●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-30.III.4:1 ~ T-30.III.5:11

4. It never is the idol that you want. But what you think it offers you, you want indeed and have the right to ask for.
  • idol [áidl] : 「アイドル、偶像、崇拝される人、神像」
  • offer [ɔ́fər] : 「差し出す、捧げる、提供する」
  • indeed [indíːd] : 「実に、本当に、確かに、いかにも、実際に」
  • right [ráit] : 「正しい要求、正当な要求、権利、所有権」
  • ask for : 「〜を求める、〜を要求する、〜を要する」
❖ "It never is the idol ~ "「あなたが欲しているのは、決して偶像ではない」。本来、あなたは心の平和を望んでいるのであって、偶像それ自体を求めているのではない。しかし、それを達成するための手段の選択を誤っているのだ。"But what you think ~ "「しかし、偶像が差し出すとあなたが思っているものを、あなたはいかにも欲しがり、それを求める権利がある(と思っている)」。あなたは心の平和を望み、それを達成するために、たとえば、物質的な豊かさを求め、金さえあれば豊かになれると考えて、金という名の偶像を崇拝することとなった。その結果、本来求めている心の平和を忘れ、偶像が差し出してくれるに違いない金を求め、金を偶像に求める権利さえあると思ってしまうのである。金に限らず、自分の優越性を求めて特別な存在という偶像を信じてしまうこと、慰めと独占を求めて肉欲という偶像を信じてしまうこと、支配を求めて攻撃という偶像を信じてしまうこと、数え上げれば切りがあるまい。



Nor could it be possible it be denied. Your will to be complete is but God's Will, and this is given you by being His.
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る、なし得る」
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する」
  • will [wíl] : 「意志、意欲、願望」
  • complete [kəmplíːt] : 「完結した、完成した、完全な、全部の」
  • given [ɡívən] : 「give の過去分詞形」
❖ "Nor could it be ~ "「また、それは、否定される可能性はない」。一旦偶像を崇拝してしまうと、偶像を否定することは不可能になってしまう。物欲(あるいは、金)の虜になってしまえば、あたかも薬物の中毒のように、物欲という偶像を自ら否定して解放されることは、ほとんど不可能になってしまうのだ。しかし、"Your will to be complete ~ "「完全でありたいと望むあなたの意思は、神の意思でもあり、」"and this is given ~ "「これは、神の意思であることによって、あなたに与えられるのだ」。物欲に駆られて偶像を崇拝するあなたではあるが、元々の動機は、心の平和を得ること、平和を得て自己を完全なものにすることであったのだ。その自己完成への意思は、あなた一人の意思ではなく、実は、神もまた完成の意思をもっている。しかも、神は、神の子であるあなたの意思が神の意思でもあることを願って(by being His)、その完成の意思を神の子に与えたのである(this is given you)。詳しく言うと、神の子が神から分離し、神の子を失ってしまった神は、完全ではない。神の子が天の王国へ回帰し、神と神の子とホーリー・スピリットの三位(さんみ)が融合し一体となったとき、初めて、神は神自身を完成させる。神が完全になるためには、神の子の完全性が必要なのだ。したがって、完全、完成への意思は、神も神の子も共に持っていなくてはならず、神が神の子を創造するときに、その完全への意思を神の子に与えたのである。



God knows not form. He cannot answer you in terms that have no meaning.
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造」
  • answer [ǽnsər] : 「〜に答える、答えて言う」
  • term [tə́ːrm] : 「語、言葉、用語、術語、表現」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義」
❖ "God knows not ~ "「神は、形というものを知らない」。神は、形に象徴される幻想を、一切知らない。"He cannot answer ~ "「神は、意味のない言葉で、あなたに答えることなど出来ないのだ」。神は、偶像とまったく逆である。偶像は形を知っており、あなたの要求に形で答える。言い換えれば、偶像は幻想であり、幻想を知っており、あなたの要求に意味のない幻想で答えるのだ。神は実相であり、意味のない幻想を弄(もてあそ)んだりしない。幻想がなぜ意味がないのかというと、幻想はそもそも存在していないからだ。絵空事に意味があるだろうか? 



