●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-17.IV.16:1 ~ T-17.V.1:7

16. As God ascends into his rightful place and you to yours, you will experience again the meaning of relationship and know it to be true.

  • ascend [əsénd] : 「上がる、登る、上る」
  • rightful [ráitfəl] : 「正当な、合法的な、道徳的に正しい」
  • place [pléis] : 「場所、個所、住所、席」
  • experience [ikspí(ə)riəns] : 「〜を経験する、〜を体験する」
  • again [əgén] : 「再び、かさねて」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義、意図、真意」
  • relationship [riléi∫n∫ìp] : 「関係、結び付き、かかわり合い、関連」
  • true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の、実際どおりの」
❖ "As God ascends into ~ "「神が、神のいるべき適正な場所へとアセンションし、あなたもあなたの居場所へアセンションするに従い、」"you will experience again ~ "「あなたは、関係性の意味を再び経験し、それを正しく知ることとなるであろう」。まず、"ascend"「登る、昇天する」あるいは、"ascension"「上昇、昇天」という言葉に関して、考察しておこう。天の王国へ入ることを意味しているのは、言うまでもない。昇天というと、仏教的には、死んで、その霊魂が極楽に昇るというイメージがあるが、ACIMでは死のイメージはない。キリスト教では、イエス復活後40日目で天に昇ったことを意味するが、ACIMでは、アセンションをイエスに限定しない。アセンディド・マスターという言葉は、輪廻転生の輪から抜け、天に昇って叡智を獲得した者達を言うが、ACIMのアセンションは、これに近いものである。つまり、幻想世界から抜け出し、実相世界に開眼して、天の王国へと昇り、叡智(Knowledge)を獲得することである。本文に戻るが、神がアセンドする、とあるが、本当は、神はもう天の王国にいるのでアセンドするわけがない。ここでは、あなたに思い出された神は、あたかもあなたの元に降臨したかに見え、あなたを伴って再び天に昇って行く、というイメージを、神のアセンションと表現しただけだろう。あなた自身は、もちろん、アセンションするのである。天の王国へ昇り、神の子という座、つまり、あなたの正しい居場所に、就くのである。このとき、あなたは神の子として、神との関係性、ホーリー・スピリットとの関係性、すなわち、三位一体の関係性の意味を正しく知ることとなるのだ。



Let us ascend in peace together to the Father, by giving him ascendance in our minds.
  • in peace : 「平和に、平安に、安らかに、安心して、静かに、無事に」
  • together [təgéðə(r)] : 「一緒に、同時に」
  • ascendance [əséndəns] : 「= ascendancy」
  • ascendancy [əséndənsi] : 「支配的勢力、支配的立場、支配力、権勢、主導権」
❖ "Let us ascend in peace ~ "「安らかに、ともに、父なる神の元へアセンションしようではないか」。"by giving him ascendance ~ "直訳すると、「私たちの心の、支配権を神に与えることで」となるが、神の王国には支配という概念はないから、ここは、「心の中のすべてを神に委ねることで」と解釈した方がいいだろう。もちろん、ACIMの絶対他力性である。自分を放棄せよ、と言っているのではなく、神と神の子は一体であり分離できないものだから、自分に頼ることは神に頼ることと同じなのだ、というニュアンスである。



We will gain everything by giving him the power and the glory, and keeping no illusions of where they are.
  • gain [géin] : 「得る、獲得する」
  • glory [glɔ́ːri] : 「栄光、称賛、名誉、誇り、壮観、荘厳」
  • illusion [ilúːʒ(ə)n] : 「幻想、幻覚、錯覚」
❖ "We will gain everything ~ "「神にパワーと栄光を与えることで、私たちはすべてを得ることになろう」。"and keeping no ~ "分詞構文、付帯状況、「パワーと栄光があるべき場所に関して幻想を抱くことなく」。パワーとは、あえて言えば、命の源となるか。栄光とは、あえて言えば、愛の光となるか。そういったものが、エゴの元にあるのだという幻想を抱かずに、真に存在する場所、つまり、神の元にそれを認めることで、神はすべてを我々に与えてくれる。もちろん、お金や物品、名声や地位といった幻想を与えるのではない。愛、美、命、真理、喜び、平和、創造性、慈しみ、等々の、実相的真実を与えてくれるのだ。



