●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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T-12.VIII.7:1 ~ T-12.VIII.8:9

7. Yet it does not matter how much distance you have tried to interpose between your awareness and truth.

  • matter [mǽtə(r)] : 「重要である、重要になる、問題である、問題となる」
  • how much : 「いくらで、どのくらいの量で」
  • distance [díst(ə)ns] : 「〜までの距離、間隔、隔たり、すき間」
  • interpose [ìntə(r)póuz] : 「〜を間に入れる、差し挟む」
  • between [bitwíːn] A and B : 「AとBの間に」
  • awareness [əwéə(r)nəs] : 「認識、自覚、気付いていること、意識性」
  • truth [trúːθ] : 「現実、事実、真相、真理、真実性、迫真性」
❖ "Yet it does not matter ~ "「しかし、あなたの意識性と真実の間にどれくらいの隔たりを設けようとしたかは問題でない」。難解である。あなたの頭脳が知覚し、意識する真実と、実相の真実との間には隔たりがある。たとえば、あなたの頭脳は、あなたが実体をもった肉体である真実を主張するであろう。しかし、実相的真実は、肉体は幻覚であり、本当は存在しないと宣言する。その両者の隔たりは非常に大きい。しかし、その隔たりの大きさは問題ではないとACIMは言う。隔たりの大きさではなく、隔たり自体が、あるいは隔たりを生み出す源が問題になるのだ。つまり、実相を知覚し、意識することが出来ないでいるあなたの現実が問題となる。では、あなたはどうするべきか? 知覚と意識を捨てればいいか? いや、そうではなく、ホーリー・スピリットの力を借りて知覚と意識をヒールすることが求められているのだ。ホーリー・スピリットのヴィジョンを借りて修正しなくてはいけない。あるいは、ホーリー・スピリットのヴィジョンをあなたのヴィジョンとしなくてはいけない。では、ホーリー・スピリットのヴィジョンとは? 次の文章を読もう。



God's Son can be seen because his vision is shared. The Holy Spirit looks upon him, and sees nothing else in you.
  • seen [síːn] : 「see の過去分詞形」
  • vision [víʒ(ə)n] : 「視覚、視力、洞察力、想像力」
  • share [∫éə(r)] : 「〜を分ける、分かち合う、共有する、共用する」
❖ "God's Son can be ~ "「ホーリー・スピリットのヴィジョンは分かち合われているので、神の子は見て取れるのである」。"The Holy Spirit looks upon ~ "「ホーリー・スピリットは神の子を見るのであり、あなたの中にそれ以外の何ものも見ない」。ここも難解だ。例を出して説明しよう。たとえば、クマの着ぐるみを着た者を考えよう。我々の知覚は目に見えるクマさんが実在だと主張する。なぜなら、熊の姿が目に映るからだ。しかし、我々の知性は着ぐるみ中に人間がいることを知っている。その知性を分かち合っているから、誰もクマさんを本物の熊と認識することはない。あくまでも、着ぐるみの中の人間を認識する。同様に、我々は肉体という着ぐるみを着た神の子であるのだ。我々の知覚は、我々の実体はこの肉体だと主張するが、ホーリー・スピリットの知性、すなわちそのヴィジョンは、我々が肉体という着ぐるみを着た神の子であることを見抜いている。そして、ホーリー・スピリットはそのヴィジョンを、我々神の子と分かち合っているのである。したがって、ホーリー・スピリットがあなたを見るとき、あなたの外側の着ぐるみである肉体を見ることなく、その中にある神の子という実体だけを確かに見抜くのである。



What is invisible to you is perfect in his sight, and encompasses all of it. He has remembered you because he forgot not the Father.
  • perfect [pə́ː(r)fikt] : 「完ぺきな、完全な」
  • sight [sáit] : 「視覚、視力、視野、視界」
  • encompass [enkʌ́mpəs] : 「〜を包み込む、包囲する、取り囲む、網羅する」
  • forgot [fə(r)gɑ́t] : 「forget の過去・過去分詞形」
  • forget [fə(r)gét] : 「〜を忘れる、見落とす」
❖ "What is invisible ~ "「あなたにとって見えないものでも、ホーリー・スピリットの視力には完璧にとらえられる」。"and encompasses ~ "「そして、ホーリー・スピリットの視力はあなたに見えないもののすべてをとらえる」。"He has remembered ~ "「ホーリー・スピリットは父なる神を忘れていないので、あなたを覚えているのだ」。ホーリー・スピリットは自分を含めた三位一体の三者をすべて覚えている。つまり、無限の愛で三者を包んでいる。ホーリー・スピリットが神を絶対見捨てないように、同じ強さをもって、あなたを決して見捨てない。あなたを無視するホーリー・スピリットなど存在しないのだ。もし存在するとしたら、それは偽物のホーリー・スピリットである。