And your will could not be satisfied with empty forms, made but to fill a gap that is not there.
  • satisfy [sǽtisfài] : 「〜を満足させる、納得させる、満たす」
  • empty [émpti] : 「中身のない、空の、空いている」
  • fill [fíl] : 「注入する、満たす、〜を…でいっぱいにする」
  • gap [gǽp] : 「割れ目、すき間、隔たり、ギャップ」
❖ "And your will could ~ "「あなたは、空っぽの形などに満足させられることはない」。"made but to fill ~ "「空っぽの形とは、(本当は)そこにないギャップを満たすために作られたものなのだ」。幻想の空間と幻想の物質(形あるもの)についての説明である。この世界は時間と空間が存在する世界であり、その空間は物質で満たされているが、そのすべては幻想である。神の子が深い眠りの中で夢に見ている世界に過ぎない。ここの"gap"「ギャップ」とは、人と人の、あるいは物質と物質の間の隔たりの空間のことで、これもまた幻想に過ぎず、本当はそこにギャップなどない。"forms"「形あるもの」は肉体、あるいは物質であるが、もちろん、これも幻想の産物であって、本当は実在してはいない。だから、"empty"「空っぽ」なのだ。紙の上に描かれた餅(もち)はエンプティなのである。したがって、ここの文章は、幻想の空間も、その空間を埋める幻想の物質も、あなたの心を満たすことは出来ない、心の平和をもたらすことは出来ない、心の完成を達成させることは不可能だ、ということになる。



It is not this you want. Creation gives no separate person and no separate thing the power to complete the Son of God.
  • creation [kriéiʃən] : 「創造、創作、創作物、作品」
  • separate [sépərət] : 「分かれた、離れた、個々の、別個の」
  • person [pə́ːrsn] : 「個人、人、人物」
  • power [páuər] : 「力、能力、勢力」
  • complete [kəmplíːt] : 「〜を完了する、仕上げる、完成する」
❖ "It is not this ~ "「あなたが欲しているものは、こんなものではない」。あなたは、エンプティな形あるもの(empty forms)を欲してるのではない。"Creation gives no ~ "「創造は、分離した人達に、あるいは分離したもの達に、神の子を完全なものとするパワーを与えてはいない」。創造を司(つかさど)った神は、幻想世界で分離分裂した形(肉体)として存在する人間達、あるいは種々雑多な生物や物質に、神の子を完全なものとする実相的なパワーを与えてはいない。神は幻想を知らないのである。だから幻想の存在に対して、実相のパワーを与えることなど思いも寄らない。したがって、神の子が自己を完成させ、完全なものとなるためのパワーを得るには、幻想を脱して実相に回帰しなくてはならない。その意思を明白にする必要がある。それを見越して、幻想を知らない神ではあるが、幻想を知っているホーリー・スピリットに、神の子を手助けする使命を与えたのだ。



What idol can be called upon to give the Son of God what he already has?
  • call upon : 「求める、要求する、招く、〜を頼む」
  • already [ɔːlrédi] : 「すでに、とっくに〜済み」
❖ "What idol can be ~ "「一体どんな偶像が、神の子に、神の子がすでに持っているものを与えるために、呼び出される必要があろう」。あなたは、心の平和を得るために、誤って幻想的な偶像を呼び出してしまったのだが、その必要はまったくない。なぜなら、心の平和という実相を、すでにあなたは持っているからだ。あなたが、それに気付かないだけの話しだ。なぜなら、神は神の子を創造するとき、神の属性のすべてを与えたからだ。もし、神の子が心の平和をもっていないとすれば、神もまた心の平和をもっていないことになってしまう。したがって、あなたは偶像を呼び出すことをせずに、神の与えてくれた心の平和を思い出すだけでいいのである。幻想から目覚めて、実相に回帰するだけでいいのだ。それをはっきりと意識すれば、ホーリー・スピリットが必ず手助けしてくれるのである。



5. Completion is the function of God's Son. He has no need to seek for it at all.
  • completion [kəmplíːʃən] : 「完成、完了、終了」
  • function [fʌ́ŋkʃən] : 「職務、役割、機能、作用」
  • need [níːd] : 「必要性、必要なもの、必要物」
  • seek for : 「〜を探し求める」
  • at all : 「全く〜ない、全然〜ない」
❖ "Completion is ~ "「完成は、神の子の役割である」。"He has no need ~ "「神の子は、まったく、完成を追い求める必要はない」。神は、神の子を完璧に完成された姿で創造した。不完全な神の子を創造したのではないのだ。ならば、なぜ我々はこれほどまでに、未完成であり、不完全であり、苦を感じ痛みを覚えるのか? 答えは簡単である。幻想に毒されているからだ。幻想世界を夢に見て、幻想こそが実在であり、偶像を崇拝することが救いだと勘違いしているからなのだ。その幻想から目覚めることが出来れば、つまり、実相へと救われることが叶えば、神の子は、神が創造したままに完全であることが理解出来るのである。この幻想世界で完全性を追求する必要はまったくない。ところで、神の子の役割である完成とは何か? 神の子が天の王国へ回帰し、神とホーリー・スピリットと神の子が融合して、三位が一体になることである。神の子は、まさに神そのものとなるのである。これが、神の子の役割である完成だ。純粋一元論世界の必然である。神の子は完成され、"Go is"「神あり」そのものになるのである。



