●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
●  Workbook精読http://acimworkshop-workbook.blogspot.jp です。
●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-10.V.5:1 ~ T-10.V.6:6

5. I said before that of yourself you can do nothing, but you are not of yourself. 
  • of oneself : 「ひとりでに、それ自体で」
❖ "I said before ~ "「私は以前、that以下のことを言った」。"that of yourself  ~ "「あなた一人では、あなたは何も出来ないが、」"but you are not ~ "「あなたはあなた一人ではないのだ」と以前言ったことがある。あなたは常に神とつながっており、あなたの心の中にはホーリー・スピリットが住んでいる。あなたは決して一人ではない。孤独は、実は錯覚なのだ。



If you were, what you have made would be true, and you could never escape. 
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の」
  • escape [iskéip] : 「逃げる、脱出する」
❖ "If you were ~ " ここは"If you were of yourself"のことで、仮定法過去、「もし、あなたがたった一人であったなら、あなたがでっち上げたものは真実となり、あなたはそれから決して逃れられないだろう」。もし、実相の世界の中であなた一人だけが存在しているなら、つまり、神という存在がないのなら、あなたは神同様に創造し、創造したものはすべて実在として存在するだろう。そのとき、あなたが創造したものは真実となり、それは幻想ではないから、あなたは実在する真実から逃れることは出来ない。しかし実際は、神の子は実在の神を否定する立場に立って、幻想に過ぎない奇っ怪な神々を作っただけなので、それは実在することが不可能だから、ホーリー・スピリットの力を借りてその幻想から逃れることが出来る。



It is because you did not make yourself that you need be troubled over nothing. Your gods are nothing, because your Father did not create them.
  • trouble [trʌ́bl] : 「〜を困らせる」
  • trouble over 「〜で悩ます、〜で苦しめる」
❖ "It is because ~ "ここは"It ~ that ~ "の構文、that以下が本主語、直訳すると、「あなたが何ものにも悩まされる必要がないのは、あなたがあなた自身を作ったのではないからだ」。つまり、あなたは実相の世界でたった一人の存在ではなく、あなたを創造した神が存在しているのだから、あなたがでっち上げた幻想の神々に悩まされる必要などない、ということ。"Your gods are ~ "「あなたの神々は無である」。あなたのでっち上げた神々は幻想であり、無だ。"because your Father ~ "「なぜなら、あなたの父なる神は、あなたの神々を創造したのではないからだ」。神は幻想しない。神が創造したものでないものは、実在することなく、もちろん実体をもたない。単なる張り子のトラ。完璧な幻想だ。無である。



You cannot make creators who are unlike your Creator, any more than he could have created a Son who was unlike him.
  • unlike [ʌnláik] : 「似ていない」
  • not A any more than B : 「AでないのはBでないのと同様だ」
❖ "You cannot make ~ "「あなたは、あなたを作った創造主に似ていない創造者を作ることは出来ない」。" any more than he ~ "「それは、神が、神に似ていない神の子を創造できなかったのと同じである」。逆に言えば、あなたが作った神々が本当の神と似ていないならば、それは創造ではなくでっち上げであって、幻想だ。



If creation is sharing, it cannot create what is unlike itself. It can share only what it is. 
  • sharing [ʃέəriŋ] : 「わかち合い、共有利用」
❖ "If creation is ~ "「もし、創造が分かち合いであるなら、」"it cannot create ~ "「それ自体と似ていないものを創造することは出来ない」。"It can share ~ "「分かち合いは、そうであるものとだけ、分かち合うことが出来るのだ」。実相的な創造とは、神が創造した真実を分かち合いによって拡張増大させることである。たとえば、あなたが同胞と愛や喜びを分かち合うことが出来るのは、あなたも同胞も神の子でとしてその存在は真実であり、愛や喜びもまた真実だからだ。実相世界に生きるものはすべて、似たもの同士である。



