III. The Altar of God
神の祭壇
1. The Atonement can only be accepted within you by releasing the inner light.
- atonement [ətóunmənt] : 「償い、贖罪」
- accept [əksépt] : 「認める、容認する、受け入れる」
- within [wiðín] : 「〜の中の、〜の内側の」
- release [rilíːs] : 「〜を解放する、自由にする」
- inner [ínər] : 「内部の、内面的な」
- light [láit] : 「光、光源、ライト、明かり」
❖ "The Atonement can ~ "「贖罪は、内なる光を解放することによってのみ、あなたの心の内部で受け入れられ得る」。"inner light"「内なる光」とは、幻想とは無縁の実相的な真実が放つ光、愛や喜びや美が放つ光、等々の意味合い。この世の電磁波としての光ではない。したがって、本文は、あなたが真実を求めて、真実のパワーとでも言うべき内なる光を放つとき、本当の贖罪をあなたは受け入れることが出来るのだ、ということ。簡単に言えば、真実を求める心が、本当の贖罪を受け入れるのである。
Since the separation, defenses have been used almost entirely to defend against the Atonement, and thus maintain the separation.
- since [síns] : 「 〜以来ずっと、〜以後に、〜のときから」
- separation [sèpəréiʃən] : 「分離、区別、別居、別離、離脱」
- defense [diféns] : 「防衛、防御」
- almost [ɔ́ːlmoust] : 「ほとんど、九分どおり、大体」
- entirely [entáiərli] : 「 全く、完全に、全体に、ひたすら、もっぱら 」
- defend [difénd] : 「守る、防御する」
- against [əɡéinst] : 「〜に反対して、〜に逆らって、〜にそむいて」
- thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、このようにして」
- maintain [meintéin] : 「〜を保持する、維持する、保つ、支える、支持する」
❖ "Since the separation ~ "「(神からの)分離以来、防御はほとんど丸ごと、贖罪に対して自己を守るために使われてきた」。その結果、"and thus maintain ~ "「こうして、神からの分離を維持してきたのだ」。我々人間は、自己保存、自己防衛、自己正当化に終始し、贖罪による自己の神聖さの回復など一向に気にも止めて来なかった。結果、無意識の罪悪感は温存され、神からの分離は保たれたままであった。したがって、ここで用いられている"defend"は真の防衛という意味ではなく、自己防衛、保守主義的防衛というマイナスの意味をもつ。つまり、幻想を守ってきたのだ。
This is generally seen as a need to protect the body. The many body fantasies in which minds engage arise from the distorted belief that the body can be used as a means for attaining "atonement."
- generally [dʒénərəli] : 「 一般に、通例、通常、概して、おおむね」
- seen [síːn] : 「seeの過去分詞形」
- need [níːd] : 「必要、必要性」
- protect [prətékt] : 「保護する、守る、かばう」
- fantasy [fǽntəsi] : 「 空想、気まぐれ、ファンタジー、幻想」
- engage [engéidʒ] : 「従事する、携わる、関与する」
- arise [əráiz] : 「起こる、生じる、現れる、生まれる、発生する 」
- distort [distɔ́ːrt] : 「歪める、誤り伝える、歪曲する」
- belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
- use [juːz] : 「使う、利用する、生かす、働かせる」
- means [míːnz] : 「手段、方法」
- attain [ətéin] : 「手に入れる、獲得する、達成する」
❖ "This is generally ~ "「防御は一般に、肉体を守る必要性として見られている」。防御は一般に、肉体を守る防衛本能として位置づけられている。"The many body ~ "「多くの、心が関与する肉体という空想は、」心が肉体という幻想を生み出しているのだが、その空想(幻想)としての肉体の多くは、"arise from ~ "「〜を信じる歪んだ信念から生じてくる」。"that the body ~ "「肉体は、『贖罪』を手に入れるための道具として利用出来る」と信じる歪んだ信念から生じてくる。ここの贖罪"atonement"が小文字になっていることに注意。本来の実相的な"Atonement"と区別してる。罪を滅ぼしたいなら肉体的な罰を受け入れればいい、という歪んだ信念が、空想の肉体を現実化している、という意味。
イエス・キリストが、全人類の罪を贖(あがな)うために、自らの肉体を十字架上で犠牲にした、というキリスト教的発想を、ACIMのイエス本人は真っ向から否定しているのだ。こういう贖罪に対するキリスト教的発想はパウロ個人の発想に依るところ大きく、これが、キリスト教は別名、パウロ教だと言われる所以(ゆえん)である。
Perceiving the body as a temple is only the first step in correcting this distortion, because it alters only part of it.
