5. The war against yourself was undertaken to teach the Son of God that he is not himself, and not his Father's Son.
- war [wɔ́ːr] : 「戦争、争い」
- against [əgénst] : 「〜に反対して、〜に逆らって、〜にそむいて、反抗して」
- undertaken : 「undertake の過去分詞」
- undertake [ʌ̀ndərtéik] : 「引き受ける、請け負う、負う、企てる、始める」
- teach [tíːtʃ] : 「〜を教える、指導する」
❖ "The war against yourself ~ "「神の子に、彼が彼自身ではないこと、父なる神の子ではないことを教えるために、あなた自身に対する戦いは始められたのだ」。神の子が神から分離した後、神の子は自分が神の子ではないこと、神の属性を継承した者ではないことを宣言し、エゴという別人格を投射して、そのエゴと自己同一化したのだ。エゴは幻想であるから、ことごとく実相に対して戦いを挑むのである。なぜなら、実相の実在性が勝利し、幻想が単なる錯覚であり、非存在であると暴(あばか)れれば、幻想のエゴは消滅してしまうからだ。したがって、"The war against yourself"「あなた自身に対する戦い」とは、エゴに同化したあなたが、真実の実相的自己に反抗する、その戦い、という意味である。ここで言う『真実の実相的自己』とは、神の属性をもった神の子という意味だ。
For this, the memory of his Father must be forgotten. It is forgotten in the body's life, and if you think you are a body, you will believe you have forgotten it. - memory [méməri] : 「記憶、思い出」
- forgotten [fərɡάtn] : 「forget の過去分詞形」
- forget [fərɡét] : 「〜を忘れる、見落とす」
- believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
❖ "For this, the memory ~ "「このために、父なる神の記憶は忘れ去られねばならなかったのだ」。"It is forgotten ~ "「神の記憶は、肉体を伴った生活の中で忘れ去られた」。"in the body's life"「肉体の生活の中で」とは、この幻想世界で、肉体を伴って暮らす中で、という意味。"and if you think you ~ "「そして、もしあなたが、あなたは肉体であると思っているなら、」"you will believe ~ "「あなたは、神の記憶を忘れ去ってしまったと信じることになるだろう」。肉体が実在で、肉体として生きていると信じるなら、それは、あなたが幻想の中に完全に埋没してしまったことを意味し、神の記憶はどんどん遠のいてしまうだろう。いわば、去る者日々に疎(うと)し、ということだ。しかし、神の記憶は消えることはない。なぜなら、あなたの心の中の、最も純粋で神聖な部分に、正気さ宿り、ホーリー・スピリットが宿り、キリストが住んでいるからだ。あなたの正気さが、神を忘れるわけはないではないか。なぜなら、正気さ自体が神の属性であるからだ。
Yet truth can never be forgotten by itself, and you have not forgotten what you are. - truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
- never [névər] : 「少しも〜ない、決して〜ない、〜のはずはない」
- by itself : 「それだけで、独りでに、自然に、離れて、単独で」
❖ "Yet truth can never ~ "「しかし、真実は、自然に忘れ去られることは不可能なのだ」。真実が自然消滅することはない。なぜなら、実相的真実は永遠不変だからだ。"and you have not ~ "「そして、あなたは、本当のあなたを忘れてしまったのではない」。あなたの正気さは、あなたの本当の姿は神の子であると、ちゃんと知っている。エゴに騙されて、夢を見ているあなたが、単に、神を忘れ、自分を忘れたと思い込んでいるだけだ。
Only a strange illusion of yourself, a wish to triumph over what you are, remembers not.- strange [stréindʒ] : 「奇妙な、変わった、変な、見知らぬ」
- illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
- wish [wíʃ] : 「願い、望みの物、願望、希望」
- triumph [tráiəmf] : 「勝利、大成功、大業績、勝利の喜び」
- remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
❖ "Only a strange illusion ~ "「単に、奇妙な幻想のあなた自身が、」"a wish to triumph ~ "「つまり、本当のあなたに勝利したいと思う願いが、」"remembers not"「(本当のあなたを)思い出さないだけなのだ」。神の子ではないという幻想が、神の子であるという事実に反抗して戦い、神の子であるという記憶を消しているのである。そして、神それ自体の記憶も消そうとしているのだ。
6. The war against yourself is but the battle of two illusions, struggling to make them different from each other, in the belief the one that conquers will be true. - battle [bǽtl] : 「戦い、戦闘」
- struggle [strʌ́gl] : 「もがく、あがく、奮闘する」
- different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
- each other : 「お互い」
- belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
- in the belief that : 「(that 以下)だと信じて」
