●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-16.VI.8:1 ~ T-16.VI.9:4

8. Fear not that you will be abruptly lifted up and hurled into reality.

  • fear [fíə(r)] : 「〜を恐れる、〜を怖がる」
  • abruptly [əbrʌ́ptli] : 「不意に、突然、唐突に、出し抜けに、急に」
  • lift [líft] : 「持ち上げる、高める、向上させる」
  • lift up : 「〜を持ち上げる、精神的に高揚させる」
  • hurl [hə́ː(r)l] : 「〜を強く投げつける」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
❖ "Fear not that you ~ "「あなたが急に持ち上げられ、実相界へ放り投げられるではないかと恐れてはいけない」。実相世界に入るには、体を急に持ち上げられて実相世界に放り投げられるのではないかと、心配する必要はない。そんなことはないのだから。時間が味方して、ゆっくりゆっくり進行するのである。



Time is kind, and if you use it on behalf of reality, it will keep gentle pace with you in your transition.
  • kind [káind] : 「優しい、親切な、いたわる」
  • on behalf of : 「〜のために、〜の利益になるように、〜の代わりに」
  • gentle [dʒéntl] : 「優しい、穏やかな、優しい、寛大な、なだらかな」
  • pace [péis] : 「歩調、歩き方、歩み、速度」
  • transition [trænzí∫n] : 「移行、遷移、推移、転移」
"Time is kind, and ~ "「時間は優しいものであるし、もしあなたが、実相のために時間を使うなら、」"it will keep gentle pace ~ "「あなたが(幻想世界から実相世界へ)移行するとき、時間は、あなたの歩みと歩調を優しく保ってくれるだろう」。時間は幻想ではあるが、それを実相への転移のために利用するなら、時間はあなたに味方して、ゆっくりゆっくりとあなたの実相への移行を促してくれる。実相世界への転移のために時間を有効利用するのは、実はホーリー・スピリットである。ホーリー・スピリットのパワーがあってこその、時間の優しさと言えようか。



The urgency is only in dislodging your mind from its fixed position here.
  • urgency [ə́ː(r)dʒ(ə)nsi] : 「緊急、切迫」
  • dislodge [dislɑ́dʒ] : 「 〜を除去する、押しのける、取り除く、取り外す」
  • fix [fíks] : 「固定する、取り付ける」
  • fixed : 「固定した、定着した」
  • position [pəzí∫n] : 「位置、場所」
❖ "The urgency is only ~ "「緊急を要するのは、あなたの心を、この固定された場所(幻想世界)から取り除こうとする時だけである」。あなたの心はこの幻想世界に縛りつけられているが、そこから心を引き離すときは、のろのろしているわけにはいかず、急を要する。幻想世界に固定された心を、さっさと除去しなくてはならない。そして、心を実相世界に移すのである。その時は、焦らずゆっくりと。



This will not leave you homeless and without a frame of reference.
  • leave [líːv] [SVOC]: 「ある状態のままにしておく、放置する」
  • homeless [hóumlis] : 「家のない、住む家もない、孤児の」
  • frame [fréim] : 「骨組み、支持構造体、フレーム」
  • reference [réf(ə)r(ə)ns] : 「基準、参照、参考、参考文献、参考資料、照会」
  • frame of reference : 「関係枠、基準系、準拠枠、理論構成の枠組み、視点」
❖ "This will not leave you ~ "「このことは、あなたを根無し草にするわけではなく、価値判断の基準体系を失わせることでもない」。幻想のこの世界に執着していた心を引き剥がしてしまうのだが、それによって、あなたが心理的にホームレスになることはなく、また、それまで依拠してきたエゴの価値判断体系は失うとしても、新たにホーリー・スピリットの基準体系を得ることになるので、何の心配もない。



The period of disorientation, which precedes the actual transition, is far shorter than the time it took to fix your mind so firmly on illusions.
  • period [pí(ə)riəd] : 「期間、時期、時間」
  • disorientation : 「見当がつかないこと、方向感覚を失うこと」
  • preced [prisíːd] : 「〜に先行する、先んじる、先立つ、〜の先に立つ、〜の前に来る」
  • actual [ǽkt∫u(ə)l] : 「実在の、現実の」
  • transition [trænzí∫n] : 「移行、遷移、推移、転移、変化、変遷、転位」
  • fix [fíks] : 「直す、修正する、修理する、正常な状態に戻す、回復させる」
  • firmly [fə́ː(r)mli] : 「しっかりと、堅く、堅固に、断固として」
❖ "The period of ~ "「方向感覚を失ってしまう期間は、」"which precedes ~ "「それは、実際の(幻想から実相への)転移に先立つものであるが、」"is far shorter than ~ "「その期間は、幻想世界に頑固に固着していたあなたの心を修正するのに要した時間より、遥かに短い」。いったい自分は何処にいるのか、何処に向かっているのか、一瞬、方向感覚を失ってしまう期間、それは、幻想世界から実相世界へと相転移するときに現れる、いわゆる心のエアポケットのような状態なのだが、その期間は非常に短い。心配には及ばない。



