A Course in Miracles
Text - Chapter 28
The Undoing of Fear
恐れの取り消し
I. The Present Memory
現在の記憶
1. The miracle does nothing. All it does is to undo. And thus it cancels out the interference to what has been done.
- undo [ʌndú] : 「〜を元に戻す、元どおりにする、取り消す」
- thus [ðʌ́s] : 「このようにして、それ故に、従って」
- cancel [kǽnsl] : 「〜を取り消す、〜を中止する、取りやめる」
- cancel out : 「取り消す、消す、相殺する、無効にする」
- interference [ìntərfíərəns] : 「干渉、妨害、障害、邪魔、支障、衝突」
- done [dʌ́n] : 「do の過去分詞」
❖ "The miracle does ~ "「奇跡は、何もしない」。奇跡は、何かを特別に創造することはない。"All it does is ~ "「奇跡がなすことのすべては、取り消しなのだ」。"And thus it cancels ~ "「こうして、奇跡は、なされたことに対して干渉するものを取り消しにするのである」。たとえば、あなたがこの世界でなしてしまったことに対して、あなたの罪悪感が干渉して、あなたに苦痛を与える。その罪悪感を、奇跡は取り消しにしてくれるのである。あなたがこの幻想世界でなしたことも、それに対する罪の意識も、すべて幻想に過ぎない、夢に過ぎないと気付かせてくれるのだ。夢から覚めれば、夢はおのずと消えてしまう。
It does not add, but merely takes away. And what it takes away is long since gone, but being kept in memory appears to have immediate effects.
- add [ǽd] : 「加える、合計する、足す、追加する」
- merely [míərli] : 「ただ単に、単に」
- take away : 「取り除く、持ち去る、撤去する」
- long since : 「ずっと前に」
- gone [ɡɔ́ːn] : 「go の過去分詞形」
- kept [képt] : 「keep の過去・過去分詞形」
- keep [kíːp] : 「〜を持ち続ける、保持する」
- memory [méməri] : 「記憶、思い出、記憶力」
- appear [əpíər] : 「〜のように見える、〜と思われる」
- immediate [imíːdiət] : 「即時の、即座の、即刻の、直接の、じかの」
- effect [ifékt] : 「結果、影響、作用、効果、効力」
❖ "It does not add ~ "「奇跡は、加えるのではなく、ただ、取り去るだけなのだ」。幻想としてこびりついたものを剝ぎ落としてしまうのだ。"And what it takes away ~ "「奇跡が取り去るものは、ずっと昔に過ぎ去ったものであるが、」"but being kept in ~ "「記憶に留めて置くことで、直接的な影響をあたえているように見えるのである」。奇跡が取り消す対象は、過去の出来事に対する罪の意識であり、その意味では、罪も過ぎ去った過去のものである。しかし、出来事と罪の意識は、記憶に留め置かれることで、忘れることはもちろん出来ないし、あたかも今、この瞬間に直接の影響を与えているかのように思えるのだ。つまり、痛み、苦しみという形で影響を与えるのである。
This world was over long ago. The thoughts that made it are no longer in the mind that thought of them and loved them for a little while.
- over [óuvər] : 「終わって、終了して、完了して」
- long ago : 「ずっと以前に」
- thought [θɔ́ːt] : 「考え、思考、思索、熟考」
- no longer : 「もはや〜でない」
- thought [θɔ́ːt] : 「think の過去・過去分詞形」
- while [hwáil] : 「少しの時間、時間、期間」
- for a little while : 「少しの間だけ」
❖ "This world was ~ "「この世界は、ずっと前に終わっているのだ」。"The thoughts that made ~ "「その世界を作った思いは、そんな思いを抱き、しばらくの間、その思いを愛した心の中には、もはや、存在していない」。実相世界は無時間無空間の世界であり、すべてのことが一瞬にして起き、その一瞬が永遠に続く。この幻想世界で起きたすべての事象は、ホログラフィック的に記録され、我々は、時間と空間の存在するこの幻想世界で、その記録された事象を追体験しているのだ。したがって、神の子が神から分離してこの幻想世界を作ったことも、神の子が神の元へ回帰して、この幻想世界が消滅してしまったことも、すでに起きたことなのだ。その意味で、この世界は、ずっと以前に終わっているのである。もちろん、幻想世界を作るきっかけとなった思い、神から分離して神なしで神のように生きるという思いも、もう、神の子の心の中に存在してはいない。
The miracle but shows the past is gone, and what has truly gone has no effects.
