IV. Error and the Ego
誤りとエゴ
1. The abilities you now possess are only shadows of your real strength. All of your present functions are divided and open to question and doubt.
- ability [əbíləti] : 「能力、才能、できること、手腕」
- possess [pəzés] : 「〜を所有する、保有する、持つ」
- shadow [ʃǽdou] : 「影、暗がり、人影、陰」
- strength [stréŋkθ] : 「力、強さ、体力、強み、長所」
- present [préznt] : 「現在の、今の、目下の、当面の」
- function [fʌ́ŋkʃən] : 「機能、作用、働き、効用」
- divide [diváid] : 「〜を分ける、分割する、〜を分裂させる」
- be open to : 「〜を受けやすい、〜を招きやすい、〜に無防備である」
- question [kwéstʃən] : 「質問、疑問、問い、質疑、課題、問題」
- doubt : 「疑い、疑念、疑惑 、懸念、心配、不安」
❖ "The abilities you ~ "「あなたが今もっている能力は、あなたの真の力の影に過ぎない」。たとえば、神の子がこの幻想世界を偽創造した能力は、実相的な真実を生み出す創造力の影である。"All of your ~ "「あなたが今もっている機能のすべては分裂させられ、疑問と疑いを受けやすい」。たとえば、あなたが他者を愛する機能は分裂させられ、憎むという機能を付加される。あなたは、愛と憎悪の間に彷徨(さまよ)い、疑いや疑問をもってしまうのだ。二元論世界の必然である。
This is because you are not certain how you will use them, and are therefore incapable of knowledge. You are also incapable of knowledge because you can still perceive lovelessly.
- certain [sə́ːrtn] : 「確信している、確実な、確かな、確信して」
- use [juːz] : 「使う、利用する、生かす、働かせる」
- therefore [ðέərfɔ̀ːr] : 「それ故に、そのために、従って、だから」
- be incapable [inkéipəbl] of : 「〜ができない、〜をする能力がない」
- knowledge [nάlidʒ] : 「知識、知恵、知見、情報、事実」
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
- lovelessly [lʌ́vlisli] : 「愛のない状態で、愛もなく」
❖ "This is because ~ "「これは、あなたが今ある機能をどう使ったらいいか、確信を持てないでいるからだ」。"and are therefore ~ "「したがって、叡智に到達するにはほど遠い」。たとえば、あなたが神から継承した創造力を何にどう使ったらいいか確信がもてないので、真実を創造し変化流動することない叡智にたどり着けない。"You are also ~ "「叡智に到達出来ないもう一つの理由は」、"because you ~ "「未だ、愛なくして知覚することですませているからだ」。創造、確信、叡智、愛、等々は一直線上に並んだ真実である。純粋な愛をもたずに、肉体的な知覚だけで生きているから、愛の延長上の叡智にはたどり着けない。たとえば、肉体的な愛欲だけの関係性の延長上には、本当の愛も叡智も存在しない。偽りの愛と憎悪、焼けつく嫉妬に弄(もてあそ)ばれて、疑いの泥沼に埋没していく。
Perception did not exist until the separation introduced degrees, aspects and intervals. Spirit has no levels, and all conflict arises from the concept of levels.
