3. The lingering illusion will impel him to seek out a thousand idols, and to seek beyond them for a thousand more.
- lingering [líŋɡəriŋ] : 「延々と続く、なかなか消えない」
- illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
- impel [impél] : 「〜を駆り立てる、押し進める、無理に〜させる」
- seek out : 「〜を捜し出す、〜を追求する」
- thousand [θáuzənd] : 「1000の、1000個の」
- idol [áidl] : 「アイドル、偶像、崇拝される人、神像」
- beyond [bijάnd] : 「〜を越えて、〜を過ぎて、〜のかなたに」
❖ "The lingering illusion ~ "「幻想を持ち続けることは、彼に、無理にでも何千もの偶像を探し求めさせることになり、」"and to seek beyond ~ "「さらに、その数を越えて、また何千もの偶像を求めさせてしまうのだ」。ここの"idol"「偶像」とは、あなたが崇拝する虚偽なる真実、つまり、具現化した幻想のことである。たとえば、金であったり社会的な地位であったり、名声であったり支配や権力や愛欲であったりする。それを象徴する存在が、あなたの心を支配しているエゴであり、エゴの思考システムにおいて、価値ありとされるものは、あなたにとって偶像となり得るのだ。仏教的な言い方をすれば、偶像とは『欲』である。ところで、ここの『彼』とは、もちろん、あなたであり、同胞であり、神から分離して夢を見ている神の子である。
And each will fail him, all excepting one; for he will die, and does not understand the idol that he seeks is but his death. Its form appears to be outside himself.
- fail [féil] : 「裏切る、〜を失望させる、〜の役に立たない」
- excepting [ikséptiŋ] : 「〜を除いて、〜を例外として」
- die [dái] : 「死ぬ、死亡する」
- understand [ʌ̀ndərstǽnd] : 「理解する、了解する、納得する、分かる」
- death [déθ] : 「死、消滅、死亡、破滅、終わり、終焉」
- form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、現れ」
- appear [əpíər] : 「〜のように見える、〜と思われる、〜らしい」
- outside [áutsáid] : 「〜の外に、〜の外側に」
❖ "And each will ~ "「その一つ一つが、彼を裏切る」。"all excepting ~ "「一つを除いて、すべてがそうなのだ」。ただ一つを除いて、彼の偶像は、ことごとく彼を裏切る。その一つとは、死である。"for he will die ~ "「なぜなら、彼は死ぬであろうし、彼が探し求めている偶像は死であることを、彼は理解していなからだ」。彼は、肉体の実在性を信じて疑わないから、肉体がやがて衰え、死を迎えることを自然なことだと思っている。しかし、実相的な視点から見れば、肉体は幻想であり、したがって、肉体にまつわる死もまた、幻想である。いわば、彼は、自分では理解していないとしても(does not understand)、死という偶像を崇拝していたことになるのだ(the idol that he seeks is but his death)。したがって、エゴの思考システムの頂点に立っている偶像は、死なのである。
Yet does he seek to kill God's Son within, and prove that he is victor over him.
- kill [kíl] : 「殺す、葬る、始末する」
- within [wiðín] : 「内部で、内側は」
- prove [prúːv] : 「証明する、〜となる、〜であると分かる」
- victor [víktər] : 「優勝者、勝利者、征服者」
❖ "Yet does he seek ~ "「それにもかかわらず、彼は、心の内なる神の子を殺そうと目論(もくろ)んでいる」。"and prove that ~ "「そうすれば、彼は神の子に勝利した者であると証明したことになるからだ」。"God's Son within"「心の内なる神の子」とは、エゴに支配された心にあっても、その一部はまだ正気さを保っており、心の中の最も純粋で神聖な部分のことである。彼本来の、純粋で神聖な神の子としての自分自身である。しかし、エゴは心全体を支配したいがために、彼を唆(そそのか)して、神の子であることを彼に抹殺させようとしているのだ。彼が神の子に対して勝利者になれれば、エゴは神に対して勝利したことになるからである。
This is the purpose every idol has, for this the role that is assigned to it, and this the role that cannot be fulfilled.
- purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
- role [róul] : 「役、役目、役割、任務、職務」
- assign [əsáin] : 「〜を割り当てる、指定する、任命する」
- fulfill [fulfíl] : 「果たす、全うする、満たす、満足させる」
❖ "This is the purpose ~ "「これは、あらゆる偶像がもつ目的である」。実相的な真実を打ち砕いて勝利すること、それが幻想という名の偶像がもつ最終目的である。幻想による実相への攻撃なのだ。"for this the role ~ "「なぜなら、これこそが、偶像に割り当てられた役割であり、」"and this the role ~ "「そして、果たされ得ない役割なのである」。偶像は、実相的な真実を打ち負かして死に追い込む指命を帯びているが、それは決して果たされるものではない。幻想が実相を殺すことなど、原理的に出来ないのだ。夜見る夢に現れたモンスターが、あなたを殺すことなど出来ないのと同様である。
4. Whenever you attempt to reach a goal in which the body's betterment is cast as major beneficiary, you try to bring about your death.
