●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-17.I.2:1 ~ T-17.I.3:6

2. It is, then, only your wish to change reality that is fearful, because by your wish you think you have accomplished what you wish.

  • wish [wí∫] : 「願い、願望、希望」
  • change [t∫éin(d)ʒ] : 「〜を変える、〜を変更する、〜を変換する」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
  • fearful [fíə(r)fl] : 「恐ろしい、怖い」
  • accomplish [əkɑ́mpli∫] : 「成し遂げる、果たす、成就する、達成する、完成させる」
❖  "It is, then, only your ~ "強調構文、「そこで、恐ろしいのは、実相を変えようとするあなたの願望だけである」。"because by your wish ~ "「なぜなら、あなたが願望することによって、あなたは、願望することを成し遂げたと思うからだ」。前段落から議論を引きついでいる箇所である。実相を変 えようとしても、実際は変えることは不可能なので、問題として残るのは、変えようと願望する心だけだということになる。その心が、変えたいと思う願望を空 想の中で達成したと思い込み、あたかも実在であるかのように錯覚するのである。



This strange position, in a sense, acknowledges your power. Yet by distorting it and devoting it to "evil," it also makes it unreal.
  • strange [stréin(d)ʒ] : 「奇妙な、変わった、変な」
  • position [pəzí∫n] : 「位置、場所、立場、境遇、状況、情勢」
  • in a sense : 「ある意味で、ある程度まで、一面では」
  • acknowledge [əknɑ́lidʒ] : 「認める、承認する、同意する、認識する、受け入れる」
  • distort [distɔ́ː(r)t] : 「〜を曲げる、変形させる、〜をゆがめる、誤り伝える、歪曲する」
  • devote [divóut] : 「〜をささげる、充てる、向ける、供する、投入する」
  • evil [íːvl] : 「害悪、悪、弊害、災害、不運」
  • make [SVOC] : 「〜の状態を作り出す、〜にする」
  • unreal : 「実在しない、非現実的な、実存しない、幻想的な、空想的な」
❖  "This strange position ~ "直訳すると、「この奇妙な状況は、ある意味、あなたのパワーを認めている」。「この奇妙な状況」とは、実相を変えることは不可能であるにも関わらず、空 想の中で変えることが出来たと思い込む状況のこと。それは、ある意味、一種の想像力、空想力であって、想念の力の現れである、と受け止めることが出来る (acknowledges your power)。"Yet by distorting it ~ "「しかし、あなたのパワー(想像力)を歪め、それを『邪悪なるもの』に捧げることで、想像力は状況を非現実的なものに変えてしまう」。実相にそって想像 力を働かせる分には問題がなかろうが、実相から外れて、邪悪なもの(たとえば、エゴ)のために想像力を使おうとすると、状況をどんどん実相から遠ざけてし まい、状況を非現実化してしまう。たとえば、ある若者が人気のアイドルに恋をしたとしよう。現実には、その若者はアイドルと恋仲になることなど不可能だ。 そこで若者は、想像力を使って、自分とアイドルの恋を空想の中で実現するのである。この、現実を歪める空想があまりにも強烈であると、その若者は、現実と 空想の見極めが出来なくなってしまう。自分の空想世界に深くのめり込んでしまい、状況を完全に非現実化してしまうのだ。



You cannot be faithful to two masters who ask conflicting things of you.
  • faithful [féiθfl] : 「信頼できる、誠実な、真心を尽くす、信心深い」
  • master [mǽstə(r)] : 「主人、教師、親方」
  • conflict [kənflíkt] : 「衝突する、争う、抵触する、対立する、矛盾する」
  • conflicting : 「相反する、矛盾する、相いれない」
❖  "You cannot be faithful ~ "「相矛盾することをあなたに求める二人のマスターに、あなたは、信じて従うことは出来ないのだ」。あなたは、ホーリー・スピリットかエゴのどちらかを選 ばねばならない。なぜなら、ホーリー・スピリットは現実、実相であり、エゴは幻想、空想であるからだ。相入れない二人のマスターに、同時に師事することは 出来ない。