- perception [pərsépʃən] : 「知覚、認知、知見、見識」
- exist [iɡzíst] : 「存在する、生きている、生存する」
- until [əntíl] : 「〜までは…しない、〜になってやっと」
- separation [sèpəréiʃən] : 「分離、区別、別居、別離、離脱」
- introduce [ìntrədjúːs] : 「取り入れる、取り込む、導入する、招く」
- degree [digríː] : 「程度、度合い、階級、地位」
- aspect [ǽspekt] : 「局面、状況、側面、特徴、様子、様相」
- interval [íntərvl] : 「 間隔、隔たり、距離、合間」
- spirit [spírit] : 「霊、魂、霊魂、精霊、精神、気分、気迫」
- level [lévl] : 「水準、レベル、段、段階、地位、度合い」
- conflict [kɑ́nflikt] : 「衝突、対立、論争、摩擦、葛藤、軋轢」
- arise [əráiz] from : 「〜から生じる〜から起こる、〜から発生する」
- concept [kɑ́nsept] : 「概念、観念、考え方、構想、考え」
❖ "Perception did ~ "「知覚は、(神からの)分離が、度合いや、側面や、間隔を持ち込むまでは存在しなかった」。神からの分離後、幻想としての時間と空間を知覚(錯覚)するようになった。時間は時間間隔であり、空間は上下左右前後の側面を持ち、距離は度合いである。さらに、我々は区別化、差別化をするために、あらゆるものに度合いを設定し、価値判断のために物事の側面を設ける。"Spirit has no levels ~ "「スピリットは、一切のレベルを持たない」。スピリットとは、いわば純粋な心のことである。純粋な愛と叡智に根ざした心である。"and all conflict ~ "「そして、すべてのコンフリクトはレベルという概念から発生する」。スピリットは、学びの補助装置として時間と空間を利用はするが、本来、時空を超越したものである。さらに、スピリットは区別化も差別化もしない。レベルという概念から超越している。ところで、我々の心の歪みは、"conflict"「コンフリクト、衝突、葛藤」という形で現れる。それは知覚によるレベル感覚の歪みであり、レベルという概念そのものに知覚が捕らわれているからだ。
Only the Levels of the Trinity are capable of unity. The levels created by the separation cannot but conflict. This is because they are meaningless to each other.
- trinity [trínəti] : 「3人組、三位一体」
- be capable of : 「〜の能力がある、〜の才能がある、〜ができる」
- unity [júːnəti] : 「統一、一致、結束、一体性、和合、一貫性」
- create [kriéit] : 「創造する、作り出す」
- meaningless [míːniŋlis] : 「意味のない、無意味な」
- to each other : 「お互いに対して」
❖ "Only the Levels of ~ "「三位一体のレベルだけが統一可能である」。一般のキリスト教では、神、聖霊、イエス・キリストの三者は3つのペルソナに分かれて存在しているが、本来は同一なものだとしている。これがキリスト教の三位一体である。ACIMの三位一体はペルソナという概念を用いない。ACIMの三位一体は次のようになる。神は神の子を神の延長上に創造したが、神の子は神から分離して、この幻想世界を偽創造した。神は、離れていった神の子のために神の代役であるホーリー・スピリットを創造し、神の子の下(もと)に遣(つか)わし、神と神の子の仲介役とした。神から分離した神の子が、分離という深い夢から覚めて神の下へ回帰したとき、神と神の子とホーリー・スピリットは再統一され、三位が一体となって、神という一点に収斂(しゅれん)する。純粋一元論世界の完成である。これが、ACIMの三位一体である。実相レベルの統一が可能なのは、三位一体だけある。"The levels created ~ "「分離によって生まれたレベルは衝突するのみである」。"This is because ~ "「これは、レベルどうしが互いに意味を持たないためである」。この幻想世界では、たとえば、純粋な愛はレベルの違う愛に分裂させられ、愛から憎悪へと階層化される。愛と憎悪、美と醜、喜びと悲しみ、真実と虚偽、陰と陽、プラスとマイナス、等々、二極に分離した想念は相反する力のベクトルをもって互いにせめぎ合う。変化流動が起きるのだ。二元論世界のこのダイナミズムを歓迎する人たちもいるだろうが、これがコンフリクトを生み、苦と痛みを生み出す。ところが、そもそも、この分離分裂、つまりレベルの階層化は幻想であって、実相的な意味を持たないのだ。簡単に言えば、夜見る夢の中で愛から憎悪へと向かうレベルを作り出し、夢の中で愛憎劇を演じて苦と痛みを味わっているだけである。夢の出来事は意味がないのだ。
2. Consciousness, the level of perception, was the first split introduced into the mind after the separation, making the mind a perceiver rather than a creator.
