7. Most curious of all is the concept of the self which the ego fosters in the special relationship.
- curious [kjú(ə)riəs] : 「好奇心をそそる、好奇心の強い、気にな」
- concept [kɑ́nsept] : 「概念、観念、コンセプト、考え方、構想、考え」
- foster [fɔ́(ː)stə(r)] : 「〜を育てる、育成する、助成する、〜を心に抱く、呼び起こす」
❖ "Most curious of all ~ "「すべての中で最も好奇心をそそるのは、エゴが特別な関係性の中で育てる、自己に関する概念である」。この段落のテーマは"the self"「自己」である。これまでACIMでは「自己」を表面に強く出した記述はなかった。そのため、この段落には解釈しにくい部分が多々ある。そこで、理解しやすいように、「自己」を「愛」に置き換えてみることを勧める。なぜなら、愛は最大の自己表現だからである。自己=愛という図式は、それほど奇異ではなかろうと思う。
This "self" seeks the relationship to make itself complete. - seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
- complete [kəmplíːt] : 「完結した、完成した」
❖ "This "self" seeks ~ "「この『自己』は、自分を完成させるために、関係性を追求する」。さっそく自己を愛に置き換えてみると、愛は愛を完成させるために、特別な関係性を追求する、という意味合いになる。愛が自己表現するために、特別な相手と特別な関係を結ぼうとするわけだ。
Yet when it finds the special relationship in which it thinks it can accomplish this it gives itself away, and tries to "trade" itself for the self of another. - find [fáind] : 「見つける、発見する、見いだす」
- accomplish [əkɑ́mpli∫] : 「成し遂げる、成就する、達成する、完成させる」
- give away : 「裏切る、見捨てる、逃す、逸する、ただで与える」
- try [trái] : 「試す、やってみる、試みる、企てる」
- trade [tréid] : 「〜を交換する、〜を売買する、取引する」
❖ "Yet when it finds ~ "「しかし、この自己は、完成を達成できそうに思える特別な関係性を見つけ出すと、」"it gives itself ~ "「自己を放棄してしまうのである」。"and tries to "trade" itself ~ "「そして、この自己は、自分自身を相手の自己と交換しようとするのだ」。愛がその発露として特別な関係性を求め、その関係性が構築されると、愛は自己を放棄する。つまり、誰かを愛する気持ちをもって関係性を追求するのだが、ひとたび関係性が出来上がってしまうと、自分が愛することよりも相手から愛されていることの方が重要視されてしまうのだ。自分が愛していることはどうでもよくなる。愛されていることが確認されるだけで満足してしまうのだ。自分の愛がどうでもいいと思うこと、すなわち、自己の愛の放棄であり、自己放棄である。
This is not union, for there is no increase and no extension. - union [júːnjən] : 「結合、合併、融合、団結」
- increase [inkríːs] : 「増加、増大、増進、増殖」
- extension [ikstén∫n] : 「拡張、伸長、延長、伸展」
❖ "This is not ~ "「これは結合とは言えない」。"for there is no ~ "「なぜなら、そこには増加も拡張もないからだ」。特別な関係性を構築すれば、二人は愛し合い、愛が分かち合われて拡張増大するかに見えるが、現実は違う。一方は自己の愛を放棄し、他方から愛されることだけを強要する。あたかも愛を奪うことが最大の関心事になってしまい、愛が分かち合われ拡張増大するというような、実相世界における愛の発展はまったく期待できない。
Each partner tries to sacrifice the self he does not want for one he thinks he would prefer. - each [íːt∫] : 「それぞれの、一つ一つの、めいめいの」
- partner [pɑ́ː(r)tnə(r)] : 「相手、配偶者、連れ合い」
- sacrifice [sǽkrəfàis] : 「〜を犠牲にする、〜をささげる、〜をいけにえにする」
