Text - Chapter 1
The Meaning of Miracles
奇跡の意味
I. Principles of Miracles
奇跡の原理
1. There is no order of difficulty in miracles. One is not "harder" or "bigger" than another. They are all the same. All expressions of love are maximal.
- order [ɔ́ːrdər] : 「順序、順番、順位、序列」
- difficulty [dífikʌ̀lti] : 「困難、難事、難儀」
- hard [hάːrd] : 「難しい、困難な」
- big [bíg] : 「大きい、重要な、大事な」
- another [ənʌ́ðər] : 「もう一つの、別の、ほかの」
- same [séim] : 「同じ、同一の、変わらない」
- expression [ikspréʃən] : 「表現、表出」
- maximal [mǽksəml] : 「最大(限)の、極大の、最高の」
❖ "There is no ~ "「奇跡には難易度の序列などない」。ACIMが言う奇跡(miracle)は、私たちが普通に考える奇跡とはかなり異なる。おいおい、その全貌は明らかになるが、差し当たり、ACIMの教える奇跡はマジックでも魔術でもない、と知っておけばいいだろう。"One is not ~ "「ある奇跡が他の奇跡より『難しい』とか『大きい』とかいうことはない」。"They are all ~ "「奇跡はすべて同じである」。"All expressions of ~ "「愛の表現こそが、(奇跡の)最大である」。奇跡に序列はないと言っておきながら、愛の奇跡が最大だと言っていることは矛盾ではないかと思われるだろう。そうではなく、奇跡とはすべて愛(真実)の表現であって、すべてが最大の奇跡なのだ、ということ。すべてが最大だから、序列がないのである。くどくなるが、数学的に考えればよくわかる。集合{3,3,3,3}を考えよう。3が4つある集合であり、最大値は3であるが、4つの3に大小の序列はない。ところで、ACIMの言う『愛』も、奇跡同様、私たちが普通に考える愛とはかなり異なる。その全貌も、おいおい明らかになる。
2. Miracles as such do not matter. The only thing that matters is their source, which is far beyond evaluation.
- as such : 「そのこと自体は」
- matter [mǽtər] : 「重要である、問題である」
- source [sɔ́ːrs] : 「源、原因」
- far beyond [bijάnd] : 「〜をはるかに超えて」
- evaluation [ivæ̀ljuéiʃən] : 「評価、評定」
❖ "Miracles as such ~ "「奇跡自体は重要ではない」。奇跡は、奇跡を目にして「おお、すごい」と思うようなものではない。奇跡はある目的のための手段であって、その目的自体が重要なのだ。そして、その目的の先にある絶対的な真実の源が重要なのである。"The only thing that ~ " ここのthat は関係代名詞、「唯一の重要なことは、奇跡の源である」。ここの"source"「源」はACIMのキーワードの一つ。実相として実在する真実、あるいは真実の総体のことであり、究極的には『神』そのものを意味する。創造の源泉(ソース)である。"which is far ~ "ここの", which"は関係代名詞、非限定用法、「そして、その源は評価をはるかに超越している」。神は唯一なる者(The One)であるから、比較対照できない、つまり、評価を超越している。創造の源である神の住む実相世界は一元論の世界であり、比較を許す対象など存在しないのだ。真実が現実化する奇跡もまた、神の創造であって、比較対照出来るものではない。したがって、奇跡に序列はないのだ。
3. Miracles occur naturally as expressions of love. The real miracle is the love that inspires them.
- occur : 「起こる、発生する、生じる、現れる、存在する 」
- naturally : 「自然に、必然的に、生まれながら」
- expression [ikspréʃən] : 「表現、表出」
- real [ríəl] : 「実在する、現実の、実際の、本物の」
- inspire [inspáiə(r)] : 「活気を与える、元気づける、 呼び起こす、引き起こす」
❖ "Miracles occur ~ "「奇跡は、愛の表現として、自然に起こる」。奇跡は真実の表出である。愛が、神の住む実相世界の純粋で神聖な愛ならば、その真実の愛は、極く自然に奇跡を表現する。愛は奇跡を生むのだ。"The real miracle ~ "ここの"that"は関係代名詞、先行詞は"love"、「実相的な(真の)奇跡は、奇跡を呼び起こす愛である」。"real"は重要な用語で、我々が日常に使う『リアルだ』という意味合いではない。「実在する、実相的な、真実の」という意味である。幻想に対して、その反対を表す。奇跡を生み出す愛こそが実在する実相の奇跡である。混乱して来ただろうか? つまり、実相においては、真実の愛と真実の奇跡は同一なのだ。愛と奇跡を分離することは出来ないのである。
In this sense everything that comes from love is a miracle.
