●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-4.II.8:1 ~ T-4.II.8:12

8. The ego believes it is completely on its own, which is merely another way of describing how it thinks it originated. 
  • completely [kəmplíːtli] : 「完全に、十分に、全面的に」
  • on its own : 「独りでに、勝手に、そのままで 」
  • merely [míərli] : 「ただ単に、単に」
  • describe [diskráib] : 「〜を表現する、述べる、描写する」
  • originate [ərídʒənèit] : 「源を発する、由来する、起こる」
❖ "The ego believes ~ "「エゴは、自分が完全に自律的に存在していると信じている」。"which is merely ~ "「それは単に、エゴがどのように自分の起源を考えているかを述べる別のやり方である」。エゴは、完全に自分が自律し、一人で存在していると信じている。完全自律存在を信じるなら、では、エゴは誰にも依存することなく生まれ出たことになる。つまり、エゴは無から発生したものであることを暗に示していることになる。



This is such a fearful state that it can only turn to other egos and try to unite with them in a feeble attempt at identification, or attack them in an equally feeble show of strength. 
  • fearful [fíərfəl] : 「恐ろしい、おびえている」
  • state [stéit] : 「状態、状況」
  • turn to: 「〜の方を向く、〜に頼る 」
  • unite [junáit] : 「結合する、一体となる」
  • feeble [fíːbl] : 「体力の弱った、弱々しい、か弱い」
  • attempt [ətémpt] : 「試み、企て」
  • attempt at : 「〜への試み」
  • identification [aidèntifəkéiʃən] : 「同一であること、識別、同定」
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する」
  • equally [íːkwəli] : 「等しく、同様に」
  • strength [stréŋkθ] : 「力、強さ、体力」
❖ "This is such ~ "ここは"such ~ that ~"の構文、「あまにり〜なので、〜である」、「この状態があまりに恐ろしいので、」つまり、自律しているが起源が無であると感じることがあまりに恐ろしいので、"that it can ~ "意訳する、「エゴは他のエゴと一体となることしか出来ないのだが、それは同一性を求める弱々しい試みに過ぎない」。"or attack them ~ "意訳する、「さもなければ、他のエゴを攻撃するのだが、自分の力を、同様に弱々しく見せてしまうこと(結果)になる」。自律的に存在出来ると信じていながら、その起源が無であることに恐れをなし、エゴは恐れに耐えきれなくなって、他者のエゴに寄り添おうとする。同じ穴の狢(むじな)同士、互いの恐れを舐め合って安心感を得ようとするのだ。さもなければ、逆に他者のエゴを攻撃して、自分の存在の力を誇示する。しかし、結果は、自分の力の弱さを示したことになる。なぜなら、本当に力のある者は力のない者を攻撃する必要はないからだ。むやみに友達を求めるのも孤独なエゴ。他者を攻撃して強がって見せるのも孤独なエゴ。無から生じた根無し草のなれの果て、である。



It is not free, however, to open the premise to question, because the premise is its foundation. The ego is the mind's belief that it is completely on its own. 
  • open A to B : 「AをBに公開する、公にする、開放する」
  • premise [prémis] : 「前提、仮定、根拠」
  • foundation [faundéiʃən] : 「土台、基盤、基礎」
❖ "It is not free ~ " ここは"It ~ to do ~"の構文、「しかし、前提を公の問題にさらすことは自由に出来ない」。"because the premise ~ "「なぜなら、前提はエゴの基盤であるからだ」。ここの"premise"「前提」とは、エゴの存在の前提条件のこと。それを公に問い正すことはエゴにとっては不都合のことであって、制限をかけようとする(not free)。なぜなら、問いの答えとして、エゴの起源が無であると分かったらエゴにとっては大変なことだから。そんな事情により、エゴは存在の前提条件を問わない。がむしゃらに自律独立を主張しているだけだ。"The ego is ~ "「エゴとは、心が、完全に自分だけで存在していると信じていることである」。



The ego's ceaseless attempts to gain the spirit's acknowledgment and thus establish its own existence are useless. Spirit in its knowledge is unaware of the ego. 
  • ceaseless [síːslis] : 「絶え間ない、絶え間のない」
  • attempt [ətémpt] : 「試み、企て」
  • gain [géin] : 「得る、獲得する」
  • acknowledgment [əknɑ́lidʒmənt] : 「認めること、承認、認識」
  • establish [istǽbliʃ] : 「確立する、制定する、成立させる」
  • existence [iɡzístəns] : 「存在、生存、実存、実在」
  • useless [júːsləs] : 「使い物にならない、役に立たない」
  • knowledge [nάlidʒ] : 「知識、知恵、知見、事実」
  • unaware [ʌ̀nəwέər] : 「無意識の、気付かない、知らない」
  • be unaware of : 「〜に気付いていない」
❖ "The ego's ceaseless ~ "「スピリットの承認を獲得し、そうして自身の存在を確立しようとするエゴの絶え間ない試みは無駄である」。エゴは実在するスピリットからエゴ自身の実在性を認めてもらいたいのだ。実在するなら、自分は無から生じた幻想ではないことになる。ここのスピリットは、神に置き換えて読んでもいいだろう。"Spirit in its ~ "「叡智に住まうスピリットはエゴなど目に入らない」。神は幻想の一切と関係をもたない。スピリットは幻想を認めることも、幻想と戦うこともしない。叡智をもって真実を広め、幻想を消滅させるのみだ。