Depression is isolation, and so it could not have been created.
  • depression [dipréʃən] : 「落ち込み、絶望、鬱」
  • isolation [àisəléiʃən] : 「孤立、分離、孤独」
❖ "Depression is ~ "「絶望は、孤立したものであり」。"and so it could ~ "「したがって、絶望は創造された可能性はない」。絶望は分かち合われて喜びが増すというものではなく、極めて孤立的だ。孤立化し分かち合われることがないものは神の創造したものではない。絶望は神が創造した真実ではない。単なる幻想だ。絶望に限らず、たとえば恐れもまた、それは分かち合われて喜びが増大するものではないから、確かに幻想だ。



6. Son of God, you have not sinned, but you have been much mistaken. 
  • sin [sín] : 「罪を犯す」
  • mistaken [mistéikən] : 「mistakeの過去分詞形」
  • mistake [mistéik] : 「誤る、間違える」
❖ "Son of God, you ~ "「神の子よ、あなたは罪を犯したのではない」。"but you have ~ "「ただ、大きなミスを犯したのだ」。大きなミスとは、神を否定し、奇っ怪な神々を作ったこと。しかし、それは夢の中での出来事だから、罪だとは言えない。それが罪だと信じてしまえば、それも大きなミスになる。



Yet this can be corrected and God will help you, knowing that you could not sin against him. 
  • correct [kərékt] : 「〜を訂正する、修正する」
❖ "Yet this can ~ "「しかし、これは修正可能であるし、」"and God will ~ "「神があなたを助けてくれるだろう」。"knowing that you ~ "分詞構文、理由、「神は、あなたが神に逆らうような罪を犯すことが出来ないと知っているからだ」。



You denied him because you loved him, knowing that if you recognized your love for him, you could not deny him. 
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、拒絶する」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、受け入れる」
❖ "You denied him ~ "「あなたが神を愛していたからこそ、あなたは神を否定したのだ」。"knowing that if ~ "分詞構文、理由、「もし、あなたが神への愛を認めたら、あなたは神を拒むことが出来なくなると知っていたからだ」。非常に難解な部分である。神の子が神から分離したのは、神を憎んでそうしたのではない。逆に、神が愛の延長上に神の子を創造したことを神の子は知っていた。その上で、神から分離するためには、少なくとも表面上は、神への愛を認めることを拒まなくてはならなかった。もう一つ先を読んで、さらに考えよう。



Your denial of him therefore means that you love him, and that you know he loves you. 
  • denial [dináiəl] : 「否定、拒否、拒絶」
  • mean [míːn] : 「〜を意味する、…とは〜を指す」
❖ Your denial of ~ "「あなたの神の否定は、したがって、that以下を意味する」。"that you love ~ "「あなたは神を愛しているし、神があなたを愛していることも知っている」ということを意味している。ここで問題になるのは、なぜ神の子は、神から愛され神を愛していながら神から分離したのか、ということだ。神の子が神とともにあった時、神の子はふと、ひょっとしたら自分は神なしでやって行けるのではないか、あるいは神なしでも神のように創造的に生きて行けるのではないか、と思った(tiny mad idea あるいは the tiny mad desire to be separate)。そして、神の子の心は深い眠りに陥る。神の子は夢の中で神から分離するのである。
 ここで、神と神の子の愛の関係性を理解するには、聖書の放蕩息子の物語を思い出せばいいだろう。その息子は、父が自分を愛していることも、自分が父を愛していることも十分に知っていた。しかし息子は、父なしで、自分一人で生きて行くことを選択する。なぜか? 父の権力から自由になりたかったからか? 父の愛が単に疎(うと)ましかったからか? どちらも本当の理由ではない。父なしで父のように偉大に生きて行くことが自分にも出来ると信じたとき、子は、愛に後ろ髪を引かれながらも生まれた家を捨てなくてはならない。観念の中だけで生きるのではなく、観念から抜け出て、心に渦巻く自分の思いを実行に移すのだ。自分で選択した生き方を実践するのである。少々長くなるが、聖書に記された放蕩息子の物語を載せておく。ルカによる福音書15:11~15:24である。