What you use in fantasy you deny to truth. Yet what you give to truth to use for you is safe from fantasy.
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する、 〜に…を与えない」
  • deny A to B : 「AをBに与えない」
  • truth [trúːθ] : 「真実性、現実、事実、真相、真理、本当のこと」
  • safe [séif] : 「安全な、無事な、安泰で、別状がない、無難な」
❖  "What you use in fantasy ~ "「空想の中であなたが利用するものを、あなたは真実に対して与えることは出来ない」。つまり、あなたが空想の中であれこれ作り出すものを、現実の真実に 変えることは出来ない。空想は、あくまでも空想にとどまるのだ。"Yet what you give to ~ "「しかし、あなたが、あなたのために利用しようと真実に対して与えたものは、空想によって害されることなく安全である」。回りくどい言い方をしている が、要するに、実相世界の真実というものは、決して空洞化して空想に転じることはない、という意味合い。あなたが真実に対して信じる気持ちを与えるなら、 その信じる気持ちはあなたを決して裏切ったりせず、あなたを空想世界へ突き落とすような危険もない。



3. When you maintain that there must be an order of difficulty in miracles, all you mean is that there are some things you would withhold from truth.
  • maintain [meintéin] : 「〜と主張する、〜を保持する、維持する、保つ、堅持する」
  • order [ɔ́ː(r)də(r)] : 「順、順序、順番、順位、序列、系列」
  • difficulty [dífikʌ̀lti] : 「困難、難事、難儀、面倒なこと、問題」
  • mean [míːn] : 「〜を意味する、…とは〜を指す」
  • withhold [wiðhóuld] : 「与えないでおく、〜を抑える、差し控える」
  • withhold A from B : 「AをBに与えないでおく」
❖  "When you maintain ~ "「あなたが、奇跡には難しさの序列があるに違いないと主張するとき、」"all you mean is that ~ "「あなたが意味するすべては、真実に対してあなたが与えないでおく何かがある、ということである」。ここも難しい言い回しをしているのだが、一言で言う と、あなたが真実に対して100%信じることが出来ないでうちは、奇跡の難しさに序列があると感じるのだ、という意味合い。逆に、奇跡に対して序列を感じ るうちは、あなたは真実を信じきれていない、ということ。ACIMの言う奇跡とは、この幻想世界にあって、実相世界をかいま見ること、実相世界を体験する こと、に尽きる。実相世界の事象、あるいは真実が、我々にとっては奇跡そのものなのである。虚偽の世界にあって、真実を体験することが奇跡である。ところ で、実相世界は一元論世界であり、完全平等な世界であるから、実相世界の事象も真実も、単一であり、完全に平等である。そこには、大きい真実、小さな真 実、重要な事象、重要でない事象、などといった序列は一切ない。したがって、この幻想世界にあって体験する奇跡は、それが実相世界の真実である以上、大き い、小さい、重要、非重要、実現困難、実現容易、などといった序列は存在しないのだ。あなたが奇跡の難しさに序列を感じているうちは、あなたは実相世界の 真実を取り違えている可能性がある。あるいは、実相世界の真実を信頼しきれていない、信じきれていない、と言える。聖書にある「信じれば山をも動かす」と いうイエス言葉は、この間の事情を言っている。ついでながら、聖書を見てみるのも、何かの勉強になるかもしれない。


[Matthew 17:20 from King James Bible]
And Jesus said unto them, Because of your unbelief: for verily I say unto you, If ye have faith as a grain of mustard seed, ye shall say unto this mountain, Remove hence to yonder place; and it shall remove; and nothing shall be impossible unto you.
イエスは言われた。「信仰が薄いからだ。はっきり言っておく。もし、からし種一粒ほどの信仰があれば、この山に向かって、『ここから、あそこに移れ』と命じても、そのとおりになる。あなたがたにできないことは何もない。」(新共同訳)


[Mark 11:23 from King James Bible]
For verily I say unto you, That whosoever shall say unto this mountain, Be thou removed, and be thou cast into the sea; and shall not doubt in his heart, but shall believe that those things which he saith shall come to pass; he shall have whatsoever he saith.
はっきり言っておく。だれでもこの山に向かい、『立ち上がって、海に飛び込め』と言い、少しも疑わず、自分の言うとおりになると信じるならば、そのとおりになる。(新共同訳)



