7. You who believe there is a little gap between you and your brother, do not see that it is here you are as prisoners in a world perceived to be existing here.
- believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
- gap [gǽp] : 「割れ目、すき間、隔たり、ギャップ」
- between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間に」
- prisoner [prízənər] : 「囚人、捕虜」
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を理解する」
- existing [iɡzístiŋ] : 「現存する、現在の、生存する、存在する」
❖ "You who believe there ~ "「あなたとあなたの同胞の間に小さなギャップが存在していると信じているあなたは、ここにあるかのように知覚される世界の中で、あなたが囚人となっているのはここなのだと分かっていない」。あなたの心という実在と同胞の心という実在の間に、肉体を壁にした隔たりがある。それが小さなギャップ(a little gap)であり、本来そこには何も存在してはいない。しかし、何もないところに、あなたは幻想の世界を見ているのだ。ここに世界があるかのように錯覚しているのである(a world perceived to be existing here)。そして、あなたは、その幻想の世界に捕らわれて、あたかも囚人のように生きているのだ(you are as prisoners)。しかも、あなたはその事実に気付いていない(do not see that ~ )。
The world you see does not exist, because the place where you perceive it is not real.
- exist [igzíst] : 「存在する、生きている、生存する」
- place [pléis] : 「場所、個所、地域、土地」
- real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
❖ "The world you see ~ "「あなたが見ている世界は存在してはいない」。世界が目の前にあるかのように錯覚しているだけであって、本当は世界は実在しなどいない。"because the place ~ "「なぜなら、あなたが世界を知覚している場所は、現実ではないからだ」。あなたが肉体をもって生きていると思っているこの場所は、実在する現実ではなく、単なる夢の中の場所に過ぎないのだ。あなたは、実にリアルな夢を見ているのであって、光景は非常にリアルではあるが現実ではない、真実ではないのだ。存在すらしていない。
The gap is carefully concealed in fog, and misty pictures rise to cover it with vague uncertain forms and changing shapes, forever unsubstantial and unsure.
- carefully [kέərfəli] : 「注意深く、丁寧に、慎重に、入念に」
- conceal [kənsíːl] : 「隠す、隠匿する、秘密にする」
- fog [fɔ́ɡ] : 「霧、靄、濃霧」
- misty [místi] : 「霧の立ちこめた、かすんだ、ぼんやりとした」
- picture [píktʃər] : 「絵、像、光景、実態、事実」
- rise [ráiz] : 「立ち上がる、起立する」
- cover [kʌ́vər] : 「〜を覆う、〜に覆いを付ける」
- vague [véig] : 「ぼんやりした、はっきりしない、曖昧な」
- uncertain [ʌnsə́ːrtn] : 「不確かな、不明確な、不確実な、不確定の」
- form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、姿、体つき」
- change [tʃéindʒ] : 「変わる、変化する、変遷する」
- shape [ʃéip] : 「形、状態、形状、形態」
- forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
- unsubstantial [ʌnsəbstǽnʃəl] : 「実体がない」
- unsure [ʌnʃúər] : 「不確かな、確信のない、不安定な」
❖ "The gap is carefully ~ "「ギャップは注意深く霧の中に隠され、」"and misty pictures ~ "「かすんだ光景が、〜を伴って、そのギャップを覆い隠すために立ち上がってくる」。"with vague uncertain ~ "「曖昧で不確かな形や変化する形を伴って、」かすんだ光景が立ち上がってくる。"forever unsubstantial ~ "「しかし、それらは永遠に実体を持たず、不確かなのだ」。ここは、理屈を追って考えなくてもいい。イメージを持つだけでいい。ギャップには何も存在しないというのが真実であるが、その無空間に、幻想が立ち現れ、真実を覆い隠して展開しているのである。永遠に実体の持たない、まさに幽霊のごとき不確かな存在、それが、この世界の様(さま)なのだ。多くの形をもった物体、物質がひしめいているが、それすらも曖昧で、変化し、ついには崩壊し消滅していくものである。まさに、仏教的な無常の世界なのである。
Yet in the gap is nothing. And there are no awesome secrets and no darkened tombs where terror rises from the bones of death.