[Luke 15:11~15:24 from King James Bible]
And he said, A certain man had two sons: And the younger of them said to his father, Father, give me the portion of goods that falleth to me. And he divided unto them his living. And not many days after the younger son gathered all together, and took his journey into a far country, and there wasted his substance with riotous living. And when he had spent all, there arose a mighty famine in that land; and he began to be in want. And he went and joined himself to a citizen of that country; and he sent him into his fields to feed swine. And he would fain have filled his belly with the husks that the swine did eat: and no man gave unto him. And when he came to himself, he said, How many hired servants of my father's have bread enough and to spare, and I perish with hunger! I will arise and go to my father, and will say unto him, Father, I have sinned against heaven, and before thee, And am no more worthy to be called thy son: make me as one of thy hired servants. And he arose, and came to his father. But when he was yet a great way off, his father saw him, and had compassion, and ran, and fell on his neck, and kissed him. And the son said unto him, Father, I have sinned against heaven, and in thy sight, and am no more worthy to be called thy son. But the father said to his servants, Bring forth the best robe, and put it on him; and put a ring on his hand, and shoes on his feet: And bring hither the fatted calf, and kill it; and let us eat, and be merry: For this my son was dead, and is alive again; he was lost, and is found. And they began to be merry.

また、イエスは言われた。「ある人に息子が二人いた。弟の方が父親に、『お父さん、わたしが頂くことになっている財産の分け前をください』と言った。それで、父親は財産を二人に分けてやった。何日もたたないうちに、下の息子は全部を金に換えて、遠い国に旅立ち、そこで放蕩の限りを尽くして、財産を無駄遣いしてしまった。何もかも使い果たしたとき、その地方にひどい飢饉が起こって、彼は食べるにも困り始めた。それで、その地方に住むある人のところに身を寄せたところ、その人は彼を畑にやって豚の世話をさせた。彼は豚の食べるいなご豆を食べてでも腹を満たしたかったが、食べ物をくれる人はだれもいなかった。そこで、彼は我に返って言った。『父のところでは、あんなに大勢の雇い人に、有り余るほどパンがあるのに、わたしはここで飢え死にしそうだ。ここをたち、父のところに行って言おう。「お父さん、わたしは天に対しても、またお父さんに対しても罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません。雇い人の一人にしてください」と。』そして、彼はそこをたち、父親のもとに行った。ところが、まだ遠く離れていたのに、父親は息子を見つけて、憐れに思い、走り寄って首を抱き、接吻した。息子は言った。『お父さん、わたしは天に対しても、またお父さんに対しても罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません。』しかし、父親は僕たちに言った。『急いでいちばん良い服を持って来て、この子に着せ、手に指輪をはめてやり、足に履物を履かせなさい。それから、肥えた子牛を連れて来て屠りなさい。食べて祝おう。この息子は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったからだ。』そして、祝宴を始めた。[新共同訳]



Remember that what you deny you must have once known. And if you accept denial, you can accept its undoing.
  • remember [rimémbər] : 「〜を思い出す、〜を覚えている」
  • once [wʌ́ns] : 「あるとき、かつて、以前」
  • accept [əksépt] : 「認める、受け入れる」
  • undoing : 「解くこと、取り消し」
❖ "Remember that ~ "「あなたが否定したことは、あなたがかつて知っていたことに違いないと覚えておきなさい」。かつて否定した神の愛は、あなたが知っていた愛であり、あなたも神を愛していたのだと思い出しなさい。"And if you ~ "「そして、もし、あなたが否定を受け入れるなら、」"you can accept ~ "「あなたは、否定を取り消すことも受け入れることが出来るのだ」。愛を否定するとは、かつて愛を感じていたことが前提となる。つまり、愛していたからこそ、愛を否定することが出来たわけだ。ならば、それを逆転させればいい。愛の否定を取り消して、再び愛に回帰すればいいのだ。それは十分に可能である。






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