They are in us, through his ascendance. What he has given is his. It shines in every part of him, as in the whole.
  • ascendance [əséndəns] : 「= ascendancy」
  • ascendancy [əséndənsi] : 「支配的勢力、支配的立場、支配力、権勢、主導権」
  • shine [∫áin] : 「輝く、光る」
  • part [pɑ́ː(r)t] : 「一部、部分」
  • whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の、丸ごとの」
❖ "They are in us ~ "意訳すると、「神に心のすべてを委ねることで、パワーと栄光が、私たちの心の中にあることがわかる」。ここで"They"を「パワーと栄光」と解釈したが、「神が与えてくれるもの」と解釈してもいいだろう。神はすべてを与えてくれるのだから、当然パワーも栄光も与えてくれるのだ。我々の心のすべてを神に委ねることで、神と神の子は融合し、神のパワーと栄光は神の子のパワーと栄光になる。"What he has given ~ "「神が与えるものは、神のものである」。神があたえるものにはすべて、神のパワーと栄光がしみ込んでいる、といったニュアンスか。少なくとも、神が与えるものの所有権を云々しているのではない。"It shines in every ~ "「神の与えるものは、神のすべての部分において、そして全体においても、輝いているのだ」。さて、どう解釈できるだろうか? まず、神はすべてを創造する。実相世界の存在はすべて神が創造したもの、つまり、神が与えてくれたものである。我々神の子も、ホーリー・スピリットも、愛も平和も、美、真理、命、等々のすべてを神が創造し、与えたものだ。いわば、神の部分部分である。そのすべてにおいて、神のパワーと栄光が輝いているのだ。つまり、神の息吹が光を放っている。ところで、神はすべてを包摂している。実相世界全体を包摂しているものが神である。ならば、部分部分をすべて含んだ全体が、神のパワーと栄光で輝いていると言ってもいい。実相世界は一元論の世界であり、部分部分は単一なる存在に収斂する。部分も全体も同じものなのだ。部分部分が融合して単一なる存在となると考えてもいいし、部分自体が全体なのだと、ホログラム的に考えてもいい。たとえば、神の子とホーリー・スピリットは、神が創造した、つまり、神が与えてくれた真実なる存在として、パワーと栄光に輝いている、と見てもいいし、神と神の子とホーリー・スピリットが融合し、三位一体として、つまり、単一存在として、パワーと栄光に輝いている、と見てもいいのだ。少々、理屈っぽくなってしまったが、こんなところでどうであろうか?



The whole reality of your relationship with him lies in our relationship to one another.
  • whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の、丸ごとの」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
  • relationship [riléi∫n∫ìp] : 「関係、結び付き、かかわり合い、関連」
  • lie [lái] : 「ある、存在する」
  • one another : 「お互い」
❖ "The whole reality of ~ "「神とあなたの関係性の実相全体は、私たちの、互いの関係性の中に存在する」。難解であるが、非常に重要な一文である。ACIMの神髄を解くための、キーとなる一文である。我々は、エゴの思考システムを信じて、あるいはそれに騙されて、特別な関係性(special relationship)を築いてきた。しかし、それが破壊的であり、いずれ破綻することを我々は知った。では、真の関係性は何なのか? それが、ここで述べられている。一言で言えば、真の関係性とは、あなたと神の間の実相的関係性である。しかし、これだけなら、ACIMは特に革新的な思想だとは言えない。仏教でも、あなたと仏の関係性が重要視されるではないか。重要なのは、文の後半だ。あなたと神の真の実相的関係性は、あなたと同胞の関係性の中に存在する、と述べられている。つまり、あなたも同胞も、ともに、神が創造した神の子であると認識して、互いに神の子として関係することの中に、真の実相的関係性が生まれる、ということなのである。さらに言えば、あなたも同胞も、神の子という単一なる存在であって、その心も単一である。それを認識した上で築かれる関係性こそが、真の実相的関係性である、ということだ。簡単に言えば、あなたが関係する他者の中に神が感じられるとき、その関係性は本物だ、ということになる。



The holy instant shines alike on all relationships, for in it they are one. For here is only healing, already complete and perfect. For here is God, and where he is only the perfect and complete can be.
  • holy [hóuli] : 「神聖な」
  • instant [ínstənt] : 「瞬間、一瞬」
  • alike [əláik] : 「同様に、一様に」
  • healing [híːliŋ] : 「治療、回復、治癒、癒やし」
  • already [ɔːlrédi] : 「すでに、とっくに〜済み、前々から」
  • complete [kəmplíːt] : 「完全な、全くの、完結した、完成した、全部そろった、完全な」
  • perfect [pə́ː(r)fikt] : 「完璧な、完全な」
❖ "The holy instant shines ~ "「聖なる瞬間は、すべての関係性の上に一様に輝く」。"for in it they ~ "「なぜなら、聖なる瞬間にあっては、すべての関係性はただ一つだからだ」。"For here is only ~ "「なぜなら、聖なる瞬間にあっては、ヒーリングだけがあり、すでに完全、完璧であるからだ」。ここも難解だ。同胞同士の関係性も、それが真実なら、神と神の子の関係性に収斂する。真の関係性は単一なのだ。そして、真の関係性を通して、あなたが実相世界に目覚めるとき、それが聖なる瞬間であり、幻想世界から実相世界へと純粋な光が伸びていく。幻想を捨て、実相に開眼することが、ACIMで言うところのヒーリングである。聖なる瞬間においては、幻想が消滅し、実相世界が現れるのだから、まさにヒーリングの瞬間であり、聖なる瞬間に立ち合えた時はすでに、あなたも周りも完全、完璧な実相的実在に変身しているのだ。そして、天の王国への最後の掛け橋を渡りさえすれば、あなたの神への回帰の旅は終わる。"For here is God ~ "「なぜなら、ここにこそ、神はあり、神がある所にのみ、完全なるもの、完璧なるものは存在できるからだ」。






