2. In Heaven reality is shared and not reflected.
- reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
- share [∫éə(r)] : 「〜を分ける、分かち合う、共有する、共用する」
- reflect [riflékt] : 「〜を映す、示す、反映する、〜の像を映す」
❖ "In Heaven reality ~ "「天の王国では、実在は分かち合われるのであって、反映されるものではない」。ここの"reality"「実在」は、"truth"「真実」と置き換えてもいい。実相世界にあっては、真実は直接分かち合われるのであって、何かに間接的に映し出して見る必要などない。なぜなら、実相世界には真実に対立する虚偽は存在しないからだ。比較する必要もなく、真実かどうか吟味する必要もない。真実がそこに裸で実在するのみ。
By sharing its reflection here, its truth becomes the only perception the Son of God accepts. - reflection [riflék∫n] : 「反射、反映、鏡映、現れ」
- perception [pə(r)sép∫n] : 「知覚、知見、見識、感じ方」
- accept [əksépt] : 「承認する、認める、容認する、受け入れる」
❖ "By sharing its ~ "「この地上では、実在の反映を分かち合うことで、」"its truth becomes ~ "「その真実性が、神の子の受け入れることの出来る唯一の知覚になるのである」。実相世界では、真実は叡智によって直接的に直覚される。一方、この地上では、真実は一度現象といい形で外部に映し出され、それを神の子であるあなたが知覚することで、間接的に真実を受け入れるのである。叡智を失った神の子が、叡智に代わるものとして知覚を作り出し、感覚による間接的な認識に頼らざるを得ないからである。
And thus, remembrance of his Father dawns on him, and he can no longer be satisfied with anything but his own reality. - thus [ðʌ́s] : 「このようにして、こんなふうに、上に述べたように」
- remembrance [rimémbr(ə)ns] : 「記憶、思い出、回想」
- dawn [dɔ́ːn] : 「分かり始める、見え出す、明ける、明るくなる」
- no longer : 「もはや〜でない」
- satisfy [sǽtisfài] : 「 〜を満足させる、納得させる」
- reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
❖ "And thus, remembrance ~ "「このようにして、父なる神の思い出が、神の子によみがえって来る」。真実が反映した事象を知覚することによって、神の子は実相世界を思い出していくのである。そして、実相世界を思い出すにしたがって、父なる神の存在をも思い出してくる。"and he can no longer ~ "「そして神の子は、神の子自身の実相以外の何ものにも、もはや満足できなくなるのである」。幻想としての自分も、幻想としても世界も、もはや、実相の真実を垣間見た神の子には満足できるものではない。"his own reality"「神の子自身の実相」とは、神の子は神の創造した実在であって、それこそが本来の自分であるという真実のこと。幻想世界の自分、つまり、猿から進化した動物に過ぎない、虫けら同然の存在という仮説は、もはや神の子を満足させるものではない。
You on earth have no conception of limitlessness, for the world you seem to live in is a world of limits. - earth [ə́ː(r)θ] : 「地球、地上、全世界」
- conception [kənsép∫n] : 「観念、構想、構想力、考え、概念」
- limitlessness : 「無限、無限性、限りのないこと」
- limit [límit] : 「限度、制限」
❖ "You on earth have ~ "「地上のあなたは、無制限という概念をもっていない」。"for the world you ~ "「なぜなら、あなたが生きているように見えるこの世界は、制限の世界だからだ」。この宇宙は変化流動する宇宙であり、永遠不変とは無縁である。永遠性、不変性が欠けているから、それは無制限、無限ではないのだ。空間は無限で、時間も無限ではないかと言う人もいるだろう。しかし、物理学が予想するには、宇宙はどうやら、膨張し、やがて収縮し、消滅するらしい。それを待たずとも、10の30乗年も時間が経てば、陽子はすべて崩壊してしまい、宇宙に物質は存在しなくなるとも言う。はたして、これが時間と空間の無限性を保証していると言えるだろうか? 無限性とは永遠不変性と一体のものである。変化流動する宇宙は、したがって、無限性とは縁がない。
In this world, it is not true that anything without order of difficulty can occur. - true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
- without [wiðáut] : 「〜なしで、〜を持たないで、〜なしに」
