15. The ego makes no attempt to understand this, and it is clearly not understandable, but the ego does make every attempt to demonstrate it, and this it does constantly.
- attempt [ətémpt] : 「試み、企て」
- make an attempt to : 「〜しようと試みる」
- understandable [ʌ̀ndərstǽndəbl] : 「理解できる、分かる」
- demonstrate [démənstrèit] : 「実演する、実証する」
- constantly [kɑ́nstəntli] : 「絶えず、絶え間なく、常に」
❖ "The ego makes ~ "「エゴはこれを理解しようと試みることはない」。これとは、エゴの循環論法に従えば"Error is real and truth is error"「誤りこそが現実で、真実は誤りにほかならない」という結論に陥ってしまうこと。それがおかしいことにエゴは気付かない。"and it is clearly ~ "「それは(エゴにとって)明らかに理解不能である」。"but the ego ~ "「しかしエゴは、それ(自分の結論が正しいこと)を実証しようとあらゆる試みをする」。"and this it ~ "「そして、エゴは常にそんなことをやっているのだ」。そんなこととは、証明不能のことを証明しようとしていること。自分の論の正しいことを実証しようとばかりしている。
Analyzing to attack meaning, the ego succeeds in overlooking it and is left with a series of fragmented perceptions which it unifies on behalf of itself.
- analyze [ǽnəlàiz] : 「分析する、解析する」
- succeed [səksíːd] : 「成功する」
- succeed in : 「〜に成功する」
- overlook [òuvərlúk] : 「見過ごす、大目に見る」
- left [léft] : 「leave の過去・過去分詞形」
- leave [líːv] : 「〜を残す、置き忘れる、放置する」
- be left with : 「もち続ける、押し付けられる」
- series [síəriːz] : 「連続、シリーズ、一組」
- a series of : 「一連の〜、ひと続きの〜」
- fragment [frǽgmənt] : 「砕く、砕ける、寸断する」
- perception [pərsépʃən] : 「知覚、認知、見識」
- unify [júːnəfài] : 「統一する、一体化する」
- behalf [bihǽf] : 「支持、味方、利益」
- on behalf of : 「〜のために、〜の利益になるように」
❖ "Analyzing to ~ "分詞構文、付帯状況、「意味(あるもの)を攻撃するために、(知覚したものを)分析しながら、」"the ego succeeds ~ "「エゴは、その意味あるものをまんまと見過ごす」。"and is left ~ "「そして、一連の断片化された知覚を手にして取り残される」。"which it unifies ~ "「そしてエゴは、その破片を自分に都合のいいようにくっつけ合わせるのだ」。
This, then, becomes the universe it perceives. And it is this universe which, in turn, becomes its demonstration of its own reality.
- universe [júːnəvə̀ːrs] : 「宇宙、銀河、全世界」
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜を理解する」
- in turn : 「順に、入れ替わりに」
- demonstration [dèmənstréiʃən] : 「実演、実証」
- reality [riǽləti] : 「現実、真実、実相」
❖ "This, then, becomes ~ "「そして、これが、エゴの知覚する世界となる」。これとは、エゴが知覚したものの断片を、エゴが都合のいいようにくっつけ合わせたもの。"And it is this ~ "「そして、それが、エゴ自身の現実を実証するものとなる宇宙である」。まさにこの世界が、エゴの思考システムが形作る世界だ。この幻想世界をエゴが作り出している。虚偽が真実の顔をして跋扈(ばっこ)し、非実在が実在の仮面をつけて居座っている。
16. Do not underestimate the appeal of the ego's demonstrations to those who would listen.
- underestimate [ʌ̀ndəréstəmèit] : 「過小評価する、見くびる」
- appeal [əpíːl] : 「魅力、懇願」
- listen [lísn] : 「耳を傾ける、聴く」
❖ "Do not underestimate ~ "「耳を傾ける者にエゴが実証して見せる魅力を過小評価してはいけない」。エゴの思考システムはまやかしであるが、そのまやかしが、ある者には魅力である。たとえば金、権力は非常に魅力的である。他者を攻撃する強い腕力もすこぶる魅力的だ。
Selective perception chooses its witnesses carefully, and its witnesses are consistent.
