●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-13.VII.10:1 ~ T-13.VII.11:6

10. Praise, then, the Father for the perfect sanity of his most holy Son.

  • Praise [préiz] : 「〜をほめる、称賛する、讃える」
  • praise A for B : 「BのことでAを褒める、称賛する」
  • perfect [pə́ː(r)fikt] : 「完ぺきな、完全な」
  • sanity [sǽnəti] : 「正気、健全さ」
  • holy [hóuli] : 「神聖な」
❖ "Praise, then, the Father ~ "「そこで、神の最も神聖な神の子の完全な正気さをもって、父なる神を讃えなさい」。つまり、神が神の子を、完璧に正しい神聖な存在として創造したことを称賛しなさい、ということ。



Your Father knoweth that you have need of nothing. In Heaven this is so, for what could you need in eternity?
  • eth : 「三人称単数現在形の動詞の語尾につける」
  • need [níːd] : 「〜する必要がある、〜を必要とする」
  • eternity [itə́ː(r)nəti] : 「永遠、無限」
❖ "Your Father knoweth ~ "「あなたの父なる神は、あなたが何も必要としていないことを知っている」。"In Heaven ~ "「天の王国にあってはそうなのである」。"for what could you ~ "「なぜなら、永遠の中にいて、あんたは一体何を必要とするだろうか」。実相世界には『必要』という言葉はない。もちろん、『不足』という言葉もない。



In your world you do need things. It is a world of scarcity in which you find yourself because you are lacking.
  • scarcity [skéə(r)səti] : 「不足、欠乏」
  • lacking [lǽkiŋ] : 「不足して、欠けている、欠ける」
❖ "In your world ~ "「あなたの世界では、あなたは物を必要とする」。"It is a world of scarcity ~ "「その世界は、あなた自身を見出す欠乏の世界である」。あなたは欠乏の世界に住んでいると自分でも気がつく、ということ。"because you are ~ "「なぜなら、あなたは欠乏しているからだ」。あなた自身が物質的にも精神的にも、完全からほど遠い欠乏状態であるので、この世界も同時に欠乏の世界となる。なぜそうなのか? この幻想世界は分離の象徴である。神からの分離を投射して幻覚した世界である。分離とは一なるものを二つに引き裂く行為であり、そこに二元論世界が出現するのは必然であった。したがって、たとえば実相世界の充溢は引き裂かれ、満足と不足に分裂する。愛も、愛と憎悪に分裂する。一元論は崩壊し、対立概念、対極概念が生じるのである。



Yet can you find yourself in such a world? Without the Holy Spirit the answer would be no.
  • answer [ǽnsə(r)] : 「答え、回答、返事、応答」
❖ "Yet can you find ~ "「しかし、そんな世界にあって、あなたはあなた自身を見つけることが出来るだろうか」。"Without the Holy Spirit the answer ~ "「ホーリー・スピリットがいなかったら、答えはノーであろう」。



Yet because of him the answer is a joyous yes! As Mediator between the two worlds, he knows what you have need of and what will not hurt you.
  • joyous [dʒɔ́iəs] : 「うれしい、喜びに満ちた、楽しい、楽しげな」
  • Mediator [míːdièitər] : 「仲介者、媒介者、まとめ役、橋渡し役」
  • between [bitwíːn] : 「〜の間に」
  • have need of : 「〜を必要とする、〜が入り用である」
  • hurt [hə́ː(r)t] : 「〜を傷つける」
❖ "Yet because of him ~ "「しかし、ホーリー・スピリット故に、答えは喜ばしいイエスである」。"As Mediator between ~ "「二つの世界の間の媒介者として、ホーリー・スピリットはあなたが必要なものも知っているし、何があなたを傷つけないかも知っているのである」。ホーリー・スピリットが幻想世界と実相世界の間を取り持つ媒介者であることは重要である。ACIMを正しく理解する上での重要概念である。



Ownership is a dangerous concept if it is left to you. The ego wants to have things for salvation, for possession is its law.
  • Ownership [óunə(r)∫ìp] : 「所有権、所有」
  • dangerous [déin(d)ʒ(ə)rəs] : 「危険な、物騒な」
  • concept [kɑ́nsept] : 「概念、観念、コンセプト、考え方」
  • left [léft] : 「leave の過去・過去分詞形」
  • leave [líːv] : 「〜を残す、〜を任せる、頼む、委ねる」
  • salvation [sælvéi∫n] : 「救出、救済、救い、救世」
  • possession [pəzé∫n] : 「所有、所持、占有、所有権」
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
❖ "Ownership is a dangerous ~ "「所有という考えは、もし、それがあなたに委ねられたなら、危険な概念である」。"The ego wants to have ~ "「エゴは救いのために、物を所有することを望んでいる」。"for possession is ~ "「なぜなら、所有はエゴの法であるからだ」。あなたがエゴに毒されている限り、所有という概念は危険なものである。エゴは得るためには(所有するためにには)奪え、と教えるからである。対して、ホーリー・スピリットは、得たいと思うならまず与えよ、と教える。もっとも、物品を対象に言っているのではない。たとえば、あなたが赦されたいと願うなら、まず他者を赦しなさい、ということである。



