A Course in Miracles
Text - Chapter 29
The Awakening
覚醒
I. The Closing of the Gap
ギャップを閉じる
1. There is no time, no place, no state where God is absent. There is nothing to be feared.
- place [pléis] : 「場所、個所、住所、地域、土地」
- state [stéit] : 「状態、形勢、情勢、状況」
- absent [ǽbsənt] : 「いない、不在の、留守の、欠席して」
- fear [fíər] : 「〜を恐れる、〜を怖がる」
❖ "There is no time, no ~ "「神のいない時間も場所も状態も、決して存在しない」。神は、いかなる時も、いかなる場所にも、常に存在している。"There is nothing ~ "「何一つ恐れる必要はない」。常に神が存在しているので、何も恐れる必要はない。神が見えないと言うなら、それは目を閉じて眠っているからだ。幻想が、実在を覆い隠しているのだ。
There is no way in which a gap could be conceived of in the Wholeness that is His.
- way [wéi] : 「方法、やり方、手段、方途、様式、現状、状態」
- gap [gǽp] : 「割れ目、すき間、隔たり、ギャップ」
- conceive [kənsíːv] : 「心に描く、思い付く、着想する、想像する」
- conceive of : 「〜を考え出す、〜を想像する、〜を心に描く、〜を思い描く」
- wholeness [hóulnis] : 「全体、全体性」
❖ "There is no way ~ "「神のものである全体性の中にギャップを考えつくような、そんな方法はない」。神は完全であり、欠けるものはない。例えて言えば、完全な球形の水晶玉を連想すればいい。そこには、一つの傷も、結晶格子の欠損もない。完全で完璧である。完全、完璧な神が、実相世界すべてを包含しているのだ(all-encompassing)。"the Wholeness that is His"「神のものである全体性」とは、そういうものだと考えればいいだろう。したがって、幻想世界の分離を象徴するギャップなど、神の全体性の中に存在することはない。存在させることも不可能だ。
The compromise the least and littlest gap would represent in His eternal love is quite impossible.
- compromise [kάmprəmàiz] : 「譲歩、妥協、歩み寄り、和解」
- least [líːst] : 「最小のもの、最小」
- represent [rèprizént] : 「〜を表す、描く、描写する、意味する、象徴する、示す」
- eternal [itə́ːrnl] : 「永遠の、不変の、永久の、不滅の、無限の」
- quite [kwáit] : 「とても、非常に、きわめて」
- impossible [impɑ́səbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない」
❖ "The compromise the least ~ "「神の永遠の愛の中に、最も小さなギャップが表す妥協(の存在)など、まったく不可能なのだ」。下手な訳で申し訳ない。神の愛には傷も欠損もない。目には見えない最も小さなギャップが紛れ込んでいるかもしれないなどという、妥協的考えは通用しないのだ。たとえば、神は、神を信じない者を憎んで罰を与えるかも知れない、などという、神と人間の中間的な妥協的発想など、でたらめである。完全、完璧な実相的真実である神の思考に、憎悪や報復などという幻想的想念(ギャップ)が紛れ込む可能性はないのだ。旧約聖書に登場する、憎悪する神、罰する神、報復する神、怒れる神、復讐する神、嫉妬する神、疑う神、試す神、等々は、恐れを抱いた人間の妥協的発想によって生まれた虚偽の神である。実相世界に住む実在の神とは全く無縁の、幻想世界の神に過ぎない。神と呼べない神なのだ。偽神とでも名付けておこうか。
For it would mean His Love could harbor just a hint of hate, His gentleness turn sometimes to attack, and His eternal patience sometimes fail.
