●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



T-28.I.5:1 ~ T-28.I.6:7

5. The Holy Spirit's use of memory is quite apart from time.
  • use [júːs] : 「使うこと、利用、使用」
  • memory [méməri] : 「記憶、思い出、記憶力」
  • quite [kwáit] : 「すっかり、全く、完全に」
  • apart from : 「〜から離れて、〜は別として、〜はさておき」
❖ "The Holy Spirit's use ~ "「ホーリー・スピリットの記憶の使い方は、まったく時間に関係しない」。ホーリー・スピリットは記憶を、過去という時間に限って扱うことはない。過去の記録として、記憶を限定することはしない。



He does not seek to use it as a means to keep the past, but rather as a way to let it go.
  • seek [síːk] : 「捜し求める、捜し出す、求める、追求する」
  • means [míːnz] : 「手段、方法、資力」
  • keep [kíːp] : 「〜を持ち続ける、保持する」
  • past [pǽst] : 「過去、昔」
  • rather [rǽðər] : 「それどころか、むしろ」
  • way [wéi] : 「方法、やり方、手段、方途、様式」
  • let go : 「手を放す、ほっとく、あきらめる、忘れる」
❖ "He does not seek to ~ "「ホーリー・スピリットは、過去を保持する手段として、記憶を使おうと求めることはしない」。"but rather as ~ "「そうではなく、むしろ、過去を手放す手段として記憶を利用しようとするのだ」。ホーリー・スピリットは、幻想に過ぎない過去を赦して手放す道具として、記憶を利用する。記憶は、過去という幻想を頑(かたく)なに保持しており、したがって、過去は現在に大きな影響を与えている。その過去のしがらみから解き放つために、ホーリー・スピリットは、記憶を、過去の赦しに利用するのである。



Memory holds the message it receives, and does what it is given it to do.
  • hold [hóuld] : 「維持する、保持する、持続する」
  • message [mésidʒ] : 「伝言、メッセージ、通報、連絡事項、通信」
  • receive [risíːv] : 「〜を受ける、受け取る、受領する、入手する」
  • given [gívn] : 「give の過去分詞形」
❖ "Memory holds the message ~ "「記憶は、受け取ったメッセージを保持し、」"and does what it is ~ "「与えられたなすべきことをする」。記憶は過去の記録を忠実に保持し、頭脳が命令ずるままに働く。頭脳は、過去に対して、その復讐を模索する。



It does not write the message, nor appoint what it is for. Like to the body, it is purposeless within itself.
  • write [ráit] : 「〜を書く、執筆する」
  • appoint [əpɔ́int] : 「〜を任命する、選任する、指名する、決める」
  • purposeless [pə́ːrpəslis] : 「目的のない、無益な、無意義な」
❖ "It does not write ~ "「記憶は、(自ら)メッセージを書くことはない」。記憶は、記録だけに専念する。"nor appoint what ~ "「記憶は、それが何のためになるか、(自ら)指示することはない」。記憶したものを何に役立てるのか、記憶は関知しない。"Like to the body ~ "「肉体同様、記憶も、それ自体として目的を持ってはいないのだ」。したがって、記憶は何かに利用されることはあっても、何かを利用して目的を果たすことはない。



And if it seems to serve to cherish ancient hate, and gives you pictures of injustices and hurts that you were saving, this is what you asked its message be and that it is.
  • serve [sə́ːrv] : 「〜に仕える、〜のために働く」
  • cherish [tʃériʃ] : 「〜を大事にする、大切にする」
  • ancient [éinʃənt] : 「古くからの、古い、古来の」
  • hate [héit] : 「憎悪、憎しみ、嫌悪」
  • picture [píktʃər] : 「絵、像、絵画、図面、図式」
  • injustice [indʒʌ́stis] : 「不公平、不正、不法、不当」
  • hurt [hə́ːrt] : 「傷、けが、苦痛、悪意、不正」
  • save [séiv] : 「確保しておく、取っておく、残しておく」
  • ask [ǽsk] : 「〜を頼む、依頼する、〜してほしいと頼む」
❖ "And if it seems to ~ "「もし記憶が、昔の憎しみを大切にするために仕事をするように見えたなら、」"and gives you pictures ~ " 「そして、あなたに、あなたが保持し続けている不正や苦痛の絵を与えるように見えたら、」つまり、昔の憎しみを記憶していて、不正の与える苦痛に今も苦しむようなら、"this is what you ~ "「これこそが、あなたが記憶に対して求めたメッセージであり、そうなったということなのだ」。あなたの意思に反して、憎しみや不正や苦痛が、勝手に記憶の中に記録されているのではない。あなたが、自らの意思で、憎しみや不正や苦痛のメッセージを記憶に託して保持していたということなのだ。記憶を操作しているのは、あなた自身である。