You looked upon the unreal and found despair. Yet by seeking the unreal, what else could you find?
  • unreal : 「実在しない、非現実的な、実存しない、虚偽の」
  • found [fáund] : 「find の過去・過去分詞形」
  • find [fáind] : 「見つける、発見する、見いだす」
  • despair [dispéə(r)] : 「絶望、失望、落胆」
❖ "You looked upon ~ "「あなたは実在しないものに目を向け、絶望を感じた」。"Yet by seeking ~ "「しかし、実在しないものを探し求めて、いったいあなたはその他の(実在する)ものを見つけ出せると思っているのか」。実在しないものとは、もちろん、この幻想の世界のもの。幻想世界に物が溢れているように知覚されるのは、単なる錯覚、幻覚である。そこには何もない。映画のスクリーンに物が溢れているように見えても、それは単なる映像に過ぎないことと同じ。そこには何もない。あなたは映画のスクリーンを見て、血眼になって実在しないものを追い求めているのだ。その光景は滑稽というより哀れではないか。



The unreal world is a thing of despair, for it can never be. And you who share God's Being with him could never be content without reality.
  • share [∫éə(r)] : 「〜を分ける、分かち合う、共有する、共用する」
  • Being [bíːiŋ] : 「存在、実在、生存、生命」
  • content [kɑ́ntent] : 「〜に満足している」
❖ "The unreal world is ~ "「非実在の世界は、絶望を生み出すものである」。"for it can ~ "「なぜなら、非実在の世界は決して存在しないからだ」。"And you who share ~ "「そして、神の存在を神と分かち合っているあなたは、実在なしには満たされることはない」。"God's Being"「神の存在」は「神の命」、「神の愛」、「神の真実」、等々、と解していいだろう。もっと具体的に言うと、神のもっている機能、すなわち、あなたは神の属性をすべて継承しているので、あなたは神の属性としての機能を神と分かち合っているわけだ。したがって、あなたは神であると主張しても誰も文句は言えまい。いわゆる、神人一体である。しかし、その神たるあなたが幻想の世界の物質的欲望に右往左往している姿は、決して神らしくはない。



What God did not give you has no power over you, and the attraction of love for love remains irresistible.
  • attraction [ətrǽk∫n] : 「引き付けるもの、引力、魅力、誘引」
  • remain [riméin] [SVC] : 「依然として〜のままである」
  • irresistible [ìrizístəbl] : 「抵抗できない、圧倒的な、否応なしの、非常に魅力的な」
❖ "What God did not ~ "「神があなたに与えなかったものは、あなたにパワーを及ぼすことはない」。幻想はあなたに影響を与えるパワーはない。映画の中の爆弾が爆発しても、あなたには何の影響もない。映像があなたに対してパワーをもたないように、神が与えたものではない幻想があなたに対してパワーをもつことはないのだ。"and the attraction of ~ "「そして、愛を求める愛の引力は依然として圧倒的である」。神の愛があなたの愛を引きつけ、あなたの愛が神の愛を引きつけている。それは永遠に抵抗できない引力なのである。なぜなら、あなたを創造したのは神であり、あなたは神の子、神は父なのであるからだ。人間世界でも、親子の愛はそうしたものである。神とあなたは特別な愛で結ばれている。あなたと神は、人知を超越した絶対的愛で結ばれているのである。



For it is the function of love to unite all things unto itself, and to hold all things together by extending its wholeness.
  • function [fʌ́ŋ(k)∫n] : 「機能、作用、働き、効用」
  • unite [junáit] : 「〜を結合させる、一つにする、結び付ける」
  • hold [hóuld] : 「維持する、保持する、持続する」
  • together [təgéðə(r)] : 「一緒に、同時に」
  • extend [iksténd] : 「広げる、伸ばす、拡張する、拡大する」
  • wholeness [hóulnis] : 「全体、全体性」
❖ "For it is the function ~ "ここは"it ~ to ~"の構文、「なぜなら、すべてのものを愛自体に結びつけることは、愛のもつ機能である」。"and to hold all things ~ "「そして、愛の完全性を拡張することで、すべてのものを一緒にしておくことも、愛の機能である」。憎悪という対極概念をもたない実相の純粋な愛を想定してみればいい。実相の愛は互いに引き合う。愛が中心になってすべてを包括していく。それは純粋な愛のもつ機能であり、実相の世界では実在は分かち合われ拡張していくものだから、当然、愛も分かち合われ拡張していく。愛が拡張するとは想像し難いかもしれないが、愛の喜びが増大する、愛のネットワークが増大するといったイメージを持てばいいだろう。したがって、この世界の男と女の肉欲的な、特別な、閉鎖的な、個人的な愛は除外される。これは要注意だ。閉鎖的な、拡張しない愛の形態は、遅かれ早かれ変質し、崩壊する。なぜなら、その愛は実相世界の愛ではなく、変化流動する幻想の世界の愛に過ぎないからだ。この世の男女の性愛的な愛をもって愛とする愚は避けなくてはならない。したがって、糞も味噌も一緒にして、一言で愛を賛歌することは忌避すべきであろう。



