●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-31.V.15:1 ~ T-31.V.16:7


15. Seek not your Self in symbols. There can be no concept that can stand for what you are. 

  • seek [síːk] : 「見つけようとする、探し求める」
  • symbol [símbl] : 「象徴、シンボル」
  • concept [kάnsept] : 「概念、観念」
  • stand for : 「〜を表す」

❖ "Seek not your ~ "「象徴の中に、あなた自身を見出そうとしてはいけない」。"There can be no ~ "「本当のあなた自身を語ることの出来る概念は存在出来ないからだ」。"in symbols"「象徴の中に」とは、「この現象界の中に、この幻想世界の中に」という意味。対立する概念で構成された二元論現象世界の概念の中に、本当の自分自身を言い当てる概念を見出そうとしてはいけない。二元論は幻想であり、本当のあなた自身、実相のあなた自身、一元論的真実のあなた自身は、二元論現象世界の概念に当てはまり得ないからだ。神の子としての実相的あなた自身は、この世界のどんな象徴をもってしても表現出来るものではない。たとえば、この弱肉強食の世界にあって、常に戦い、努力し、勝利を勝ち得る自分こそが真実の自分自身であると思うかも知れないが、ホーリー・スピリットの思考システムに照らして見れば、それは、夢の中で必死に走り続ける哀れなネズミに等しい。
ACIMは、この世の努力を否定しているのではない。無意味な努力を哀れんでいるだけだ。もちろん、哀れみに留まることはない。そこで、東洋思想的な『無為自然』という生き方や、『知足』という生き方が発想されてくるのである。夢の世界の狂騒に巻き込まれることなく、心静かに世を眺めてやり過ごす生き方である。しかし、ACIMは、『無為自然』や『知足』に留まることもない。そこを超越して、絶対的な実相世界への開眼へとあなたを導く。



What matters it which concept you accept while you perceive a self that interacts with evil, and reacts to wicked things? 

  • matter [mǽtər] : 「重要である、大きな違いがある」
  • accept [æksépt] : 「引き受ける、受諾する、承認する、認める」
  • while [hwáil] : 「〜の間ずっと、〜する間に、〜なのに」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜を理解する、〜を把握する」
  • interact [intəːrǽkt] with : 「〜と関係を持つ、〜と相互に作用する、〜と接触する」
  • evil [íːvəl] : 「悪、不正、悪の源、邪心」
  • react [riǽkt] to : 「〜に反応する」
  • wicked [wíkid] : 「ひどく悪い、不道徳な、意地が悪い」

❖ "What matters it ~ "「あなたが、邪悪さと関係したり、悪いものに反応したりする自分を知覚するうちは、どんな自己概念をあなたが受け入れても、そこにどんな違いが生じるであろうか」。ここの"evil"とか"wicked things"は、この世界の基準での悪を意味するのではなく、実相的視点から見たときの意味のないもの、と捉えればいいだろう。つまり、幻想としての、諸々の象徴(symbols)である。あなたが、幻想に過ぎない意味ない象徴に自己を見出そうとしているうちは、あなたが何を選ぼうと、大きな違いは生じてこない、という意味である。たとえば、金儲けに狂おうが、肉欲に狂おうが、権力に狂おうが、すべては意味のない自己概念の狂騒であって、どれをとっても違いはない。そんなものと関わりを持ちたいと思っているうちは、本当の自分自身に出会えるチャンスはない。



Your concept of yourself will still remain quite meaningless. And you will not perceive that you can interact but with yourself. 

  • remain [riméin] : 「依然として〜のままである」
  • quite [kwáit] : 「すっかり、全く、完全に、とても、非常に」
  • meaningless [míːniŋlis] : 「意味が分からない、無意味な」

❖ そんなものと関わりを持ちたいと思っているうちは、"Your concept of yourself ~ "「あなたの自己概念は、まったく意味のないもののままである」。幻想に振り回されているだけだから、実相的意味などないのだ。"And you will not ~ "「あなたが、関わりをもつことが出来きるのはあなた自身しかいないと知ることもない」。あなたは、あなた自身の心を世界に投射して、この世界を幻想として形作っているのだから、世界と関わりをもつということは、実は、自分自身と関わりをもつことを意味するのだ。あなたは世界を見ているのではない、あなた自身の心の有り様を見ているだけなのだ。そういう、あなたと世界との関係性に気付くこともない。



To see a guilty world is but the sign your learning has been guided by the world, and you behold it as you see yourself. 

  • guilty [ɡílti] : 「有罪の、犯罪的な、罪を犯した」
  • sign [sáin] : 「象徴、シンボル、しるし、証拠、兆し、兆候」
  • learning [lə́ːrniŋ] : 「習うこと、学ぶこと、学習」
  • guide [gáid] : 「〜を導く、案内する」
  • behold [bihóuld] : 「見守る、注視する」

❖ "To see a guilty world ~ "「罪ある世界にばかり目を向けているということは、〜という印(しるし)以外の何ものでもない」。"your learning has ~ "「あなたの学びは世界によって主導され、あなたが自分を見るように世界を見ている」という印(しるし)以外の何ものでもない。あなたの心が世界を投射によって生み出しているのだから、逆に、投射された世界に目を奪われているうちは、世界があなたの心を支配していることになる。あなたは幻想を生み出し、その幻想に騙されているわけだ。



The concept of the self embraces all you look upon, and nothing is outside of this perception. 