- whenever [hwènévər] : 「いつ〜しようとも、〜するときはいつでも」
- attempt [ətémpt] : 「〜しようと努力する、〜を試してみる、〜を企てる」
- reach [ríːtʃ] : 「〜に達する、〜に至る」
- goal [góul] : 「目標、目的地、目的、目指すもの」
- betterment [bétərmənt] : 「改良、改善、向上、出世、値上がり」
- cast [kǽst] : 「〜に役を与える、割り当てる」
- major [méidʒər] : 「主要な、重要な、素晴らしい、すごい」
- beneficiary [bènəfíʃièri] : 「利益を受ける人、受益者」
- try [trái] : 「試す、やってみる、試みる、企てる」
- bring about: 「〜をもたらす、〜を引き起こす」
❖ "Whenever you attempt ~ "「あなたが、〜のような目的を追求しようと試みるときはいつでも、」"in which the body's ~ "直訳すると、「肉体の価値を高めることが、主要な利益をもたらす役割として割り振られるような」目的を追求しようと試みるときはいつでも。つまり、肉体に一番の価値を置いて、肉体のためになることばかりを追求しようとするときは、といった意味合い。"you try to bring ~ "「あなたは、あなたの死をもたらそうとしているのだ」。幻想に縛られて、幻想のためになることばかりを追求することは、変化流動して崩壊と死へ向かう幻想の活動を加速することになり、自分の死を追求しているようなものなのだ。
For you believe that you can suffer lack, and lack is death. To sacrifice is to give up, and thus to be without and to have suffered loss.
- believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
- suffer [sʌ́fər] : 「苦しむ、経験する、被る」
- lack [lǽk] : 「不足、欠乏、欠如、欠落」
- sacrifice [sǽkrəfàis] : 「犠牲になる」
- give up : 「諦める、断念する、放棄する」
- thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、このようにして」
- without [wiðáut] : 「〜なしで、〜を持たないで、〜なしに」
- loss [lɔ́s] : 「失うこと、紛失、損失、喪失」
❖ "For you believe that ~ "「なぜなら、あなたは、欠落していることで苦しむ可能性があると信じており、欠落は死であると信じているからだ」。あなたが感じる苦の原因は、自分に何かが不足しているせいだと信じている。金が足りない、健康でない、権力もない、社会的な地位も名誉もない、 肉体的に美貌でもない、等々、ないないずくしで、自分の不幸と苦が作り出されていると信じているのである。そんな欠落状態を苦しのは、死と同じではないか(lack is death)と思っている。"To sacrifice is ~ "「犠牲とは、諦めることであり、」"and thus to be without ~ "「したがって、持つことが出来ないこと、喪失を苦しむことだ」と、あなたは考えるのである。欠落したものを得ようとするのだが、それが得られないとなると、まるで自分がこの世界で犠牲者にされたように思ってしまうのだ。しかし、そもそも、神の子はすべてをもっている。神は神の子を創造し、神の属性のすべてを与えた。したがって、不足や欠落を感じているのは、頭脳の中のエゴであって、不平不満をぶちまけて、あなたを幻想に駆り立てているのである。しかも、その結果は、肉体の死へと繋がるわけで、いったいそこに、何の得があるのだろうか。
And by this giving up is life renounced. Seek not outside yourself.
- life [láif] : 「人命、生命、寿命」
- renounce [rináuns] : 「放棄する、捨てる、破棄する、断念する」
❖ "And by this giving up ~ "「そして、この諦めによって、命が放棄される」。欠落を諦めて、幻想の底に沈んでいくことは、命の放棄、つまり、肉体の死を意味する。"Seek not outside ~ "「あなた自身の外に求めてはいけない」。だから、あなたの心の外に、欠落や喪失を感じて、それを追い求めてはいけないのだ。欠落も喪失も、エゴの策略であって、あなたを幻想に縛りつけておくための道具である。したがって、欠落や相実を諦めるのではなく、そんなものは初めからなかったのだと達観することが必要なのである。いわば、実相的に欠落や喪失を赦して、消滅させれば良い。そうすれば、あなたが目撃しなければならないものは、外部世界にあるのではなく、あなたの心の中にあるのだと理解出来るようになるだろう。
The search implies you are not whole within and fear to look upon your devastation, but prefer to seek outside yourself for what you are.
- search [sə́ːrtʃ] : 「〜を捜す、捜索する、探索する」
- imply [implái] : 「暗に伝える、暗示する、ほのめかす」
- whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の、丸ごとの」
- fear [fíər] : 「〜を恐れる、〜を怖がる」
- look upon : 「〜を見る」
- devastation [dèvəstéiʃən] : 「徹底的な破壊、荒らすこと、荒廃、廃墟」
- prefer [prifə́ːr] : 「〜を好む、むしろ〜の方を好む」
❖ "The search implies ~ "「探し求めるということは、あなたの内面の心が完全ではないということを暗に意味し、あなたが荒廃する姿を見ることを恐れ、本当の自分を、あなた自身の外部に求める方を好んだということを意味するのだ」。あなたは神の子として、神の属性のすべてを継承して、完全であり、完璧なのだ。しかし、あなたはそのことに気付かずに、幻想世界に欠落や喪失を見い出しては、絶望と諦念と苦しみを味わうことになる。そして、ますます、目をあなたの外側に向け、外部世界にこそ本当の幸せや本当の自分がいるに違いないと夢見るのである。しかし、実相的な真実が幻想世界に存在するわけはなく、あなたの夢の目標は果たされることは決してない。そして、あなたの肉体は、老いて死を迎えるのだ。