13. Although this step has gains, it does not yet approach a basic question. Something must have gone before these concepts of the self.
- although [ɔːlðóu] : 「〜ではあるが、〜だけれども」
- gain [ɡéin] : 「利益、得ること、獲得、利得」
- approach [əpróutʃ] : 「〜に近づく、〜に接近する」
- basic [béisik] : 「基礎の、基本的な」
- gone [ɡɔ́ːn] : 「goの過去分詞形」
- concept [kɑ́nsept] : 「概念、観念」
❖ "Although this step ~ "「この段階が達成されたとしても、」あなたが、世界に適合するように自己概念を形成している段階から、あなたの願望を外部世界に投射して、この幻想世界を形成していると気付く段階に移行出来たとしても、"it does not yet ~ "「しかしまだ、根本的な問いに近づいてはいない」。そもそも、そのような投射したり投射されてたりする関係性を最初に築いたものは何なのか? 心の根底には誰がいて、また誰がいないのか? "Something must have ~ "「これらの自己概念が形成される前に、何かが失われたに違いない」。神の子としてのあなたの心のほとんどはエゴに占領され、ホーリー・スピリットは心の奥底に追いやられたのだ。したがって、正確には、「失われた」のではなく、追いやられ、そして忘れ去られてのである。
And something must have done the learning which gave rise to them. Nor can this be explained by either view.
- done [dʌ́n] : 「doの過去分詞」
- learning [lə́ːrniŋ] : 「習うこと、学ぶこと、学習」
- gave [ɡéiv] : 「giveの過去形」
- rise [ráiz] : 「発生、起源、根源、原因」
- give rise to : 「〜を引き起こす、〜を生じさせる」
- explain [ikspléin] : 「〜を説明する、明らかにする、釈明する」
- either [íːðər] : 「どちらの〜でも、どちらの〜も」
- view [vjúː] : 「意見、見識、考え、物の見方、見解」
❖ "And something must ~ "「そして、何かが、自己概念を生じさせるような学びを行ったに違いない」。そもそも、天の王国に住まっていた神の子には、自己概念など必要なかった。あえて自己概念があるとすれば、それはただ、神の子である、それのみである。しかし、神の子が神から分離し、この幻想世界を心の外部に投射して偽創造したとき、神の子は、自分が神の子であることを忘れ、新たに自己概念を形成する必要に迫られたのだ。どの様な自己を形成したらいいのか、それをエゴから学んだ、というわけである。"Nor can this be ~ "「これは、どちらの見方からも説明され得ない」。世界があなたを形成しているという見方からも、あなたが世界を形成していると見方からも、自己概念を形成する切っ掛けとなった第一原因は説明出来ない。まさに、鶏と卵の議論になってしまうではないか。あなたが先か、世界が先か?
The main advantage of the shifting to the second from the first is that you somehow entered in the choice by your decision.
- main [méin] : 「主要な、主な、中心的な」
- advantage [ædvǽntidʒ] : 「有利な点、有利性、利点、長所、強み」
- shifting [ʃíftiŋ] : 「転移、移動」
- somehow [sʌ́mhàu] : 「ういうわけか、どうしたものか、どうにかして」
- enter [énter] : 「〜に入る、〜に参加する、〜に立ち入る」
- choice [tʃɔ́is] : 「選ぶこと、選択」
- decision [disíʒən] : 「決定、決断、決心」
❖ "The main advantage ~ "「第一の見方から第二の見方へ移行する主な利点は、」世界に迎合するように自己概念を形成しているという第一の見方から、あなたの欲望が投射によって世界を形成しているという第二の見方に移行する、その主要な利点は、"is that you somehow ~ "「あなたが、どうにかして、あなたの決断によって選択するという領域に入ったことである」。簡単に言えば、受動的な自己概念形成から能動的自己概念形成に移行したことが利点になっている、ということ。世界があなたを単純に支配しているのでなく、あなたが世界を勝手に作っている、ということ。ただし、めちゃくちゃな世界ではあるが・・・。"by your decision"「あなたの決断によって」とあるが、あなたが世界に対して、こうあって欲しいと望む、その決断によって、という意味合い。こういう世界か、ああいう世界か、あなたが自己決断によって世界を選択出来るわけだ。自己決断とか能動的自己概念形成とか選択とか言えば聞こえはいいが、要するに、あなたの独断と偏見であり、つまりは、あなたの我がままである。
But this gain is paid in almost equal loss, for now you stand accused of guilt for what your brother is.
