●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-24.I.3:1 ~ T-24.I.4:7

3. All that is ever cherished as a hidden belief, to be defended though unrecognized, is faith in specialness.

  • cherish [tʃériʃ] : 「〜を大事にする、大切にする」
  • hidden [hídn] : 「隠された、秘密の」
  • belief [bilíːf] : 「信じること、信念、信仰、信条、信用、信頼」
  • defend [difénd] : 「〜を守る、防衛する、〜を擁護する」
  • though [ðóu] : 「〜だけれども、〜だけど」
  • unrecognized : 「承認されていない、正当に認められていない、認識されていない」
  • faith [féiθ] : 「信頼、信用、信じること、信仰、信条、自信、信念、確信」
  • specialness [spéʃəlnis] : 「特別性、特別であること」
❖ "All that is ever cherished ~ "「隠された信念として、ずっと大切にされてきたものすべては、」"to be defended ~ "「認識されていないとはいえ、守られて来たのだが、」"is faith in ~ "「それは、特別性に対する信仰である」。"hidden belief"「隠されてきた信念」とは、密かに幻想を信じているということ。たとえば、神を裏切って神から分離した罪があると信じていることは、これのよい例だ。罪の意識を隠し(hidden)、認識しているわけではないが(unrecognized)、その罪の意識を守り(defended)、大切にしてきたわけだ(cherished)。それは、特別性に対する信仰だと、言っている。幻想世界の成り立ちを考えれば理解出来るだろう。神の住む一元論実相世界から分離した後、神の子は二元論幻想世界を投射したのだが、これは分離の象徴である。本来、一元論実相世界で単一であったものを、幻想世界において分離、分裂させ、様々に細分化、区別化、差別化し、多様な世界を作り出したのだ。細分化、差別化、個別化、多様化を繰り返すことで、そこに、特殊性や特別性が生まれてくるのだ。そして、その特殊性こそが、幻想世界の多様な存在形態の基盤だと信じ込んでいるのである。



This takes many forms, but always clashes with the reality of God's creation and with the grandeur that He gave His Son.
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、姿、体つき、外見」
  • always [ɔ́ːlweiz] : 「いつも、常に」
  • clash [klǽʃ] : 「衝突する、ぶつかる」
  • clash with : 「〜と激しく衝突する、〜とぶつかり合う、〜と調和しない」
  • reality [riǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
  • grandeur [ɡrǽndʒər] : 「偉大さ、威厳、壮大さ、雄大」
❖ "This takes ~ "「これは、多くの形をとる」。"hidden belief"「隠されてきた信念」、つまり、幻想は、色々な形をとって現れる。神を裏切ったという罪の意識であったり、神から罰せられるという恐れであったり、心は肉体に従属するといった信念もその一つ。"but always clashes ~ "「しかし、それらは常に、神の創造したものの実在性や、神が神の子に与えた偉大さと激しくぶつかり合うのだ」。簡単に言えば、幻想は実相と衝突する、ということ。"the reality of God's creation"「神の創造したものの実在性」とは、神が創造した真実、という意味合い。たとえば、幻想の恐れは実相的な実在の平和と衝突し、愛は恐れと、心は肉体と衝突するのである。また、"the grandeur that He gave His Son"「神が神の子に与えた偉大さ」とは、神が神の子に継承した神の属性のこと。純粋で神聖、偉大な愛や喜びや美、真理、つまり、あらゆる真実である。光輝くすべてのものと考えていい。



What else could justify attack? For who could hate someone whose Self is his, and Whom he knows?
  • else [éls] : 「そのほかの」
  • what else : 「ほかに何か」
  • justify [dʒʌ́stəfài] : 「弁明する、正当化する」
  • attack [ətǽk] : 「攻撃、暴行、襲撃」
  • hate [héit] : 「〜を憎む、〜をひどく嫌う」
❖ 隠されてきた信念以外に、つまり、幻想以外に、"What else could ~ "「いったいその外の何が、攻撃性を正当化出来るだろうか」。幻想の攻撃性を正当化出来るのは幻想だけ。もっと、具体的に言えば、攻撃を正当化出来るのは、幻想を実在だと信じているエゴの思考システムだけである。 "For who could hate ~ "「なぜなら、一体誰が、自分の自己と同じ自己をもった相手を嫌えるだろうか」。"and Whom ~ "「(自分の自己と同じだと)知っている相手を毛嫌い出来るだろうか」。攻撃や嫌悪、憎悪を正当化出来るものは、幻想だけであって、実相はそんなことは出来ない。なぜなら、実相世界は一元論世界であって、単一性の世界であるからだ。自他一如の世界だから、自分と他者は同じ自己なのだ。他者を憎悪し攻撃することは、実相的には、自分自身を憎悪し攻撃することになるのである。そんなバカなことをする者はいない。