Possession for its own sake is the ego's fundamental creed, a basic cornerstone in the churches it builds to itself.
  • sake [séik] : 「ため、目的、利益、理由」
  • for its own sake : 「それ自体は」
  • fundamental [fʌ̀ndəméntl] : 「基本となる、基本の、基礎の、基本的な」
  • creed [kríːd] : 「信念、モットー、信条、教義、宗教」
  • basic [béisik] : 「基礎の、基本的な」
  • cornerstone : 「土台、礎石、要石」
  • church [t∫ə́ː(r)t∫] : 「教会」
  • build [bíld] : 「建てる、建造する、構築する」
❖ "Possession for its own sake ~ "「所有という概念はそれ自体、エゴの基礎的な信条である」。"a basic cornerstone ~ "「それは、エゴが自らのために建てた教会の基盤となる礎石である」。なぜ、所有がエゴにとって大切かというと、所有を通して神の子同士の分離を確保したいからである。持てる者と持たざる者の差別化、そして両者間の奪い合いを通じて、分離と断絶を深めたいのである。得るために奪え、奪われないために攻撃せよ、とエゴは教える。それがエゴの法である。



And at its altar it demands you lay all of the things it bids you get, leaving you no joy in them.
  • altar [ɔ́ːltə(r)] : 「祭壇、聖餐台」
  • demand [dimǽnd] : 「求める、要求する」
  • lay [léi] : 「〜を横たえる、〜を置く」
  • bid [bíd] : 「命じる、命令する、指示する」
  • leave [líːv] : 「〜を残す、置きっぱなしにする」
  • leave A B : 「AにBを取っておく」
❖ "And at its altar ~ "「エゴは、あなたに手に入れるように命じたものすべてをエゴの祭壇に置くようにと要求する」。"leaving you no ~ "分詞構文、結果、「その結果、あなたを、手に入れたものに喜びを見出せない状態にする」。あなたは物を手に入れても手に入れても、エゴにすべて取り上げられるので、物欲が満たされることはない。常に欠乏状態にさらされるのである。尽きることのない渇望状態にあなたは陥る。この幻想世界でエゴの法に従う限りは、この状態を打開することは出来ない。



11. Everything the ego tells you that you need will hurt you.
  • hurt [hə́ː(r)t] : 「〜を傷つける、〜に苦痛を与える」
❖ "Everything the ego ~ "ここは"Everything that you need"「あなたが必要とするものすべて」に"the ego tells you"「エゴがあなたに言う」が挿入されたもので、「エゴが、あなたに必要だと言うすべてのものは、」"will hurt you"「あなたを傷つけるだろう」。エゴの教えは略奪と攻撃であるから、あなたが傷つくか、他者が傷つくかである。ところが、自他一如であるから、他者が傷つくことは結局あなた自身が傷つくことにつながってしまうのだ。



For although the ego urges you again and again to get, it leaves you nothing, for what you get it will demand of you.
  • although [ɔː(l)ðóu] : 「〜だけれども、〜ではあるが」
  • urge [ə́ː(r)dʒ] : 「促す、要請する、強いる、せき立てる」
  • again and again : 「何度も繰り返して、再三再四」
  • leave A B : 「AにBを取っておく」
  • demand [dimǽnd] : 「求める、要求する」
  • demand A of B : 「BからAを求める、要求する」
❖ "For although the ego urges ~ "「なぜなら、エゴがあなたに何度も繰り返して得るようにせき立てるものの、」"it leaves you ~ "「エゴはあなたに何も残さないからである」。"for what you get it ~ "「なぜなら、エゴはあなたにエゴが得たいものを要求するだろうからだ」。エゴはあなたに、おまえは金が必要だ、名誉が必要だ、社会的地位が必要だと繰り返しせき立てて、それをあなたに得させようとする。しかし、あなたがそれを得ても、あなたは満たされることはなく、空虚感が残るだけだ。なぜなら、金や名誉や社会的地位は、あなたが必要なのではなく、エゴが欲しているものだからである。あなたはエゴの欲望に踊らされているのである。



And even from the very hands that grasped it, it will be wrenched and hurled into the dust.
  • very [véri] : 「まさに、まさしく」
  • grasp [grǽsp] : 「〜を握る、つかむ」
  • wrench [rén(t)∫] : 「ねじる、よじる」
  • hurl [hə́ː(r)l] : 「〜を強く投げつける」
  • dust [dʌ́st] : 「ほこり、ちり、煤塵、粉塵、塵埃」
❖ "And even from the very ~ "「そして、つかんだ、まさにその手から、ねじり取られ、塵の中に放り投げられる」。金も名誉も地位も、つかんだその手からもぎ取られ、空虚というごみ捨て場に放り投げられる。事はそれで終わるわけはなく、エゴは再び金や名誉や地位を要求する。こうして、あなたは一生涯、エゴの奴隷として空虚な仕事を強いられるのだ。カミュの描いたシジフォスの神話を思い出すといいだろう。