- consciousness [kάnʃəsnis] : 「意識、正気、自覚、感情、思想」
- split [splít] : 「割ること、分割、分裂」
- perceiver [pərsíːvər] : 「受信者、知覚者、知覚する者」
❖ "Consciousness, the level ~ "「意識、すなわち知覚レベルの意識は、神からの分離後、心の中に導入された最初の分裂である」。心が分裂し、その一かけらが"consciousness"「意識」である。"making the mind ~ "分詞構文、単純接続、「そして、その意識は心を創造者ではなく知覚者にしてしまった」。叡智を神に投げ返した神の子は、それに代わるものが必要であった。そこで、肉体の目によって世界を知覚し、集めた情報を頭脳によって理性的に推理判断する意識を偽創造した。脳が考えることこそ意識だと信じたのである。ところが、フロイトを持ち出すまでもなく、この意識自体も意識と無意識に分裂している。そして、ユングを持ち出すまでもなく、意識や無意識のさらに奥深くに集合的な意識がある。しかし、ACIMはそれさえも幻想に過ぎないと言う。多種の意識は心が分裂したために生じた幻想に過ぎず、本来の心は神の叡智に満たされた統一体だというわけである。ところで、意識は知覚を情報処理するだけであって、真実を創造することはない。こうして、神の子は創造者から知覚者に落ちたのだ。
Consciousness is correctly identified as the domain of the ego. The ego is a wrong-minded attempt to perceive yourself as you wish to be, rather than as you are.
- correctly [kəréktli] : 「正しく、正確に、正確に言えば 」
- identify [aidéntəfài] : 「〜を同一に扱う、同一視する、同定する」
- domain [douméin] : 「分野、専門、領域、範囲、所有地、領地、領土」
- wrong [rɔ́ːŋ] : 「間違った、誤っている、不適切な、悪い」
- minded [máindid] : 「〜な心の、〜に熱心な、〜志向の、〜する気がある」
- attempt [ətémpt] : 「試み、企て」
- wish [wíʃ] : 「望む、願う」
- rather than : 「〜よりはむしろ、かえって」
❖ "Consciousness is ~ "「意識は、正確に同定すれば、〜である」。"as the domain ~ "「エゴの領分(に属するもの)である」。"The ego is ~ "「エゴは、あなた自身をあるがままではなく、そうありたいと望むように知覚させる正しからざる心の企てである」。あるがままに知覚するのではなく、常に欠乏を感じるように『そうありたいと望む自分』を知覚させるのがエゴ。神の子は、神からの分離後、神を裏切った罪の意識と罰への恐れから自己を乖離して、エゴという偶像を作り出した。このエゴに自らの心を支配させ、頭脳をコントロールさせたわけだ。あなたが自分の意識だと主張するものは、エゴの意識である。そのエゴは、常にあなたの欠乏感を誘い、あなたの意識に欲を生み出す。あなたを幻想に縛り付け、実相に目覚めることを阻止しようとするのだ。
Yet you can know yourself only as you are, because that is all you can be sure of. Everything else is open to question.
- be sure of : 「〜に自信がある、〜を確信している」
- be open to : 「受けやすい、〜を招きやすい、〜に無防備である」
❖ "Yet you can ~ "「しかし、あなたは、自分自身をあるがままに知ることしか出来ない」。エゴはそうありたいと望む自分を知覚させるが、知覚を越えて自分自身を『知る』という観点に立てば、あなたはあるがままの自分を知ることしか出来ない。"because that is ~ "「なぜなら、あるがままの自分こそ、確信のもてるすべてであるから」。"Everything else ~ "「その他のすべては、疑問や疑いを受けやすい」。実相的に知るとは、確信である。真実を知ることしか出来ないのだ。知覚によって知ったつもりになっているものに対しては、常に疑念がつきまとう。確信がないからだ。