- prefer [prifə́ː(r)] : 「〜を好む、むしろ〜の方を好む、〜の方を選ぶ」
❖ "Each partner tries ~ "「パートナーのそれぞれが、より好ましいと思える自己を求めて、自分の欲しない自己を犠牲にしようとするのである」。理想的な絶対の愛を相手に期待し、相手から無条件に愛されたいと望む。しかし、自分はそんな理想的な愛し方など出来るわけもなく、自分の愛は放棄する。放棄しておきながら、相手からは無限の愛を要求するようになるのだ。「自分の欲しない自己を犠牲にしようとする」とは、無条件に愛せない自分、相手に何も要求しない無償の愛を持てない自分、そういった自己を放棄することを意味している。繰り返しになるが、自分にはそれが出来ないのに、相手からはそれを期待するのである。
And he feels guilty for the "sin" of taking, and of giving nothing of value in return. - feel [fíːl] : 「〜を感じる、感知する、〜ではないかと思う」
- guilty [gílti] : 「有罪の、犯罪的な、罪を犯した」
- sin [sín] : 「罪、罪悪、過失、罪業」
- value [vǽljuː] : 「価値、値打ち、真価」
- of value : 「価値のある」
- in return : 「返礼として、お返しに、見返りに」
❖ "And he feels guilty for ~ "「そして、彼は、奪ったことに対する、そして、見返りに価値あるものを与えなかったことに対する『罪』に、罪悪感を感じてしまうのだ」。結局、相手からの愛だけを要求することは、相手からその愛を奪おうとする行為だ。自分は愛を与えるわけではない。その矛盾に無意識は気付いている。そこに罪の意識が生まれるわけだ。
How much value can he place upon a self that he would give away to get a "better" one?- place [pléis] : 「〜を置く、設置する、取り付ける」
- give away : 「裏切る、見捨てる、逃す、逸する、ただで与える」
- better [bétə(r)] : 「より良い、より優れている」
❖ "How much value can ~ "「彼が、より良い自己を得るために見捨てた自己の上に、彼はどれだけの価値を置くことができようか」。自分の愛は放棄しておいて、相手に無条件の愛を求める自己は、それほど価値のある自己なのか。いや、無限の愛に値するような自己であるわけがない。
8. The "better" self the ego seeks is always one that is more special. - better [bétə(r)] : 「より良い、より優れている」
- seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
- always [ɔ́ː(l)weiz] : 「常に、いつも」
- special [spé∫l] : 「特別な、独特の、特別の」
❖ "The "better" self ~ "「エゴが追い求める『より良い』自己は、常に、より特殊性を帯びたものである」。前段落同様、「自己」を考えるとき、最大の自己表現である「愛」について考えていくことにする。そこで、特別な愛の関係性が成立する要件は、特定の誰かに特別な感情を抱くことであって、自分の愛を普遍化するのではなく、特殊化することにある。エゴはそういう愛を追い求めるのであり、目指すは特別化、つまり排他性である。
And whoever seems to possess a special self is "loved" for what can be taken from him. - whoever [hu(ː)évə(r)] : 「〜するのは誰でも」
- possess [pəzés] : 「〜を所有する、保有する、持つ」
❖ "And whoever seems ~ "「そして、特別な自己を持っていそうに見える者は誰でも、」"is "loved" for what ~ "「彼からその特別性を取り上げられる可能性があるから、『愛され』のである」。訳すのに難しい箇所であるが、相手が、特別にあなただけを愛してくれると思うから、あなたはその相手を愛し、特別な愛を独占しようとするわけだ。誰に対しても普遍的に愛するような人は、特定の誰かから愛を奪われそうになることはあるまい。その誰かは、自分だけを愛して欲しいと望むのであるから。
Where both partners see this special self in each other, the ego sees "a union made in Heaven. "- both [bóuθ] : 「両方の、双方の」
- partner [pɑ́ː(r)tnə(r)] : 「パートナー、配偶者、連れ合い」