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜を理解する、〜を把握する」
- temple [témpl] : 「 神殿、寺院、教会、殿堂」
- step [stép] : 「段、階段、一歩、歩み、ステップ」
- correct [kərékt] : 「〜を訂正する、修正する、正す」
- distortion [distɔ́ːrʃən] : 「ゆがみ、ねじれ、歪曲、ねじ曲げ」
- alter [ɔ́ːltər] : 「変える、変更する、改める」
- part [pάːrt] : 「一部、部分」
❖ "Perceiving the body ~ "「肉体を寺院として知覚することは、この歪みを矯正することの初期段階に過ぎない」。"because it alters ~ "「なぜなら、そう知覚することは歪みの一部しか改造出来ないからだ」。肉体の中に何か神聖なものと罪の意識が混在していると感じ、肉体がそれを隠して祭る寺院だと知覚することは、肉体を贖罪のために犠牲に出来るという歪んだ信念を矯正する第一歩である。第一歩であるがすべてではない。歪んだ信念の一部しか正せないからだ。肉体を信奉することは、そもそもの原因である知覚の歪み、心の歪みは手付かずのまま残してしまうことになる。つまり、肉体自体が幻想であるという認識には至らないのだ。
It does recognize that Atonement in physical terms is impossible.
- recognize [rékəɡnàiz] : 「〜を認識する、認める、受け入れる」
- physical [fízikl] : 「身体の、肉体の、物理的な」
- term [tə́ːrm] : 「語、言葉、用語、条項、条件、規約」
- impossible [impɑ́səbl] : 「不可能な、とてもあり得ない」
❖ "It does recognize ~ "意訳する、「肉体を寺院と知覚することは、肉体的な意味での贖罪が不可能であると認識していることを示している」。肉体的な意味での贖罪とは、肉体を罰することで罪を滅ぼすということ。肉体を攻撃し犠牲にしても贖罪は果たせない。あなたは、肉体という寺院の中に、何か神聖なものと、同時に、罪の意識を隠し持っている。寺院を破壊しても、つまり、肉体を罰しても、その中の神聖なものも罪の意識も破壊することは出来ない。寺院を破壊するだけでは、真の贖罪は不可能なのだ。
The next step, however, is to realize that a temple is not a structure at all.
- however [hauévər] : 「けれども、しかしながら、また一方」
- realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、悟る、自覚する、実感する」
- structure [strʌ́ktʃər] : 「構造、骨組み、仕組み、建造物、構造体」
- not at all : 「 全く〜ない、全然〜ない、少しも〜ない」
❖ 初期段階が過ぎると、"The next step ~ "「しかし、次の段階は、寺院が建造物などではまったくないと気が付くことである」。つまり、肉体は幻想に過ぎないと認識することが次の段階となる。肉体は実在していると、知覚があなたを騙しているだけである。
Its true holiness lies at the inner altar around which the structure is built.