Beyond all idols stands his holy will to be but what he is. For more than whole is meaningless.
  • beyond [bijάnd] : 「〜の向こうに、〜を越えて、〜のかなたに」
  • holy [hóuli] : 「神聖な」
  • more than : 「〜を超える、〜より多い、〜を上回る」
  • whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の、丸ごとの」
  • meaningless [míːniŋlis] : 「意味のない、価値のない、無意味な」
❖ "Beyond all idols ~ "「あらゆる偶像を越えて、本来の神の子自身になるために、神の子の神聖な意思が立ち上がる」。"what he is"「本来の神の子自身」とは、神聖で完全な姿の神の子、という意味合。神が創造したままの神の子のこと。"For more than ~ "「なぜなら、完全であること以上のものは、意味がないからだ」。完全であることを越える完全性はない、という意味。神の子は本来完全であるから、完全を求めて偶像にすがり付くようなことはまったく必要ない。



If there were change in him, if he could be reduced to any form and limited to what is not in him, he would not be as God created him.
  • change [tʃéindʒ] : 「変化、変更、移行、交換」
  • reduce [ridjúːs] : 「減らす、減じる、削減する、軽減する」
  • limit [límit] : 「限定する、制限する、制限をかける」
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
❖ "If there were ~ "仮定法、「もし、神の子の心に変化があったとしたら、」神の子の心の中の神聖さや完全性に変化があったら、"if he could be ~ "「もし、神の子が何らかの形に縮退し、本来の神の子自身ではないものに制限されるようなことがあれば、」神の子が、現実に、形ある肉体に押し込まれ、偶像によって制限を受けるようなことがあれば、"he would not be ~ "「そんな神の子は、神が神の子を創造した、その神の子ではない」。神は、神の子の心の神聖さや完全性が決して損なわれないように、そして、形ある肉体などに心が占領されないように、偶像などに支配されたりしないように、神の子を創造したのだ。だから、もし、神の子が神の創造した姿ではないならば、それは神の子が悪しき夢を見ていることになる。本当の姿を忘れていることを意味するのだ。



What idol can he need to be himself? For can he give a part of him away?
  • need [níːd] : 「〜する必要がある、〜を必要とする」
  • part [pάːrt] : 「一部、部分」
  • give away : 「ただで与える、安く売る、渡す」
❖ "What idol can he ~ "「神の子自身であるために、神の子は、いったいどんな偶像が必要だと言うのだろう」。神の子が完全であるために、偶像が必要であろうか。"For can he give ~ "「と言うのも、神の子は、神の子の一部を(偶像に)安売りなど出来るだろうか」。完全である神の子が、さらに完全であろうとして、自らの一部を偶像に安売りすれば、神の子は、意思に反して不完全になってしまうではないか。



What is not whole cannot make whole. But what is really asked for cannot be denied. Your will is granted.
  • make : 「〜の状態を作り出す、〜にする」
  • really [ríəli] : 「実際には、ほんとうは、確かに、本当に」
  • ask for : 「〜を求める、〜を要求する、〜を要する」
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、与えない」
  • grant [ɡrǽnt] : 「許可する、供与する、与える、かなえてやる」
❖ "What is not whole ~ "「完全でないものは、完全にすることは出来ない」。逆に、完全であるものは、永遠不変に完全である。"But what is really ~ "「本当に求められるものは、与えられずに置かれるわけがない」。"what is really asked for"「本当に求められるもの」とは、実相的な真実のこと。意思であり、愛であり喜びであり、平和、美、慈悲、等々である。"Your will is ~ "「あなたの意思は、叶えられるのだ」。実相的な真実の思いは、必ず現実化する。思いは必ず叶うのだ。



Not in any form that would content you not, but in the whole completely lovely Thought God holds of you.
  • content [kɑ́ntent] : 「〜を満足させる」
  • completely [kəmplíːtli] : 「完全に、十分に、全面的に、全く」
  • lovely [lʌ́vli] : 「愛らしい、かわいらしい、素晴らしい」
  • thought [θɔ́ːt] : 「考え、思考、思索、熟考」
  • hold [hóuld] : 「維持する、保持する、持続する」
❖ "Not in any form that ~ "「あなたを満足させることのない形としてではなく、」"but in the whole ~ "「神があなたに対して抱く、完全で、完璧で愛らしい神の思いとして、」あなたの意思は、叶えられるのだ。あなたの意思は、幻想として叶えられるのではない。あなたが愛を意思すれば、それは神の愛として、喜びを意思すれば、神の喜びとして、美を意思すれば、神の美として、あなたの意思は、あなたの眼前に現実化する。真実を意思すれば、その真実は必ず叶うのだ。形ある幻想として叶うのではなく、神の愛の息吹が吹き込まれた実相として叶うのである。
 
 
 


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