- order [ɔ́ː(r)də(r)] : 「順、順序、順番、順位、序列」
- difficulty [dífikʌ̀lti] : 「困難、難事、難儀、面倒なこと、問題」
- occur [əkə́ː(r)] : 「起こる、発生する、生じる、現れる、存在する」
❖ "In this world, it is ~ "ここは"it is ~ that ~ "の構文、「この世界では、難しさに序列のないことが起きるなんて、真実ではないとされる」。この世界では、何事に付け、難しいことと簡単なことが序列を成して存在している、というのが真実だと受け止められている。二元論世界の必然である。
The miracle, therefore, has a unique function, and is motivated by a unique Teacher Who brings the laws of another world to this one. - unique [juːníːk] : 「唯一の、一つしか存在しない、独特の、独自の、他とは異なる」
- function [fʌ́ŋ(k)∫n] : 「職務、役割、機能、作用、働き、効用」
- motivate [móutəvèit] : 「〜する動機を与える、動機付けをする、動かす、刺激する」
- bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜をもたらす」
- law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規、法令」
❖ "The miracle, therefore, has ~ "「したがって、奇跡はユニークな機能を持っていることになる」。"and is motivated by ~ "「奇跡は、他の世界の法をこの世界へもたらしてくれる師によって、動機づけられているのである」。さて、どういう意味であろうか? まず、奇跡は、その難しさにおいて序列を持たない。我々の目から見れば非常に特殊な、ユニークな性質、機能をもっているのだ。我々は万事において、難しかったり簡単だったり、その中間だったり、難易度のバリエーション、グラデーションをもっている。しかし、実相世界に直結する奇跡は、実相世界が一元論世界であることに呼応して、難しさという、簡単さの対極概念を持たないのである。難易度のバリエーションはなく、奇跡は苦もなく起きる。信じれば山をも動かせると言われ、イエスは死者を蘇らせた。それは単なるたとえ話だと受け止めるのも正当かも知れないが、幻想世界で死者を蘇られる奇跡は、実相世界では実に簡単な技であると受け止めた方が理にかなうだろう。なぜなら、幻想世界を支配する法、たとえば物理法則などと、実相世界を支配する神の法はまったく別物だからである。したがって、"and is motivated by a unique ~ "「奇跡は、他の世界の法をこの世界にもたらすユニークな師によって動機づけられている」。奇跡は、幻想のこの世界に、物理法則を超越した神の法をもたらす唯一の師、ホーリー・スピリットによって、出現させられるのである。"motivated"「動機づけられ」とあるが、ホーリー・スピリットによって発動させられる、起きる価値ありと判断される、といった意味合いにとらえればいいだろう。したがって、たとえば、空から札束が降って来い、などと奇跡を願っても、そんな奇跡はホーリー・スピリットが却下するだけであろう。それが真実であり、起きる価値がある奇跡をホーリー・スピリットは発動してくれるからだ。空から札束が降る奇跡は、誰が考えても真実にほど遠いのだ。しかし、死者が生き返る意味がある場合は、ホーリー・スピリットはその奇跡を授けてくれることだろう。死から生還した人たちは、思うよりずっと多いはずだ。
The miracle is the one thing you can do that transcends order, being based not on differences but on equality.- transcend [trænsénd] : 「超える、〜を超越する」
- base [béis] : 「〜の基礎を形成する、〜の基礎を…に置く」
- difference [díf(ə)r(ə)ns] : 「違い、差異、相違」
- equality [ikwὰləti] : 「平等、等しいこと、同等」
❖ "The miracle is the one thing ~ "「奇跡は、あなたが出来るところの、序列を超越する唯一のことである」。奇跡によって、あなたは序列を超越できる、ということ。つまり、この幻想世界にあって、唯一実相世界の事象を起こし得るのは奇跡を通じてである、という意味である。したがって、もしあなたが、実相世界の純粋無限の愛を他者に与えることが出来たら、それは紛れもなく奇跡の愛なのである。"being based not on ~ "分詞構文、理由、「奇跡は、違いではなく平等性に基盤を置いているからだ」。奇跡は、実相世界の完全平等性を有しており、序列によって差異を作るような不平等を許すはずがない。それを許すようでは、もはや実相世界に無縁な事象となってしまうのだ。
3. Miracles are not in competition, and the number of them that you can do is limitless. They can be simultaneous and legion. - competition [kàmpətí∫n] : 「競争、争い、試合」
- limitless [límitlis] : 「無限の」