Committed to its vaults, the history of all the body's past is hidden there.
  • commit [kəmít] : 「〜を収容する、〜にすべてをささげる」
  • vault [vɔ́ːlt] : 「貯蔵所、地下墓所」
  • history [hístəri] : 「歴史、経歴、病歴、履歴、前歴、過程」
  • hidden [hídn] : 「hide の過去分詞形」
  • hide [háid] : 「隠す、隠蔽する、秘密にする」
❖ "Committed to its vaults ~ "「記憶という地下墓地に収められて、」"the history of all ~ "「肉体の過去にまつわるあらゆる歴史が、その地下墓地という記憶の中に隠されているのだ」。記憶といっても、すぐに思い出されるものばかりではなく、忘却させられた記憶も多々存在する。しかし、それは失われた記憶ではなく、ただ、無意識の底の底、まるで地下墓地のような記憶の領域に隠されているだけなのだ。肉体をもって暮らしたあらゆる記憶が、そこに眠っている。



All of the strange associations made to keep the past alive, the present dead, are stored within it, waiting your command that they be brought to you, and lived again.
  • strange [stréindʒ] : 「奇妙な、変わった、変な、見知らぬ」
  • association [əsòusiéiʃən] : 「連想、関連付け、交際、付き合い」
  • alive [əláiv] : 「生存して、生きていて、活動して、動作して」
  • present [préznt] : 「今、現在」
  • dead [déd] : 「死んでいる、生命のない、終わってる」
  • store [stɔ́ːr] : 「〜を蓄える、保管する、保存する、格納する」
  • within [wiðín] : 「〜の中に、〜の内側に」
  • wait [wéit] : 「〜を待つ」
  • command [kəmǽnd] : 「指令、命令、指揮、統御」
  • brought [brɔ́ːt] : 「bring の過去・過去分詞形」
  • bring [bríŋ] : 「〜をもたらす〜を持って来る」
❖ "All of the strange associations ~ "「過去を生かし、現在を殺しておくために作られた奇妙な連想のすべては、(記憶の)地下墓地に格納されているのだ」。過去という幻想にまつわる数々の思い出、その奇妙な記憶、たとえば、肉体に加えられた痛みや傷の数々、悔しい思いや、別れの悲しみ、不正に対する憤りや怒り、嫉妬、等々の記憶が、無意識の奥底、記憶の地下墓地に埋葬されている。あたかも、今なお、そんな過去の亡霊が生き長らえ、現在の記憶を殺しかけているようだ。"waiting your command ~ "「そして、それらは、あなたの元へともたらされ、再び生きるようにと、あなたから命令されるのを待っているのである」。過去という亡霊は、今という時に彷徨(さまよ)い出るのを待っている。



And thus do their effects appear to be increased by time, which took away their cause.
  • thus [ðʌ́s] : 「このようにして、それ故に、従って」
  • effect [ifékt] : 「結果、影響、作用、効果、効力」
  • appear [əpíər] to do : 〜するように見える
  • increase [inkríːs] : 「増える、増大する、大きくなる」
  • took [túk] : 「take の過去形」
  • take away : 「取り除く、持ち去る、撤去する、運び去る、奪い去る」
  • cause [kɔ́ːz] : 「原因、要因、動機、理由」
❖ "And thus do their ~ "「こうして、それらの影響は、時間が経つにしたがって、ますます大きくなっていくように見える」。"which took away ~ "「しかも、それらは、原因そのものを奪い去ってしまうのである」。過去の記憶の亡霊達は、その亡霊を生み出した原因を忘れて、まるで根無し草のように彷徨(さまよ)うのである。彷徨いながら、ますます巨大化していく。過去の亡霊が暴れ出し、手に負えなくなってしまうのだ。



6. Yet time is but another phase of what does nothing.
  • another [ənʌ́ðər] : 「もう一つの、別の、ほかの」
  • phase [féiz] : 「面、相、様相、位相、段階、局面」
❖ "Yet time is but another ~ "「しかし、時間は、何もなさないという、また別の相である」。実相的な見地に立てば、時間は幻想であり無である。その意味では、時間は何かをなすわけもなく、時間が何かを作り出すわけでもない。ところが、この幻想世界では、あたかも時間は現実に存在し、時間が現実を支配し、時間が記憶を作り出しているように見えるのだ。それが、幻想的な時間の相である。



