4. All fear is ultimately reducible to the basic misperception that you have the ability to usurp the power of God.
- fear [fíər] : 「恐れ、恐怖、懸念、心配、不安」
- ultimately [ʌ́ltəmətli] : 「 結局、最後に、ついに、詰まるところ」
- reducible [rid júːsəbl]: 「縮小できる、約分できる」
- basic [béisik] : 「基礎の、基本的な、簡単な、簡易の」
- misperception [mìspərsépʃən] : 「誤解、誤った知覚」
- ability [əbíləti] : 「能力、才能、できること、手腕」
- usurp [juːsə́ːrp] : 「侵害する、暴力で奪う、横領する」
❖ "All fear is ultimately ~ "「すべての恐れは、最終的に、あなたは神の力を強奪する能力を持っているという基本的な誤知覚に要約出来る」。神の子は神の属性のすべてを継承した。もちろん、創造性もその一つである。神の子はある日、自分は神なしで神のように存在出来るに違いないという、ほんの小さな狂った考え(a tiny mad idea)を心の中に抱いた。次の瞬間、神の子は神から分離し、分離を象徴するこの幻想世界を偽創造したのだ。そして、神の子は神を裏切ってしまったという罪の意識を抱き、裏切りに対する神の罰を恐れるようになった。これが、罪と罰の原型である。原型と書いたのは、これが原型となり象徴化されて、この幻想世界に住む人々の心は罪と罰の原理に束縛されている、という意味である。
本文では"the ability to usurp the power of God"「神の力を強奪する能力」とあるが、「神の創造性を、どうにでも変形出来る能力」と解していいだろう。つまり、神の属性を勝手気ままに誤知覚し、好き勝手に改造出来るに違いないとする驕(おご)り高ぶりである。旧約聖書創世記では、この間の事情をアダムとイブの失楽園で寓話化している。知恵のリンゴを食べた2人は神と同様の知恵(能力)を授かった、つまり神と同等になったと思ったのだ。
Of course, you neither can nor have been able to do this. Here is the real basis for your escape from fear.
- of course: 「もちろん、確かに、言うまでもなく、当然」
- neither [níːðər] A nor B : 「AでもなくBでもない、AとBのどちらも〜ない」
- be able [éibl] to do : 「〜できる、〜する能力のある」
- real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
- basis [béisis] : 「土台、基礎、基盤、基準、原理、原則、根拠、理由」
- escape [iskéip] : 「逃亡、脱出、逃避」
❖ "Of course, you neither can ~ "「もちろん、あなたはそんなことをすることも出来ないし、やったこともない」。"Here is the real basis ~ "「ここに、恐れから脱出するための実相的な基盤がある」。神からの分離、罪と罰、そのすべては、神の子の眠りの中の夢である。幻想なのだ。だから、神の子が眠りから覚めれば、つまり、幻想から目覚めれば、すべての恐れは消える。これが、恐れからの実相的な救いである。これなくして、罪と罰、そして、それに起因する恐れから逃れる方法はない。だから、"basis"「基盤」である。
The escape is brought about by your acceptance of the Atonement, which enables you to realize that your errors never really occurred.
- brought [brɔ́ːt] : 「bringの過去・過去分詞形」
- bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜をもたらす」
- bring about : 「〜をもたらす、〜を引き起こす」
- acceptance [əkséptəns] : 「受け入れること、承諾、承認、受諾、容認」
- atonement [ətóunmənt] : 「償い、贖罪」
- enable [enéibl] : 「 〜を可能にする、〜に可能性を与える」
- realize [ríːəlàiz] : 「理解する、〜に気が付く、自覚する」
- error [érər] : 「誤り、間違い」
- really [ríəli] : 「実際には、ほんとうは、確かに、本当に」
- occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる、現れる」
❖ "The escape is brought about ~ "「恐れからの脱出は、贖罪を受け入れることによってもたらせれる」。"which enables you ~ "「贖罪は、あなたの過ちは本当は起きていなかったのだと、あなたに知らしめることが出来るのだ」。何度か説明したように、"Atonement"「贖罪」はACIMの最重要キーワードであって、キリスト教的な贖罪とは似ても似つかない。神からの分離、罪と罰、恐れ、そのすべては、神の子の眠りの中の夢であると認識し、『なんだ夢に過ぎないのか』と受け入れて、『大したことじゃない』と受け流すのである。これが幻想に対するACIMの赦し(forgiveness)であり、幻想は赦しによって消滅する。罪の意識は赦しによって滅ばされるのだ。つまり、罪滅ぼしであり、贖罪である。
贖罪を果たした後、神の子は、本当は神から一歩たりとも分離していなかったことに気が付く。神の子は誤りを犯していなかったのだ。深い眠りの夢の中で、神から分離したと思い込んでいただけだと知る。アダムとイブの失楽園はアダムの夢だったのである。そして、その夢は今も我々の中で続いている。その夢から目覚めよ、とACIMのイエスは訴えているのだ。
Only after the deep sleep fell upon Adam could he experience nightmares.
