2. Grandiosity is always a cover for despair. It is without hope because it is not real.
- grandiosity [grændiɑ́ːsəti] : 「壮大」
- cover [kʌ́vər] : 「覆い、表紙、カバー」
- despair [dispéər] : 「絶望、失望、落胆」
- hope [hóup] : 「希望、望み、期待」
❖ "Grandiosity is always ~ "「尊大であることは常に絶望を隠すカバーである」。単語"grandiosity"であるが、"grandiose [grǽndiòus]"が「壮大な、偉ぶった」という意味であるから、ネガティブな意味合いをもち、ここでは『尊大』と訳してみた。"It is without ~ "「尊大さは実体がないので、それは希望を伴わない」。第一段落で神の属性である"grandeur"を説明したので、第二段落ではその対比としてエゴの属性の"grandiosity"を説明するわけだ。神の偉大さ(grandeur)は実体のある実相。エゴの尊大さ(grandiosity)は実体のない幻想である。
It is an attempt to counteract your littleness, based on the belief that the littleness is real.
- attempt [ətémpt] : 「試み、企て」
- counteract [kàuntərǽkt] : 「〜に反対に作用する、対抗する」
- littleness [lítlnis] : 「小さいこと」
- base [béis] : 「〜の基礎を形成する」
- base on : 「〜に基づく、〜に準拠する」
- based on : 「〜に基づいている」
- belief [bilíːf] : 「信じること、信念」
❖ "It is an attempt ~ "「尊大さとは、あなたの卑小さに対抗するための試みである」。卑小さを隠すために虚勢を張り、尊大な態度をとる。小役人ほどよく威張ると言われているが、その通りだ。"based on the belief ~ "分詞構文、先頭に"Being"を補えばいい、単純接続、「そして、それは、卑小さが実在性をもつという信念に基づいている」。自分の卑小さや小ささが幻想ではなく本当に実在していると(真実だと)信じているために、それを必死に打ち消そうとして尊大な態度をとり、傲慢になる。
Without this belief grandiosity is meaningless, and you could not possibly want it.
- meaningless [míːniŋlis] : 「意味のない、無意味な」
- possibly [pɑ́səbli] : 「場合により、たぶん」
❖ "Without this belief ~ "「この信念なくしては、尊大さは意味がない」。自分の卑小さが実在すると信じないなら、尊大に振る舞う必要はなくなり、尊大さは意味を失う。"and you could ~ "「そして、あなたは多分、尊大さを欲しようとはしないだろう」。意味がないから、あなたは欲しいとも思うまい。
The essence of grandiosity is competitiveness, because it always involves attack.
- essence [ésns] : 「本質、特質、核心」
- competitiveness [kəmpétətivnis] : 「競争力、競争的なこと」
- involve [invɑ́lv] : 「〜を含む、伴う」
- attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
❖ "The essence of ~ "「尊大さの本質は、競争性である」。むしろ、闘争性と解釈した方がいいかもしれない。"because it always ~ "「なぜなら、尊大さは常に攻撃性を含んでいるからだ」。自分の卑小さを隠すために、尊大さは常に他者を攻撃し、打ち負かすことで自分の優位性、偉大さを示そうとする。卑小さには実体がないから、相対的に他者より優れていることを自らに示す必要があるのだ。他者を攻撃して勝ったから、自分は他者より強いと誇る。実体のない勝利感である。
It is a delusional attempt to outdo, but not to undo. We said before that the ego vacillates between suspiciousness and viciousness.
- delusional [dilúːʒənəl] : 「妄想の」
- attempt [ətémpt] : 「試み、企て」
- outdo [autdúː] : 「〜をしのぐ、〜に勝る」
- undo [ʌndú] : 「〜を元に戻す、取り消す」
- vacillate [vǽsəlèit] : 「揺れ動く、動揺する」
- between A and B : 「AとBの間で」
- suspiciousness [səspíʃəsnis] : 「疑わしさ、不信感、疑惑」
- viciousness [víʃəsnis] : 「意地の悪さ、凶暴さ、敵意」
❖ "It is a delusional ~ "「人を打ち負かそうとすることは妄想的な企てであるが、」"but not to ~ "「誤りを取り消すことは、妄想的な企てではない」。"We said before ~ "「以前、私たちはthat以下を言った」。"that the ego ~ "「エゴは、疑惑と敵意の間で揺れ動いている」と言った。疑惑と敵意を抱くことが妄想的な企てであり、それを取り消すことは実相的に可能なことだ。つまり、疑惑と敵意に満ちたエゴを消滅させることが真実への目覚めとなる。
It remains suspicious as long as you despair of yourself. It shifts to viciousness when you decide not to tolerate self-abasement and seek relief.