It works hand in hand with all the other attributes with which you seek to keep concealed the truth about yourself. Time neither takes away nor can restore.
  • work [wə́ːrk] : 「働く、作業する、取り組む」
  • hand in hand with : 「〜と手をつないで、〜と手を取りあって、〜と提携して」
  • other [ʌ́ðər] : 「ほかの、そのほかの、残りの、もう一方の」
  • attribute [ǽtribjùːt] : 「特質、特性、性格、属性」
  • concealed [kənsíːld] : 「隠れた、隠し持っている」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、本当のこと」
  • neither [níːðər] : 「どちらも〜ない」
  • restore [ristɔ́ːr] : 「修復する、復活させる、復元する、再構築する」
❖ "It works hand in hand ~ "「時間は、その他の(幻想)の特性と連携して動作する」。たとえば、時間は、空間というまた別の幻想と連動して、あたかも時間とともに空間を移動できるような錯覚を生み出している。時間は、空間が分離や広がりを生み出すという特性を利用しているのだ。"with which you seek ~ "「その他の幻想の特性によって、あなたは、あなたに自身に関する真実を隠したままにしておこうとしているのである」。たとえば、時間と空間の広がりと隔たりを利用して、神の子が本来単一存在であるという真実を隠して、分離し、独立した存在であるかのように錯覚させているのである。その結果、"Time neither takes ~ "「時間は、取り去ることも修復することも出来ないものとなっている」。幻想世界が、完全に、時間に支配されているのである。支配というより、絶対的存在として、幻想世界の最上部に君臨している、と言った方がいいだろうか。



And yet you make strange use of it, as if the past had caused the present, which is but a consequence in which no change can be made possible because its cause has gone.
  • make use of : 「〜を使用する、〜を利用する」
  • as if : 「あたかも〜かのように、〜まるで〜であるかのように」
  • cause [kɔ́ːz] : 「〜を引き起こす、招く、〜の原因になる」
  • consequence [kɑ́nsəkwèns] : 「結果、結論、結末、成り行き、帰結」
  • change [tʃéindʒ] : 「変化、変更、移行、交換、変更点、修正点」
  • possible [pɑ́səbl] : 「可能性がある、起こり得る、あり得る」
  • gone [ɡɔ́ːn] : 「go の過去分詞形」
❖ "And yet you make ~ "「そして、あなたは、時間を奇妙に使う」。"as if the past had ~ "「あたかも、過去が現在を生み出しているかのよう(な使い方)だ」。"which is but a consequence ~ "「しかし、過去とは、原因がなくなったので変化など起きる可能性のないものの結果ということになるのだ」。非常に難解な部分である。時間の存在しない実相的な視点から眺めると、幻想世界の出来事のすべては一瞬にして生じ、その一瞬が永遠に存在し続けている状態のなのだ。時間を軸として、原因が結果を生み出しているわけではないのである。我々は、そこで、時間という幻想を生み出して、すでに存在しているあらゆる可能性を内包した既成事実から、好きな事象を選び出し、あたかも映画かビデオテープを再生して見ているかのように、この幻想世界を生きているのである。本文を見ると、実相世界から眺めると、原因など存在しないから変化など起きない世界で(no change can be made possible because its cause has gone)、時間を幻想することで、あたかも原因が結果を生み出しているかのように(which is but a consequence)錯覚しているだけだ、という意味合いになる。それが、いかにも奇妙な時間の使い方だ、と述べているのである。



Yet change must have a cause that will endure, or else it will not last. No change can be made in the present if its cause is past.
  • endure [indjúər] : 「耐える、持ちこたえる、持続する」
  • or else : 「あるいは、さもないと」
  • last [lǽst] : 「続く、存続する、持続する、耐える」
  • past [pǽst] : 「過ぎた、過ぎ去った、過去の」
❖ "Yet change must have ~ "「しかし、変化には、持続する原因がなくてはならない」。"or else it will ~ "「さもないと、変化し続けることはない」。したがって、この幻想世界では、時間という錯覚を利用して、現在が原因となり、未来に結果を生み出すことで変化が持続するかのように見せかけているのである。"No change can be ~ "「もし、原因が過ぎ去ってしまってないなら、現在において、どんな変化ももたらされることは不可能だ」。時間という幻想を設定した以上、原因なくして結果は生じない。したがって、原因がなければ、どんな変化も起きないのだ。



Only the past is held in memory as you make use of it, and so it is a way to hold the past against the now.
  • held [héld] : 「hold の過去形」
  • against [əɡéinst] : 「〜に逆らって、〜にそむいて、反抗して」
❖ "Only the past is held ~ "「過去だけが、あなたがそれを使いたいように、記憶の中に保持されているのだ」。"and so it is a way ~ "「そこで、記憶は、現在に対抗して過去を保持する道具になっているのである」。本当は、過去が原因となって現在が生み出されたわけではないのに、その事実に対抗して、記憶の中の過去を勝手に解釈し、過去によって今があると思い込んでいるのである。この段落は、非常に難解な部分であるが、この幻想世界がビデオや映画だと思えば、解釈がうまくいくだろう。映画は記録されたものであって、その実態が原因と結果で構成されているものではない。映画は、上映された時点で時間を追いかけるが、映画自体が時間を持っているわけではないのだ。記憶された(映像に記録された)事象を再現する時に限って、時間という錯覚を利用しているのである。これとまったく同様に、この幻想世界は、遠い昔に起きた事象がホログラフィック的にすべて記録され、それを選択的に追体験するために、時間という錯覚を利用して経験しているに過ぎない。記録されたホログラフィックには、原因も結果もない。すべては過ぎ去ったことであって、時間さえ存在しないのだ。
 
 
 


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