- show [ʃóu] : 「見せる、示す、表す」
- past [pǽst] : 「過去、昔」
- truly [trúːli] : 「全く、本当に、真に」
❖ "The miracle but shows ~ "「奇跡は、過去は過ぎ去ったことなのだということを示しているだけなのだ」。過去は過ぎ去って、存在していないことを示すのが奇跡。存在しているかに見えることが幻想であり、奇跡が幻想の存在を否定することによって、幻想の過去は消滅するのである。"and what has truly ~ "「そして、確かに過ぎ去ったものは、何の影響力もないのである」。過ぎ去って存在しない幻想に、影響力はない。影響しているかに見えることが、幻想なのだ。
Remembering a cause can but produce illusions of its presence, not effects.
- remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
- cause [kɔ́ːz] : 「原因、要因、理由、動機」
- produce [prədjúːs] : 「〜を作り出す、産生する、引き起こす」
- illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
- presence [prézns] : 「存在すること、存在」
❖ "Remembering a cause can ~ "「原因を思い出すことで、原因が存在しているかのような幻想を生み出すことは出来ても、影響を与えることは出来ない」。過去の出来事の原因自体も過去のものであるが、その原因を思い出して調べる時、確かに、その原因が今存在しているかのように錯覚してしまうことはあっても、その原因が今に影響を与えて結果するなどということはない。
2. All the effects of guilt are here no more. For guilt is over. In its passing went its consequences, left without a cause.
- guilt [gílt] : 「犯罪、あやまち、有罪、罪」
- no more : 「もはや〜しない」
- passing [pǽsiŋ] : 「通過、経過、消滅」
- went [wént] : 「go の過去形」
- consequence [kɑ́nsəkwèns] : 「結果、結論、結末、重大さ、重大性」
- left [léft] : 「leave の過去・過去分詞形」
- leave [líːv] : 「〜から離れる、〜を去る」
- without [wiðáut] : 「〜なしで、〜を持たないで、〜なしに」
❖ "All the effects of guilt ~ "「あらゆる罪の結果というものは、もはやここにはない」。幻想が赦されて消滅したこの場に、罪の影響も結果も存在しない。"For guilt is ~ "「なぜなら、罪は終わったのだ」。罪は過去のことであって、終わったのだ。終わったものは存在しない。"In its passing went ~ "「罪が去ってしまったので、罪のもたらした結果も、過ぎ去ったのだ」。"left without ~ "「原因を伴うことなく、去ったのだ」。原因という影を記憶の中に残して、罪の影響、罪の結果は消滅した。
Why would you cling to it in memory if you did not desire its effects?
- cling [klíŋ] : 「執着する、しがみつく」
- cling to : 「〜に固執する、〜に粘着する」
- desire [dizáiər] : 「〜を望む、希望する、欲する」
❖ "Why would you ~ "「もし〜であるなら、なぜあなたは、記憶の中の原因にこだわろうとするのだろうか」。"if you did not desire ~ "「もしあなたが、原因のもつ結果を熱望しないのなら、」なぜあなたは、記憶の中の原因にこだわろうとするのだろうか。結果は消滅したのだから、原因を掘り下げて考えなくていい。原因を詮索する必要があるののは、結果があなたに影響力をもっている時だけである。
Remembering is as selective as perception, being its past tense.