- after [ǽftər] : 「〜した後で、〜してから」
- deep [díːp] : 「深い、深さがある」
- fell [fél] : 「fall の過去形」
- fall upon : 「〜の上にかかる、〜に降りかかる」
- experience [ikspíəriəns] : 「〜を経験する、〜を体験する」
- nightmare [náitmeər] : 「悪夢、恐怖、うなされること 」
❖ "Only after the deep ~ "「アダムが深い眠りに落ちた後にのみ、アダムは悪夢を経験出来るのだ」。眠りに落ちなかったら、この世界に生きる悪夢は経験することはなかった、という意味。悪夢と幻想は同義である。
If a light is suddenly turned on while someone is dreaming a fearful dream, he may initially interpret the light itself as part of his dream and be afraid of it.
- light [láit] : 「光、光源、ライト、明かり」
- suddenly [sʌ́dnli] : 「突然に、急に、すぐに、いきなり」
- turn on : 「(照明を)つける」
- while [hwáil] : 「〜の間ずっと、〜する間に、その間に」
- fearful [fíərfəl] : 「恐ろしい、ものすごい、おびえている、心配そうな」
- initially [iníʃəli] : 「初めは、最初は、当初は」
- interpret [intə́ːrprit] : 「解釈する、解明する、説明する」
- part [pάːrt] : 「一部、部分」
- afraid [əfréid] : 「恐れて、心配して、怖がって」
- be afraid of : 「〜を恐れる、〜を怖がる」
❖ "If a light is ~ "「誰かが恐ろしい夢を見ている間に、突然明かりが灯されたならば、」"he may initially interpret ~ "「彼は最初、光自体が夢の一部だと解釈して、光を恐れるかも知れない」。他の箇所で、ACIMは、目覚めはゆっくりでなければいけないと言う。突然の変化は、夢見る者に不安をかき立てるからだ。不安のあまり、光を拒絶してしまっては何の益にもならない。目覚めは怖いものではないと知る必要がある。
However, when he awakens, the light is correctly perceived as the release from the dream, which is then no longer accorded reality.
- however [hauévər] : 「けれども、しかしながら、また一方」
- awaken [əwéikn] : 「目覚める」
- correctly [kəréktli] : 「正しく、正確に」
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
- release [rilíːs] : 「解放、解き放すこと、解除、免除」
- no longer : 「もはや〜でない、〜しない」
- accord [əkɔ́ːrd] : 「〜を〜と一致させる、認める、許容する」
- reality [riǽləti] : 「現実性、実在性、現実のこと」
❖ "However, when he ~ "「しかし、彼が目覚めた時、夢からの解放として光は正しく知覚される」。"which is then no ~ "「その夢はもはや現実と相容れない」。目が完全に覚めると、光こそが現実であって、悪夢から解放されたのだと認識出来る。現実は光溢れる世界であって、闇の悪夢とは全く異ると知るのである。実相世界と幻想世界は相容れない。
This release does not depend on illusions. The knowledge that illuminates not only sets you free, but also shows you clearly that you are free.
- depend [dipénd] on : 「〜によって決まる、〜次第である、〜に頼る」
- illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
- knowledge [nɑ́lidʒ] : 「知識、心得、認識、知恵、知見」
- illuminate [ilúːmənèit] : 「〜を照らす、明るくする、照射する」
- set [sét] : 「〜を(ある状態に)する、定める、配置する、設定する」
- free [fríː] : 「自由な、捕われていない、独立した」
- not only A but also B : 「AのみならずBも」
- show [ʃóu] : 「示す、表す、表示する」
- clearly [klíərli] : 「はっきりと、明らかに、明瞭に、疑いもなく」
❖ "This release does ~ "「この解放は幻想に依存することはない」。目覚めは、幻想の力を借りることは一切ない、ということ。夢から覚めるために夢に頼ることはない。"The knowledge that ~ "「(周りを)照らす叡智は、あなたを自由にするだけでなく、あなたが自由なのだということを明確に示してくれる」。"knowledge"「叡智」は、ACIMの最重要キーワードの一つ。仏教で言う『般若(はんにゃ)』に非常に近い。叡智は、真実を全的に直覚的に把握する。なぜなら、叡智は真実の総体だからだ。神の知覚方法とでも言おうか。ホーリー・スピリットは、この叡智をもって神の子を覚醒へと導いてくれる。神の子は肉体的な知覚を修正し、ヴィジョンを獲得して、この叡智に近づいていく。文脈から言えることは、この叡智が放つ光が、神の子を悪夢から目覚めさせてくれると解釈すればいいだろう。闇の幻想を真実の光が払拭するのである。叡智とは、したがって、真実の光である。
蛇足になるが、ACIMの言う『光』を理屈で解釈し理解することは、まず不可能である。こればかりは、体験する以外に把握する手段はあるまい。ACIMでは、光の体験を『光のエピソード』と呼んでいる。