  • embrace [imbréis] : 「囲む、取り巻く、包含する、受け入れる、採用する」
  • look upon : 「〜を見る」
  • outside [áutsáid] : 「〜の外の、〜の外側に」
  • perception [pərsépʃən] : 「知覚、認知、知見、見識、感じ方」

❖ "The concept of ~ "「自己概念は、あなたの目にするものすべてを抱きかかえており、この知覚の外には何もない」。あなたが目にする幻想の世界のすべては、あなたの自己概念が生み出したものであって、あなたの自己概念が目にする世界を包含している。その知覚し得る物質、現象以外の、つまり、幻想以外の存在に、あなたは気付いていないのだから、あなたは、幻想世界の外には何もないと思っている。すべては世界であり、すべては世界と共存する自分自身だと思っている。簡単に言えば、夢を見ているとき、夢の世界がすべてであり、そこに登場する自分だけがすべてだと信じているようなものなのだ。夢から目覚めた自分の存在、本当の自分の実在に気付きもしない。夢見るあなたには、夢がすべてで、それ以外に何も存在していないのだ。



If you can be hurt by anything, you see a picture of your secret wishes. Nothing more than this. 

  • hurt [hə́ːrt] : 「〜を傷つける、〜に苦痛を与える」
  • picture [píktʃər] : 「絵、像、光景、見物、実態、事実、状況」
  • secret [síːkrit] : 「秘密の、内緒の、ひそかな、機密の、隠れた」
  • wish [wíʃ] : 「願い、望みの物、願望、希望」

❖ "If you can be ~ "「もしあなたが、何かによって傷つけられ得るなら、あなたは秘密の望みの絵を見ていることになる」。"picture of your secret wishes"「秘密の望みの絵」とは、心の奥に抱いた悪しき欲望、と考えていい。後ろめたさを感じる望み、欲望である。人を騙してまでも金を手に入れたいとか、人をけ落としてまでも地位を得たいとか、偽りの愛欲をもってしても肉欲を満たしたいとか、人を不幸に陥れてまでも権力を手に入れたいとか、そういった類(たぐ)いの、悪しき秘密の絵柄の望みである。そんな、人の道に反する悪しき望みに支配されている限り、あなたはいつか、何ものかによって痛い目を見る、傷つけられるのだ。とは言え、その痛みは当然の帰結であって、やはり、哀しき幻想に過ぎない。



And in your suffering of any kind you see your own concealed desire to kill.

  • suffering [sʌ́fəriŋ] : 「苦しみ、苦痛、悩み」
  • concealed [kənsíːld] : 「隠れた、隠し持っている」
  • desire [dizáiər] : 「熱望、切望、欲望」

❖ "And in your suffering ~ "「いかなる種類の苦しみの中にも、あなたは、あなた自身が隠しもった、殺したいという欲望を見ることになる」。他者があなたの望みの実現を阻害したことが原因となり、あなたは心に痛みを覚える。あなたは、その他者を恨み、怒り、復讐心に燃える。かくしてあなたは、心の中で、他者を攻撃してやりたいと願うようになる。これが、"your own concealed desire to kill"「あなた自身が隠しもった、殺したいという欲望」である。ここの"kill"「殺す」とは、文字通り肉体的に生命を奪うという意味合いではなく、想念として抹殺してしまいたい、という意味合いに捉えればいいだろう。つまり、強烈な否定である。



16. You will make many concepts of the self as learning goes along. 

  • go along: 「進行する、〜に付随する」

❖ "You will make many ~ "「学びが進行するに従い、あなたは、多くの自己概念を形成してゆく」。たとえば、金儲けに奔走する自己を形成したが、それが他者の妨害で頓挫すると、心に痛みを覚えて他者に恨みを抱く。そういう学びを世の中から得たわけだが、それに懲りずに、また別の自己を形成しようとする。今度は、金によらず、権力によって他者を支配する自分を夢見るようになる。こうして、幻想世界に生きるための学びを通して、あなたは多くの自己概念を形成していくことになる。そして、そのすべてに挫折するのだ。しかし、多くの挫折を通して、もし、あなたが人生を真摯に見つめるチャンスを得たなら、当然、この世の無常を知ることになる。無常とは、すべては変化流動して止まないという世界観のことであって、これが、世界は幻想だと気付く切っ掛けになるのだ。真実が永遠不変であるなら、無常の世は真実ではない。虚偽は心が生み出した幻想に過ぎず、したがって、この世は幻想だ、というわけである。



Each one will show the changes in your own relationships, as your perception of yourself is changed. 

