●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
●  Workbook精読http://acimworkshop-workbook.blogspot.jp です。
●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-9.IV.5:1 ~ T-9.IV.6:4

5. Forgiveness that is learned of me does not use fear to undo fear. Nor does it make real the unreal and then destroy it. 
  • forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、寛容」
  • learn [lə́ːrn] : 「〜を学ぶ、習う」
  • of : 「〜から」
  • fear [fíər] : 「恐れ、恐怖、不安」
  • undo [ʌndú] : 「〜を元どおりにする、取り消す」
  • nor [nɔːr] : 「〜もまた〜でない」
  • real [ríəl] : 「実在する、現実の、実在的な」
  • unreal : 「実在しない、非現実的な」
  • destroy [distrɔ́i] : 「破壊する、崩壊させる」
❖ "Forgiveness that ~ "「私から学ばれる赦しは、恐れを取り消すために恐れを使ったりしない」。"Nor does it ~ "「また、その赦しは、実在を非実在に変えて実在を破壊してしまうこともしない」。イエスの赦しは犠牲を強いるものではない。赦しの頂点には贖罪があるわけだが、キリスト教の歴史には、イエスが磔刑によって人類の贖罪を果たしたと考えることで、それにあやかろうと殉教が肯定された時代があった。しかし、ACIMのイエスはそのような殉教を強く否定する。神への恐れを、犠牲という恐れで取り消すことは出来ないのだ。イエスの赦しは犠牲ではない。また、実在を非実在に変えるということは、その逆を考えてみれば理解できるであろう。たとえば、エゴは心を唆(そそのか)し、恐れ(非実在)を利用して攻撃性に染まった心をあたかも実在するかのように作り出す。イエスの赦しはこの逆を行く。恐れや攻撃性といった幻想に染まった心を解放するために、幻想の非実在性を受け入れて赦すのだ。イエスの赦しは、決して、実在する一なる心(Mind)を非実在の分裂した心(mind)に作り変えるようなことはしない。



Forgiveness through the Holy Spirit lies simply in looking beyond error from the beginning, and thus keeping it unreal for you. 
  • lie [lái] : 「ある、横たわる」
  • simply [símpli] : 「単に、ただ」
  • beyond [bijɑ́nd] : 「〜の向こう側に、〜を越えて」
  • error [érər] : 「誤り、間違い、ミス」
  • from the beginning : 「もともと、最初から」
  • thus [ðʌ́s] : 「このようにして、こんなふうに」
  • unreal [ʌnríəl] : 「実在しない、非現実的な、実存しない」
❖ "Forgiveness through ~ "「ホーリー・スピリットを介した赦しは、初めから、単に誤りを越えて見ることの中にある」。"and thus keeping ~ "分詞構文、単純接続、「こうして、あなたにとって誤りが非現実であることを保つのである」。夢の中で誤りを犯しても、目覚めて自分を責める者はいない。夢の中の誤りはあくまでも非現実だから、単に見過ごすのだ。同様のことをホーリー・スピリットを介した赦しは実行する。この幻想の世界で犯された誤りは、夢の誤りである。それを赦しは見過ごしてやる。夢の誤りを夢のままに留めておくのである。



Do not let any belief in its realness enter your mind, or you will also believe that you must undo what you have made in order to be forgiven. 
  • realness [ríəlnis] : 「現実、実在」
  • enter [éntər] : 「〜に入る、〜に参加する」
  • in order to : 「〜するために」
❖ "Do not let ~ " ここの"its"は"error"、「誤りの実在性を信じようとするどんな気持ちも、あなたの心の中に入り込ませないようにしなさい」。"or you will ~ "「さもないと、あなたはthat以下をも信じてしまうだろう」。"that you must ~ "「赦されるためにあなたがしたことを、あなたは取り消さなくてはならない」と信じてしまうだろう。どういうことかと言うと、赦されるためにあなたがしたこととは、他者を赦すためにあなたがしたことと同様のことで、それは、誤りを非実在と見て取って、誤りを見過ごしてやることである。ところが、非実在であるはずの誤りを実在と信じたい気持ちが心に侵入すると、その誤りを実在化させてしまうことになる。すると、もはや実在化した誤りを見逃すわけにはいかなくなり、見過ごしたことを取り消さなくてはならないと信じてしまうのだ。こうして、赦そうとする心と赦せない心が、あなたの中で葛藤を起こす。あなたの中に対立が生じるのだから、当然、他者との間にも対立が生じる。かくして、エゴが目論む神の子の分離は維持されるわけだ。



What has no effect does not exist, and to the Holy Spirit the effects of error are nonexistent. 
  • effect [ifékt] : 「結果、影響、効果、効力」
  • exist [igzíst] : 「存在する、生きている」
  • nonexistent {形}: 「存在しない」
❖ "What has no ~ "「何の影響ももたないものは存在しない」。"and to the Holy Spirit ~ "「そして、ホーリー・スピリットにとって、誤りの影響は存在しない」。夢で見た誤りが、目を覚ました後に影響を持つことはない。だから、夢で見た誤りは目覚めた時には存在しない。同様に、ホーリー・スピリットにとって、誤りは何の影響ももたない。実在しないと知っているからだ。



