液はどんどん漏れ出して、関係性は腐れ、崩壊していくのだ。虚無に陥った者が歩む先には無神論があり、ついにはエゴの思考システム、混沌の法にぶち当たる。そして、これが人生というものだと、うそぶくのである。そのつぶやきを潔しとしない者は、ドストエフスキーの言うように、自殺するか発狂するか、あるいは似非(えせ)宗教に逃れるか、そのいずれしかない。似非宗教と書いたが、いわゆる、そんじょそこらに転がっている宗教のことである。拝んで、金を寄付すれば救われるという類いのものである。壺を買えば救われるそうだ。教祖は神の化身だそうだ。その教祖の小便を飲めば、救われるそうだ。言うまでもないが、ACIMは宗教ではない。神を語る、非宗教である。実相世界に、宗教はない。なぜか? 真実があれば、宗教など必要ないからだ。幻想から目覚めれば、宗教など必要ないのである。そして、ACIMは、幻想から目覚めるコースを示してくれるのである。あなたは目覚めを欲するのか、それとも、盲目のまま、教祖の汚物にまみれることを欲するのか。
 
 
 

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