7. What you remember is a part of you. For you must be as God created you.
- remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
- part [pάːrt] : 「一部、部分」
- create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
❖ "What you remember ~ "「あなたが覚えていることは、あなたの一部である」。"For you must ~ "「なぜなら、あなたは、神があなたを創造したままであるに違いないからだ」。記憶した思い、想念が、あなたの心の一部を構成するようにと、神は神の子であるあなたを創造した。神もまた、そうであるからだ。なぜなら、神は神の子を創造するに当たって、神の属性のすべてを神の子に継承したのだから。蛇足になるが、過去の思い出があなたの一部としていつまでも生き残る、ということを言っているのではない。過去は幻想であるので、過去の思い出も幻想である。幻想はあなたの一部ではない。ここで言っている記憶とは、天の王国の記憶であり、真実の思いのことである。真の想念である。
Truth does not fight against illusions, nor do illusions fight against the truth. - truth [trúː] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
- fight [fáit] : 「戦う、競う、格闘する」
- fight against [əgénst] : 「〜と戦う」
- illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
- nor [nɔ́ːr] : 「そしてまた〜ない、〜もまた〜でない」
❖ "Truth does not ~ "「真実は、幻想と戦ったりしないのだ」。実相が幻想を相手に戦うことはない。真実は、シャドー・ボクシングをしないのだ。"nor do illusions ~ "「同様に、幻想も真実と戦うことはない」。むしろ、戦おうにも戦うことが出来ないのだ。実在していないものが、どうやって、実在しているものと戦えるだろう? 幻想が真実と戦うことは原理的に不可能だ。
Illusions battle only with themselves. Being fragmented, they fragment. - battle [bǽtl] : 「戦う」
- battle with : 「〜と戦う」
- fragmented : 「崩壊した、分裂した」
- fragment [frǽgmənt] : 「砕ける、寸断する、バラバラになる、分裂する」
❖ "Illusions battle only ~ "「幻想は、幻想自身と戦うのみである」。そもそも、一元論世界の実相世界には、戦うという概念自体がない。そこに戦いがあるなら、それは幻想以外の戦いではあり得ないのだ。"Being fragmented ~ "分詞構文、理由、「幻想は分裂しているので、幻想は分裂する」。へんな訳になってしまったが、幻想世界は変化流動する世界であり、すべては崩壊に向かって変化する。幻想が分裂に向かうのは幻想世界の必然である。なぜなら、もともと、神の子が神から分離してこの幻想世界を作り出すとき、神と神の子の分裂、神の子同士の分裂を象徴してこの世界を投射し、疑似創造したからだ。調和統一、永遠不変を目指して投射した世界ではないのだ。変化流動、分離分裂を目指して投射した世界なのである。分裂した幻想が、さらなる分裂に向かうのは、幻想世界の必然である。
But truth is indivisible, and far beyond their little reach. - indivisible [ìndəvízəbl] : 「分割できない、割り切れない」
- far beyond [bijάnd] : 「〜をはるかに超えて」
- reach [ríːtʃ] : 「届く距離」
- beyond the reach of : 「〜の力の及ばない、〜の手の届かない」
❖ "But truth is ~ "「しかし、真実は分割出来るものではない」。"and far beyond ~ "「真実は、幻想が到達出来る小さな範囲を遥かに越えているのだ」。西遊記の孫悟空が、觔斗雲(きんとうん)に乗って遥か彼方まで飛んではみたが、観音様の手の平から一歩も出ることが出来なかったという話を思い出す。孫悟空が暮らす世界が幻想世界であり、観音様が暮らす世界が、真実の世界、実相世界である。
You will remember what you know when you have learned you cannot be in conflict. - learn [lə́ːrn] : 「〜を学ぶ、〜を知る、分かる」
- conflict [kɑ́nflikt] : 「摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争」
❖ "You will remember ~ "「あなたが、あなたは決してコンフリクトの中に存在することは出来ないのだと知ったとき、あなたは、あなたが知っていることを思い出すだろう」。コンフリクトの中に存在するとは、幻想世界に存在するということ。コンフリクトの中に存在していないと知ることは、自分の存在が実相世界にあるということを確信すること。実相世界に存在していると確信出来れば、あなたが神から継承したすべてのもの、思い出や記憶を含めて、すべてのものを思い出すことが出来るのだ。老婆心ながら、この思い出とは、人生の過去の思い出のことではない。過去という幻想の思い出ではなく、天の王国の実相としての思い出のことだ。