V. The Healed Relationship
ヒーリングされた関係性



1. The holy relationship is the expression of the holy instant in living in this world.
  • expression [ikspré∫n] : 「表現、表情、表出」
  • living [líviŋ] : 「生きていること、生活、生存、生き方、暮らし」
❖ "The holy relationship ~ "「聖なる関係性とは、この(幻想の)世界で暮らす中での、聖なる瞬間の表現である」。この地上で暮らす中で、あなたと他者が、エゴの策略する特別な関係性ではなく、互いが神の子として認識し合う聖なる関係性を築けるなら、それは、聖なる瞬間を表現したことになる。つまり、真の関係性を通して、幻想を捨て、実相に目覚めることが可能なのだ。それが、聖なる瞬間の表現である。


Like everything about salvation, the holy instant is a practical device, witnessed to by its results.
  • salvation [sælvéi∫n] : 「救出、救済、救い、救世」
  • practical [prǽktikl] : 「実用的な、実践上の、現実的な、実際的な」
  • device [diváis] : 「機器、装置、手段、仕掛け、工夫」
  • witness [wítnəs] : 「〜を証言する、〜を経験する、〜に直面する」
  • witness to : 「〜を証言する」
  • result [rizʌ́lt] : 「結果、結末、効果、成果、成績、業績、実績」
❖ "Like everything about ~ "「救いに関することすべてに言えることだが、聖なる瞬間は実用的なデバイスであり、その結果が保証している」。幻想世界から実相世界へと救い上げる聖なる瞬間は、単なる理念的なものではなく、まさにヒーリングとして実際的なデバイスである。その結果がそれを物語っている。つまり、聖なる瞬間を通して、実際に、実相世界へとアセンション出来るのだ。



The holy instant never fails. The experience of it is always felt. Yet without expression it is not remembered.
  • fail [féil] : 「失敗する、しくじる、破産する、裏切る」
  • experience [ikspí(ə)riəns] : 「経験、体験、見聞」
  • always [ɔ́ː(l)weiz] : 「いつも、常に」
  • felt [félt] : 「feel の過去形、過去分詞形」
  • without [wiðáut] : 「〜しないで、〜せずに」
  • expression [ikspré∫n] : 「表現、表出、表情」
  • remember [rimémbə(r)] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
❖ "The holy instant ~ "「聖なる瞬間は、決して失敗することはない」。"The experience of ~ "「聖なる瞬間を体験することは、常に、感じられるものなのだ」。聖なる瞬間は、知らないうちに体験されるというものではなく、実感として感覚できるものだ。"Yet without expression ~ "「しかし、それを表現しないことには、思い出されることはない」。実相世界は想念、抽象の世界であるから、具象的な光景として把握できるものではない。聖なる瞬間も同様だ。したがって、具象的な光景を欠いた聖なる瞬間を、あなたが表現することで記憶にとどめ置くのである。聖なる瞬間は具象的な光景を欠いていると言ったが、ACIMでは、光り輝くと表現している。この光を、具象的な光として捉えるか、つまり物理的な電磁波として捉えるか、または神聖さの象徴としての表現と捉えるか、人によって分かれるところである。しかしそれは、個人の選択の自由に任せようではないか。



The holy relationship is a constant reminder of the experience in which the relationship became what it is.
  • constant [kɑ́nst(ə)nt] : 「持続する、絶えず続く」
  • reminder [rimáindər] : 「思い出させるもの、思い出」
❖ "The holy relationship is ~ "「聖なる関係性は、関係性が本来そうあるべき姿として経験されることを、絶えず思い出させるものなのだ」。聖なる関係性は、決してエゴの画策する特別な関係性に堕落することなく、常に、神と神の子の関係性を思い起こさせるもの、そしてそれを経験させてくれるものでなくてはならない。



And as the unholy relationship is a continuing hymn of hate in praise of its maker, so is the holy relationship a happy song of praise to the Redeemer of relationships.
  • unholy : 「神聖でない、不信心な、不敬な、不道徳」
  • continue [kəntínjuː] : 「〜を続ける、〜を継続する」
  • hymn [hím] : 「賛美歌、聖歌」
  • hate [héit] : 「憎悪、憎しみ、嫌悪」
  • praise [préiz] : 「称賛、褒めること、賛美」
  • in praise of : 「〜を褒めたたえて、〜を褒めて」
  • redeemer [ridíːmər] : 「救い主、贖い主」
❖ "And as the unholy relationship ~ "「そして、(エゴの)神聖ではない関係性が、その作り手を賛美して歌い続ける憎悪の聖歌であるのに対して、」"so is the holy relationship ~ "「聖なる関係性は、関係性を聖なるものにしてくれた救い主を称賛する幸せの歌である」。
 
 
 

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