- awesome [ɔ́ːsəm] : 「畏敬すべき、荘厳な、素晴らしい、すごい」
- secret [síːkrət] : 「秘密、機密、内緒事」
- darkened [dάːrkənd] : 「暗い、明かりの消えた」
- tomb [túːm] : 「墓穴、埋葬場所、墓、墓石、墓標」
- terror [térər] : 「恐怖、テロ」
- rise from : 「〜から立ち上がる、〜から立ち昇る」
- bone [bóun] : 「骨、骨格、骨組織」
- death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
❖ "Yet in the gap ~ "「ギャップの中には、何もない」。"And there are no ~ "「荘厳な秘密もなければ、」"and no darkened ~ "「恐怖が死の骨から立ち上がって来るような暗い墓もない」。幻想世界には、真理を語る荘厳な秘密などない。苦渋と悲しみと、憎しみや悲惨が蔓延しているとは言え、それすらも幻想であって、死さえ幻想である。恐れが、暗い墓場から立ち上って来るかに見えようが、それもまた、単なる幻想、幻覚なのだ。ギャップには、何もないのだ。空っぽなのである。
Look at the little gap, and you behold the innocence and emptiness of sin that you will see within yourself, when you have lost the fear of recognizing love.
- behold [bihóuld] : 「見守る、注視する」
- innocence [ínəsəns] : 「無邪気、無垢、純潔、純真、無罪、潔白」
- emptiness [émptinis] : 「空っぽ、空虚、むなしさ、無意味」
- sin [sín] : 「罪、罪悪、ばかげたこと、過失、罪業」
- within [wiðín] : 「〜の中に、〜の内側に」
- lost [lɔ́st] : 「lose の過去・過去分詞形」
- lose [lúːz] : 「〜を失う、見失う、喪失する、なくす」
- fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
- recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
❖ "Look at the little ~ "「小さなギャップを見なさい」。"and you behold ~ "「そうすれば、あなたは、〜したとき、あなた自身の中に見ることになる、無垢で罪のない様(さま)を見ることが出来るのである」。"when you have ~ "「あなたが、愛を受け入れる恐れを放棄したとき、」あなたがやがて知ることになる無垢で無辜(むこ)なるあなた自身を、その何もないギャップの中に見ることが出来るのだ。ここは、何もないギャップに、あなたの無垢で無辜があるという意味ではなく、何もなくなったおかげで、つまり、幻想という障害物がなくなったおかげで、真に実在するあなたの心や同胞の心がはっきりと見ることが出来て、そこに、あなたの無垢で無辜がはっきりと確認出来る、という意味合いである。
VI. The Secret Vows
秘密の誓願
1. Who punishes the body is insane. For here the little gap is seen, and yet it is not here.
- punish [pʌ́niʃ] : 「〜を罰する、〜を懲らしめる」
- insane [inséin] : 「正気でない、精神障害の、非常識な」
- seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
❖ "Who punishes ~ "「肉体を罰する者は、気が狂っている」。"For here the little ~ "「なぜなら、ここに小さなギャップは見ることが出来るが、しかし、ここにはギャップなど存在していないからだ」。心と心の間の隔たりが、小さなギャップであり、肉体が壁となってギャップを作り上げている。その小さなギャップに、幻想世界が展開し、あたかも実在しているかように、実にリアルに見えるのである。もちろん、ギャップを作っている肉体も幻想であり、したがって、存在さえしていない肉体を罰することは、狂気の沙汰だ。しかし、形としてはその通りなのだが、真実はもう一つ深い。何もないギャップ自体が存在していないのだ。ギャップという無空間さえ、錯覚である。なぜなら、あなたの心と同胞の心は、本当は分離しておらず、実相的には融合し単一の存在だからだ。単一の存在を二つに分けるギャップなど、そもそも存在していないのだ(and yet it is not here)。
It has not judged itself, nor made itself to be what it is not. It does not seek to make of pain a joy and look for lasting pleasure in the dust.