By steadily and consistently cancelling out all its effects, everywhere and in all respects, he teaches that the ego does not exist and proves it.
  • steadily [stédili] : 「着実に、確実に、堅実に」
  • consistently [kənsístəntli] : 「一貫して、常に」
  • cancel [kǽnsl] : 「取り消す、中止する」
  • cancel out : 「取り消す、無効にする」
  • in all respects : 「あらゆる点で、すべての点で」
  • prove [prúːv] : 「証明する、立証する」
❖ "By steadily and ~ "「すべての誤りの結果を、着実に首尾一貫して取り消すことで、」"everywhere and ~ "「どこでも、あらゆる点で、」取り消すことで、"he teaches that ~ "「ホーリー・スピリットは、エゴが存在しないことを教え、そして、それを証明している」。ホーリー・スピリットがエゴとコミュニケーションを一切取らないことを思い出してもらいたい。ホーリー・スピリットはエゴが犯す誤りの影響を完全に無視して、エゴの存在を消すのである。消すという表現よりも、ここでは実在化させないと言った方が正確かもしれない。ホーリー・スピリットはエゴと戦わない。戦えば、エゴを現実化させてしまうと知っているからだ。



6. Follow the Holy Spirit's teaching in forgiveness, then, because forgiveness is his function and he knows how to fulfill it perfectly. 
  • follow [fɑ́lou] : 「ついて行く、〜に従う」
  • forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦」
  • function [fʌ́ŋkʃən] : 「機能、作用、働き、役割」
  • fulfill [fulfíl] : 「果たす、実行する、遂行する」
  • perfectly [pə́ːrfiktli] : 「完全に、完璧に、申し分なく」
❖ "Follow the Holy Spirit's ~ "「そこで、ホーリー・スピリットの赦しの教えに従いなさい」。"because forgiveness ~ "「なぜならば、赦しはホーリー・スピリットの役割であり、」"and he knows ~ "「そして、ホーリー・スピリットは、赦しを完璧に果たすやり方を知っているのだから」。赦しがホーリー・スピリットの役割(機能)の一つであることは覚えておこう。もっとも、赦しを実行するのはあなた自身。"Forgiveness(赦し)"はACIMの最重要キーワードの一つ。



That is what I meant when I said that miracles are natural, and when they do not occur something has gone wrong. 
  • meant [mént] : 「mean の過去・過去分詞形」
  • mean [míːn] : 「〜を意味する」
  • miracle [mírəkl] : 「奇跡、奇跡的な出来事」
  • natural [nǽtʃərəl] : 「普通の、ありのままの、自然な」
  • occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる」
  • wrong [rɔ́ːŋ] : 「間違った、誤っている」
  • go wrong : 「うまくいかない、失敗する」
❖ "That is what I ~ "「それは、私が奇跡は自然なことであると言ったとき、私が意味したことである」。"and when they ~ "「そして、奇跡が起きないときは、何かがうまくいっていないのだ」。私達の心の中には、例外なくホーリー・スピリットが住んでいる。ホーリー・スピリットは私達の心を導いて、赦しも、奇跡も成就させてくれる。ホーリー・スピリットが心にいるからこそ、奇跡は自然なものなのだ。したがって、もし赦しや奇跡が起きないときは、私達の心がホーリー・スピリットの声を聞いていないか、聞こえているが従っていないか、何かがうまく機能していないことを示している。もっとも、奇跡が起きていることに気付かないときもある。後々になって、あの時が奇跡だったのだと気付のだ。



Miracles are merely the sign of your willingness to follow the Holy Spirit's plan of salvation, recognizing that you do not understand what it is. 
  • sign [sáin] : 「表れ、兆候、印」
  • willingness [wíliŋnis] : 「意欲、いとわずにすること」
  • salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「認める、受け入れる」
❖ "Miracles are merely ~ "「奇跡とは、単に、あなたがホーリー・スピリットの救いのプランに快く従いたいと思う表れに過ぎない」。"recognizing that you ~ "分詞構文、付帯状況 、「あなたが、その計画が何であるか理解していないことを認めた上で、」ホーリー・スピリットの計画に従う。贖罪、心の解放、エゴの思考システムからホーリー・スピリットの思考システムへの乗り換え、心の再統一、神への回帰、等々、こういった救済のプランをホーリー・スピリットに任せて、あるいはホーリー・スピリットを全面的に信じて、ホーリー・スピリットに追随していくところに奇跡は起きる。ACIMの絶対他力思想がうかがえる箇所だ。つまり、あなたは、すべてを理解した上で、あなた一人ですべてを背負い込む必要はない。それは不可能である。ホーリー・スピリットの他力に任せてしまえばいい。



His work is not your function, and unless you accept this you cannot learn what your function is.
  • unless [ənlés] : 「〜でない限り、〜である場合を除いて」
  • accept [əksépt] : 「認める、受け入れる」
❖ "His work is ~ "「ホーリー・スピリットの仕事はあなたの役割ではない」。いわば、ホーリー・スピリットとあなたとで役割分担をするのだ。"and unless you ~ "「あなたがこれを受け入れない限り、」"you cannot learn ~ "「あなたは、あなたの役割が何なのか学ぶことが出来ない」。絶対他力なのだから、ホーリー・スピリットにすべてを任せていいのだが、では、あなたは何もせず念仏を唱えているだけでいいのか? ACIMの絶対他力はそんな棚ぼた式の甘い他力ではない。あなたにない役割はホーリー・スピリットに任せ、あなたに割り当てられた役割はあなたがそれを担わなくてはならない。その中で一番重要なのが、無条件に赦すということであろう。あなたは自己の誤りも含め、他者の誤りも無条件に赦さなくてはならない。それがあって初めて、ホーリー・スピリットの役割が機能し始める。奇跡は寝て待てとは、ACIMは一言も言っていない。






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