2. The unhealed cannot pardon. For they are the witnesses that pardon is unfair.
- unhealed [ʌnhíːld] : 「治癒していない、未治癒の」
- pardon [pάːrdn] : 「許す、赦免する、放免する」
- witness [wítnəs] : 「目撃者、証人、証拠、証言」
- pardon [pάːrdn] : 「寛容、許し、恩赦、大赦」
- unfair [ʌnfέər] : 「不公正な、公正を欠いた、不公平な」
❖ "The unhealed ~ "「心の病が癒されていない者は、許すことさえ出来ない」。他者の罪を暴き、攻撃することばかりを考えている、心の病んだ者は、許しを知らない。"For they are ~ "「なぜなら、彼らは、許すことは不公正だと言う証人だからだ」。罪ある者は罰せられるのが正当であって、決して罪を許してはいけないと信じているのだ。ここの"pardon"「許し」は、容認という意味であって、実相的な"forgiveness"「赦し」ではない。
They would retain the consequences of the guilt they overlook. Yet no one can forgive a sin that he believes is real.
- retain [ritéin] : 「〜を保有する、保つ、保持する、持ち続ける」
- consequence [kɑ́nsəkwèns] : 「結果、結論、結末、帰結、因果関係」
- guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
- overlook [òuvərlúk] : 「見過ごす、大目に見る、許す、目をつぶる」
- forgive [fərɡív] : 「許す、容赦する、勘弁する」
- sin [sín] : 「罪、罪悪、ばかげたこと、過失、罪業」
- believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
- real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
❖ "They would retain ~ "「心の病が癒されていない者は、彼らが見過ごした罪という結果を保持しようとする」。他者の罪を見過ごしてしまっても、許すことなく、それを保持しようとする。"Yet no one can ~ "「しかし、誰も、実在すると信じている罪を赦すことは出来ないのだ」。ここの"forgive"は微妙なのだが、ここでは、罪を許容し許すことも出来なければ、また、実相的に赦すことも出来ない、と解釈しておこう。罪が実在すると信じていることは、彼が幻想の実在を信じていることであって、したがって、心が病んでいるのだ。罪が事実として実在すると信じているから、その罪を許すことも、容認することも、大目に見ることも、もちろん、実相的に、その罪は幻想だとして受け流し赦すことも出来ないのである。
And what has consequences must be real, because what it has done is there to see.
- done [dʌ́n] : 「do の過去分詞」
❖ "And what has consequences ~ "「結果があるものは、実在しているに違いない」。"because what it has ~ "「なぜなら、なされたことは、そこに目に見える形で存在するからだ」。罪が結果ならば、罪は犯されたことになり、事実として実在するに違いない。ならば、夜見る夢の中で、あなたが人を殺(あや)めてしまったなら、あなたは、殺人という罪を犯したことになるのか。そんなバカな話しはない。
Forgiveness is not pity, which but seeks to pardon what it thinks to be the truth.
- forgiveness [fərɡívnis] : 「許すこと、許し、容赦、寛容」
- pity [píti] : 「哀れみ、かわいそうなこと、同情」
- seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
- truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
❖ "Forgiveness is not ~ "「赦しは、同情などではない」。"which but seeks ~ "「同情は、罪が事実だと思うことを許そうとすることである」。罪への同情や容認は、罪を犯したことを事実として認めた上で、つまり、罪の実在性を認めた上で、それを容認し、それに対して同情することを意味している。それに対して、実相的な赦しは、罪そのものが幻想であって、実在ではないと認めることなのだ。
Good cannot be returned for evil, for forgiveness does not first establish sin and then forgive it.