- judge [dʒʌ́dʒ] : 「〜を判断する、〜を審判する」
- seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
- pain [péin] : 「痛み、痛覚、疼痛」
- joy [dʒɔ́i] : 「喜び、歓喜、喜びの種」
- look for : 「〜を探す」
- lasting [lǽstiŋ] : 「長続きする、永久の、永続する、持続的な」
- pleasure [pléʒər] : 「喜び、楽しみ、快楽、楽しいこと」
- dust [dʌ́st] : 「ほこり、ちり、煤塵、粉塵、塵埃」
❖ "It has not judged ~ "「肉体は、それ自体に判断を下すことはないし、肉体以外のものに自身を変えることもない」。判断を下すのは肉体ではなく、肉体の中のほんの一部に過ぎない頭脳である。しかも、肉体がどんなにがんばっても、肉体を超える肉体、つまり、実在する肉体に変身することはない。"It does not seek ~ "「肉体は、痛みから喜びを作り出そうなどと求めもしないし、塵芥(ちりあくた)の中で、永続する喜びを求めるわけでもない」。痛みを喜びと感じるような、倒錯的な感覚をもつのは頭脳であり、肉体自身ではない。さらに、塵芥にも等しいがらくたの寄せ集めである幻想世界の中で、永遠の命の喜びを得ようなどと考えるのも頭脳であって、肉体ではない。
It does not tell you what its purpose is and cannot understand what it is for.
- tell [tél] : 「言う、告げる、教える、伝える」
- purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
- understand [ʌ̀ndərstǽnd] : 「理解する、了解する、納得する、分かる」
❖ "It does not tell you ~ "「肉体はあなたに、肉体の目的が何なのか、教えることはないし、肉体が何のためにあるのか、肉体は理解出来ないのだ」。肉体は、神の子の分離を目的に、神の子が夢の中で勝手に幻想しているものである。幻想された肉体自体は、そんなことは分からないし、言われても理解出来ない。
It does not victimize, because it has no will, no preferences and no doubts. It does not wonder what it is.
- victimize [víktəmàiz] : 「〜を犠牲にする、〜を生け贄にする」
- will [wíl] : 「意志、意欲、願望」
- preference [préfərəns] : 「好み、優先、選り好み、選択、好物」
- doubt [dáut] : 「疑い、疑念、疑惑」
- wonder [wʌ́ndər] : 「疑問に思う、不思議に思う」
❖ "It does not ~ "「肉体は、(何かを)犠牲にすることはない」。肉体は犠牲を求めない。"because it has ~ "「なぜなら、肉体は意思を持たないからであり、好みもなければ、疑いを持つこともないからだ」。意思を持ち、好みも疑いも持ち、犠牲を求めるのは、頭脳である。もっとはっきり言うなら、エゴに支配された頭脳である。"It does not wonder ~ "「肉体は、自分が何であるか、疑問を持つことはない」。肉体は、エゴに支配された頭脳の、意思を持たない奴隷なのだ。
And so it has no need to be competitive. It can be victimized, but cannot feel itself as victim.
- need [níːd] : 「必要、必要性」
- competitive [kəmpétətiv] : 「競争心の強い、競争好きな、負けず嫌いの」
- victim [víktim] : 「犠牲、犠牲者、被害者、被災者」
❖ "And so it has no ~ "「よって、肉体は、競争する必要がないのだ」。"It can be victimized ~ "「肉体は、犠牲にされることはあっても、自分が犠牲者だと感じることはない」。これまた、頭脳がそうであって、肉体ではない。
It accepts no role, but does what it is told, without attack.
- accept [əksépt] : 「承認する、認める、容認する、受け入れる」
- role [róul] : 「役、役目、役割、任務、職務」
- told [tóuld] : 「tell の過去・過去分詞形」
- without [wiðáut] : 「〜なしで、〜を持たないで、〜なしに」
- attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
❖ "It accepts no ~ "「肉体は、(何かの)役割を引き受ける分けではなく、言われたことをするだけであり、攻撃することもない」。肉体は、頭脳の命令のままに行動するだけであって、自ら意思をもって役割をこなすわけではない。もちろん、意思がないのだから、誰かを攻撃しようなどと思うこともないのだ。そのすべての役割は、肉体ではなく、エゴに支配された頭脳が担っているのだ。