For where the ego sees salvation it sees separation, and so you lose whatever you have gotten in its name.
  • salvation [sælvéi∫n] : 「救出、救済、救い、救世」
  • separation [sèpəréi∫n] : 「分離、区別、別居、別離」
  • lose [lúːz] : 「〜を失う、見失う、喪失する、なくす」
  • whatever [(h)wʌtévə(r)] : 「〜するのは何でも」
  • gotten [gɑ́tn] : 「get の過去分詞形」
  • in one's name : 「独立して、自分の名前で、〜の名において」
❖ "For where the ego ~ "ここの"it"は前文の「あなたがつかんだもの」であるが、その主体であるあなた自身と考えてもいいだろう、そこで、「なぜなら、エゴが救いと見る場所に、あなたは分離を見ることになるからだ」。エゴはあなたが救われるには金や名誉や地位が必要だと説くが、それを得ることで同胞との絆が深まるわけがなく、むしろ同胞と断絶し、分離は加速化される。"and so you lose whatever ~ "「そして、あなたがエゴの名において得たすべてのものを失うのである」。"in its name"「エゴの名において」とは「エゴの命令に従って」といった意味合い。



Therefore ask not of yourself what you need, for you do not know, and your advice to yourself will hurt you.
  • Therefore [ðéə(r)fɔ̀ː(r)] : 「それ故に、そのために、従って」
  • advice [ədváis] : 「アドバイス、忠告、助言、勧告」
❖ "Therefore ask not of ~ "「したがって、あなたは何を必要としているか、自分自身に訊いてはいけない」。"or you do not ~ "「なぜなら、あなたは知らないのであるし、あなた自身に向けられた助言はあなたを傷つけるであろうからだ」。結局、あれも必要、これも必要と思うときは、あなたの影でエゴが糸を引いていると思っていい。実相世界には『必要』という概念がない。すべてが与えられているからだ。したがって、あなたが必要性を感じたときは、それは幻想の世界の錯覚であり、エゴの唆(そそのか)しである。そして、あなたが自分で自分にこれが必要ではないかとアドバイスを送っているときは、それはあなた自身ではなく、影で糸を引くエゴの囁きである。したがって、結局、それはあなたを傷つける結果になってしまうのだ。



For what you think you need will merely serve to tighten up your world against the light, and render you unwilling to question the value that this world can really hold for you.
  • merely [míə(r)li] : 「ただ単に、単に」
  • serve [sə́ː(r)v] : 「〜に仕える、〜に役立つ」
  • serve to do : 「〜する働きをする」
  • tighten [táitn] : 「〜を堅く締める、しっかり締める、締め付ける」
  • tighten up : 「締め付ける、厳しくする」
  • render [réndə(r)] : 「〜の状態にする」
  • render A B [SVOC] : 「AをBの状態にする」
  • unwilling [ʌnwíliŋ] : 「気が進まない、不本意の、嫌がる、嫌々ながらの」
  • unwilling to : 「〜することに気が進まない、〜することを嫌がる」
  • question [kwést∫n] : 「〜を疑問に思う、〜を疑問視する、〜に疑問を呈する」
  • value [vǽljuː] : 「価値、値打ち、真価」
  • hold [hóuld] : 「維持する、保持する、持続する」
❖ "For what you think you ~ "ここは"what you need"「あなたが必要とするもの」に"you think"「あなたが思う」が挿入されて、「なぜなら、あなたが必要と思うものは、単に光に対してあなたの世界を引き締めにかかるという役に立つものだけであろうからだ」。あなたの心の中に実相世界の光が入り込まないように、物欲や名誉欲などにあなたの関心を引き寄せるのである。"and render you unwilling ~ "「そして、それは、あなたに、この世界が現実にあなたのために保持してる価値に疑問を抱かせることを不本意と思うようにさせるのである」。あなたが物欲、名誉欲等々に疑問を感じることがないように、エゴはあなたに次々と必要の嵐をぶつけてくる。こうして、あなたは煩悩に翻弄され、無明の中で一生を終えるのである。しかし、このACIMは、その煩悩を断ち切り、光の世界に回帰する方法を教えているのである。その意味では、仏教はACIMに非常に近いと言える。さらに、仏教が煩悩と無明を断ち切り、解脱し涅槃に入ることを教えていながら、しかし、残念なことに、その先を曖昧にしているのに対して、ACIMは一切妥協しない。その先の純粋一元論(神への究極的収斂)を展開しているのである。そのことを考えれば、ACIMは宗教的にも思想的にも、仏教を超えているように思えるのは、はたして私だけか?
 
 
 

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