- be paid in : 「〜が支払われる」
- almost [ɔ́ːlmoust] : 「ほとんど」
- equal [íːkwəl] : 「〜と等しい、〜に相当する、同等の、程度が等しい」
- loss [lɔ́s] : 「失うこと、喪失、紛失」
- accuse [əkjúːz] : 「〜に責任を問う、〜を責める」
- stand accused of : 「〜のことで非難されている、〜のことで責められている」
❖ "But this gain is ~ "「しかし、これを得たことによって、同等の損失を被ることになる」。あなたが能動的な決断によって世界を選択出来るとは言え、それによって、あなたは損害を被ることになる。"for now you stand ~ "「なぜなら、今やあなたは、あなたの同胞が何であるかということに関して、非難される立場に立たされたからだ」。あなたが能動的な決断によって世界や同胞の姿を選択することが出来るということは、もし世界や同胞に罪があるなら、それはあなたの罪であるということを示しているからだ。同胞の罪という結果は、あなたの罪が原因となっているわけだ。そこで、あなたは罪に関して有罪を宣告されるわけである。もちろん、あなたの心があなたに対して有罪を宣告するのである。したがって、あなたの心に罪の意識が深く刻まれることになる。
And you must share his guilt, because you chose it for him in the image of your own.
- share [ʃέər] : 「分かち合う、共有する、共に味わう」
- guilt [ɡílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
- chose [tʃóuz] : 「chooseの過去形」
- choose [tʃúːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
- image [ímidʒ] : 「イメージ、画像、像、映像、印象、心証」
- in the image of : 「〜をひな型にして」
❖ "And you must ~ "「そして、同胞の罪の意識を、あなたは分かち合わなくてはならない」。"because you chose ~ "「なぜなら、あなたは、あなた自身のイメージに合わせて、同胞のイメージとして罪を選択したからだ」。つまり、あなたは、あなたの罪の意識を同胞に投射している、ということ。あなたと同胞は鏡像関係にある。鏡の中の同胞に罪があるように見えたなら、それはあなたの罪の意識が映ったものなのだ。
While only he was treacherous before, now must you be condemned along with him.
- while [hwáil] : 「〜の間ずっと、〜する間に、その間に」
- treacherous [trétʃərəs] : 「不誠実な、裏切りをする、当てにならない」
- condemn [kəndém] : 「〜に有罪の判決を下す、〜を非難する、責める」
- along with : 「〜と一緒に、〜とともに、〜に加えて」
❖ "While only he was ~ "「以前は、同胞だけが不誠実であったのに、」"now must you ~ "「今や、あなたは、同胞と並んで非難されなくてはならなくなった」。同胞が不誠実で、裏切り者に見えたなら、それは、同胞だけではなく、あなた自身がそうだからだ。今や、同胞に限らず、あなたも不実な者として非難の対象となる。罪の意識は、その根を執拗に、あなたの心の奥まではびこらせていくのである。
蛇足になるが、あなたは、その罪の意識を帳消しにしようとして、無意識のうちに罰を求める。罰せられることで、罪の意識は取り消しになると信じているのだ。世の中の既成宗教の論理を見てみると、かならず、神の罰の記述がある。なぜか? 人は罰せられたいと願っているからだ。罰せられて罪が帳消しになれば、晴れて、神に愛されると信じているからである。もちろん、ACIMは、それを否定する。神は、決して罰しない。だから、罪からの救いは、神の罰にも、神自身にもあるのではない。あなたが自ら、己(おの)が罪の意識から救わなくてはならないのだ。ACIMの最大のテーマである。