Delay will hurt you now more than before, only because you realize it is delay, and that escape from pain is really possible.
  • delay [diléi] : 「遅延、遅滞、猶予、遅れ、遅延時間」
  • hurt [hə́ː(r)t] : 「〜を傷つける、〜に苦痛を与える、〜に損害を与える」
  • realize [ríːəlàiz] : 「〜に気が付く、悟る、自覚する、実感する」
  • escape [iskéip] : 「逃亡、脱出、避難、逃げ道、逃避、回避」
  • pain [péin] : 「痛み、痛覚、疼痛、苦痛、骨折り、苦労」
  • really [ríː(ə)li] : 「実際には、本当は、確かに、本当に、真に」
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る、なし得る」
❖ "Delay will hurt you ~ "「今や、遅れは、以前よりもあなたを傷つけてしまうだろう」。"only because you ~ "「なぜなら、単に、あなたは遅れていると思ってしまうからであり、痛みからの脱出することは実際に可能であるからだ」。幻想世界に執着した心を一気に引きはがした後は、ゆっくりゆっくり実相世界へと転移していけばいいのだが、心は焦る。遅れをとっているのではないかと思い、その焦る気持ちがあなたの心を傷つける。それは、あなたが、痛みからの脱出は可能であると知っているからなおさら、遅れたくないと思う気持ちがあなたを焦らせるのだ。ところで、"escape from pain"「痛みからの脱出」とは何か? 心の痛み、と捉えるのが無難であろうが、ここではあえて、肉体的な痛みからの解放と解釈したい。肉体が消滅していく期間に、肉体に付随する痛みという感覚も消滅していく。痛みさえ幻想であったことを知るのである。実は、これは磔刑上のイエスににも言えることであり、磔刑の前にすでにイエスは解脱しており、したがって肉体から解放され、痛みからさえも脱出していたと考えるのが正しいであろう。十字架上で痛みに苦しむイエスを想像するのは間違いだ。十字架上のイエスの痛みを、殊更に強調するのはキリスト教徒の常であるが、それには何の意味もないし、事実でもあるまい。イエスはこの世界のレベルを遥かに超えていたのであり、痛みに苦しむイエスを想像することは、まさにレベル・コンフュージョンである。仏教の世界には「心頭滅却すれば火もまた涼し」という有名な言葉があるが、イエスの場合と同様、この言葉を生臭坊主のやせ我慢と捉えるべきではない。肉体が幻想であり、炎も幻想であるなら、熱ささえ幻想であるのだ。もっとも、だからと言って、凡人の我々が炎に肉体を晒して、熱いかどうかで解脱の進捗ぶりを計るなどという愚昧な行動を取るべきではない。これまた、レベル・コンフュージョンである。宗教的極右思想は、例外なく、レベル・コンフュージョン、狂信的な誤りを犯している。肉体が幻想であると宣言するACIMが、自らの肉体を自殺をもって葬り去れ、と述べた箇所が、いったいACIMの何処にあろうか? 



Find hope and comfort, rather than despair, in this: You could not long find even the illusion of love in any special relationship here.
  • find [fáind] : 「見つける、発見する、見いだす、〜と思う、〜と感じる」
  • hope [hóup] : 「希望、見込み、期待」
  • comfort [kʌ́mfə(r)t] : 「快適さ、心地よさ、癒やし、安らぎ、安楽、気楽さ」
  • rather [rǽðə(r)] than : 「〜よりはむしろ、かえって」
  • despair [dispéə(r)] : 「絶望、失望、落胆」
  • special [spé∫] : 「特別な、独特の、特別の、特有の」
  • relationship [riléi∫n∫ìp] : 「関係、結び付き、かかわり合い、関連」
❖ "Find hope and ~ "「次の事実の中に、絶望ではなくむしろ、希望と安らぎを見いだしなさい」。"You could not long find ~ "「この幻想世界の、どんな特別な関係性の中にも、幻想の愛さえ、いつまでも見いだし続けることは不可能なのだ」。この幻想世界に本当の愛は存在し得ないという事実は、決して絶望ではなく、むしろ希望と安らぎである。なぜなら、実相世界へ転移さえすれば、真実の、純粋な愛に満たされ続けるのだから。神はあなたの回帰を待ち焦がれているのだ。



For you are no longer wholly insane, and you would soon recognize the guilt of self-betrayal for what it is.
  • no longer : 「もはや〜でない」
  • wholly [hóu(l)li] : 「完全に、全く、全体として、全体的に」
  • insane [inséin] : 「正気でない、精神障害の、非常識な」
  • recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
  • guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
  • betrayal [bitréiəl] : 「裏切り、密告、背信、内通」
  • self-betrayal : 「自己顕示」
❖ "For you are no ~ "「なぜなら、あなたはもはや完全に、正気を失ってはいないからであり、」"and you would soon ~ "「もうすぐ、あなたは、自分を裏切ることの罪を、あるがままに認識するであろうからだ」。幻想世界の特別な関係性の中で、自分を裏切り続けて、つまり、真実に目覚めることから逃避して、偽りの愛に生き続けることが、実は一番の罪なのだと、あなたは認識するであろう。あなたの意識は、それを把握するだけの正気さを取り戻しているのだから。