- remain [riméin] : 「依然として〜のままである」
- as long as : 「〜する限り、〜である限りは」
- despair [dispéər] : 「絶望する、失望する」
- despair of : 「〜に失望、〜に絶望する」
- shift [ʃíft] : 「変わる、移る」
- decide [disáid] : 「〜することに決める」
- tolerate [tɑ́lərèit] : 「〜を大目に見る、我慢する」
- self-abasement [əbéismənt] : 「謙遜、卑下」
- seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す」
- relief [rilíːf] : 「救済、安心」
❖ "It remains suspicious ~ "「エゴは、あなたがあなた自身に絶望している限りは、疑惑にとどまっている」。あなたが自分に絶望していることで、エゴにも絶望しているのではないかとエゴは懐疑的になる。"It shifts to viciousness ~ "「エゴは、あなたが卑下することを止め、救済を求めることを決断した時、敵意へと変わる」。絶望を捨て、ホーリー・スピリットに救いを求めるとき、エゴは猛然とあなたを攻撃する。もっとも、あなたが他者を攻撃するように唆(そそのか)すことで、エゴは間接的にあなたを攻撃するのだ。他者とあなたは自他一如だから、あなたが他者を攻撃することはあなた自身を攻撃することに等しい。エゴは巧妙にあなたを攻撃する。
Then it offers you the illusion of attack as a "solution. "
- offer [ɔ́ːfər] : 「ささげる、差し出す、提供する」
- illusion [ilúːʒən] : 「幻想、錯覚、幻覚」
- solution [səlúːʃən] : 「解答、解決、解決法」
❖ "Then it offers ~ "「そこでエゴは、あなたに、攻撃というイリュージョンを『ソリューション』として提供する」。イエスの言葉遊び。あなたが卑下すること止め、救済を求め始めると、エゴは、救われるには他者を攻撃し、富を奪うことの最適だとあなたを唆(そそのか)す。なぜなら、エゴは、あなたが真実を知ることを一番に恐れているからだ。真実を知ることで幻想のエゴが消滅してしまう恐れである。真実に向かい始めたあなたの視線を、攻撃へ向けさせようとするのだ。
3. The ego does not understand the difference between grandeur and grandiosity, because it sees no difference between miracle impulses and ego-alien beliefs of its own.
- difference [dífərəns] : 「違い、差異、相違」
- between [bitwíːn] A and B : 「AとBのい間の」
- grandeur [grǽndʒər] : 「偉大さ、威厳、壮大さ」
- grandiosity [grændiɑ́ːsəti] : 「壮大、偉そうなこと」
- miracle [mírəkl] : 「奇跡、奇跡的な出来事」
- impulse [ímpʌls] : 「衝動、衝撃」
- alien [éiliən] : 「異質な、縁もゆかりもない」
❖ "The ego does ~ "「エゴは、偉大さと尊大さの間の違いを理解していない」。"because it sees ~ "「なぜなら、エゴには、奇跡を求める衝動と、エゴ自身がもっているエゴと縁もゆかりもない信念との間の違いが見えていないからだ」。奇跡を求める衝動とは、真実を知りたい、幻想から抜け出したいと望む衝動である。一歩進めれば、それは創造への衝動となる。つまり、真実を現実化する衝動である。一方、『エゴ自身がもっているエゴと縁もゆかりもない信念』とは、自分は神に匹敵する偉大さをもっていると信じていること。偉大さは、エゴにはまったく無縁の、神の属性である。しかし、エゴは偉大さが自分にあると信じているので尊大に振る舞うのだ。たとえば、エゴは、神を打ち負かしたい、幻想によって実相を破壊したいという衝動をもっている。紙に描いた金槌で本物の釘を打つことは出来ないにもかかわらず、エゴは、自分はそれが出来ると信じている。奇跡への衝動もエゴの信念も、ともに未だ現実化していなのだが、一方は実現可能、他方は実現不可能であり、両者には決定的な違いがある。エゴにはそれが見えていない。エゴは完全にレベル・コンフュージョンに陥っているのだ。
I told you that the ego is aware of threat to its existence, but makes no distinctions between these two very different kinds of threat.
