I. Specialness as a Substitute for Love
愛に代わるものとしての特別性
1. Love is extension. To withhold the smallest gift is not to know love's purpose. Love offers everything forever. - extension [iksténʃən] : 「拡張、伸長、延長、伸展」
- withhold [wiðhóuld] : 「〜を抑える、差し控える、与えないでおく」
- smallest [smɔ́ːlest] : 「最小の」
- gift [gíft] : 「贈り物、プレゼント」
- purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
- offer [ɔ́ːfər] : 「差し出す、捧げる、提供する」
- forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
❖ "Love is ~ "「愛とは、拡張である」。愛は拡張する、と捉えてもいいだろう。"To withhold ~ "「最も小さな贈り物さえ誰にも与えないでおくことは、愛の目的を知らないことを意味する」。天の王国における神の法の一つは、真実は分かち合われることで拡張増大する、というものである。また、与えることは得ることである、という真理も神の法の一つである。"the smallest gift"「最も小さな贈り物」とは、神から継承した神の属性である真実の、その中でも最も小さな真実という意味合い。本当は、真実に大小の序列はないのだが、もしあったとして、その中の一番小さな真実であっても、という意味合いが込められている。その贈り物である真実を分かち合うことなく独り占めしておくことは、愛の目的、つまり、真実の法、神の法を理解していない、と言っているのだ。"Love offers ~ "「愛は、永遠にすべてを提供してくれるのである」。数ある真実の中でも、愛はその根底にある最も基本的で重要な真実である。なぜなら、その愛は、すべての真実の母体となって、すべてを生み出してくれるからである。永遠不変の真実を、分かち合われて拡張する愛は、永遠不変の真実を、文字通り永遠に生み出していくのである。
Hold back but one belief, one offering, and love is gone, because you asked a substitute to take its place. - hold back : 「押しとどめる、引き止める、制御する、阻止する」
- belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
- gone [ɡɔ́ːn] : 「go の過去分詞形」
- offering [ɔ́ːfəriŋ] : 「贈り物」
- ask [ǽsk] : 「〜を求める、〜を頼む、依頼する、〜してほしいと頼む」
- substitute [sʌ́bstətjùːt] : 「代わりのもの、代用品」
- take one's place : 「〜の代わりをする、〜と交代する」
❖ "Hold back but ~ "「たった一つの信念、たった一つの贈り物を、与えずにとっておいてみなさい」。ここの"belief"「信念、信じること」は、実相的贈り物(offering)、つまり、真実のことである。前文の"the smallest gift"のことだと了解してもいい。"and love is ~ "「そんなことをすれば、愛は逃げてしまうのだ」。分かち合われない愛、分かち合われない真実は、拡張増大することなく、あなたの手の中から逃げていってしまう。"because you asked ~ "「なぜなら、あなたは、愛に代わるものを求めたからである」。愛を分かち合う代わりに、愛に代わるものを求めたので、つまり、きらびやかな幻想を求めたので、真実の愛は、あなたから逃げて行ってしまうのだ。たとえば、あなたは愛を犠牲にして、社会的な地位や名誉、分不相応の金銭を求めてしまうかも知れない。その愚かさを諌(いさ)めているのである。
And now must war, the substitute for peace, come with the one alternative that you can choose for love. - war [wɔ́ːr] : 「戦争、争い」
- peace [píːs] : 「平和、安らぎ、平穏、安心、安定」
- alternative [ɔːltə́ːrnətiv] : 「代わりとなるもの、代替物、取って替わるもの」
- choose [tʃúːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
❖ "And now must war ~ "「平和に代わって、今や、争いが、〜と共にやって来る」。"with the one alternative ~ "「あなたが愛の変わりに選んだ代替物と共に、」争いがやって来る。愛を捨て、代わりに幻想という代替物を選ぶことによって、あなたは、争いに自ら進んで巻き込まれるのである。なぜなら、真実の愛は真実の平和を生むが、その愛を拒絶したのだから、あなたの心の実相的な平和は失われ、代わりに、幻想的な争いを志向することになるからだ。