Only the special could have enemies, for they are different and not the same.
  • special [spéʃəl] : 「特別な、独特の、特別の、特有の」
  • enemy [énəmi] : 「敵、敵国」
  • different [dífərənt] : 「相違する、違っている、異なる」
  • same [séim] : 「同じ、同一の、変わらない」
❖ "Only the special ~ "「特別であることだけが、敵をもつことが出来るのである」。自分と他者が、互いに分離し、特別であると信じているから、他者を攻撃出来るのであり、他者を敵と見ることになるのだ。分離がなく、特別性が消滅した実相世界では、他者という概念自体も消滅しているから、敵という概念もない。"for they are different ~ "「なぜなら、特別だと思っている者は、違っているし、同一ではないからだ」。特別だと思うところに、差別化が生じ、自分は他者とは異なっているという独自感覚が生まれる。特別性、特殊性、差別化、細分化、多様化は、分離の象徴なのだ。分離は幻想であるから、特別性、特殊性、差別化、細分化、多様化も幻想に過ぎない。共鳴、調和、融合、和合、単一性、収斂収束、等々の、実相世界の動きと対照をなす。



And difference of any kind imposes orders of reality, and a need to judge that cannot be escaped.
  • difference [dífərəns] : 「違い、差異、相違」
  • of any kind : 「いかなる種類の」
  • impose [impóuz] : 「課す、負わす、与える、強いる、強要する」
  • order [ɔ́ːrdər] : 「順、順序、順番、順位、序列、系列」
  • need [níːd] : 「必要性、必要なもの、必要物」
  • judge [dʒʌ́dʒ] : 「〜を判断する、〜を審判する」
  • escape [iskéip] : 「逃げる、避ける」
❖ "And difference of ~ "「いかなる種類の相違性も、現実性に序列を課す」。"and a need to ~ "「そして、避けることが出来ない、判断という必要性を課すのだ」。様々な相違点が見つかることで、価値のあるなし、重要性のあるなし、善し悪し、等々の現実的な序列(orders of reality)が生み出される。序列を生むために、価値判断、善悪判断、等々の判断(judge)が、必然的に(cannot be escaped)必要とされる(need)ようになるのだ。これが、この世の、極く普通の姿である。普通の光景であるが、しかし、決して真実ではない。



4. What God created cannot be attacked, for there is nothing in the universe unlike itself.
  • create [kriéit] : 「創造する、創り出す」
  • attack [ətǽk] : 「〜を襲う、〜を攻撃する、〜を非難する」
  • universe [júːnəvə̀ːrs] : 「宇宙、銀河、万物、森羅万象、全世界」
  • unlike [ʌnláik] : 「似ていない、異なっている」
❖ "What God created ~ "「神が創造したものは、攻撃されることはないのだ」。"for there is nothing ~ "「なぜなら、それ自体と似ていないものなど、この世界には存在しないからだ」。神の創造した実相世界は一元論世界であり、単一存在の世界である。分離分裂はまったくなく、すべての存在が、真実という一点において同一なのだ。愛と喜びは同一であり、喜びと平和も同一であり、愛、喜び、平和は美であり、真理である。ホーリー・スピリットも神の子も、実相世界では融合し、神さえその融合に加わって、3者が一体となり、三位一体を作り出す。したがって、区別も差別もない単一存在の実相世界に、どうして攻撃など存在し得ようか。



But what is different calls for judgment, and this must come from someone "better," someone incapable of being like what he condemns, "above" it, sinless by comparison with it.
  • call for : 「〜を必要とする、〜を要求する」
  • judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、意見、分別」
  • come from : 「〜から来る、〜に由来する、源を〜に発する」
  • better [bétər] : 「より良い、より優れている、優越する」
  • incapable [inkéipəbl] : 「能力がない、できない」
  • incapable of : 「〜ができない、〜をする能力がない」
  • condemn [kəndém] : 「〜を非難する、責める、罵倒する、糾弾する」
  • above [əbʌ́v] : 「上側に、〜の上に、〜より上に、〜を超えて、〜を超越して」
  • sinless [sínlis] : 「罪のない、潔白な」
  • comparison [kəmpǽrisn] : 「比べること、比較、対照」
  • by comparison with : 「〜と比べれば」
❖ "But what is different ~ "「しかし、異なるものは、判断を要求する」。比較して、どちらがより価値があるか、より重要か、より人気があるか、判断を下すことを求めるのだ。序列付けを判断に委ねるわけである。したがって、幻想世界は序列の世界であると言える。対して、実相世界は、完全平等の世界である。序列はない。"and this must come ~ "「この判断は、『より良い』誰か、非難すべきものと似たようなものではない誰か、『より上位』の誰か、それと比較して罪が少ない誰か、等々から、下されるのである」。序列の上位の者から、序列の下位の者へ判断が下され、判断を下した上位者は、ますます上位にランキングされるというわけである。こうして、差別化、特殊化がますます鮮烈になっていき、格差の溝は深まっていく。分離分裂が促進されるのである。したがって、幻想がますます深まり、その不気味な黒雲の中で、人々の孤立化が進むのである。人々の猜疑心は募り、互いの攻撃心が急速に膨らんでいく。これは、まさに、エゴの思うつぼなのである。