One illusion about yourself can battle with another, yet the war of two illusions is a state where nothing happens. - battle with : 「〜と戦う」
- war [wɔ́ːr] : 「戦争、争い」
- state [stéit] : 「状態、形勢、情勢、状況」
- happen [hǽpn] : 「起こる、発生する、降り懸かる」
❖ "One illusion about ~ "「あなた自身に関する幻想の一つが、他の幻想と戦い得るのである」。幻想と実相が戦うことは不可能だ。戦いがあるなら、つまり、コンフリクトがあるなら、それは幻想同士の争いである。"yet the war of ~ "「しかし、二つの幻想の戦いは、何一つ起こることのない状態である」。幻想と幻想が戦っても、それ自体幻想であるから、実相世界から見れば、何一つ、そこから生まれ出るものはない。夜見る夢の中で戦いがあっても、朝目覚めてしまえば、そこには何一つ形のあるものは残らないのと、同じである。
There is no victor and there is no victory. And truth stands radiant, apart from conflict, untouched and quiet in the peace of God.- victor [víktər] : 「優勝者、勝利者、征服者」
- victory [víktəri] : 「勝利、優勝、克服、征服」
- truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
- stand [stǽnd] : 「立っている、立ち上がる、立つ」
- radiant [réidiənt] : 「晴れやかな、キラキラ輝く、光を放つ、光り輝く」
- apart from : 「〜から離れて、〜は別として、〜はさておき」
- untouched : 「触れられていない、手つかずの、そのままの」
- quiet [kwáiət] : 「静かな、静粛な、物静かな、平穏な、穏やかな」
- peace [píːs] : 「平和、安らぎ、平穏、安心、安定」
❖ "There is no victor ~ "「そこには、勝者も勝利もない」。幻想が幻想と戦っても、勝ち負けはない。なぜなら、戦い自体が、実相的には存在しないのだから。"And truth stands ~ "「そして、真実は、光り輝いてそこに立ち、」"apart from ~ "「コンフリクトから離れており、」"untouched and quiet ~ "「(幻想に)触れられることなく、神の平和のうちに、静かに、あるのだ」。理屈抜きに、朗読してみること。
8. Conflict must be between two forces. It cannot exist between one power and nothingness. - conflict [kɑ́nflikt] : 「摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争」
- between [bitwíːn] : 「〜の間の」
- between A and B : 「AとBの間に」
- force [fɔ́ːrs] : 「強さ、体力、腕力、影響力、勢力」
- exist [igzíst] : 「存在する、生きている、生存する、存続する」
- power [páuər] : 「力、能力、勢力」
- nothingness [nʌ́θiŋnis] : 「存在しないこと、無、非実在、無価値」
❖ "Conflict must be ~ "「コンフリクトは、二つの力の間に存在するに違いない」。"two forces"「二つの力」とあるが、もちろん、幻想の力のことであり、実在の実相的パワーのことではない。"It cannot exist ~ "「コンフリクトは、一つのパワーーと無との間に存在することはない」。"one power"「一つのパワー」とは、実在の実相的パワーのこと。そして、"nothingness"「無」とは、ここでは幻想世界の力のこと。実相と幻想の間には戦いはない。コンフリクトは成立しようがないのだ。
There is nothing you could attack that is not part of you. - attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
- part [pάːrt] : 「一部、部分」
❖ "There is nothing you ~ "「あなたの一部ではないもので、あなたが攻撃出来るものはない」。ここは、「あなたが攻撃出来るもので、あなたの一部ではないものは何もない」と訳してもいいし、その方が通りがいいかも知れない。しかし、どちらにしても、内容は難解である。対偶をとれば理解しやすい。対偶は、「あなたが攻撃出来るものは、あなたの一部である」、あるいは、「あなたの一部であるものは、攻撃出来る」。攻撃する方も攻撃される方も、共に幻想に限られるから、攻撃するあなたは、実相的真実のあなたではなく、幻想の虚偽のあなたである。攻撃されるあなたの一部も、実相的真実のあなたの一部ではなく、幻想の虚偽のあなたの一部である。したがって、本文の「あなたの一部」を「あなたの幻想の一部」と書き直してみるとよい。とにかく、攻撃は、実相とはまったく無縁の幻想という空間で行われるのである。さて、これを踏まえて、次の文章へと読み進もう。
And by attacking it you make two illusions of yourself, in conflict with each other. - illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
- in conflict with : 「〜と衝突して、〜と戦って、〜と紛争中で、〜に抵触して」