- mean [míːn] : 「〜を意味する、…とは〜を指す」
- harbor [hάːrbər] : 「心に抱く、〜をかくまう」
- a hint of : 「少量の、少しだけ、ちょっぴり」
- hate [héit] : 「憎悪、憎しみ、嫌悪」
- gentleness [dʒéntlnis] : 「優しさ、穏やかさ」
- turn to : 「〜に変わる、〜に変化する」
- attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
- patience [péiʃəns] : 「忍耐、我慢、辛抱強さ、根気」
- fail [féil] : 「失敗する、しくじる」
❖ "For it would mean ~ "「なぜなら、それは、神の愛がほんの少しの憎しみを隠し持っているかもしれないし、神の優しさは時として攻撃に転ずるかも知れないし、神の永遠の忍耐は時として失敗するかもしれないことを意味しているからだ」。幻想のギャップが神の愛に紛れ込んでいる可能性があるという妥協的発想は、神の愛に憎悪という傷が付いているかもしれないことを意味する。神の優しさは攻撃心を隠し持っているかもしれず、神は忍耐強くないことを意味することになってしまう。もしそうであるなら、神の完全性、完璧性、全体性は、ものの見事に崩壊して、神も実相世界も一瞬にして消滅してしまうだろう。
All this do you believe, when you perceive a gap between your brother and yourself.
- believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
- between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間に」
❖ "All this do you believe ~ "「あなたが、あなたの同胞とあなた自身との間にギャップを知覚するときは、このすべてをあなたは信じていることになる」。あなたと同胞が肉体と肉体によって分離し、その間に幻想の隔たり、ギャップを知覚するようでは、神の完全性を疑って、神の愛にギャップが紛れ込む可能性があるという妥協的発想を信じていることになる。なぜなら、神の子は神が創造したものであり、神が完全、完璧、全体であるなら、神の子も同様に完全であり完璧であり全体であるはずだからだ。同胞に対して、自分と同じ神の子であると知覚出来ない限り、神の完全性を理解出来ないのである。神の子の自他一如を知らない限り、神を知ることは出来ない。
How could you trust Him, then? For He must be deceptive in His Love.
- trust [trʌ́st] : 「信用する、信頼する」
- deceptive [diséptiv] : 「人をだます、当てにならない、見掛け倒しの」
❖ "How could you trust ~ "「そんな有り様で、どうして、あなたは神を信頼出来るだろうか」。"For He must be ~ "「なぜなら、神は、神の愛を偽っているに違いないのだから」。もちろん、神は愛を偽ってなどいないのだから、あなたはあなた自身を偽っていることになるのだ。
Be wary, then; let Him not come too close, and leave a gap between you and His Love, through which you can escape if there be need for you to flee.
- wary [wέəri] : 「警戒している、慎重な、油断のない、用心深い」
- close [klóus] : 「近くに、接して、密接して、ぴったりと」
- leave [líːv] : 「〜を残す、置きっぱなしにする、〜をそのままにしておく」
- through [θruː] : 「〜を通り抜けて、経て、〜を通じて」
- escape [iskéip] : 「逃げる、脱出する、抜ける、免れる」
- need [níːd] : 「必要、必要性」
- flee [flíː] : 「〜から逃げる、〜を逃れる」
❖ "Be wary, then; let ~ "「もしそうなら、油断せずに、神をあまり近づけることなく、あなたと神の間にギャップを残して置きなさい」。"through which you ~ "「もしあなたが、(神から)自由になる必要が生じたときは、そのギャップを通って、あなたは(神から)逃げることが出来るのだから」。もちろん、ここでは逆説を語っているのだ。もし神の愛が信じられないなら、神に近づくな、神から距離を置け、いつでも逃げる準備をしておけ、というわけである。
2. Here is the fear of God most plainly seen. For love is treacherous to those who fear, since fear and hate can never be apart.