  • show [ʃóu] : 「見せる、示す、表す、表示する」
  • change [tʃéindʒ] : 「変化、変更、移行、交換」
  • relationship [riléiʃnʃìp] : 「関係、結び付き、関係性、関わり」
  • change [tʃéindʒ] : 「〜を変える、〜を変更する、〜を変換する」

❖ "Each one will show ~ "「あなた自身に対する見方が変わるに従い、一つ一つの自己概念は、あなた自身の関係性の変化を示すことになる」。あなたは自己を投射して他者や世界を形成していくのだから、あなた自身が変われば、投射する内容も当然変化し、あなたと他者、あなたと世界の関係性も変化していく。



There will be some confusion every time there is a shift, but be you thankful that the learning of the world is loosening its grasp upon your mind. 

  • confusion [kənfjúːʒən] : 「混乱状態、無秩序、当惑、困惑、戸惑い」
  • shift [ʃíft] : 「交代、変更、変化、転換」
  • thankful [θǽŋkfəl] : 「感謝している、ありがたく思う」
  • loosen [lúːsn] : 「解く、ほどく、緩める、解放する」
  • grasp [ɡrǽsp] : 「しっかりつかむこと、保持、支配」

❖ "There will be some ~ "「(関係性が)シフトする度に、ある程度の困惑が生じるだろう」。"but be you thankful ~ "「しかし、世界が提供する学びが、あなたの心を支配する力を緩めていくことに感謝しなさい」。あなたと他者や世界との関係性が変化するとき、あなたは多少の困惑を覚えるかもしれないが、その関係性が実相の真実に向かう限り、世界によるあなたへの支配力は減少していく。あなたが世の無常を感じるようになれば、世界の幻想性が見えてきて、幻想世界へのめり込んでいたあなたの心の有り様が変化してくのである。



And be you sure and happy in the confidence that it will go at last, and leave your mind at peace. 

  • sure [ʃúər] : 「確信して、確信している、固く信じている、確かな」
  • confidence [kάnfədəns] : 「確かさ、確信、自信、信頼、信用」
  • in the confidence that : 「that以下を確信して」
  • at last : 「最後に、ついに、とうとう」
  • leave [líːv] : 「ある状態のままにしておく、〜をそのままにしておく」
  • at peace : 「平和に、安らかに、安らかな気持ちで、心穏やかで」

❖ "And be you sure ~ "「そして、世界によるあなたの支配はついに消滅し、あなたの心は安らかになるはずだと信じて、確信し幸せを感じなさい」。物質的豊かさ、金儲け、社会的地位、出世、名声、権力、支配、肉欲、等々の欲望で構成されていた、あなたと世界の関係性は、あなたが実相に向かって変化するに従い、徐々に消滅してくのだ。あなたの心は、平和と幸せと確信に満ちてくる。



The role of the accuser will appear in many places and in many forms. 

  • role [róul] : 「役、役柄、役割、役目、任務」
  • accuser [əkjúːzər] : 「刑事訴訟の原告、告訴人、告発人」
  • appear [əpíər] : 「現れる、出現する、登場する」
  • place [pléis] : 「場所、個所、住所、立場、境遇、環境」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、体つき、外見」

❖ "The role of the accuser ~ "「非難する役割をもった者が、多くの場所に、多くの形をとって現れてくるだろう」。あなたが世界から離れて行くに従い、あなたを社会的な敗北者であるとか、負け犬であるとか、落後者であるとか、自己中心的であるとか、理想主義者であるとか、馬鹿者であるとか、愚かであるとか、気違いであるとか、精神を病んでいるとか、様々な非難を浴びせられることがあろう。あなたは、世界の学びを放棄し、世界の規範からドロップ・アウトしてアウトサイダーになるのだから、世界の多数派から見れば、あなたは裏切り者なのだ。世捨て人に見えることだろう。



And each will seem to be accusing you. Yet have no fear it will not be undone.

  • each [íːtʃ] : 「各々、それぞれ、めいめい」
  • accuse [əkjúːz] : 「〜を責める、〜を非難する」
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
  • undone [ʌndʌ́n] : 「undoの過去分詞形」
  • undo [ʌndú] : 「元へ戻す、取り消す」

❖ "And each will ~ "「(周りの者)一人一人が、あなたを非難しているように見えることだろう」。"Yet have no fear ~ "「しかし、そんな非難は取り消されることはないだろうと、恐れてはいけない」。あなたは正しい方向に進んでいるのであって、幻想に過ぎない他者からの非難など、いつかは消滅して取り消されるのだ。いつかとは、あなたが世界の幻想性を見抜いて受け入れ受け流し、赦す時である。赦しによって幻想は消滅し、あなたは実相に目覚めるのだ。夢から覚めたとき、あなたの所業も多数の非難も同時に消滅して、取り消されることになる。世の中の一番の愚か者は、一番の賢者になるのである。
 
 
 


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