9. Nothing you seek to strengthen in the special relationship is really part of you.
  • seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
  • strengthen [stréŋ(k)θn] : 「〜を強くする、強化する、増強する、増加させる、補強する」
  • be part of : 「〜の不可欠な要素である、〜の一部、〜の一環」
❖ "Nothing you seek to ~ "「あなたが特別な関係性の中で強化しようと追求してきたものは、決して、実際にはあなたに必要なものではない」。たとえば、偽りの愛によってパートナーを隷属化するような支配力などは、あなたには必要ないものだ。また、二人の世界に閉じこもって、外部世界とのコミュニケーションを断ち、あたかも独立、自立しているかに見せかけることも必要ない。



And you cannot keep part of the thought system that taught you it was real, and understand the Thought that knows what you are.
  • keep [kíːp] : 「〜を持ち続ける、保持する」
  • thought system : 「思考システム」
  • taught [tɔ́ːt] : 「teach の過去・過去分詞形」
  • real [ríː(ə)l] : 「実在的な、実質的な、現実の、実際の」
❖ "And you cannot keep ~ "「そして、あなたに、それは実際的であると教えた思考システムの一部を保持しながら、本当のあなたを知っている(神の)思いを理解することなど、あなたには出来ないのだ」。この世界で生きて行くための実際的な思考システムであるエゴの思考システムの一部を保持したまま、実相世界へ移行し、神の思い、ホーリー・スピリットの思考システム、等々を理解しようとしても出来るものではない。完全にエゴの思考システムを捨て去らなくてはならない。新しいワインは新しい革袋に入れろ、と言うではないか (マタイによる福音書9:17)。古い革袋を捨てる勇気を持たなくてはならない。



You have allowed the Thought of your reality to enter your mind, and because you invited it, it will abide with you.
  • allow [əláu] : 「〜を許す、許可する、許容する、可能にする」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
  • enter [éntə(r] : 「〜に入る、〜に参加する、〜に立ち入る」
  • invite [inváit] : 「招待する、招く、案内する」
  • abide [əbáid] : 「とどまる、居住する」
  • abide with : 「〜と一緒にいる、〜の下にとどまる」
❖ "You have allowed ~ "「あなたは、あなたの実相に適した思考を、あなたの心に入ってくることを許したのである」。ホーリー・スピリットの思考をあなたは採用することに決めたのである。"and because you ~ "「なぜなら、あなたは実相界に適した思考を招き入れたのであり、その思考はあなたと共にとどまり続けるであろうからだ」。エゴの思考システムを捨て、ホーリー・スピリットの思考システムを採用し、実相世界に入ってからは、神の法に従って生きることになるのである。神の法とは、一言で言うと、愛の法である。もちろん、純粋単一の愛のことだ。



Your love for it will not allow you to betray yourself, and you could not enter into a relationship where it could not go with you, for you would not want to be apart from it.
  • betray [bitréi] : 「裏切る、背く、敵に売る、だます」
  • apart from : 「〜から離れて、〜は別として、〜はさておき」
❖ "Your love for it ~ "「実相界に適した思考に対するあなたの愛は、あなたがあなた自身を裏切ることを許さないであろう」。真実の思考システムは、あなたに自己欺瞞を許さない。虚偽の愛を許さないのだ。"and you could not enter ~ "「実相的思考があなたと共に入って行けないような関係性の中に、あなたは入っていくことは出来ない」。特別な関係性の中に実相的思考は入っていけない。したがって、実相的思考を採用したあなたは、あなた自身、特別な関係性の中に入って行くことは、もはや出来ない。つまり、ホーリー・スピリットの思考システムは、エゴの思考システムに入って行くことは出来ないのある。その内容も異なれば、レベル自体が違うからだ。" for you would not want ~ "「なぜなら、あなたは、実相的思考から離れてはおれないからだ」。ここで、本文を少々脱線するが、なぜ"could not"や"would not"などのように、過去形が使われているかの説明をしておく。お気付きのように、これは仮定法である。しかし、仮定法という文法用語を使用すると、あたかも何か、事実に反したことを仮定しなくては成立しない文章であるかのように誤解してしまいがちだ。実は、事実に反することを仮定するものだけが仮定法ではないのである。近年、仮定法という用語ではなく、叙想法という用語が使われ始めていることは、非常に意味がある。叙想法とは、話者の思い(想念)が込められている文章に使われるのである。したがって、"could not"や"would not"は「〜したいと思っても(想念しても)、出来ない」といったニュアンスが濃厚に込められている。つまり、「仮に、たとえあなたが〜したいと望んだとしても、それは不可能なのだ」といったニュアンスである。こう書くと、やっぱり、仮定法なのだと気付くであろう。英文を読んでいて、唐突に過去形が現れたら、叙想法(仮定法)ではないかと思ってもらいたい。すると、話者の思いが、ニュアンスとしてひしひしと伝わってくる。解釈に、非常に深みが増してくることを請け合おう。
 
 
 

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