Your choosing it has given it all the reality it seems to have.- given [gívn] : 「give の過去分詞形」
- reality [riǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
❖ "Your choosing it ~ "直訳すると、「あなたがそれを選んだことは、そのすべてに対して、それが持っているかに見える実在性を与えてしまったのだ」。"it"を3つ使ってリズムを作り、詩的な言葉遊びをしているようだ。こんなことに気付くのは、原書を読むメリットでもあり、また楽しみでもある。 さて、意味であるが、"it"は「愛の代替物、真実の代替物」つまり、幻想である。ここでは単純に、幻想として解釈してみよう。あなたが幻想を選ぶことで、幻想に現実味を与えてしまうことを訴えているのだ。本当は幻想は実在ではない。しかし、あなたが愛の代替物(幻想)を選ぶことで(Your choosing it)、実在性を持っているかに見える(it seems to have)幻想に、本当に現実性(reality)を与えてしまう(has given it)、というわけである。争いが、差し迫った現実に見えるのはそのせいである。
2. Beliefs will never openly attack each other because conflicting outcomes are impossible. - openly [óupnli] : 「率直に、隠さずに、公然と、おおっぴらに、表立って」
- attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
- each other : 「お互いに」
- conflicting [kənflíktiŋ] : 「相反する、矛盾する、相いれない」
- outcome [áutkʌ̀m] : 「結果、結末、成果、所産」
- impossible [impɑ́səbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない」
❖ "Beliefs will never ~ "「信念同士は、決して、あからさまに攻撃し合ったりしない」。"because conflicting ~ "「なぜなら、矛盾する結果(を同時に持つこと)は不可能だからだ」。あなたが、二つの信念を持っていたとしよう。今は、単純に、ある真実を信じ、同時にある幻想を信じていたとしよう。真実を信じる気持ちと、幻想を信じる気持ちは、あからさまにコンフリクトを起こして攻撃し合うことはないのだ。なぜなら、真実を信じた結果と幻想を信じた結果は対立し、対立した結果を同時に受容することは、あなたにとって不可能だからだ。だから、あなたは、二つの信念を戦わせることなく、密かに心に隠し持つことになるのだ。だから、あるときは愛を説く聖者となり、またあるときは大金を儲けようとする金の亡者になるのである。
But an unrecognized belief is a decision to war in secret, where the results of conflict are kept unknown and never brought to reason, to be considered sensible or not. - unrecognized : 「承認されていない、正当に認められていない、認識されていない」
- decision [disíʒən] : 「解決、決定、決意、決心、決議、裁決」
- war [wɔ́ːr] : 「戦う、戦争する」
- in secret [síːkrət] : 「秘密に、内緒で、ひそかに、隠れて」
- result [rizʌ́lt] : 「結果、結末、成り行き、効果、成果」
- conflict [kɑ́nflikt] : 「摩擦、葛藤、軋轢、争い、紛争、闘争、戦争」
- kept [képt] : 「keep の過去・過去分詞形」
- keep : 「〜の状態にしておく、〜にしておく
- unknown [ʌnnóun] : 「知られていない、未知の、不明の」
- brought [brɔ́ːt] : 「bring の過去・過去分詞形」
- bring [bríŋ] : 「〜を持って来る、〜を連れて来る、〜をもたらす」
- reason [ríːzn] : 「理性、理知、良識、分別、正気」
- consider [kənsídər] : 「〜と考える〜を考慮する、凝視する」
- sensible [sénsəbl] : 「分別のある、思慮のある、常識がある、賢明な」
❖ "But an unrecognized belief ~ "「しかし、認識されない信念は、密かに戦うという決心のことである」。一般に、真実を信じることは意識の上で明白に認識されるのだが、幻想を信じることは、明白に信じていると認識されないのだ。まさか、夜見る夢は現実だと主張する人はいまい。同様に、幻想を信じていると公言することも、それを認識することさえも、人々は避けるのである。しかし、幻想を信じることは密かに蔓延している。その結果が密かに表面化し、争いとなって目に見える形をとるのだ。本文の"unrecognized belief"「認識されない信念」とは、幻想を信じることであって、結果として、密かな争いを肯定する決定を意味することになるのである。"where the results of ~ "「そこでは、コンフリクトを起こすという結果が、認識されないままにされ、理性の元に持ち込まれることも決してない」。" to be considered ~ "「それが思慮あることなのかどうかさえ、考慮されることはないのだ」。結局、人々は、盲目のうちに、つまり、理由のわからぬままに、互いに争い、コンフリクトを起こしているのである。それを突き詰めることもしない。突き詰めてみれば、原因は、自分が幻想を信じたせいだと気付くはずなのだ。
