●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-31.VII.12:1 ~ T-31.VII.13:7


12. Whatever form temptation seems to take, it always but reflects a wish to be a self that you are not. 

  • whatever [hwʌtévər] : 「どんな〜が〜でも」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造」
  • temptation [temptéiʃən] : 「誘惑、衝動、誘惑物」
  • always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、以前からずっと、常にいつでも」
  • reflect [riflékt] : 「〜を映す、示す、反映する」
  • wish [wíʃ] : 「願い、望みの物、願望、希望」

❖ "Whatever form ~ "「誘惑が、たとえどんな形をとっているかのように見えても、」"it always but ~ "「それは常に、あなたではない自分になりたいと望む願望を表している」。ここの"temptation"「誘惑」とは、前々段落にあった誘惑のことで、"What is temptation but the wish to stay in hell and misery?"という文章を思い出してもらいたい。一言で言えば、幻想に留まりたいと思う誘惑のことだ。幻想の自分自身になりたいと望むのだから、当然、それは本当のあなたではない。



And from that wish a concept rises, teaching that you are the thing you wish to be. 

  • concept [kάnsept] : 「概念、観念」
  • rise [ráiz] : 「立ち上がる、起立する、 発生する」
  • wish [wíʃ] : 「望む、祈る」

❖ "And from that ~ "「そんな望みから、(自己)概念が生じてくる」。たとえば、他者を権力で支配したいと望めば、その思いが、権力者という自己概念をあなたに生じさせるのだ。"teaching that ~ "「その概念が、あなたがなりたいと願っているものになると教えている」。あなたの自己概念があなたを形作っていく。



It will remain your concept of yourself until the wish that fathered it no longer is held dear. 

  • remain [riméin] : 「依然として〜のままである」
  • until [əntíl] : 「〜する時まで」
  • father [fάːðər] : 「〜を生み出す、〜の父親になる」
  • no longer : 「もはや〜でない」
  • held [héld] : 「holdの過去形」
  • hold [hóuld] : 「心に抱く、保持する、持続する」
  • dear [díər] : 「親愛な、いとしい、かわいい、敬愛する、大切な」
  • hold dear : 「惜しむ、可愛がる」

❖ "It will remain your ~ "「概念を生み出した望みがもはや可愛がられなくなるまで、その概念があなたの自己概念として留まることになる」。したがって、たとえば、他者を権力で支配したいという望みが薄れて、今度は、高価な物に囲まれて生きたいと願えば、あなたは権力者という自己概念を捨てて、大金をため込む守銭奴とい自己概念を持つことになる。こういう誘惑は、変化流動し、留まることがない。すべて幻想であり、本当の自分自身に行き着くことはない。



But while you cherish it, you will behold your brother in the likeness of the self whose image has the wish begot of you. 

  • while [hwáil] : 「〜の間ずっと、〜する間に、その間に」
  • cherish [tʃériʃ] : 「〜を大事にする、大切にする」
  • behold [bihóuld] : 「見守る、注視する」
  • likeness [láiknis] : 「似ていること、類似」
  • in the likeness of : 「〜と偽って、見せ掛けて、見せ掛け、うわべ」
  • image [ímidʒ] : 「印象、心象、画像、像、映像」
  • begot [bigɑ́t] : 「begetの過去・過去分詞形」
  • beget [biɡét] : 「〜を生じさせる、引き起こす、来たす」

❖ "But while you ~ "「しかし、あなたが、そんな自己概念を大切にしている間は、」"you will behold ~ "意訳する、「あなたは、あなたから生じた望み通りのイメージをもつ、あなたにそっくりな者として、同胞を見続けることになろう」。たとえば、他者を権力で支配したいと望めば、その思いが、権力者という自己概念をあなたに生じさせ、それと同時に、同胞もまた、あなたの目には、権力者という自己概念をもつ者に見えてくるのだ。あなたとそっくりなイメージをもつ同胞となる。同胞は、あなたの姿を映す鏡であるから、当然である。あなたが、大金をため込む守銭奴という自己概念を持てば、同胞も守銭奴のように見えてくるのだ。同じ者同士に見えてくるから、弱肉強食の世界が生み出される。勝つか負けるかの世界になるのだ。



For seeing can but represent a wish, because it has no power to create. 