- good [ɡúd] : 「親切、善、徳」
- return [ritə́ːrn] : 「〜を返す、戻す、返却する、〜に答える」
- evil [íːvl] : 「害悪、悪、弊害」
- first [fə́ːrst] : 「一番目に、一等で、一位で」
- establish [istǽbliʃ] : 「確立する、成立させる、達成する」
❖ "Good cannot be ~ "「悪に対して、善が返されることは不可能だ」。"for forgiveness does ~ "「なぜなら、赦しとは、初めに罪を確立しておいて、次にその罪を赦すというものではないからだ」。実相的な赦しは、罪の存在を認めてそれを確立し、その後で、実在する罪を赦すというものではない。罪の存在そのものを否定することなのだ。したがって、罪という悪に対して、赦しという善が返されるのではない。罪という悪自体が存在しないのだと認識することが、実相的な赦しなのである。
Who can say and mean, "My brother, you have injured me, and yet, because I am the better of the two, I pardon you my hurt. "
- mean [míːn] : 「〜を意味する、…とは〜を指す」
- injure [índʒər] : 「傷つける、痛める、苦しめる」
- better [bétər] : 「より良い、より優れている、優越する」
- hurt [hə́ːrt] : 「傷、けが、苦痛、痛み、苦痛」
❖ "Who can say and ~ "「一体誰が、次のような意味内容を言うことが出来ようか」。""My brother, you have ~ "「『我が同胞よ、お前は私を傷つけたが、私は二人の中でより優越であるから、お前が私を傷つけたことを許しあげよう』」。こんな、鼻持ちならない事を発言する者は、よもやいるまいが、心の奥底を辿れば、こんな横柄な気持ちが見え隠れしているに違いない。
His pardon and your hurt cannot exist together. One denies the other and must make it false.
- exist [igzíst] : 「存在する、生きている、生存する」
- together [təɡéðər] : 「一緒に、同時に」
- deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する」
- false [fɔ́ːls] : 「本物でない、偽りの、偽の、正しくない、誤った」
❖ "His pardon and ~ "「彼を許しやることとあなたの傷は、同時に存在出来ないのだ」。彼を許したからといってあなたの傷が癒えるわけでもなく、あなたの傷が癒えたからといって彼を許したわけでもない。"One denies the other ~ "「一方は他方を否定し、それを偽りに変えてしまうに違いない」。彼を許せば、あなたの傷は癒えることはなくなり(許しが傷の回復を否定する)、傷が癒えない限り、彼への許しを認めないだろう(傷が許しを否定する)。傷が癒えないのに許してしまえば、その許しは嘘っぽくなる(許しを偽りに変えてしまう)。許しを拒絶すれば、傷はますますその傷口を広げ、嘘っぽい傷となる(傷を偽りに変えてしまう)。
3. To witness sin and yet forgive it is a paradox that reason cannot see.
- witness [wítnəs] : 「〜を証言する、〜を証明する」
- paradox [pǽrədɑ̀ks] : 「逆説、パラドックス、逆理」
- reason [ríːzn] : 「理性、理知、良識、分別、正気」
❖ "To witness sin ~ "「罪の存在を証言することと、その罪を許すことは、理性では理解出来ないパラドックスである」。奇妙なトリック、巧妙な偽善が隠されているのだ。
For it maintains what has been done to you deserves no pardon.
- maintain [meintéin] : 「〜と主張する、〜を保持する、維持する」
- deserve [dizə́ːrv] : 「〜を受けるに値する、〜の価値がある、〜にふさわしい」
❖ "For it maintains what ~ "「なぜなら、その証言は、あなたになされたことは、許しに値しないと主張してしるのだから」。罪の存在を証言するとは、あなたになされた罪深い行為は許しに値しないと証言することに等しい。許されないから、罪なのだ。そう主張しながら、罪を許したなら、これは矛盾でありパラドックスである。
And by giving it, you grant your brother mercy but retain the proof he is not really innocent.
- grant [grǽnt] : 「許可する、承諾する、かなえてやる」
- mercy [mə́ːrsi] : 「慈悲、情け、寛大な措置」
- retain [ritéin] : 「〜を保有する、保つ、保持する」
- proof [prúːf] : 「証拠、立証、証明、証し」
- really [ríəli] : 「実際には、ほんとうは、確かに、本当に」
- innocent [ínəsənt] : 「潔白な、無罪の、無実の、罪のない」
❖ "And by giving it, you ~ "「そして、許しを与えることで、あなたは、あなたの同胞に慈悲を叶えてやるのだが、同時に、」"but retain the proof ~ "「その同胞は本当は潔白ではないという証拠を保持するのである」。お前は潔白ではなく、罪があるのだが、私はそんなお前を許してよろう、というわけである。巧妙な偽善を働くことで、あなたは同胞に対して優勢を保つのだ。あなたは特別に慈悲深い人間であって、その同胞より存在価値が高いと確信するのである。
The sick remain accusers. They cannot forgive their brothers and themselves as well.
