V. The "Dynamics" of the Ego
エゴの『力学』
1. No one can escape from illusions unless he looks at them, for not looking is the way they are protected.
- escape [iskéip] : 「逃げる、脱出する」
- illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
- unless [ənlés] : 「〜でない限り、〜である場合を除いて」
- protect [prətékt] : 「保護する、守る、防御する」
❖ "No one can ~ "「幻想を見ないことには、幻想から逃れることは誰にも出来ない」。"for not looking ~ "「なぜなら、見ないでいることは、幻想を守る方法だからだ」。見て見ぬ振りをすることは、幻想を温存することにつながる。
There is no need to shrink from illusions, for they cannot be dangerous.
- shrink [ʃríŋk] : 「尻込みする、ひるむ」
- shrink from : 「〜の前で縮み上がる」
- dangerous [déindʒərəs] : 「危険な、物騒な」
❖ "There is no ~ "「幻想にひるむ必要はない」。"for they cannot ~ "「なぜなら、幻想は危険になり得ないのだから」。幻想は夜見る夢と同じで、どんなに恐ろしくても危険はない。
We are ready to look more closely at the ego's thought system because together we have the lamp that will dispel it, and since you realize you do not want it, you must be ready.
- be ready to : 「〜する心構えができている」
- closely [klóusli] : 「綿密に、密接に、念入りに」
- lamp [lǽmp] : 「ランプ、灯火、光明」
- dispel [dispél] : 「〜を追い払う、払拭する」
- since [síns] : 「〜なので、〜だから」
- realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、自覚する」
❖ "We are ready ~ "「私たちはエゴの思考システムをより念入りに見つめる心の準備が出来ている」。"because together ~ "「なぜなら、私たちは共に、エゴの思考システムを払拭することになるランプを持っているからだ」。エゴの思考システムの闇を照らし出すランプを持っているから、エゴに騙されることはなく、したがって、エゴの思考システムをじっくり検査する心の準備が整っている。"and since you ~ "「しかも、あなたはもはやエゴの思考システムを欲してはいないと自覚しているので、」"you must be ~ "「あなたは、エゴの思考システムを綿密に見つめる準備が出来ていると言える」。
The "dynamics" of the ego will be our lesson for a while, for we must look first at this to see beyond it, since you have made it real.
- dynamics [dainǽmiks] : 「力学、動力学」
- for a while [hwáil] : 「しばらくの間、少しの間」
- beyond [bijɑ́nd] : 「〜の向こう側に、〜を越えて」
- real [ríəl] : 「実質的な、現実の、実際の」
❖ "The "dynamics" of ~ "「しばらくの間、エゴの『力学』が私たちのレッスンとなるであろう」。"for we must ~ "「なぜなら、エゴの力学を越えてものを見るためには、まず最初に、私たちはこのエゴの力学を見なければならないからだ」。"since you have ~ "「というのも、あなたはその力学を現実のものとしてしまったからだ」。エゴの力学とは、エゴの思考システムの動き、作用の仕方、影響の様子、そういったものを指すのだろう。今のあなたはそのエゴの思考システムにどっぷりつかりきっているので、それが現実だとして受け入れ、疑問をもたずに生活している。そこから抜け出すために、エゴの思考システムの力学を学ぶのである。
We will undo this error quietly together, and then look beyond it to truth.
- undo [ʌndú] : 「〜を元に戻す、取り消す」
- error [érər] : 「誤り、間違い、過失」
- quietly [kwáiətli] : 「静かに、黙って、静かに」
- together [təgéðər] : 「一緒に、同時に」
- truth [trúːθ] : 「事実、真相、真理」
❖ "We will undo ~ "「私たちはこの誤りを、静かに一緒になって取り消すことにしよう」。"and then look ~ "「そして、誤りを越えて、真実を見ることになる」。この誤りとは、エゴの思考システムの力学にまんまと引っかかってしまったこと。
2. What is healing but the removal of all that stands in the way of knowledge?
- removal [rimúːvl] : 「除去、取り除くこと、撤去」
- stand in the way : 「途中に立ちはだかる、邪魔する」
- knowledge [nɑ́lidʒ] : 「知識、認識、知恵、知見 」
❖ "What is healing ~ "「叡智に至る道を塞(ふさ)ぐすべてのものを除去することなくして、ヒーリングとはいったい何か」。ヒーリングとは、叡智への道を邪魔するものを取り除くことだ、ということ。叡智とは真実の総体。実相世界の属性の一つと受け止めてもいいし、実相世界の姿と考えてもいいだろう。仏教で言うところの『般若(はんにゃ)』。
And how else can one dispel illusions except by looking at them directly, without protecting them?
- else [éls] : 「別の方法で、ほかに」
- except [iksépt] : 「〜を除いて、〜以外に」
- directly [dəréktli] : 「直接に、真っすぐに」
- protect [prətékt] : 「保護する、守る、防御する」
❖ "And how else ~ "「叡智への障害となっているものを守ろうとせずにそれらを直接見ることなく、いったい他のどのような方法で、人は幻想を払拭できるだろうか」。叡智への障害となっているものとは、エゴの思考システムの力学である。それを見て見ぬふりをすることはエゴを守ることにつながるので、勇気をもって直接エゴの思考システムを見るのである。そうすることによって、幻想を払拭できるようになる。
Be not afraid, therefore, for what you will be looking at is the source of fear, and you are beginning to learn that fear is not real.