You believe truth cannot deal with them only because you would keep them from truth.
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • deal [díːl] : 「扱う、関係する、対処する、対応する」
  • deal with : 「〜を相手にする、〜を処理する、〜に対応する、〜を取り扱う」
  • keep A from B : 「AにBをさせない、AをBに寄せ付けない」
❖  ここは後ろから訳して、"because you would ~ "「単に、あなたが、奇跡を真実から遠ざけようとするので、」"You believe truth cannot ~ "「あなたは、真実は奇跡に対処出来ないと信じている」。「奇跡を真実から遠ざける」とは、奇跡と真実が無関係であると考えること。だから、真実が奇跡に 対処する、すなわち、真実が奇跡を呼び起こすのだということが信じられないのだ。実相世界の真実を通してものを見るとき、そのときに限って、それが奇跡を 生む。むしろ、真実それ自体が奇跡である、と捉えた方がいいかもしれない。真実は実に簡素なものであって、実相世界に永遠不変に、普遍的に実在する。幻想 に慣れた我々の目から見れば、驚異的な奇跡に見えるかもしれないが、単純明快な現実に過ぎない。だからこそ、奇跡には序列はなく、すべてが自然に起きるの である。なぜなら、それが真実であるからだ。ところで、前文の「信じれば山をも動かす」という言葉について、少々補足しておきたい。この言葉は、とかく信 仰の深さ、特に、キリスト教への信仰の深さが奇跡を起こし得る、という意味にとられがちだが、ACIMをここまで読んでくると、イエスの意図したこととは 大分異なることがわかる。本当は、イエス・キリスト物語作者(マタイ、マルコ)は「真実を通して見れば、山も動く」と書くべきだったろう。実相世界の真実 を見極める目を通してものを見るなら(つまり、実相世界からこの幻想世界を眺めると)、この世界は単なる幻想、空想であると見抜くことが出来、あたかも実 在であるかに見えるあの山でさえ、本当は存在してもいないし、単なるあなたの錯覚に過ぎないのだから、山という幻想をちょっといじってやれば、山は動いて しまう、という意味だ。もっとも、幻想世界にとらわれている我々には、山という幻想をちょっといじって動かすことさえ出来ないが、しかし、実相世界に目覚 め、神の世界に回帰できた暁には、きっと、山を動かしてみたり、海を二つに割ってみたりして、けっこう楽しく遊べるようになるだろう。そう考えると、楽し くなるではないか。真実は楽しくて喜びに溢れていないとつまらない。



Very simply, your lack of faith in the power that heals all pain arises from your wish to retain some aspects of reality for fantasy.
  • very simply : 「ごく手短に言うと」
  • lack [lǽk] : 「不足、欠乏、欠如、欠落」
  • faith [féiθ] : 「自信、信念、確信、信頼、信用、信じること、信仰、信条」
  • heal [híːl] : 「癒やす、救う、治す、治癒する、治療する」
  • pain [péin] : 「痛み、痛覚、疼痛、苦痛、骨折り」
  • arise [əráiz] : 「起こる、生じる、現れる、生まれる、発生する」
  • arise from : 「〜から生じる、〜に原因する、〜に起因する」
  • wish [wí∫] : 「願い、願望、希望、祈願」
  • retain [ritéin] : 「〜を保有する、保つ、保持する、持ち続ける」
  • aspect [ǽspekt] : 「局面、状況、側面、様子、外見、面、側」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
  • fantasy [fǽntəsi] : 「想像、空想、幻想、白日夢」
❖  "Very simply, your lack ~ "「手短に言うと、すべての痛みを癒すパワーをあなたが信じきれないことは、空想に対して現実的な側面を持たせようと願うあなたの気持ちから生じるの だ」。この幻想世界にあっては、どうしても、山は実在に見え、肉体も実在に見え、特別な関係性も実在に見える。幻想、空想だとわかっていても、それに対し て現実的な側面を感じてしまう(retain some aspects of reality for fantasy)。その、幻想を幻想と信じきれない中途半端な信心の結果、今度は、痛みを癒すパワーの実在をも信じきれなくなるのだ。ここの、"all pain"「すべての痛み」とは、罪の意識や怒りや恐れなどの心の痛みはもちろん、肉体が感じる痛みもすべて含む。そういう痛み自体も幻想であり、実在で はないと受け入れことが、"healing"「ヒーリング」であり、痛みは幻想だという真実を見抜く"power"「パワー、眼力」を信じきることが出来 ないでいるのだ。奇跡が難しいものに思えるのは、この中途半端な心が真実を完璧に受け入れることが出来ないことに原因するのである。ついでなが ら、"pain"「痛み」に関して一言。イエスの磔刑における痛みを殊更に強調する宗教教義は誤っている。イエスは、肉体が幻想であることも痛みが幻想で あることも完璧に認識していた。イエスにとって、もはや肉体も痛みも存在していなかったからこそ、極く自然に磔刑を受け入れること出来たのである。つま り、イエスは自らの磔刑を通して、我々に奇跡を示したのである。しかし、ぼんくらな我々は、磔刑上のイエスに我が身を置き換えて、その苦しみや痛みだけを 殊更に感じようとしたわけだ。これは、毒杯をあおったソクラテスについても同様に言える。「汝自身を知れ」とは、肉体を持って痛みを感じるあなたはあなた 自身ではない、本当のあなたが別に存在しており、その本当の自分を知りなさい、という意味だ。ご存知ように、ソクラテスの意思をついで、プラトンは、その 本当のあなたが住む世界、イデア界(実相世界)を探訪することになる。