And thus does specialness become a means and end at once.
  • thus [ðʌ́s] : 「このようにして、こんなふうに」
  • become [bikʌ́m] : 「〜になる」
  • means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
  • end [énd] : 「目的、目標、目当て、目途」
  • at once : 「同時に、一気に、一挙に」
❖ "And thus does ~ "「こうして、特別性は、手段にも目的にもなっていくのである」。分離を促進し、差別化を深めるための手段として、特別性が利用され、また、特別性を深める目的で、分離と差別が利用される。まあ、両者、同じ穴のムジナ同士、手段になったり目的になったりして、互いに互いの幻想を深めていくのである。幻想地獄、これがこの世の別名に一番ふさわしいかも知れない。



For specialness not only sets apart, but serves as grounds from which attack on those who seem "beneath" the special one is "natural" and "just. "
  • set apart : 「離す、分離する」
  • serve [sə́ːrv] : 「〜の役目をする、役に立つ」
  • serve as : 「〜としての機能を果たす、〜として役立つ」
  • ground [ɡráund] : 「地面、地べた、地盤、立場、根拠、原因、理由」
  • beneath [biníːθ] : 「〜の真下に、〜に値しないで、ふさわしくなくて」
  • natural [nǽtʃərəl] : 「自然の、普通の」
  • just [dʒʌ́st] : 「正しい、公正な、当然の、もっともな」
❖ "For specialness not ~ "「なぜなら、特別性は分離を加速するだけでなく、」"but serves as ~ "「〜という地盤(根拠)の役目を果たしているからだ」。"from which attack ~ "「特別な者の『下』にいるように思われる者を攻撃することが、『自然な』ことであり、『正当な』ことだとする」地盤(根拠)の役目を果たしているからだ。自分は特別に地位が高から、自分は特別に頭がいいから、自分は特別に美人だから、自分は特別に金があるから、自分は特別に権力があるから、等々の理由で、自分より下位の者(beneath)を攻撃することが自然なこと(natural)であり、正当化される(just)と思い込んでいるのだ。その基盤(grounds)になっているものが、特別性、特殊性は正当であるという歪んだ価値観である。エゴの価値観である。



The special ones feel weak and frail because of differences, for what would make them special is their enemy.
  • feel [fíːl] : 「感じがする、感じる、〜のような気がする」
  • weak [wíːk] : 「弱い、劣っている、力がない、脆弱な」
  • frail [fréil] : 「虚弱な、もろい、壊れやすい」
  • because of : 「〜のために、〜のせいで」
  • difference [dífərəns] : 「違い、差異、相違」
  • make : 「〜の状態を作り出す、〜にする」
  • enemy [énəmi] : 「敵、敵国」
❖ しかし、"The special ones ~ "「特別である者は、違いがあるために、弱々しく脆いものと感じているのだ」。"for what would ~ "「なぜなら、彼らを特別な者に仕立てあげているものは、かれらの敵であるからだ」。特別な者が特別でいられる理由は、下位の者が存在しているという事実である。その下位の者を攻撃して、自分の上位性を確保しているのだから、結局、敵を作り、敵から守ることで自分の存在を維持しているに過ぎないのだ。ややもすれば、戦いに敗れて、自分が下位者に成り下がってしまう恐れを常に抱いている。それが、特別である者の弱さと脆さなのだ。特別である者は、誰にも依存しない、孤高の強さを持ち合わせてはいないのである。



Yet they protect its enmity and call it "friend. "On its behalf they fight against the universe, for nothing in the world they value more.
  • protect [prətékt] : 「保護する、守る、防御する、かばう」
  • call [kɔ́ːl] : 「〜を〜と呼ぶ、〜を〜と名付ける」
  • friend [frénd] : 「友人、仲間、友達、相棒」
  • on one's behalf : 「〜のために、〜の利益になるように」
  • fight [fáit] : 「戦う、競う、格闘する」
  • against [əɡéinst] : 「〜に逆らって、〜にそむいて、反抗して」
  • fight against : 「〜と戦う」
  • value [vǽljuː] : 「〜を高く評価する、重視する、大事にする」
❖ "Yet they protect ~ "「しかし、特別である者は、その敵を守り、その敵を『友』と呼んでいる」。なにしろ、下位の者が存在していないことには、自分の上位性が保てないので、下位の者を守り、友として扱うのである。偽善である。これもまた、彼らの存在の脆さである。"On its behalf they ~ "「そのために、特別である者は、世界と戦うのである」。この弱肉強食の世界で、上位者として生き延びるために、世界を敵に回して戦い続けるのである。戦いを止めれば、世界に飲み込まれてしまうと信じている。"for nothing in ~ "「なぜなら、上位者としての特別性に勝る価値のあるものはないと、信じているからだ」。この姿が、いわゆるこの世界で成功した者達の姿なのだ。しかも、悲しいことに、この価値観は、自己確立する以前の子供の頃から、大人たちに叩き込まれるのである。競争社会で生き延びるためには、その価値観を受け入れて、自分を戦士と見立てて世界と戦っていかねばならないと、執拗に教え込まれるのだ。敗者は負け犬と呼ばれ、勝者は太った豚となる。どちらにしても、奇妙な妖怪もどきがうろつく世間ではある。
 
 
 

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