- each other : 「お互いに」
❖ "And by attacking ~ "「それを攻撃することで、あなたは、あなたについての二つの幻想を作り出してしまう」。つまり、攻撃する幻想と、攻撃される幻想である。"in conflict with ~ "「それらが、互いにコンフリクトを起こすのである」。さて、この、あなたについての二つの幻想とは何か? これは、T-23.I.6:1を見てもらえばわかると思う。繰り返すと、一つは、あなたがエゴと自己を同一化している幻想であり、もう一つは、自分は神の子であり、神に完全に支配され、神に自由を奪われ、神の意思から一歩も抜け出すことの出来ない操り人形だ、という幻想。同じ一つの幻想が、互いを食い合っているわけだ。自分の尾っぽを飲み込もうとするヘビ、同然である。
And this occurs whenever you look on anything that God created with anything but love. - occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる、現れる、存在する」
- whenever [hwènévər] : 「〜するときはいつでも、〜したときはすぐ」
- create [kriéit] : 「〜を創造する、創り出す」
❖ "And this occurs ~ "「これは、あなたが、神が創造したものを、愛を持たずして見る時、必ず起きるのである」。神の創造した真実を、愛という真実の目で見ればコンフリクトなど起こさないのだが、それが出来ずに、幻想という眼鏡を通して見る時、真実は歪められ、あるいは、そこに存在しない幽霊が見えてくるわけだ。そして、そこに、幽霊同士の戦い、コンフリクトが発生するのである。
Conflict is fearful, for it is the birth of fear. Yet what is born of nothing cannot win reality through battle. - fearful [fíərfəl] : 「恐ろしい、怖い」
- birth [bə́ːrθ] : 「出生、出産、分娩、誕生」
- be born [bɔ́ːrn] of : 「〜から生まれる、〜のもとに生まれる」
- win [wín] : 「勝つ、成功する」
- reality [riǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
- through [θruː] : 「〜を通じて、〜の手を経て、手を通して」
- battle [bǽtl] : 「戦い、戦闘」
❖ "Conflict is fearful"「コンフリクトは恐ろしものである」。"for it is the birthb ~ "「なぜなら、それは、恐れから生まれるからだ」。エゴに支配された自分という幻想と、神に支配された自分という幻想がコンフリクトを起こすのであるが、そのどちらも、あなたにとっては恐ろしいことなのである。あなたの正気さが、その両者ともに、虚偽であることを知っているからだ。真実でないものを信じることは恐怖でなのである。"Yet what is born of ~ "「しかし、無から生まれたものが、戦いを通して実相に勝てるわけがない」。幻想は無から生まれたものである。二つの幻想のどちらが勝っても、無であるものから実相が生まれるわけがないのだ。真実が生じるわけがない。したがって、無が実相に勝利することは不可能だ。
Why would you fill your world with conflicts with yourself? - fill [fíl] : 「〜を〜に詰める、注入する、満たす」
❖ "Why would you fill ~ "「なぜ、あなたは、あなた自身のコンフリクトをもって、あなたの世界を満たしたいと思うのか」。あなた自身に関するコンフリクトが幻想から生まれることをきちんと認識し、その幻想から向け出すことこそ、あなたこの世界でなすべきことであって、コンフリクトの泥試合をもって、この世界を埋め尽くすことではない。
Let all this madness be undone for you, and turn in peace to the rememberance of God, still shining in your quiet mind.- madness [mǽdnəs] : 「狂気、熱狂、熱中」
- undone [ʌndʌ́n] : 「undo の過去分詞形」
- undo [ʌndú] : 「〜を元に戻す、元どおりにする、取り消す」
- turn [tə́ːrn] : 「向きを変える」
- in peace : 「平和に、平安に、安らかに、安心して、静かに、無事に」
- rememberance = remembrance [rimémbrəns] : 「記憶、思い出、回想、追悼」
- still [stíl] : 「まだ、今でもまだ、いまだに」
- shine [ʃáin] : 「輝く、光る」
- quiet [kwáiət] : 「静かな、静粛な、平穏な、穏やかな、平和な」
❖ "Let all this madness ~ "「あなた自身のために、このすべての狂気を取り消しにしてしまおう」。"and turn in peace ~ "「そして、平和な心で、神の記憶へ回帰しようではないか」。 "still shining ~ "「神の記憶は、あなたの静かな心の中で、今も輝いているのだから」。コンフリクトは狂気なのである。幻想と幻想の戦いなのだから、つまり、自らの尻尾を飲み込もうとするヘビ同然なのだから、狂気以外の何ものでもない。しかし、あなたの心の最も純粋で神聖な部分、静謐なる心の一部に、あなたの正気さは住んでおり、そこに、神の祭壇がある。天の王国へ通じる唯一のチャンネルである。そこに、神の記憶が光を放って、今もちゃんと息づいているのだ。その実在を知れ、とACIMは訴えるのである。