- in this sense [séns] : 「この意味において」
❖ "In this sense ~ "「この意味で、愛から生じるあらゆるものは奇跡である」。もちろん、ここの"that"は関係代名詞。愛と言っても、地上的な愛ではない。この世界における愛は、憎悪をその対極概念としてもっている、二元論的な愛であるが、ここの愛は、憎悪という対極概念をもたない純粋で神聖な一元論的な愛のこと。実相的な愛である。実相的な愛から生み出されるものはすべて、つまり、真の愛が創造するものはすべて、奇跡である。
4. All miracles mean life, and God is the giver of life. His voice will direct you very specifically. You will be told all you need to know.
- mean [míːn] : 「〜を意味する」
- life [láif] : 「命」
- giver [ɡívər] : 「与える人、贈与者、寄贈者」
- voice [vɔ́is] : 「声」
- direct [dirékt] : 「〜を導く、〜を指導する」
- specifically [spəsífikəli] : 「特に、明確に、はっきりと、具体的に」
- old [tóuld] : 「tellの過去・過去分詞形」
- tell [tél] : 「〜に話す、言う、告げる、教える」
- need [níːd] : 「〜する必要がある、〜を必要とする」
- know [nóu] : 「知る、知っている、承知している」
❖ "All miracles mean ~ "「すべての奇跡は命を意味し、神が命の与い手である」。"life"「命」も、ACIM の重要な言葉である。これもまた、この世界の『命』とはな異る。この世界の、変化流動する形ある命のことではない。実相世界の、形をもたない永遠不変な命のことである。それは神の息吹であって、神は存在に愛と命を吹き込む。したがって、命と愛は、実相世界では同一である。同一であることは一元論世界の必然であり、命や愛という真実は、究極、神という一点に収斂(しゅれん)する。"His voice will ~ "「神の声は、とても明確に、あなたを導いてくれるだろう」。"His voice"「神の声」とあるが、実際は神の使者であるホーリー・スピリットの声と考えるべきだ。あなたの心の中の最も純粋で神聖な部分にホーリー・スピリットは住んでいる。そこに神の祭壇があって、そこが実相世界に住む神とのチャンネルになっている。ホーリー・スピリットは神の指令を受け、あなたを正しい実相(真実)の方向へと導いてくれる。ACIMを学ぶことで、あなたはホーリー・スピリットの声を聞くことが出来るようになる。したがって、ホーリー・スピリットの声は、神の声と考えてもいい。"You will be ~ "「あなたは、あなたが知る必要のあることのすべてを告げられるだろう」。ホーリー・スピリットは、あなたが知るべき真実のすべてを教えてくれる。ホーリー・スピリットは、あなたが幻想から実相へと目覚めるための手助けをしてくれるのだ。なお、"all you need to know" は"all that you need to know" のthat が目的格なので省略された形。"will be told"は、受動態の未来形。
5. Miracles are habits, and should be involuntary. They should not be under conscious control. Consciously selected miracles can be misguided.