- true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
- holiness [hóulinis] : 「神聖、神聖さ、高潔」
- lie [lái] : 「ある、存在する」
- inner [ínər] : 「 内部の、内面的な、精神的な」
- altar [ɔ́ːltər] : 「祭壇、聖餐台」
- around [əráund] : 「〜の周りに、〜の周囲に」
- built [bílt] : 「buildの過去・過去分詞形」
- build [bíld] : 「建てる、築く、作り上げる、組み立てる」
❖ "Its true holiness ~ "「その真の神聖さは内部の祭壇にあり、」"around which ~ "「その周りに、建造物が建てられている」。あなたの心の大半はエゴに支配され、このエゴがあなたは神を裏切った罪深い人間であるとあなたを責める。一方、この心の最も神聖で純粋な部分にホーリー・スピリットが宿り、ここに神の祭壇が祭られている。この祭壇が神とのチャンネルになっている。これがあなたの真の心であって、あなたはその周りに、肉体という幻想の寺院を建てて心を覆い隠しているのだ。
この世界は分離を象徴する二元論の世界である。その例に漏れず、あなたの心はエゴとホーリー・スピリットに二分されているのだが、エゴの支配は幻想であって、ホーリー・スピリットの宿る心の祭壇だけが実在、実相である。
The emphasis on beautiful structures is a sign of the fear of Atonement, and an unwillingness to reach the altar itself.
- emphasis [émfəsis] : 「注目、重要視、重点を置くこと、強調、強意」
- beautiful [bjúːtəfl] : 「美しい、素晴らしい、見事な」
- sign [sáin] : 「標示、サイン、 記号、表れ、兆し、印」
- fear [fíər] : 「恐れ、恐怖、懸念、心配、不安」
- unwillingness : 「気が進まないこと、不本意」
- reach [ríːtʃ] : 「達する、至る、手が届く、〜に連絡する」
❖ "The emphasis on ~ "「美しい建造物に力点を置くことは、贖罪に対する恐れの表われであり、」"and an unwillingness ~ "「祭壇自体に到達することを拒む気持ちの表われである」。罪の意識を隠すために、その覆(おお)いである寺院をきらびやかに飾って、視線を逸らそうとするのだ。もし勇気をもって心の内部を覗き、祭壇に宿るホーリー・スピリットの助けを求めれば、心の中の罪の意識は幻想であって存在しないと認識出来る。幻想に過ぎない罪を赦し、罪の意識を消滅させて贖罪を果たせるのだ。しかし、きらびやかな肉体という寺院を飾ることで、心それ自体から目を逸らしてばかりいる。
The real beauty of the temple cannot be seen with the physical eye.
- real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
- beauty [bjúːti] : 「美、美しさ」
- seen [síːn] : 「seeの過去分詞形」
- physical [fízikl] : 「身体の、肉体の、身体的な、物理学の、物理学上の」
❖ "The real beauty of ~ "「寺院の真の美しさは、肉体的な目で見ることは出来ない」。寺院の真の美しさは表面の肉体にあるのではなく、心そのものにある。しかし、心の美しさは、肉体的な感覚器官によっては知覚出来ない。知覚を超越したヴィジョンによってのみ、心の美しさは知ることが出来るのだ。
Spiritual sight, on the other hand, cannot see the structure at all because it is perfect vision. It can, however, see the altar with perfect clarity.
- spiritual [spíritʃuəl] : 「精神の、霊的な、崇高な、精神的な」
- sight [sáit] : 「視界、景色、光景、 姿、視覚、視力」
- on the other hand : 「他方では」
- perfect [pə́ːrfikt] : 「申し分がない、完全な、完璧な」
- vision [víʒən] : 「先見の明、洞察力、想像力、視覚、視力」
- clarity [klǽrəti] : 「透明、清澄、明瞭、明快」
❖ "Spiritual sight, on ~ "「一方、スピリチュアルな視覚は、建造物を見ることがまったく出来ない」。不可能だという意味ではなく、そんなものに目もくれない、という意味合い。"because it is ~ "「なぜなら、スピリチュアルな視覚はヴィジョンだからだ」。ヴィジョンは幻想には目もくれない。知覚では見えない真実だけを見るのだ。したがって、"It can, however ~ "「しかし、スピリチュアルな視覚は、完璧な明晰さをもって祭壇を見ることが出来る」。ホーリー・スピリットの宿る神の祭壇こそが真実であり実在だから、ヴィジョンは祭壇だけに視線を注ぐ。
ACIMのワークブックでは、まず最初に、知覚の修正から始める。知覚を正し、ヴィジョンを得ることが出来れば、あなたは真実を真実として、幻想を幻想として正しく認識出来るからだ。