14. The concept of the self has always been the great preoccupation of the world.
- always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、常にいつでも」
- great [ɡréit] : 「大きい、大きな、巨大な、主要な」
- preoccupation [priὰkjupéiʃən] : 「没頭、夢中にさせるもの、気を取られていること、夢中、最大の関心事」
❖ "The concept of ~ "「自己概念は常に、世界の大きな関心事であった」。自分とは何なのか、自分はどうあらねばならないのか、この問題が、世界の哲学を作り、世界の倫理学を作り、世界の神学を作り、世界の宗教を作り、世界の道徳を作り、世界の行動規範を作ってきた。もちろん、自分とは何なのか、という問いは、世界とは何なのか、という問いに通じる。つまり、存在とは何なのか、という問いである。
And everyone believes that he must find the answer to the riddle of himself.
- believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
- find [fáind] : 「見つける、探し出す、発見する、見いだす」
- answer [ǽnsər] : 「答え、回答、返事、応答」
- riddle [rídl] : 「謎、難問、難題、難解な事物」
❖ "And everyone believes ~ "「そして、誰もが、彼自身の謎に対する答えを発見出来るものと信じている」。誰もが、この世界に迎合する哲学、倫理、宗教、道徳、等々が、自己概念の問題に答えを出してくれるものと信じてきた。そして、修行僧のごとく学び、苦行し、自己否定し、哀れに祈り、答えを求めて闇を彷徨(さまよ)い、世界の苦と痛みの中に埋没していった。あるいは、酒に溺れ、薬物に浸かり、肉欲に溺れ、物欲にしがみつき、金を求め、権力と支配を崇拝し、大食をむさぼり、快楽という快楽の限りを尽くす生き方に埋没してきた。
Salvation can be seen as nothing more than the escape from concepts.
- salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
- seen [síːn] : 「seeの過去分詞形」
- nothing more than : 「〜にすぎない、〜でしかない」
- escape [iskéip] : 「逃亡、脱出、避難、逃避、回避」
❖ "Salvation can be seen ~ "「救いは、自己概念から逃れること以上のものではないと見なされてきた」。"can"とあるので、可能性はそこにしかないと見なされてきた、という意味合い。確かに、悪しき自己概念からの解放は救いである。しかし、どんなすばらしい自己概念を形成しても、本当の解放にはならない。罪の意識からの解放がない限り、本当の救いはないのだ。罪の意識からの解放とは、幻想からの解放である。したがって、本当の救いは、幻想からの救いなのだ。夢から目覚めること、実相に覚醒すること、そこに本当の救いがある。
It does not concern itself with content of the mind, but with the simple statement that it thinks.
- concern [kənsə́ːrn] : 「〜に関係する、〜と関係がある」
- content [kάntent] : 「入っているもの、内容、中身」
- simple [símpl] : 「簡素な、簡略した、シンプルな、難しくない」
- statement [stéitmənt] : 「発言、意見、述べること、陳述、供述」
❖ "It does not concern ~ "「(世界が考える)救いは、心の中にあるものにそれ自体を関係づけてはおらず、」"but with the simple ~ "「心が考えている単純な宣言にだけに関係づけている」。心の中にあるものとは、ここでは単純に、エゴと捉えていいだろう。世界が考える救いは、エゴそれ自体に関係しているのではなく、エゴが思考し、エゴがあなたに教える単純な命令に関係していると信じられている。つまり、エゴの存在は知られることなく、エゴの命令だけを聞いていれば救われると思っているのだ。エゴの命令とは、理性的な価値判断や善悪判断、理性的な道徳規範、等々のこと。その内容にこそ、救いは関連してくるのであって、その内容を教えている理性としてのエゴは問題にされない。本当は、まったく逆である。救いは心そのものである。エゴに支配された心を解放することこそ、心の救いなのだ。ホーリー・スピリットを復権させることが、解放と救いに結びつく。
And what can think has choice, and can be shown that different thoughts have different consequence.