And many senseless outcomes have been reached, and meaningless decisions have been made and kept hidden, to become beliefs now given power to direct all subsequent decisions. - senseless [sénslis] : 「無分別な、非常識な、常識がない、愚かな、無意味な」
- outcome [áutkʌ̀m] : 「結果、結末、成果、所産」
- reach [ríːtʃ] : 「〜に達する、〜に至る、〜に届く」
- meaningless [míːniŋlis] : 「意味のない、無益な、価値のない、無意味な、無価値の」
- decision [disíʒən] : 「解決、決定、決意、決心、決議、裁決」
- hidden [hídn] : 「隠された、秘密の」
- direct [dərékt] : 「命令する、指図する、〜を方向づける」
- subsequent [sʌ́bsikwənt] : 「次の、後の、その後の、それに続く、後に来る、続いて起こる」
❖ "And many senseless ~ "「こうして、無意味な結果が生まれるのである」。"and meaningless decisions ~ "「また、無意味な決定がなされ、隠されるのである」。幻想を信じているということが隠され、幻想によって争いを選択したことが隠され、争いを決定した事実が隠され、コンフリクトを起こしたという結果さえ隠されるのである。意味のない結果、意味のない決定が、よほど恥ずかしいからなのか。いや、むしろ、隠そうにも、隠す実体がないので、誰にも何も見えないのだ。"to become beliefs ~ "「そして、信念は、それに続く決定を方向づけるパワーを与えれることになるのである」。つまり、幻想を信じることで、その後の選択、決定(subsequent decisions)が、その幻想によって方向づけられ(direct)、幻想の連鎖から抜け出すことが出来なくなる。幻想には、そういう魔力(power)があるのだ。いわば、麻薬のような悪循環が始まるのだ。
Mistake you not the power of these hidden warriors to disrupt your peace. - mistake [mistéik] : 「誤る、間違える」
- warrior [wɔ́ːriər] : 「兵士、闘士、軍人、戦士、武士」
- disrupt [disrʌ́pt] : 「〜を混乱させる、崩壊させる、乱す、台無しにする」
❖ "Mistake you not ~ "「あなたの平和を乱す、隠されたこれらの兵士のもつパワーを誤って(解釈して)はいけない」。"hidden warriors"「隠された兵士」とは、簡単に、「幻想」と考えていいだろう。もちろん、ここでは、幻想を信じること、幻想を信じたことでもたらされる結果、等々の、幻想にまつわる因果関係のすべてを言っているのであるが・・・。いずれ、幻想には、あなたの心の平和を混乱させるパワーがある。そのパワーは侮れない。あなたが実相に目覚めるために通るべき道の、大きな障害となるのである。
For it is at their mercy while you decide to leave it there. - at someone's mercy : 「〜のなすがままに、〜の言いなりになって、〜の自由にされて」
- while [hwáil] : 「〜の間ずっと、〜する間に、その間に」
- decide [disáid] : 「〜しようと決心する、〜することに決める」
- leave [líːv] : 「〜をそのままにしておく、〜を残す、置きっぱなしにする」
❖ "For it is at their ~ "「なぜなら、あなたが兵士をそこにそのままにしておこうと決めている限りは、その兵士のなすがままであるからだ」。幻想を放っておけば、幻想は雑草のようにはびこって、幻想のなすがままに、あなたの心の平和は乱され、実相世界への道はますます遠のいてしまう。この世が、幻想王国になっている事実を、あなたは日々、目の当たりにしているはずである。
The secret enemies of peace, your least decision to choose attack instead of love, unrecognized and swift to challenge you to combat and to violence far more inclusive than you think, are there by your election. - secret [síːkrət] : 「秘密の、内緒の、ひそかな、隠れた」
- enemy [énəmi] : 「敵、敵国」