- simultaneous [sàim(ə)ltéiniəs] : 「同時に起こる、同時に存在する」
- legion [líːdʒ(ə)n] : 「多数の」
❖ "Miracles are not ~ "「奇跡は競合関係にない」。この奇跡があの奇跡に勝るとか、優先であるとか、そんな競合関係はない。"and the number of them ~ "「あなたが行える奇跡の数に制限はない」。あなたはいくらでも奇跡を起こし得る。"They can be simultaneous ~ "「多数の奇跡が同時に起きることも可能だ」。
This is not difficult to understand, once you conceive of them as possible at all. - difficult [dífikʌ̀lt] : 「難しい、困難な、難解な、厳しい」
- once [wʌ́ns] : 「いったん〜すると、ひとたび〜すれば」
- conceive [kənsíːv] : 「思い付く、想像する」
- conceive of : 「〜を考え出す、〜を想像する、〜を心に描く、〜を思い描く」
- possible [pásəbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る」
- at all : 「仮にも、いやしくも」
❖ "This is not difficult ~ "「このことは、理解しがたいことではない」。"once you conceive of ~ "「仮にも、ひとたびあなたが、奇跡は可能だと思えるならば」。奇跡は実相世界の神の法に従う事象であり、幻想世界の法、物理法則を超越している。したがって、一見不可能な状態が、ごく普通に起きるのである。奇跡自体も不可能に思えるかもしれないが、それが可能だと思えるようになれば、奇跡のもっている諸性質も受け入れることが出来るのである。
What is more difficult to grasp is the lack of order of difficulty that stamps the miracle as something that must come from elsewhere, not from here. From the world's viewpoint, this is impossible.- grasp [grǽsp] : 「〜を把握する、理解する、〜を握る、つかむ」
- lack [lǽk] : 「不足、欠乏、欠如、欠落」
- stamp [stǽmp] : 「〜が〜であることを示す、印象付ける」
- elsewhere [éls(h)wèə(r)] : 「ほかの場所に、ほかのどこかで、ほかの所へ」
- viewpoint [vjúːpɔ̀int] : 「見地、見える地点、観点、見方、見解、視座」
- impossible [impásəbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない」
❖ "What is more difficult ~ "「より理解しがたいことは、難しさの序列がないことである」。関係代名詞の制限的用法を、非制限として訳すと、"that stamps the miracle ~ "「そして、難しさの序列(があると考えること)は、奇跡を、ここからではなく、どこか別の所からやって来るに違いないことだと印象づけてしまうのである」。"From the world's ~ "「この幻想世界から見れば、それは不可能に思えるのだ」。ここはよく考えると、難解な部分である。奇跡は誰が主体となって起きるのか、という問題である。奇跡の難しさに序列があるという考えから見れば、簡単な奇跡は自分が起こしていると思え、難しい奇跡は自分以外の超越的存在が起こしていると見えるだろう。奇跡が、ここ(自分)からではなく、どこか別の所から来るという思いである(as something that must come from elsewhere, not from here)。こんな難しい奇跡など自分には不可能だ、と思えるのだ(From the world's viewpoint, this is impossible)。しかし、ACIMは、そういう考えを捨てなさいと言う。簡単な奇跡、難しい奇跡などという、序列はないからだ、と言う。では、たとえば、死者ラザロを生き返らせたイエスは、いったい自分が行った奇跡をどう見ていたのだろうか? 自分に死者を蘇らせる奇跡の力があるから、自分がラザロを生き返らせたと、思っただろうか? それとも、ラザロを復活させて欲しいという、神への願いが通じて、神がラザロを生き返らせたと思っただろうか? ここに述べられたACIMに従うなら、奇跡は神からではなく、イエス本人が起こしたものと見るべきだろう。しかし、これは非常にデリケートで難しい。むしろ、次のように考えるべきではないだろう。つまり、ラザロを生き返らせたのは、イエス本人であり、神そのものであると。イエスは当時、すでに実相世界(天の王国)にアセンションしていただろう。仏教的な言い方をすれば、イエスは解脱していたであろう。イエスはイエス自身でもあり、神やホーリー・スピリットと同化した神の子、つまり、神と一体化した実在でもあったのである。したがって、死者を蘇らせるという奇跡は自分が起こしたのだという主張と、その奇跡は神が起こしたのだいう主張と、両者はまったく同じものであったであろう。もはや、奇跡の出所は問題にならなかったのだと考えるべきである。ただ、少なくとも、イエスは神の僕(しもべ)であり、一介の信心深き僕の願いを、神が哀れんで叶えてくれた、というような解釈はまったく正鵠(せいこく)を射ていないことだけは確かだ。