- fear [fíər] : 「恐れ、恐怖」
- plainly [pléinli] : 「はっきりと、明らかに、明白に、一目瞭然に」
- seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
- treacherous [trétʃərəs] : 「不誠実な、裏切りをする、当てにならない」
- hate [héit] : 「憎悪、憎しみ、嫌悪」
- apart [əpάːrt] : 「離れて、離ればなれで、バラバラに、別々に」
❖ "Here is the fear of ~ "「ここに、神への恐れがはっきりと見ることが出来る」。"For love is treacherous ~ "「なぜなら、愛は、恐れを抱く者を裏切るからである」。"since fear and hate ~ "「と言うのも、恐れと嫌悪は、決して別物ではないからだ」。基本的に、愛への不信が恐れを生み出し、神はもちろんのこと、他者を愛することが出来ないのである。本文は「愛は、恐れを抱く者を裏切る」とあるが、本当は愛は誰も裏切ることはなく、したがって、この文は「恐れを抱く者は、愛を裏切る」と、逆さまに解釈した方がいいだろう。恐れが不信を生み出し、不信が愛を損ね、憎悪をかき立てるのだ。恐れと愛への不信と憎悪は表裏一体であり、その時々で表す顔を変えるだけである。
No one who hates but is afraid of love, and therefore must he be afraid of God. Certain it is he knows not what love means.
- hate [héit] : 「憎む、ひどく嫌う」
- be afraid [əfréid] of : 「〜を恐れる、〜を怖がる」
- therefore [ðέərfɔ̀ːr] : 「それ故に、そのために、従って」
- certain [sə́ːrtn] : 「確実な、確かな、確信して」
- mean [míːn] : 「〜を意味する、…とは〜を指す」
❖ "No one who hates ~ "「憎む者は、間違いなく、愛を恐れている」。"and therefore must ~ "「したがって、憎む者は神を恐れているに違いない」。"Certain it is he knows ~ "「確かに、憎む者は、愛が何を意味するのか知らないのである」。憎み恐れる者は、愛が犠牲を強いるものだと信じている。愛が、彼から多くを奪うと信じているのだ。愛の存在下では、与えることが得ることであるという真実を知らない。なぜなら、愛は実相の真実であり、与えることと得ることが等しいことは、神の法であるからだ。もし、神を愛して奪われることがあったら、間違いなくその神は偽物の神だ。犠牲を強いる、愛の神など、原理的に存在出来ないからだ。
He fears to love and loves to hate, and so he thinks that love is fearful; hate is love.
- think [θíŋk] : 「〜と考える」
- fearful [fíərfəl] : 「恐ろしい、怖い」
❖ "He fears to love ~ "「憎む者は、愛することを恐れ、憎むことを愛する」。他者を憎んで孤立した方が、奪われることがないから、安全だと考えているのだ。しかも、あわよくば、憎む相手から奪おうと画策している。下手に人を愛し神を愛せば、ついには身の破滅に繋がりかねないと、愛を恐れるのである。"and so he thinks ~ "「そこで、憎む者は、愛は恐ろしいものであり、憎悪こそが愛であると思っているのだ」。憎悪こそが愛すべきものだと、倒錯的に考えてしまうのである。あるいは、憎悪する自分を愛するのである。
This is the consequence the little gap must bring to those who cherish it, and think that it is their salvation and their hope.
- consequence [kɑ́nsəkwèns] : 「結果、結論、結末、成り行き、帰結」
- bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜をもたらす」
- those who : 「〜する人々」
- cherish [tʃériʃ] : 「〜を大事にする、大切にする」
- salvation [sælvéiʃən] : 「救出、救済、救い、救世」
- hope [hóup] : 「希望」
❖ "This is the consequence ~ "「これは、小さなギャップが、それを大切に思い、それこそが救いであり希望であると考えている者たちにもたらす結果なのだ」。小さなギャップとは、分離という幻想のことだと思っていい。つまり、幻想のギャップの存在を信じ、自分が他者と分離して存在し、それゆえ愛は不可能なのだと信じているのだ。奪うか奪われるかの世界であり、愛などに騙されたら身の破滅だと考えている。憎み、嫌い、攻撃し、奪い、孤立した存在の自分だけを必死に守ることが、唯一の救いであり希望だと信じている。結局、これは、分離という幻想の存在を信じることの、当然の帰結なのだ。憎む者に、自他一如という発想が可能なわけがない。自他一如とは、愛の源なのだと知ることもない。自分が神の子であるという事実も、知るよしもないのだ。