  • represent [rèprizént] : 「表す、示す、象徴する、意味する」
  • power [páuər] : 「力、能力、勢力」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」

❖ "For seeing can ~ "「なぜなら、見ることは、望みを表しているからだ」。あなたは、見たいと思うものを見るのである。"because it has ~ "「なぜなら、見ることは、創造するパワーをもっていないからだ」。想念や思い、願いは現実化するのだが、これには二種類あると思っていい。一つは、実相的な真実を願う思いであり、愛や喜びを願えば、それは真実の創造として実在化する。一方、幻想的な虚偽を願う思いは、幻想としてのイメージを生むだけであって、目には見えるが実在化はしない。幻(まぼろし)が見えてくるだけだ。それは創造などではない。実体がないからだ。たとえば、他者を権力で支配したいと望めば、あなたの目に権力者という自分が見えてくるだろう。現実化するだろうが、所詮、それは幻想に過ぎず、権力者という自分を実相的に創造したことではないのだ。実相世界には権力などと概念はないから、権力者が創造される道理はない。余談になるが、万能の神を、生殺与奪の権利をもつ絶対的な権力者と見立てる宗教は、したがって、似非宗教である。審判する神を描いてみせる宗教もまがい物だ。天の王国には、権力とか審判といかいう概念自体が存在しないからだ。



Yet it can look with love or look with hate, depending only on the simple choice of whether you would join with what you see, or keep yourself apart and separate.

  • hate [héit] : 「憎悪、憎しみ、嫌悪」
  • depend [dipénd] on : 「〜によって決まる、〜次第である」
  • simple [símpl] : 「単純な、複雑でない、普通の」
  • choice [tʃɔ́is] : 「選ぶこと、選択」
  • whether [hwéðər] : 「〜かどうか、〜であろうとなかろうと」
  • join [dʒɔ́in] : 「交わる、一緒になる」
  • apart [əpάːrt] : 「離れて、離ればなれで、バラバラに、別々に」
  • separate [sépərèit] : 「分派した、独立した、分離する」

❖ "Yet it can look with ~ "「しかし、見ることは、愛をもって見ることも、憎しみをもって見ることも可能だ」。つまり、実相的な望みをもって見ることも、幻想的な望みをもって見ることも可能なのだ。前者は実在を創造し、後者は単なる幻(イメージ)を映し出す。"depending only on ~ "「それは、あなたが見る者と結合したいと思うか、あなた自身を引き離して分離したいと願うか、そういう単純な選択に依存している」。あなたが目にする同胞を、自他一如と認識して結合へ向かうことを選択するか、同胞を肉体と見て分離を助長する方向へ向かうことを選択するかで、あなたのものの見方は180度異ってくる。実相へ向かうか幻想へ向かうか、あなたの選択次第なのだ。実相へ向かえば、あなたは真実を創造することが出来、幻想へ向かえば変化流動して崩壊と死へ向かう幻に翻弄されることになる。



13. The savior's vision is as innocent of what your brother is as it is free of any judgment made upon yourself. It sees no past in anyone at all. 

  • savior [séiviər] : 「救助者、救い手、救済者、救い主」
  • vision [víʒən] : 「洞察力、想像力、考え方、視覚、視力」
  • innocent [ínəsənt] : 「無実の、潔白な、純真な、無邪気な」
  • be innocent of : 「無罪の、〜の罪を犯していない」
  • free of : 「ない、免除されている」
  • judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、意見、分別」
  • past [pǽst] : 「過去、昔」
  • at all : 「全く〜ない、全然〜ない、少しも〜ない」

❖ "The savior's vision is ~ "「救い主のヴィジョンは、」つまり、キリストの実相的なものの見方は、"is as innocent of ~ "「あなたの同胞が何であるかということに関して罪を犯していないし」、簡単に言えば、誤った見方をしていない、ということ。同胞の本当の姿を見ている、ということ。"as it is free of ~ "「同時に、あなた自身にいかなる判断も下したりしない」。理性的判断や善悪判断から超越している、ということ。既成事実を基にして、見たり判断したりすることはないのだ。今現在の潔白な姿だけを見てとる。したがって、"It sees no past ~ "「救い主のヴィジョンは、誰の中にも、まったく、過去の一部さえ見ることはない」。実相は無時間であり、過去現在未来はない。実相的ヴィジョンもまた、過去を基準に見るようなことは決してない。今、この瞬間が存在のすべてである。



And thus it serves a wholly open mind, unclouded by old concepts, and prepared to look on only what the present holds. 

  • thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、このようにして」
  • serve [sə́ːrv] : 「〜に仕える、〜のために働く、〜に役立つ」
  • wholly [hóulli] : 「完全に、全く、全体として、全体的に、すっかり」
  • uncloud [ʌnkláud] : 「〜から雲を取り除く、〜を明確にする」
  • prepare [pripέər] : 「〜を準備する、用意する、支度する、〜整備する」
  • present [préznt] : 「今、現在」

❖ "And thus it serves ~ "「したがって、救い主のヴィジョンは、完全にオープンな心のために働く」。つまり、何ものにも捕われないオープンな心に、救い主のヴィジョンが宿るということ。あなたの心の最も神聖で純粋な部分にホーリー・スピリットが宿り、そのホーリー・スピリットのももの見方が、救い主のヴィジョンである。"unclouded by old ~ " 「それは、古い概念で曇らせられることもなく、」"and prepared ~ "「現在が何を保持しているか、ということだけに目を向ける用意が出来ている」。過去の産物である古い概念に左右されることはなく、この瞬間の姿だけを見ることに専心する。



It cannot judge because it does not know. And recognizing this, it merely asks, "What is the meaning of what I behold? " Then is the answer given. 

  • judge [dʒʌ́dʒ] : 「判断する、〜だと思う」
  • recognize [rékəɡnàiz] : 「認める、受け入れる、〜を認識する」
  • merely [míərli] : 「ただ単に、単に」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義、意図、真意」
  • answer [ǽnsər] : 「答え、回答、返事、応答」
  • given [ɡívən] : 「giveの過去分詞形」

❖ "It cannot judge ~ "「救い主のヴィジョンが判断する可能性はない」。判断という範疇(はんちゅう)を超越しているからだ。"because it does ~ "「なぜなら、救い主のヴィジョンは、判断ということを知らないからだ」。実相世界には、判断といいう概念はない。叡智(knowledge)による直覚的、全的把握があるだけだ。"And recognizing ~ "「このことを認識しているので、救い主のヴィジョンはただ単に、次のように問い掛けるだけだ」。"What is the meaning ~ "「『私が目にしているものの意味は何であるか』」。"Then is the answer ~ "「すると、答えが与えられる」。答えるのは、叡智(knowledge)である。ここは、「意味は何であるか」と解釈するより、「意味があるのか」と捉えた方がいいかもしれない。つまり、実相的な意味があるのか、幻想として意味がないのか、という問い掛けである。真実か、虚偽かの問い掛けである。



And the door held open for the face of Christ to shine upon the one who asks, in innocence, to see beyond the veil of old ideas and ancient concepts held so long and dear against the vision of the Christ in you.

  • shine [ʃáin] : 「輝く、光る」
  • innocence [ínəsəns] : 「無罪、潔白、無邪気、無垢、純潔、純真」
  • beyond [bijάnd] : 「〜の向こうに、〜を越えて、〜を過ぎて、〜のかなたに」
  • veil [véil] : 「覆い隠すもの、ベール」
  • ancient [éinʃənt] : 「古代の、古くからの、古い、古びた」
  • dear [díər] : 「愛情こめて、やさしく」
  • against [əɡéinst] : 「〜に反対して、〜に逆らって、〜にそむいて」

❖ "And the door held ~ "ここは、"And the door will be held ~ "と言葉を補って意訳する、「そうすると、ドアが開かれてキリストの顔が現れ、〜したいと純真に頼んだ者に微笑みを返す」。"to see beyond ~ "「古い思いや古びた概念が長い間保持し、あなたの心の中のキリストのヴィジョンに対抗して大切にしてきたベールを超越して、その向こうを見たいと頼んだ」者に、キリストは微笑みを返す。古いベール、黒雲の幻想から目覚めたいと願った者に、キリストは微笑みかけ、あなたを幻想から救ってくれる。"the vision of the Christ in you"「あなたの心の中のキリストのヴィジョン」とあるように、キリストは遠い天から舞い降りてくる者ではなく、あなたの心の中にずっと生き続けてきた救い主なのだ。今、この瞬間も、あなたの心にキリストはいる。それに気付くこと、それを選択することが、あなたの役割なのだ。もちろん、自由な意思をもって選択しなくてはならない。そのとき初めて、心の中のキリストは、古いドアを開けてあなたの目の前に現れ、あなたに微笑みかけてくれるのである。
 
 
 


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