- selective [siléktiv] : 「選択できる、選択的な」
- choose [tʃúːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
- witness [wítnəs] : 「目撃者、証人、証拠、証言」
- carefully [kέərfəli] : 「注意深く、慎重に」
- consistent [kənsístənt] : 「一貫性のある、矛盾しない」
❖ "Selective perception ~ "「選択的知覚は注意深くその証言を選び取る」。"and its witnesses ~ "「そして、その証言は一貫している」。"Selective perception"「選択的知覚」とは、エゴが知覚したものを一旦ばらばらに分断し、エゴの都合に合致するものだけを選び出して再びくっつけ合わせること。その過程で、エゴに都合がいいもの、すなわちエゴの正当性を証言してくれるものを選ぶのだ。結果、その証言は当然ながらエゴにとっては一貫したものとなる。
The case for insanity is strong to the insane. For reasoning ends at its beginning, and no thought system transcends its source.
- case [kéis] : 「件、事件、真相、事実」
- insanity [insǽnəti] : 「狂気、精神異常」
- insane [inséin] : 「正気でない、非常識な」
- reasoning [ríːzəniŋ] : 「論法、推理、論理的思考」
- beginning [bigíniŋ] : 「初め、開始、始まり」
- transcend [trænsénd] : 「超える、〜を超越する」
❖ "The case for ~ "「狂気に都合のいい事実は、正気でない者にとっては強い(味方だ)」。"For reasoning ~ "「なぜなら、論法は、その初めで終わっているからだ」。難しい箇所ではある。ここれ語られているのはエゴの論法のことで、循環論法である。エゴの循環論法は結論をあらかじめ設定し、それを出発点の仮定として論を回転させるのだから、戻って来る地点は最初に決まっている。エゴの論法は初めで終わっているのだ。たとえば、次のような論法はいかがだろう。誤りのない状態はない。したがって、誤りは実在であって、誤りがないものこそ非実在である。よって、誤りこそ真実である。この論法の始まり、つまり、誤りがない状態はない、と宣言する時点で、もはや結論が出ているのだ。その地点で論は終わっている。エゴは狂気を正当化する証言を、知覚の断片から見つけ出し、狂気に都合のいいように論を組み立てる。循環論法を使って次のように論ずるだろう。心に狂気の無いものはいない。狂気は実在である。したがって、正気は存在しない。よって、正気は虚偽である。狂気こそが真実である。"and no thought ~ "「そして、いかなる思考システムも、そのソースを超越することは出来ない」。ここも難解である。法律を考えればいいだろう。数ある法は巨大な法システムを形成しているが、そのシステムの中のどんな法も、法のソースである憲法を超越することは出来ない。すべての法が憲法を源として派生したものだからだ。同様に、エゴの思考システムのあらゆる法は、第一原因であるエゴ自身を超越することは出来ないのだ。エゴの思考システムの中心にエゴの憲法があると思えばいい。
Yet reasoning without meaning cannot demonstrate anything, and those who are convinced by it must be deluded.
- convince [kənvíns] : 「確信させる、納得させる」
- delude [dilúːd] : 「信じ込ませる,だます」
❖ "Yet reasoning ~ "「意味のない論法は何も証明することが出来ない」。"and those who ~ "「意味のない論法によって確信させられた人達は騙されているに違いない」。多くの人達がエゴの論法に騙されている。
Can the ego teach truly when it overlooks truth? Can it perceive what it has denied?
- truly [trúːli] : 「事実のとおりに、本当に、真に」
❖ "Can the ego ~ "「真実を見過ごしているのに、エゴは正しく教えることが出来るだろうか」。エゴは誤りばかりを見ようとするので、真実を見落としてしまう。見落とすというより、わざと見ないで過ごそうとする。それは真実の否定だ。"Can it perceive ~ "「エゴが否定したものを、エゴは知覚できるだろうか」。真実を否定したのだから、真実を知覚することは出来ない。そもそも目を背けているのだから、知覚することは不可能だ。
The ego looks straight at the Father and does not see him, for it has denied his Son.
- look straight [stréit] at : 「〜を真っすぐ見る、〜を正視する」
- see [síː] : 「理解する」
❖ "The ego looks ~ "「エゴは父なる神の方向にまっすぐ視線を向けたとしても、神であると理解できない」。"for it has denied ~ "「なぜなら、エゴは神の子を否定してしまったからだ」。神の子を否定するとは、あなたが神の子であることを否定する、ということ。"deny"「否定する」という言葉には「与えない」という意味もあるので、"it has denied his Son"は、エゴは神を否定し、結果、神の子であるあなたに神を与えないで隠そうとする、といったニュアンスが含まれているかもしれない。