II. The Law of the Kingdom
王国の法
1. To heal is the only kind of thinking in this world that resembles the Thought of God, and because of the elements they share, can transfer easily to it.
- kind of : 「〜のような人、〜のようなもの」
- thinking : 「考えること、考え、意見、思考」
- resemble [rizémbl] : 「〜のようである、〜と似ている」
- element [éləmənt] : 「成分、要素」
- transfer [trænsfə́ːr] : 「移動する、移る」
- easily [íːzəli] : 「容易に、たやすく」
❖ "To heal is the ~ "「ヒーリングするとは、この世界におけるthat以下のような、唯一の思いのようなものである」。"that resembles the ~ "「神の思いに似ており、その要素を分かち合うので、容易にヒーリングへと移行する」ような、唯一の思いのようなものである。神の思いに似ており、分かち合われる要素があり、ヒーリングに移行できる、そんなこの世の思いとは何か? 他者への思いやり、信頼、詰まるところ、愛と考えていい。親がその子の安全や平和を祈る愛に似たものであろう。親は子に愛を注ぎ、子は親に信頼を返す。そのような愛に満ちた思いを分かち合うことで、子の病はヒーリングされ、親は深く安堵し、親と子の愛の絆(きずな)は拡張していく。あたかも神と神の子の関係に似ているというわけだ。
When a brother perceives himself as sick, he is perceiving himself as not whole, and therefore in need.
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く」
- sick [sík] : 「病気で、病気の」
- whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の」
- in need : 「困窮している、困っている」
❖ "When a brother ~ "「同胞が、彼自身を病気だと知覚したとき、」"he is perceiving ~ "「彼は自分を完全ではないと知覚していることであり、」"and therefore in ~ "「したがって、助けが必要だと感じている」。それを目撃したあなたはどうするか?
If you, too, see him this way, you are seeing him as if he were absent from the Kingdom or separated from it, thus making the Kingdom itself obscure to both of you.
- this way : 「このように」
- as if : 「あたかも〜かのように」
- be absent from : 「〜に不在である」
- separate [sépərèit] : 「分ける、分離する、引き離す」
- obscure [əbskjúər] : 「不明瞭な、曖昧な」
❖ "If you, too ~ "「もし、あなたもまた、彼をこのように見るならば、」つまり、彼が病気で不完全で助けを求めていると見るならば、"you are seeing ~ "「あたかも、あなたは、彼が王国に不在であり、つまり、王国から分離していると見ていることになる」。ここで、"he were"となっているのは仮定法だから。つまり、現在の事実と反することを述べている。"thus making the Kingdom ~ "分詞構文、単純接続、「こうして、王国自体を、あなたと彼の両方にとって、曖昧なものにしてしまう」。肉体に関係する病は、心が抱く幻想である。他者が病に侵され、あなたが他者の病を実在するものと見るとき、他者もあなたも幻想に取り憑かれた状態にある。実在する真実が見えてこない。つまり、神の子は実相的に病に侵されることはないという真実(天の王国)が曖昧化されてしまうのだ。
Sickness and separation are not of God, but the Kingdom is. If you obscure the Kingdom, you are perceiving what is not of God.
- sickness[síknəs] : 「病気」
- separation [sèpəréiʃən] : 「分離、区別、別離」
- obscure [əbskjúər] : 「〜を曖昧にする、分かりにくくする」
❖ "Sickness and separation ~ "「病気も分離も神のものではないが、」幻想は神のものではないが、"but the Kingdom is"「王国は神のものである」。真実は神のものである。"If you obscure ~ "「もし、あなたが王国を曖昧なものにしてしまえば、」あなたが真実を曖昧にしてしまえば、"you are perceiving ~ "「神のものではないものを知覚していることになる」。真実ではない非実在の幻想を知覚してしまう。王国をしっかり見定めることを疎(おろそ)かにしてしまうと、神の創造したものではないもの、たとえば病気や分離が知覚されてしまう。病気も分離も幻想である。幻想に心奪われてしまえば、神の真の世界が曖昧になってしまう。