If you but realized what this must do to your appreciation of the whole!
  • realize [ríːəlàiz] : 「 〜に気が付く、悟る、自覚する、実感する」
  • appreciation [əprìː∫iéi∫n] : 「正しく評価、正しい認識、識別、感知」
  • whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の、丸ごとの」
❖  "If you but realized ~ "「このことが、全体を正しく評価することに、どんな影響を与えることになるか、もし、あなたが気付いていてくれたなら」、どんなに、いいであろうに。真 実を素直に完璧に受け入れることが出来ずにいる所に、事象全体の関連性や正誤性を見誤る原因がある。真実を率直に、完璧に受け入れることが出来れば、先の イエスの磔刑も正しく評価出来るだろうに。真実を受け入れる時に、いらぬ幻想が介入するから、たとえば、磔刑上のイエスは血を流して、ひどい痛みを感じて 苦しんだに違いない、などと幻想する。幻想が介入すれば、真実が歪んで、正しい景色が見えてこないのだ。



What you reserve for yourself, you take away from him Who would release you.
  • reserve [rizə́ː(r)v] : 「〜を蓄えておく、留保する、取っておく」
  • take away : 「取り上げる、奪い去る、連れ去る」
  • release [rilíːs] : 「解放する、自由にする、放つ」
❖  "What you reserve ~ "「あなたが自分のために取っておいたものを、あなたを解放しようとする神から持ち去っているのだ」。難解である。何を言いたいのだろう? ここは逆に考 えれば意味が通るかもしれない。つまり、あなたが、あなたを解放してくれる神から奪ったものを、あなたは、あなた自身の保身のために使っている。あなた は、神との関係を断ち切り、神の愛を拒絶して、この幻想世界にとどまろうとしている、といった意味合いになるか。あなたは、この幻想世界で保身するため に、真実を回避している。真実があなたを解放してくれるにも関わらず、神が差し出す真実を、つまり、神の愛を拒んでいる。あなたかも、神の真実の愛を奪っ てドブに捨てるようなものだ。なぜ、それまでに神の愛や真実を拒否するのか? この幻想世界で、たとえ嘘であっても、無難に生きていきたいからだ。真実に 目覚めることが、一番怖いと思っているのだ。



Unless you give it back, it is inevitable that your perspective on reality be warped and uncorrected.
  • unless [ənlés] : 「〜でない限り、〜である場合を除いて」
  • give back : 「返す」
  • inevitable [inévətəbl] : 「避けられない、不可避の、必然的な」
  • perspective [pə(r)spéktiv] : 「展望、物の見方、考え方、観点、視野」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
  • warp [wɔ́ː(r)p] : 「よじ曲げる、ゆがめる、ひずませる」
  • uncorrected : 「訂正されていない」
❖  "Unless you give ~ "「あなたが、神から取り上げたものを返さない限り、」つまり、神の真実や神の愛を、率直に受け入れない限り、"it is inevitable that ~ "ここは"it ~ that ~ "の構文、「あなたの、実相を見る見方は、歪められ、修正出来ないものとなることは避けられない」。神の真実と愛を率直に受け入れ、実相世界に目覚め、実 相世界へ回帰して初めて、あなたの知覚は修正され、叡智となって正しくものを見ることが出来るようになる。そこに導くことが、このACIMの最大の狙いで ある。
 
 
 

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