- be aware [əwéər] of : 「〜に気付いている、〜を知っている」
- threat [θrét] : 「脅迫、脅し、脅威」
- existence [igzístns] : 「存在、実存、実在」
- make no distinction between A and B : 「AとBの間に区別をつけない」
- different [dífərənt] : 「違っている、異なる」
- kind [káind] : 「種類、質、性質」
❖ "I told you that ~ "「私はあなたに、that以下を言ったことがる」。"that the ego ~ "「エゴは、その存在に対する脅威に気付いている」と言ったことがある。つまり、あなたが真実に目覚め、幻想を捨てる時、幻想のエゴも同時に消滅するという恐れ。"but makes no ~ "「しかし、エゴは、これら相異なる二つの種類の脅威の間の違いに区別を付けていないのだ」。さて、『これら相異なる二つの種類の脅威』とは何と何か? 一つは、私達が幻想の世界を抜け出すことでエゴが消滅してしまうことに対する脅威。ではもう一つは何か? 非常に悩むところであるが、単純に考えて、エゴが対抗意識を燃やしている神そのものに対する脅威と考えておこう。言い換えるなら、神の偉大さへの脅威である。エゴは、紙に描いた金槌で実在の釘(神)を叩こうとしているが、叩けるものではない。不可能なのだ。そこに神に対する脅威といらだちが生ずる。では、私達の覚醒に対するエゴの脅威と、神の偉大さに対するエゴの脅威にはどんな違いがあるか? 私達はエゴを消滅させることが出来る。しかし、神はエゴを消滅させることは出来ない。おやっ、と思われるかもしれないが、そもそもエゴを作ったのは神ではなく、私達の心である。神から分離した私達の心が罪の意識を外部世界へ投影して、エゴという偶像(象徴)を作った。それは神には全く関係のない、私達自身の偽創造であった。したがって、私達の心の中に巣くう幻想のエゴを消滅させ得るのは私達自身なのであって、神でもホーリー・スピリットでもない。神はホーリー・スピリットを通じて、私達がエゴを消滅させる手助けはしてくれる。しかし、神はエゴを直接消滅させることはしない。出来ない。なぜなら、神は幻想の世界と一切関わりをもたないからだ。
Its profound sense of vulnerability renders it incapable of judgment except in terms of attack.
- profound [prəfáund] : 「深い、心の底から」
- sense [séns] : 「感覚、感触」
- vulnerability [vʌ̀lnərəbíləti] : 「脆弱性、傷つきやすいこと」
- render [réndə(r)] [SVOC] : 「〜の状態にする、〜に変える」
- incapable [inkéipəbl] of : 「〜することができない」
- judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、分別」
- except [iksépt] : 「〜以外は、〜を別にすれば」
- in terms of : 「〜に関して、〜の点から見て」
❖ "Its profound sense ~ "「エゴの根深い脆(もろ)さの感覚は、攻撃に関する以外は、エゴを判断不能としている」。幻想のエゴは、その存在が非常に脆弱であり(なにしろ、私達が幻想しているだけの存在だ)、だから、正しい判断が出来ない状態にある。つまり、自分は幻想に過ぎず、実在していないという正しい判断が出来ない。ただし、弱いからこそ虚勢を張り、エゴは攻撃にかけては大胆不敵な判断を下す。尊大ぶり、あなたの心を支配するのだ。
When the ego experiences threat, its only decision is whether to attack now or to withdraw to attack later.
- experience [ikspíəriəns] : 「〜を経験する、〜を体験する」
- threat [θrét] : 「脅迫、脅し、脅威」
- decision [disíʒən] : 「決定、決意、決心」
- whether [hwéðər] : 「〜かどうか」
- whether to do A or to do B : 「AをすべきかBをすべきか」
- later [léitər] : 「後で」
❖ "When the ego ~ "「エゴが脅威を感じた時、」"its only decision ~ "「エゴの唯一の決定は、今攻撃を行うべきか、後で攻撃を行うべきか、ということである」。タイミングを計るだけで、攻撃することには変わりない。
If you accept its offer of grandiosity it will attack immediately. If you do not, it will wait.
- accept [əksépt] : 「認める、容認する、受け入れる」
- offer [ɔ́ːfər] : 「申し出、申入れ、提供」
- immediately [imíːdiətli] : 「すぐに、即座に」
- wait [wéit] : 「じっとしている、待つ」
❖ "If you accept ~ "「もしあなたが、尊大さというエゴの申し出を受け入れるなら、」"it will attack ~ "「エゴはすぐに攻撃に出るだろう」。"If you do not ~ "「もし、あなたが攻撃しない時は、エゴはじっとそれを待つ」。あなたがエゴの操り人形になることを受け入れたなら、エゴはすぐにでも攻撃に出て、尊大になったあなたに他者を攻撃させる。それはあなた自身を攻撃していることなのだが、操り人形のあなたは気付かない。あなたが尊大さに躊躇したなら、あなたがホーリー・スピリットへ向けた視線をそらしてしまうまで、エゴはじっと待つ。エゴに視線を向け直した途端、エゴはあなたに尊大さと攻撃性を植え込む。あなたはエゴの奴隷となるのだ。