- afraid [əfréid] : 「恐れて、怖がって」
- therefore [ðéərfɔ̀ːr] : 「それ故に、従って」
- look at : 「〜を見る、〜を考察する」
- source [sɔ́ːrs] : 「もと、源」
- be beginning to : 「〜し始める」
- learn [lə́ːrn] : 「〜を知る、分かる、〜を学ぶ」
❖ "Be not afraid ~ "「したがって、恐れてはいけない」。"for what you ~ "「なぜなら、あなたが見ようとしているものは、恐れの源であって、」"and you are ~ "「あなたは、恐れが実在ではないと知り始めているからだ」。どんなに恐ろしくても、恐れは幻想である。恐れは実相的に実在するものではない。夜見る夢の恐れと同様で、目覚めれば恐れは消える。したがって、エゴの思考システムの力学を見るとき、恐れを感じる必要はない。
You are also learning that its effects can be dispelled merely by denying their reality.
- also [ɔ́ːlsou] : 「〜もまた、同様に」
- effect [ifékt] : 「結果、影響、効果、効力」
- merely [míə(r)li] : 「ただ単に、単に」
- deny [dinái] : 「〜を否定する、拒む、拒絶する」
- reality [riǽləti] : 「現実、真実、実相」
❖ "You are also ~ "「あなたはまた、that以下も学びつつある」。"that its effects ~ "「恐れの影響は、単にその実在性を否定することで払拭できるのだ」と学びつつある。恐れは、それが実在していると思うから恐ろしいのだ。実在していないと知れば、恐れの影響など何も怖くない。
The next step is obviously to recognize that what has no effects does not exist.
- next [nékst] : 「次の、隣の」
- obviously [ɑ́bviəsli] : 「明らかに、はっきりと、明白に」
- recognize [rékəgnàiz] : 「認める、受け入れる」
- exist [igzíst] : 「存在する、生存する」
❖ "The next step is ~ "「次のステップは明らかに、影響を与えないものは存在しないと認識することである」。恐れは、夢の中の恐れと同様に、現実的な相に影響を及ぼすことはない。したがって、恐れは存在しない。
Laws do not operate in a vacuum, and what leads to nothing has not happened.
- law [lɔ́ː] : 「法、法律、法令」
- in a vacuum : 「孤立して」
- operate [ɑ́pərèit] : 「動作する、機能する」
- vacuum [vǽkjuəm] : 「真空、空虚」
- lead [líːd] : 「導く、案内する、指導する」
- happen [hǽpn] : 「起こる、発生する」
❖ "Laws do not ~ "「法は孤立して機能するのもではない」。法は物事の関連の中で機能するのであり、何もない所で法が単独に機能するものではない。"and what leads ~ "「そして、無へと導くものなど、起きてはいないのだ」。何の結果も生み出さないもの(what leads to nothing)は、そのこと自体が起きているとは言えない(has not happened)。
If reality is recognized by its extension, what leads to nothing could not be real.
- extension [iksténʃən] : 「拡張、伸長、延長、伸展」
❖ "If reality is ~ "「実相にあるものは、その拡張性によって承認されるなら、」"what leads to ~ "「無へと導くものは実相であるとは言えない」。実相にあるものは、神、神の子、そしてホーリー・スピリットの3者によって分かち合われるので、拡張していく。拡張性があることが実相の必要条件である。したがって、無へと導くものは決して拡張しないものだから、実相的な存在ではない。
Do not be afraid, then, to look upon fear, for it cannot be seen.
- afraid [əfréid] : 「恐れて、怖がって」
- be afraid of : 「〜を恐れる、〜を怖がる」
- look upon : 「〜を見る、見つめる」
❖ "Do not be afraid ~ "「したがって、恐れを見ることを怖がってはいけない」。"for it cannot ~ "「なぜなら、それは見えないのだから」。恐れは実在ではない。したがって、実相の世界から見れば、それは実在していないから、見えないのだ。この世の知覚で見える恐れは、実相世界のヴィジョンには無と映る。
Clarity undoes confusion by definition, and to look upon darkness through light must dispel it.
- clarity [klǽrəti] : 「明瞭、明快、清澄」
- confusion [kənfjúːʒən] : 「混乱、混同、混乱状態」
- definition [dèfəníʃən] : 「定義、明確にすること」
- by definition : 「定義により、明らかに、本質的に」
- darkness [dɑ́ːrknəs] : 「暗さ、暗がり、暗闇」
❖ "Clarity undoes ~ "「明瞭であることは、定義からして、混乱を取り消してくれる」。混乱のないところに明瞭さが生まれる。"and to look ~ "「そして、闇に光を当てて見れば、闇は払拭される」。したがって、エゴの思考システムの力学を見る時、心を清澄にし、心の放つ光をそれに当てて見れば、混乱は消滅し、恐れも消えていく。