- each other : 「お互いに」
- union [júːnjən] : 「結合、合併、融合、団結」
❖ "Where both partners ~ "「二人のパートナー同士が、互いの中に、この特別な自己を見るところに、」"the ego sees "a union ~ "「エゴは『天の王国における結合』を見るのである」。あなたは私だけを特別に愛し、私もあなたを特別に愛す、という関係性が築かれたとき、エゴは、それこそが愛の結合であって、世に言う天の王国の結合とはそういうことだと主張するのである。簡単に言えば、相手から愛を奪い、同時に相手があなたから愛を奪うとき、二人の絆が作られたのだと思い込む。それが、エゴの推奨する結合である。
For neither one will recognize that he has asked for hell, and so he will not interfere with the ego's illusion of Heaven, which it offered him to interfere with Heaven. - neither [níːðə(r)] : 「どちらの〜も〜でない」
- recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する、認める、受け入れる」
- ask for : 「〜を求める、〜を要求する、〜を要する」
- interfere [ìntə(r)fíə(r)] : 「邪魔をする、妨げる、遅らせる」
- interfere with : 「〜を妨げる、〜を邪魔する、〜に干渉する」
- offer [ɔ́(ː)fə(r)] : 「差し出す、捧げる、提供する」
❖ "For neither one will recognize ~ "「なぜなら、二人のパートナーは共に、相手に対して地獄を要求しているなどとは思いも寄らないからであり、」互いに愛を奪い合い、いわば、互いに相手を支配、隷属化しようとするわけだから、こんな結合は地獄であるに違いないのだ。しかし、本人達は幻想の愛に溺れ、それに気付きもしない。"and so he will not interfere ~ "「そうであるから、彼は、エゴの言う幻想の天の王国に対して邪魔立てすることはないであろう」。地獄に気付かないのだから、エゴの言う結合こそが、この地上における天国だと信じ込む。エゴの幻想の天の王国に水を差すようなことはしない。"which it offered him ~ "「その、エゴの言う幻想の天の王国は、本当の天の王国の邪魔立てをするために、彼にエゴが差し出したものである」。実相世界である真の天の王国の存在を隠すために、エゴは、幻想の、偽りの天の王国を、特別な関係性の中にある二人に差し出すのだ。二人はそれに騙されて、これこそ真の天国だ、我々こそは幸せであり、その他の者の存在はその意義もないと信じ込む。
Yet if all illusions are of fear, and they can be of nothing else, the illusion of Heaven is nothing more than an "attractive" form of fear, in which the guilt is buried deep and rises in the form of "love. "- fear [fíə(r)] : 「恐れ、恐怖」
- nothing more than : 「〜にすぎない、〜でしかない」
- attractive [ətrǽktiv] : 「引き付ける、興味をそそる、魅力のある」
- form [fɔ́ː(r)m] : 「形、外形、構造、姿、体つき、現れ」
- guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
- bury [béri] : 「埋める、埋葬する、覆い隠す、秘密にする」
- deep [díːp] : 「深く、ふけって」
- rise [ráiz] : 「上がる、立ち上がる、起立する」
❖ "Yet if all illusions ~ "「しかし、あらゆる幻想が恐れから発しているとすれば、」"and they can be ~ "「そして、幻想は恐れ以外から生み出される可能性がないとすれば、」"the illusion of Heaven ~ "「幻想の天の王国とは、恐れが、人を引きつける形に、その形を変えたものに過ぎない」。"in which the guilt ~ "「そして、その中に、罪の意識が深く埋め込まれ、今度は、『愛』という形に姿を変えて浮かび上がって来るのである」。つまり、特別な愛の関係性における『愛』は、罪の意識の化身だ、とうことだ。だからそこ、罪に対する恐れが常に付きまとい、心が解放されることがないままに、幻想の世界をさまよい歩くことになる。愛の遍歴などと意気がっているが、その根底には、恐れと孤独と罪の意識が渦巻いているのである。