- choice [tʃɔ́is] : 「選ぶこと、選択」
- shown [ʃóun] : 「showの過去分詞」
- different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
- thought [θɔ́ːt] : 「思考、思索、考え、見解」
- consequence [kάnsəkwèns] : 「結果、結論、帰結」
❖ "And what can think ~ "「思うことの出来るものは、選択し、」"and can be shown ~ "「異なった思いは異なった結果を生むと示され得る」。思いは、あれかこれか、選択出来るし、その思いが異なれば、当然、結果も異なってくる。理性的判断としてのエゴは心を支配し、エゴに支配された心はその思いを世界の中に具現化する。心は判断し、選択し、様々な結果を得る。
So it can learn that everything it thinks reflects the deep confusion that it feels about how it was made and what it is.
- learn [lə́ːrn] : 「〜を学ぶ、〜に精通する、〜であると分かる」
- reflect [riflékt] : 「〜を映す、示す、反映する、〜を反射する」
- deep [díːp] : 「深い、深甚な、深遠な、難解な、困難な」
- confusion [kənfjúːʒən] : 「混乱、当惑、混同」
- feel about : 「〜について感じる」
❖ "So it can learn that ~ "「したがって、心はthat以下を学び得る」。"that everything it ~ "「心が思うあらゆることは、心がどう作られ、心は何なのかということに関して心が感じる深い混乱を反映する」と学び得る。心は、エゴに支配されているが、心の中の最も純粋で神聖な部分にホーリー・スピリットが宿っている。エゴは、頭脳としての理性を利用して、心に理性的な思いを抱かせ、ホーリー・スピリットは、心の正気さを利用して、心に真実の思いを抱かせる。あなたの心には、色々様々な思いが、あらゆる思いが錯綜するのだ。それが、深い混乱を招くこととなる。いったい自分は、猿から進化したただの動物か、それとも、神が創造した神の子か? 心は、単なる進化した頭脳の産物か、それとも、心だけが神が与えてくれた実在か? 心は、そういう深い混乱を学ぶのである。「学ぶ」とあるが、ここでは「感じる、わかる」という意味合い。「心の思いが混乱を反映する」とは、「心の思いが混乱を作り出している、混乱を招いている」という意味合い。
And vaguely does the concept of the self appear to answer what it does not know.
- vaguely [véiɡli] : 「漠然と、曖昧に」
- appear to do : 「〜するように見える」
- answer [ǽnsər] : 「〜に答える、〜に返事する」
❖ "And vaguely does ~ "「そして、漠然ではあるが、自己概念は、(混乱した)心がわからないことに答えてくれるように見えるのだ」。あなたの心は、エゴとホーリー・スピリットの思いに二分され、混乱を極める。混乱した心は、あなたの疑問に対する答えを知らない。そこであなたは、支配力の強いエゴの思いを採用して、世界に迎合するような自己概念を作り出し、混乱に終止符を打とうとする。エゴによって形作った自己概念を信じれば、少なくとも、世渡りに対する有効な答えは得られるからだ。たとえそれが真実でなくても、少なくとも有用ではある。世界は物質として実在する。人間は猿から進化した動物である。心は、進化した頭脳が作り上げたものであって、心として単独には実在しない。物質と理性が世界を支配するのであり、したがって、科学は何よりも勝る。あなたと他者は独立に肉体として存在する。あなたを攻撃する他者に罪があるのであって、あなたは潔白だ。だから、攻撃される前に、他者を攻撃せよ。この世は弱肉強食であって、生きるために奪え。世界は、愛と憎悪、善と悪、陰と陽、等々、対立する二元で構成され、その力の戦いが世界をダイナミックに動かしている。世界は精神であり、戦いこそがその精神の活力である。世界も人間も、戦いによって進化していくのだ。戦え、闘争しろ、攻撃せよ、奪え、殺せ、憎め、卑しめよ、踏みつけろ、裏切れ、騙せ、等々、等々・・・。