2. To heal, then, is to correct perception in your brother and yourself by sharing the Holy Spirit with him.
- correct [kərékt] : 「〜を訂正する、修正する、正す」
- perception [pərsépʃən] : 「知覚、 知見、感じ方」
❖ "To heal, then ~ "不定詞の名詞的用法、「ヒーリングするとは、あなたの同胞およびあなた自身の知覚を修正することである」。"by sharing the Holy Spirit ~ "「ホーリー・スピリットを同胞と分かち合うことで」知覚を修正することである。幻想に惑わされることなく、真に存在する真実を知覚することがヒーリングにつながる。それは独力で行わなくていい。ホーリー・スピリットがその修正作業を手伝ってくれるからだ。あなたと同胞がホーリー・スピリットの叡智を分かち合って、幻想に惑わされた知覚を正していくのである。知覚は修正され、ヴィジョンが復活する。ヴィジョンとは、真実を見定めることの出来る心の視力である。
This places you both within the Kingdom, and restores its wholeness in your mind. This reflects creation, because it unifies by increasing and integrates by extending.
- place [pléis] : 「〜を置く、設置する」
- restore [ristɔ́ːr] : 「元に戻す、回復させる、修復する」
- wholeness [hóulnis] : 「完全であること」
- reflect [riflékt] : 「〜を映す、示す、反映する」
- unify [júːnəfài] : 「統一する、一体化する」
- increase [inkríːs] : 「増える、増大する、増加する」
- integrate [íntəgrèit] : 「結合する、統合する、一体化する」
- extend [iksténd] : 「広げる、拡張する、拡大する」
❖ "This places you ~ "「知覚を修正することが、あなたと同胞の両者を王国に留め置く」。"and restores its ~ "「そして、あなたの心の中の全体性を修復することになる」。知覚の修正は知覚だけに留まることなく、心の全体性をも修復してくれる。つまり、心が、エゴの思考システムを捨てて、ホーリー・スピリットの思考システムに移行していくのである。それに伴って、本来備わっていた創造性が目を覚ます。"This reflects ~ "「これは創造を反映している」。知覚の修正、心の全体性の回復が創造性を反映している。"because it unifies ~ "ここの"it"は王国をとらえて、「なぜならば、王国は増加することで統一され、拡張することで統合されるからだ」。王国に回帰するのはあなた一人では足りない。あなたの同胞もまた王国に回帰しなくてはならない。神の子がすべて天の王国に回帰し、天の王国が拡張増大することで王国本来の統一的姿が回復される。その天の王国にあって、私達の心が真実を神と分かち合い、創造を展開し、愛を増大させることで、天の王国は機能的にも統合された全体性に近づくことになる。つまり、一番自然な形に収まるのだ。
What you project or extend is real for you. This is an immutable law of the mind in this world as well as in the Kingdom.
- project [prədʒékt] : 「〜を投影する、投射する」
- immutable [imjúːtəbl] : 「不変の」
- law [lɔ́ː] : 「法、法律、法令」
- as well as : 「〜と同様に」
❖ "What you project ~ "「あなたが投影,あるいは拡張したものは,あなたにとって現実である」。それは現実であるが、しかし、真実とは限らない。ここでは、投影したものは幻想であり、拡張したものは真実である、ととらえておけばいい。"This is an immutable ~ "「これは、王国においても、この世界においても、心の不変な法則である」。心のもつパワーである。神から継承した神の属性である。心は投射によって嘘の世界も作れるし、分かち合いによって真実を拡張することも出来る。
However, the content is different in this world, because the thoughts it governs are very different from the Thoughts in the Kingdom. Laws must be adapted to circumstances if they are to maintain order.