- least [líːst] : 「最も少ない、最小の」
- instead [instéd] of : 「〜の代わりに」
- unrecognized : 「承認されていない、正当に認められていない、認識されていない」
- swift [swíft] : 「敏速な、即座の、すぐに過ぎ去る」
- challenge [tʃǽlindʒ] : 「挑む、挑戦する、〜の意欲をかき立てる」
- combat [kɑ́mbæt] : 「戦闘、論戦、闘い」
- violence [váiələns] : 「暴力、バイオレンス、暴行、暴力行為、乱暴、武力衝突」
- far more : 「はるかに多く」
- inclusive [inklúːsiv] : 「すべてを含んだ、包括的な、包含的な」
- election [ilékʃən] : 「選挙、選択」
❖ "The secret enemies ~ "「平和に対する秘密の敵、」"your least decision ~ "「愛の代わりに、あなたが攻撃することを選んだ、ほんのちょっとした決定、」"unrecognized and swift ~ "「それらは、あなたに認識されることなく、あなたが思う以上の規模の包括的な戦闘と暴力とに、あなたを速(すみ)やかに駆り立てるのだが、」"are there by ~ "「それらは、あなたの決定によって、そこにあるのだ」。ここの主語である「敵」も「決定」も、共に、愛を代表とする実相に対する「幻想」のことで、その幻想を選ぶ決定をしたことを意味する。つまり、幻想は、愛という実相の敵であり、あなたは愛に代えて、その実相を攻撃することを選択したのだ、という意味。"least decision"「最小の決定」とあるが、大々的な決定、大決心、というわけではなく、なんとなく決定してしまったもの、という意味合いだろう。なんとなく決定したことなので、あなたはそれと気付かないのだ(unrecognized)。なかなかその存在に気付かないのだが、幻想のパワーはあなたに大きく作用して、あなたを盲目的な攻撃と暴力へ駆り立てていくのだ(challenge you to combat and to violence)。その攻撃と暴力は、愛を対象としたものに留まらず、ありとあらゆる実相、あるいは幻想さえも攻撃対象とする。まさに、思いも寄らぬほど広範囲に渡る包括的な攻撃性なのだ(far more inclusive than you think)。しかし、元を正せば、その攻撃と暴力の根源となった幻想は、あなたが選択したことなのである(are there by your election)。あなた以外の誰の責任でもない。ましてや、神の業でもなく、あなたが、あなた自身が選択して、この幻想世界を作り、幻想を崇め、幻想の攻撃と暴力を繰り返しているのだ。これが、この世の現実である。
Do not deny their presence nor their terrible results. All that can be denied is their reality, but not their outcome.- deny [dinái] : 「〜を否定する、否認する、拒む、拒絶する」
- presence [prézns] : 「存在すること、存在、居ること」
- terrible [térəbl] : 「ひどく嫌な、とても不快な、恐ろしい、怖い」
- result [rizʌ́lt] : 「結果、結末、成り行き効果、成果、成績」
- reality [riǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
- outcome [áutkʌ̀m] : 「結果、結末、成果、所産」
❖ "Do not deny their ~ "「それら(幻想)の存在を否定してはならないし、それらの悲惨な結果を否定してもならない」。おや?、意外だと思われたかも知れない。次を読もう。"All that can be ~ "「否定され得るものはすべて、それらの現実性だけであって、結果ではないのだ」。非常に難解である。後半部分から、解釈しよう。幻想を否定する場合、幻想が現実ではないことは否定出来るが、幻想の存在は否定出来ない、ということ。たとえば、夜見る夢の現実性は否定出来るが、夢の存在は否定出来ない。母親が子供に、夢を見ただけなんだよ、本当の事ではないんだよ、と言う意味がこれである。夢は存在するが、夢は現実ではないのだ。さらに、幻想の現実性は否定出来るが、幻想のもたらす結果は否定出来ない。たとえば、夜見る夢に脅えた影響、その結果は、恐れとして目覚めても残るのだ。夢の現実性は否定出来るが、夢の影響は否定出来ない。そこで、最初の文に戻ろう。幻想の存在と幻想のもたらす結果は否定するな、と言っている。否定出来ないから、否定するな、という意味なのだが、もう少し奥の深い意味があって、幻想の存在とその結果を強く否定することで、逆に、幻想の存在と結果を現実化してしまう恐れがあるのだ。たとえば、嫌いなヤツを強く否定することで、かえって、その嫌なヤツの存在が重くのしかかってくるという経験をお持ちであろう。同様に、強い否定は対象を現実化してしまう恐れがあるので、否定しない方がいいのだ。では、どうすればいいのか? 受け流してしまうのである。幻想の存在を否定するのではなく、幻想であると認識したら、それを受け入れて、受け流してしまうのである。これが、ACIMの言う「赦し(forgiveness)」なのだ。