- remain [riméin] : 「依然として〜のままである」
- accuser [əkjúːzər] : 「刑事訴訟の原告、告訴人、告発人」
- as well : 「同じに、同様にうまく」
❖ その一方で、"The sick remain ~ "「病をもった者は、依然として、罪を告発し続ける」。"They cannot forgive ~ "「彼らは、同胞はもちろん、自分自身も同様に許せないのだ」。自分の罪をごまかして許せないから、それが病となって現象化しているのだ。自分を許せない者に、どうして他人が許せるだろうか。
For no one in whom true forgiveness rests can suffer. He holds not the proof of sin before his brother's eyes.
- true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
- rest [rést] : 「ある、置かれている」
- suffer [sʌ́fər] : 「苦しむ、苦痛を感じる、病気をする」
- hold [hóuld] : 「維持する、保持する、持続する」
❖ "For no one in whom ~ "「なぜなら、本当の赦しが心の中ある者は、誰も傷ついたり出来ないからだ」。実相的な赦しを知っている者は、傷つくことも病になることもない。傷も病も幻想に過ぎないと知っているから、そんな幻想を消滅出来るのだ。"He holds not the proof ~ "「彼は、同胞の目の前に、罪の証拠を持ち出すことはない」。なぜなら、罪の証拠など存在しないからだ。赦しを知った者は、罪の証拠など、捏造された幻想であると分かっている。
And thus he must have overlooked it and removed it from his own.
- thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、このようにして」
- overlook [òuvərlúk] : 「見て見ぬふりをする、見過ごす、大目に見る」
- remove [rimúːv] : 「取り除く、取り去る、取り外す、除去する」
❖ "And thus he must have ~ "「こうして、本当の赦しを知った者は、同胞の罪を見過ごしてやり、彼自身の目からも、罪の証拠を除去したのである」。罪や罪の証拠が幻想であると知って、受け入れ受け流し、罪という幻想を赦したのだ。赦されて、幻想は消滅し、同胞の心の中にも、あなたの心の中にも、幻想の罪は存在しなくなった。
Forgiveness cannot be for one and not the other. Who forgives is healed.
- heal [híːl] : 「癒やす、救う、治す、治癒する、治療する」
❖ "Forgiveness cannot be ~ "「赦しは、誰か一人のためにあるのではなく、また、誰か他人のためにあるのでもない」。赦す者と赦される者が、同時に、幻想から解放されるのだ。"Who forgives ~ "「赦す者は、癒されるのである」。赦し、癒す者が、赦され、癒されるのだ。自他一如であるから、当然といえば当然である。しかし、その当然が、奇跡なのだ。
And in his healing lies the proof that he has truly pardoned, and retains no trace of condemnation that he still would hold against himself or any living thing.
- lie [lái] : 「ある、存在する」
- truly [trúːli] : 「全く、本当に、真に、心から、誠実に」
- pardon [pάːrdn] : 「許す、赦免する、放免する」
- retain [ritéin] : 「〜を保有する、保つ、保持する、持ち続ける」
- trace [tréis] : 「跡、足跡、形跡、痕跡」
- condemnation [kὰndemnéiʃən] : 「有罪宣告、激しい非難、糾弾」
- against [əɡéinst] : 「〜に反対して、〜に逆らって、〜に不利にs」
- living [líviŋ] : 「生きている、現存する、活気のある、生命のある」
❖ "And in his healing lies ~ "「そして、ヒーリングを施す中に、本当に赦すという証拠が存在する」。実相的なヒーリングとは、罪を幻想として赦すことであり、赦すことで幻想を消滅させることなのだ。ヒーリングの中にこそ、真実の赦しが存在する。"and retains no trace ~ "「そして、その証拠は、いまだに自分に対して、あるいはあらゆる命ある者達に対して抱いていたいと思うような非難の痕跡の一かけらも保持してはいない」。赦しの証拠となるヒーリングの中には、罪への非難、罪への断罪の一かけらもない。罪は幻想だと知っている者が、そんな幻想を断罪するわけがないのだ。夢に見たことを非難する者がいるだろうか。