- content [kɑ́ntent] : 「入っているもの、内容物、中身」
- thought [θɔ́ːt] : 「思想、考えること、思考」
- govern [gʌ́vərn] : 「支配する、管理する、規定する」
- different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
- adapt [ədǽpt] : 「〜を適合させる、適応させる」
- circumstance [sə́ːrkəmstæ̀ns] : 「環境、状況、事情」
- maintain [meintéin] : 「〜を保持する、維持する」
- order [ɔ́ːrdər] : 「秩序、道理、治安、体制」
❖ "However, the content ~ "「しかし、この世界においては、内容が(王国のそれと比べて)異なっている」。"because the thoughts ~ "「なぜなら、(この世界の)法が規定する思考は、王国における思考とかなり違っているからだ」。"Laws must be ~ "「もし、法が秩序を維持するのであれば、法は環境に適応させなければならない」。難解な箇所である。例として、物理法則を取り上げてみよう。この世界は時間と空間の世界であり、その枠内で物体は運動し、エネルギーが様々な形で変化する。自然界は秩序を保ち、あたかも、万有引力の法則やら熱力学の法則やら、様々な物理法則がその秩序を説明し、さらに物理法則によって秩序が維持されているかのよう感じる。しかし、よく考えてみると、物理法則が自然の秩序を保っているのではなく、自然の秩序に適応するように物理法則が作られた、ととらえる方が正しい。さて、王国の法則はどうであろうか? 神の世界は時間と空間の存在する世界ではない。また、物理的エネルギーと無縁の世界でもある。したがって、私達が知っている物理法則は神の世界では全く通用しないし、そもそも物理法則を神の世界に当てはめてみることさえ出来ないのだ。2つの世界の内容(content)があまりにも異なっているからだ。世界の内容が異なっているから、思考自体も異なっている(different)。一方は科学思考が成立する世界であろうが、他方は科学思考のはるか上をいくレベルの思考が成立している世界である。そこのところを取り間違えると、レベル・コンフュージョンを起こしてしまう。たとえば、神の存在、非存在を科学的に証明しようとか、逆に、自然の摂理や法則は神が与えたものに違いないとか、思考の混乱が起きてしまう。
The outstanding characteristic of the laws of mind as they operate in this world is that by obeying them, and I assure you that you must obey them, you can arrive at diametrically opposed results.
- outstanding [àutstǽndiŋ] : 「目立った、際立った」
- characteristic [kæ̀rəktərístik] : 「特徴、特性、特色」
- operate [ɑ́pərèit] : 「動作する、作動する、機能する」
- obey [oubéi] : 「〜に従う、服従する」
- assure [əʃúər] : 「保証する、〜を確実にする」
- arrive [əráiv] : 「着く、到着する、達する」
- diametrically [dàiəmétrikli] : 「正反対に」
- result [rizʌ́lt] : 「結果、結末、効果、成果」
❖ "The outstanding ~ "「心の法則がこの世界で機能するときの、その心の法則の際立った特徴は、that以下である」。"that by obeying ~ "「心の法則に従うことで、確かにあなたは従わなくてはならないと断言するのだが、あなたは正反対に対立した結果に到達する可能性がある」。本来、心は心の世界に存在し、心の法則は心の世界に適応させるものなのであるが、その心の法則を具象の世界、この幻想の世界に当てはめることによって、互いに正反対の結果が生じる可能性がある。心が分裂し、エゴとホーリー・スピリットの相反する思考システムを選択できる状態にあるので、どちらの思考システムを採用するかによって相反する結果が生じてしまうのだ。
This is because the laws have been adapted to the circumstances of this world, in which diametrically opposed outcomes seem possible because you can respond to two conflicting voices.
- adapt [ədǽpt] : 「〜を適合させる、適応させる」
- circumstance [sə́ːrkəmstæ̀ns] : 「環境、状況、事情」
- oppose [əpóuz] : 「反対する、反抗する、対抗する」
- opposed [əpóuzd] : 「反対した、対抗した、対立した」
- outcome [áutkʌ̀m] : 「結果、結末、成果」
- possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、あり得る」
- respond [rispɑ́nd] : 「反応する、応答する、答える」
- conflicting [kənflíktiŋ] : 「相反する、矛盾する」
❖ "This is because ~ "「これは、because以下の理由による」。"because the laws ~ "「心の法則が、この世界の環境に(無理やり)適応させられた」からである。"in which diametrically ~ "「そして、この世界にあっては、正反対に対立する結果が生じるように見える」。"because you can ~ "「なぜなら、あなたは、二つの相いれない声に答える可能性があるからだ」。もちろん、相いれない二つの声とはエゴとホーリー・スピリットの声のこと。たとえば、ホーリー・スピリットが勧める『得るためには与えよ』という心の法則と、エゴの勧める『得るためには奪え』という法則が、正反対の結果を生み出すのは明らかである。
エゴの法が支配するこの世界に神(ホーリー・スピリット)の法を持ち込めば、必然的に激しい抵抗に遭う。エゴは、自分に反する思考を排除しようとするからだ。そして、大方、エゴはホーリー・スピリットの思考の排除に成功する。人は、たとえそれが誤っていても、今ある環境の秩序を保つ方を優先する傾向があるからだ。エゴとホーリー・スピリットの間のコンフリクトに翻弄されるより、エゴ自体の中におけるコンフリクト(矛盾)と格闘した方がまだ楽だからだ。