- conquer [kάŋkər] : 「勝つ、打ち破る、打破する、克服する」
- true [trúː] : 「真の、真実の、本当の、本物の」
❖ "The war against yourself ~ "「あなた自身に対する戦いは、二つの幻想の戦いに過ぎない」。"struggling to make them ~ "「互いに異なるものとするためにあがいているのだ」。"in the belief ~ "「そして、勝った方が真実であると信じているのである」。さて、難解である。そもそも、"the battle of two illusions"「二つの幻想の戦い」というところの「二つの幻想」とは何か? 一つは、自分が神の子ではない、自分はエゴと同一だという幻想。これはいいだろう。では、もう一つの幻想は何か? 自分はエゴではなく神の子だ、というのでは、これは実相であり幻想ではないから、もう一つの幻想には当たらない。そこで、少々深読みして、『自分は神の子であり、神に完全に支配され、神に自由を奪われ、神の意思から一歩も抜け出すことの出来ない操り人形だ』という幻想と考えてみよう。こう考えると、自分は、エゴに支配された存在か、神に支配された存在か、その二つの幻想の戦いということになる。どちらかが勝てば、それが真実であると思い込んでしまうのである。
There is no conflict between them and the truth. Nor are they different from each other. Both are not true. - conflict [kənflíkt] : 「対立、論争、摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争」
- between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間に」
- truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
- both [bóuθ] : 「両方、双方」
❖ "There is no conflict ~ "「この二つの幻想と、真実の間に、コンフリクトは存在しない」。二つの幻想の間でコンフリクトを起こしているだけであって、真実とは無関係である。いわば、幻想という一匹のヘビの頭と尻尾が戦って、ヘビの頭が自分の尻尾を飲み込んでいる情景である。"Nor are they different ~ "「二つの幻想が互いに異なっているわけでもないのだ」。どちらも幻想であるから、両者に違いはない。"Both are not ~ "「どちらも、真実ではないのである」。
And so it matters not what form they take. What made them is insane, and they remain part of what made them. - matter [mǽtər] : 「重要である、問題である」
- form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、体つき、外見」
- insane [inséin] : 「正気でない、精神障害の、非常識な」
- remain [riméin] : 「とどまる、滞在する、残る、残存する」
- part [pάːrt] : 「一部、部分」
❖ "And so it matters ~ "「だから、二つの幻想がどんな形をとるかなど、問題ではない」。幻想がどんな形をして現れても、幻想であることには変りない。"What made them ~ "「幻想を作り出しているのは狂気であり、」"and they remain part ~ "「二つの幻想は、それを作り出しているもの(狂気)の一部のままで残存するのである」。幻想を作り出しているのは心の狂気であり、幻想がどんな形をとろうとも、狂気の一部であることには変りない。幻想から実相が生まれることはないのだ。幻想から、正気が生まれることもないのだ。
Madness holds out no menace to reality, and has no influence upon it. - madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
- hold out : 「差し出す、提供する、提出する」
- menace [ménəs] : 「脅威、脅し、脅迫」
- reality [riǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
- influence [ínfluəns] : 「影響、感化、作用、影響力、権力」
- have no influence on : 「〜に影響を及ぼさない」
❖ "Madness holds out ~ "「狂気は、実相に対して脅威となることはない」。"and has no influence ~ "「狂気が、実相に対して影響を及ぼすこともないのだ」。幻想は、自分の尻尾を飲み込んで悪戦苦闘するヘビである。それは悪夢であろうが、夢に変わりはない。現実に対して、何の影響も与え得ないのだ。幻想が実相に脅威を与えることも、影響を及ぼすこともない。幻想は、夜見る悪夢に過ぎないのである。
Illusions cannot triumph over truth, nor can they threaten it in any way. And the reality that they deny is not a part of them.- triumph [tráiəmf] : 「勝利を収める、成功する」
- threaten [θrétn] : 「〜を脅す、脅迫する」
- in any way : 「何らか、多少なりとも、決して、形はどうあれ」
- deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する」
❖ "Illusions cannot ~ "「幻想は、真実に勝利することは不可能であるし、」"nor can they threaten ~ "「幻想は、どんな形であれ、真実を脅かすことは出来ない」。"And the reality that ~ "「幻想が否定する実相は、決して、幻想の一部ではないのだ」。幻想と実相が同じ土俵上に上がっているのではない。レベルが、つまり、次元が、完全に異なるのである。いわば、漫画の世界と現実の世界の違いである。その点を間違わない限り、幻想に翻弄されることはない。夢を夢として捉えるだけでいいのだ。夢など、真剣に考える必要はないのである。