It does not attack it; it merely cannot conceive of it at all. While the ego is equally unaware of spirit, it does perceive itself as being rejected by something greater than itself. 
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する 」
  • merely [míərli] : 「ただ単に、単に」
  • conceive [kənsíːv] : 「 思い付く、〜と考える」
  • while : 「〜なのに、〜だが、〜とはいえ」
  • equally [íːkwəli] : 「同じように、同様に」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • reject [ridʒékt] : 「拒絶する、拒否する、拒む」
❖ "It does not ~ "「スピリットはエゴを攻撃しない」。初めの"It"は"spirit"、後の"it"は"ego"。"it merely ~ "「スピリットは、単にエゴをまったく意に介さないだけなのだ」。"While the ego ~ "「一方、エゴも等しくスピリットに気が付かないのだが、」"it does perceive ~ "「エゴは自分自身を、何かエゴ以上に大きいものによって拒絶されているように知覚している」。エゴは無意識のうちにホーリー・スピリットに敵対してる。疎外感はいつもつきまとっている。



This is why self-esteem in ego terms must be delusional. The creations of God do not create myths, although creative effort can be turned to mythology. 
  • self-esteem [istíːm] :「自尊心、うぬぼれ、自負心」
  • term [tə́ːrm] : 「語、言葉、用語」
  • delusional [dɪlúːʒənəl]: 「妄想の」
  • creation [kriéiʃən]: 「創造、創作、創作物、作品」
  • myth [míθ] : 「神話、伝説、俗説」
  • although [ɔːlðóu] : 「とはいえ、しかし」
  • creative [kriéitiv] : 「創造力がある、創造性に富んだ」
  • effort [éfərt] : 「努力、尽力、試み」
  • turn to : 「〜に変わる、変化する」
  • mythology [miθɑ́lədʒi] : 「神話、神話学」
❖ "This is why ~ "「これが、エゴの用語で言うところの自尊心が妄想に違いない理由である」。自分が一番偉いと思っているくせに、自分より大きいものの存在にそれとなく気付いていて、いつも脅かされているような気になっている。中身のない自尊心、つまり、妄想である。"The creations of ~ "「神が創造したものは神話を作ることはない」。神が創造した真実の存在は、妄想的な神話を作ることはない。真実の拡張をするのみである。"although creative ~ "「しかし、創造的な試みが神話に転ずる可能性はある」。創造的な試みが、真実の軌道をちょっとでも外せば、偽りの創造に転じてしまう可能性はある。本来、神の子は、幻想(神話)など創造するような存在ではなかった。しかし、神からの分離という誤った軌道をとってしまったために、この世界を偽創造してしまった。創造力は神話(幻想)を作り得るのである。



It can do so, however, only under one condition; what it makes is then no longer creative. 
  • condition [kəndíʃən] : 「事情、条件、状態、状況」
  • no longer : 「もはや〜でない」
❖ "It can do so ~ "「しかしながら、創造的な試みが神話に転ずるには、ある条件下においてのみである」。"what it makes ~ "「創造的な試みが作り出すものは、もはや創造的だとは言えない」。神の属性である創造性を継承した神の子は、真実を創造することも、そしてある条件下では幻想(神話)を作り出すことも出来る。しかし、幻想(神話)は偽りであるから、本当の意味で創造的だとは言えない。ある条件下とは何か? 次の文章にヒントがある。



Myths are entirely perceptual, and so ambiguous in form and characteristically good-and-evil in nature that the most benevolent of them is not without fearful connotations.
  • entirely [entáiərli] : 「全く、完全に、全体に」
  • perceptual [pərséptʃuəl] : 「 知覚の、知覚による」
  • ambiguous [æmbígjuəs] : 「曖昧な、不明瞭な」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、現れ、姿」
  • in form : 「形式上、形の上では」
  • characteristically [kæ̀rəktərístikəli] : 「特徴として、特徴的に」
  • evil [íːvəl] : 「邪悪な、悪意ある」
  • in nature : 「実際は、本来は、事実上」
  • benevolent [bənévələnt] : 「慈悲深い、情け深い、優しい」
  • fearful [fíərfəl] : 「恐ろしい、怖い」
  • connotation [kὰnətéiʃən] : 「含意、言外の意味、暗示するもの」
❖ "Myths are entirely ~ "「神話は全く知覚的である」。神話は具体的なものを象徴化して語られるものなので、感覚的に分かるものが題材に選ばれる。少なくとも、抽象的概念だけで語られる神話はないだろう。"and so ambiguous ~ "ここは"so ~ that ~"の構文、「形の上ではあまりに曖昧であるし、元来特徴として善悪の物語であるので、最も慈悲深い神話でさえ、恐ろしい裏の意味がないものはない」。神話は想念の世界を語るとき、具象をもって象徴的に語る。具象の世界は二元論の世界であり、対立する二つの概念のせめぎ合いで成り立っている。たとえば、蛇や蜘蛛は嫌われ、花や鳥は好まれるように、物として同等であっても、対立する思いがうごめいて、そこに曖昧さを残す。その曖昧さに乗じて、神話は、蛇は悪の象徴として、鳩は平和の象徴として、というように、善悪の物語を形作るのである。最も慈悲深い話しでさえ、そこに対立概念が入り込んで来て、裏を返せば恐ろしい話しに転ずる可能性があるのだ。
 
 
 



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