- habit [hǽbit] : 「(個人的な)習慣、傾向、癖」
- involuntary [invάləntèri] : 「無意識の、何げなしの」
- under [ʌ́ndər] : 「下に、下の方に、もとで、支配下にあって」
- conscious [kάnʃəs] : 「意識」
- control [kəntróul] : 「支配、コントロール、統制」
- consciously [kάnʃəs] : 「意識して、自覚して」
- select [səlékt] : 「 〜を選ぶ、選び出す」
- misguide [misɡáid] : 「〜を誤った方向へ導く」
❖ "Miracles are habits ~ "「奇跡は習慣的なものであって、無意識のうちになされるべきものである」。奇跡は気負ってなされるのではなく、日常何気なく、まるで習慣のようになされるべきだ。なお、"should"は助動詞で、ここでは義務「〜すべきである、〜べきだ、〜しなくてはならない」。"They should not ~ "「奇跡は、意識のコントロール下に置かれるべきではない」。前の文章の言い直しである。我々の意識の多くは理性に支配されており、それはエゴの支配下にある。実相の奇跡は、幻想のエゴにとって無縁のものである。真実の奇跡を、虚偽の幻想の下に置くべきではないのだ。奇跡は、エゴの道具ではない。逆に、奇跡を潰(つぶ)しにかかるのがエゴである。"Consciously selected ~ "「意識的に選択された奇跡は、誤った方向に導かれる可能性がある」。エゴの支配下にある意識によって奇跡を選んだのでは、誤った方向に進みかねない。
ここの"selected"は過去分詞で、受け身の意味「選択された」になる。過去分詞は、現在分詞同様、形容詞として扱える。"misguided"も過去分詞で、形容詞と同等であり、したがって、"be misguided"となるのだ。また、現在分詞では、たとえば、"running dog"は「走っている犬」となる。
6. Miracles are natural. When they do not occur something has gone wrong.
- natural [nǽtʃərəl] : 「自然の(ままの)、自然(的)な」
- occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる」
- gone [ɡɔ́ːn] : 「goの過去分詞形」
- wrong [rɔ́ːŋ] : 「間違った、誤っている」
- go wrong : 「誤った方向に向かう、調子が狂ってしまう」
❖ "Miracles are ~ "「奇跡は自然なものである」。奇跡は自然に起きるものだ。"When they do not ~ "「奇跡が起きないなら、何かが間違った方向に進んでしまったのだ」。"natural"「自然な」とは、ここでは"real"「実在的な、現実の」と同様な意味合いで、本文は、「奇跡は実相的なものである」という意味が込められている。したがって、奇跡が起きないという状態は実相的な現実からかけ離れた状態であって、何かが間違っているのだ。つまり、幻想が生じている。
"has gone wrong"は「have + 過去分詞」、現在完了形で、ここでは完了の意味。たとえば、"I have finished the book."は「私はその本を読み終えてしまった」となる。
7. Miracles are everyone's right, but purification is necessary first.
- right [ráit] : 「権利」
- purification [pjùərəfikéiʃən] : 「浄化」
- necessary [nésəsèri] : 「必要な、必須の、欠くことのできない」
- first [fə́ːrst] : 「一番目に、最初に、まず第一に」
❖ "Miracles are ~ "「奇跡は万人の権利である」。奇跡は誰にでも起きるし、起こせる。特殊な人達の特権ではない。"but purification ~ "「しかし、(そのためには)、まず最初に、浄化が必要である」。心の浄化である。あなたの心の大半は、幻想の偶像であるエゴに支配されており、いわば幻想に汚染されている。その幻想という黒雲を、まず最初に払拭しなくてはならない。それが"purification"「浄化」である。「悪い霊の浄化」という意味合いはない。幻想という夢から目覚めることが浄化である。
8. Miracles are healing because they supply a lack; they are performed by those who temporarily have more for those who temporarily have less.
- healing [híːliŋ] : 「ヒーリング、癒し、治療」
- supply [səplái] : 「補強する、提供する」
- lack [lǽk] : 「 不足、欠乏、欠如、欠落」
- perform [pərfɔ́ːrm] : 「〜を行う、実行する、遂行する、果たす」
- by those who ~ : 「〜の人によって」
- temporarily [tèmpərérəli] : 「一時的に、仮に、当面は 」
- less [lés] : 「より少なく」
❖ "Miracles are healing ~ "「奇跡は、欠落を埋めるものだから、ヒーリングである」。"healing"「ヒーリング」は、ACIMの重要なキーワードの一つである。普段、我々が使うヒーリングとはかなり意味合いが異なる。幻想を幻想と認識させ、実相(真実)に目覚めさせる奇跡をヒーリングという。したがって、真実の欠落を埋める(supply a lack)ことがヒーリングであって、真実の現実化だから、奇跡なのだ。"they are performed ~ "「奇跡は、一時的により多くをもっている者が、一時的に少ししかもっていない者のためになされるものである」。真実をより多く知っている者が、真実に乏しい者に対して真実を知らしめること、それがヒーリングである。"temporarily"「一時的に」とあるが、より多いとかより少ないなどということは一時的なことなのだ。実は、実相世界では、与えることと得ることは同一である。ヒーリングすることは、ヒーリングされることと等しい。真実を分かち合えば、真実は拡張増大していくのである。多い少ないなどという状態は一時的なものである。そもそも、実相世界には、多い少ないという概念はない。
9. Miracles are a kind of exchange. Like all expressions of love, which are always miraculous in the true sense, the exchange reverses the physical laws.