- remembering [rimémbəriŋ] : 「想起、思い出すこと」
- selective [siléktiv] : 「選択の、選択できる、選択的な、抜粋の」
- perception [pərsépʃən] : 「知覚、認知知見、見識、感じ方」
- tense [téns] : 「時制」
- past tense : 「過去形、過去時制」
❖ "Remembering is as selective ~ "「思い出すということは、知覚と同じように、選択出来るものなのだ」。知覚は、知覚したいと思うものを知覚し、記憶も、思い出したいと思うものを思い出す。共に、恣意的であり、選択的である。"being its past ~ "「なぜなら、それは過去事象なのだから」。過去に起きたことであるから、その中から、思い出したいものだけを思い出すのである。ならば、苦の原因も思い出すことが出来るはずだが、今、その苦が消滅したと言うのに、わざわざ苦の原因を思い出す必要はあるまい。
It is perception of the past as if it were occurring now, and still were there to see.
- as if : 「あたかも〜かのように、〜と言わぬばかりに」
- occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる、現れる」
❖ "It is perception of ~ "「思い出すとは、まるで、何かが今起きていて、まだそこにあって見えるかのように、過去を知覚することである」。したがって、罪や苦の原因をまざまざと思い出せば、それが目の前に実在しているかのように見え、結果である罪や苦が、再び亡霊のように立ち現れる危険性があるのだ。亡霊に騙されないだけの覚悟があればいいのだが、それは、なかなか難しいのだ。
Memory, like perception, is a skill made up by you to take the place of what God gave in your creation.
- skill [skíl] : 「技能、手腕、スキル、技、技術、技量」
- take the place of : 「〜の代わりをする、〜に取って代わる」
- gave [géiv] : 「give の過去形」
- creation [kriéiʃən] : 「創造、創作、創作物、作品」
❖ "Memory, like perception ~ "「記憶は、知覚と同様、神があなたを創造する時に与えたものの代わりに、あなたによって作り出された技術なのである」。つまり、記憶は知覚と同様に、幻想世界で生きていくための便宜的な技術、道具に過ぎないのだ。"what God gave in your creation"「神があなたを創造する時に与えたもの」とは、記憶や知覚がその代わりとなったもののことであるから、"knowledge"「叡智」のことである。叡智は、記憶することもなく、知覚することもなく、すべてを直覚的に、全的に把握する能力である。我々はこの叡智を忘れてしまった。と言うより、自分に叡智があることをすっかり忘れて、記憶と知覚に頼って現世を生きているのである。
And like all the things you made, it can be used to serve another purpose, and to be the means for something else.
- use [juːz] : 「使う、利用する、生かす、働かせる」
- serve [sə́ːrv] : 「〜に仕える、〜のために働く」
- another [ənʌ́ðər] : 「もう一つの、別の、ほかの」
- purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、意図、狙い、意向、趣旨、意味」
- means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
- something else : 「何か他のもの 」
❖ "And like all the things ~ "「あなたが作ったあらゆるものと同様に、」あなたが、この幻想世界で生きていくために作った多くの便宜的な道具と同じく、"it can be used ~ "「記憶は、また別の目的のために使うことが出来るのだ」。"and to be the means ~ "「その他のもののための道具となり得るのである」。たとえば、知覚は、それを修正することで叡智へ質転換すること出来る。また、罪の意識でさえ、それを赦しの道具として利用することで、この幻想世界から救われる手段に利用出来るのである。
It can be used to heal and not to hurt, if you so wish it be.
- heal [híːl] : 「治す、治癒する、治療する、癒やす、救う」
- hurt [hə́ːrt] : 「〜を傷つける、〜に苦痛を与える」
- wish [wíʃ] : 「望む、願う」
❖ "It can be used to ~ "「記憶は、あなたが、そうあって欲しいと望むなら、傷つけるためではなく、ヒーリングのために使われ得るのだ」。幻想に過ぎないものでも、それをうまく利用することで、実相の真実を勝ち取ることが出来る。肉体もそうなのだ。肉体を上手に利用することで、肉体を超越した存在へ達することが出来る。幻想の肉体を踏み台にして、実相的実在に質転換することが出来るのである。