- a kind of : 「〜のようなもの、一種の〜」
- exchange [ikstʃéindʒ] : 「換えること、交換」
- expression [ikspréʃən] : 「 表現(法)、表現すること」
- always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、日夜、以前からずっと、常にいつでも」
- miraculous [mərǽkjələs] : 「奇跡的な、超自然的な、驚くべき」
- in the true sense : 「言葉の真の意味において、真の意味で」
- reverse [rivə́ːrs] : 「逆転させる、裏返す」
- the physical laws : 「物理法則」
❖ "Miracles are a kind ~ "「奇跡は、交換のようなものである」。奇跡であるヒーリングを例にとれば、ヒーリングすることとヒーリングされることは同一なので、いわば、ヒーリングを交換し合っているようなものである。"Like all expressions ~ "「愛の表現のように、」", which are always ~ "ここは挿入部分、「愛は、真の意味で、常に奇跡なのだが、」"the exchange reverses ~ "「交換は、物理法則を覆(くつが)してしまう」。愛し愛されることで、どちらかの愛が減り、どちらかの愛が増えるというものではない。実相世界の交換(exchange)、つまり分かち合い(sharing)は、与えることと得ることは同一であって、共に拡張増加するだけである。エネルギー保存則に代表されるような物理法則を破っているのだ。エネルギーは与えれば減り、得れば増える。これが物理法則である。
They bring more love both to the giver and the receiver.
- bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜をもたらす」
- both [bóuθ] A and B : 「AもBも、ABいずれも」
- giver [ɡívər] : 「与える人、贈与者、寄贈者」
- receiver [risíːvər] : 「受取人、受信者」
❖ "They bring more ~ "「愛を交換することで、愛を与える者にも、愛を受け取る者にも、より多くの愛がもたらされる」。注意しなくてはいけないのは、ここで語られる"love"「愛」は、この世界における地上的な愛ではない。この幻想世界は二元論世界であって、あらゆる概念が対極概念をもって分裂している。愛さえも、その対極概念として憎悪をもつ。可愛さ余って、憎さ百倍となるのだ。しかし、実相世界は一元論世界であって、真実は対極概念をもたない。真実の愛は憎悪という対極概念を持たず、純粋で神聖な愛である。パートナーを愛で支配しようなどと思ったら、その愛は地上的な虚偽の愛である。パートナーから愛を奪い取りたいなどと思ったら、それは幻想の愛である。ACIMで語られる愛は、そんな幻想(虚偽)の愛とは無縁である。
10. The use of miracles as spectacles to induce belief is a misunderstanding of their purpose.
- use [júːs] : 「使うこと、利用、使用」
- spectacle [spéktəkl] : 「見世物、光景」
- induce [indjúːs] : 「 〜を生じさせる、引き起こす、誘発する 」
- belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条」
- misunderstanding [misʌ̀ndərstǽndiŋ] : 「 誤解、解釈違い」
- purpose [pə́ːrpəs] : 「 目的、意図」
❖ "The use of miracles ~ "「人の信仰心を引き出すために奇跡を見せ物として使うことは、奇跡の目的をはき違えている」。ACIMの奇跡は、マジックでも魔術でもない。人の信仰心を煽るためのものではいのだ。奇跡とは真実の現実化である。人の耳目を魔術でたぶらかして信仰を強制するような新興宗教は、ことごとく似非宗教である。奇跡と魔術を履き違えてはいけない。
ここの"to induce belief "は不定詞の副詞的用法、「〜するために」。たとえば、"He used a large amount of money to help me."は、「彼は、私を助けるために多額のお金を使った」となる。