8. The real world was given you by God in loving exchange for the world you made and the world you see.
  • exchange [ikst∫éin(d)ʒ] : 「換えること、交換」
  • in exchange for : 「〜と交換に、〜と引き換えに、〜の代わりに」
❖ "The real world was ~ "「実相の世界は、あなたが作り見ている世界と神が愛情をもって交換し、神によってあなたに与えられたものである」。過去形で表現されているのを不思議に思うかも知れない。実相の世界は非時間、時間の存在しない世界であるから、過去形で表現されようが現在形、未来形で表現されようが、大きな差はない。実際、幻想の世界と実相の世界を神が交換してくれるのは、我々幻想の世界にあっては未来である。しかし、実相の世界ではすべてが一瞬にして起こり、その一瞬は永遠に続く。したがって、我々の未来は、実相の世界では過去なのである。つまり、我々の時間軸から見れば、未来と過去の違いがあるが、リニアな時間を持たないホログラム的な視点から見れば、過去も未来も同一の一点と見えるわけである。



Only take it from the hand of Christ and look upon it. Its reality will make everything else invisible, for beholding it is total perception.
  • take from : 「〜から取る、〜から受け継ぐ」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
  • make [méik] A B [SVOC] : 「AをBの状態にする」
  • invisible [invízəbl] : 「目に見えない、不可視の、目につかない、隠れた」
  • behold [bihóuld] : 「見守る、注視する」
  • total [tóutl] : 「完全な、全くの、全部の、すべての、全体の」
  • perception [pə(r)sép∫n] : 「知覚、知見、見識、感じ方」
❖ "Only take it from ~ "「ただ、実相の世界をキリストの手から受け取り、その実相の世界を見なさい」。ここのキリストは神と思ってもいいし、ホーリー・スピリットと思ってもいい。あなたの心の真に正しい部分がキリストであるから、あなたの正しい心を澄まして実相世界を見なさい、といった意味合いになる。"Its reality will make ~ "「実相世界の現実性はその他のすべてを見えなくする」。実在世界の実在するものは見えるが、幻想世界のすべてのものは見えなくなる。すなわち、幻覚、錯覚が消えてしまうのだ。"for beholding it is ~ "「なぜなら、実在世界を見ることが、完全な知覚なのだから」。真実の知覚は、実相世界の実在を知覚することである。それが出来たとき、あなたの知覚は完全性を獲得したと言えるわけで、それは実相の叡智(knowledge)へとつながっていく。叡智、それは仏教用語で言えば般若(はんにゃ)となるか。そう、般若波羅蜜多心経の般若である。余談になるが、ACIMをある程度学ぶと、般若波羅蜜多心経がすいすい理解できる。あるいは華厳経がすいすい頭に入る。ちなみに、波羅蜜多(はらみった)とは「彼岸に渡った」「仏の世界に渡った」という意味であるから、般若波羅蜜多心経をACIM風に解釈すると、幻想世界(娑婆世界:しゃばせかい)を抜け出て、「実相世界に渡って得られた叡智」という意味である。心経は真実の言葉(真言のスートラ)といった意味合いであろうか。したがって、般若波羅蜜多心経は「実相世界に渡って得られた叡智の真実の言葉」となり、これはまさにACIMではないか、ということになる。面白いと思うのは私だけであろうか。



And as you look upon it you will remember that it was always so. Nothingness will become invisible, for you will at last have seen truly.
  • Nothingness [nʌ́θiŋnis] : 「無、非実在、ないこと」
  • become [bikʌ́m] [SVC] : 「〜になる」
  • at last : 「最後に、ついに、とうとう、やっと」
  • truly [trúːli] : 「全く、本当に、真に、正確に、忠実に、偽りなく」
❖ "And as you look upon ~ "「そして、あなたが実相世界を眺めているうちに、」"you will remember ~ "「あなたはthat以下を思い出すだろう」。"that it was always ~ "「実相世界はいつもそうであった」と思い出すだろう。心が神から分離する以前と変わりなく、実相世界はあなたの眼前に展開する。実相世界は永遠不変の世界であるから、以前と同様、まったく変わりないのである。"Nothingness will ~ "「無なるものは見えなくなるだろう」。無なるもの、すなわち幻想世界の幻覚、錯覚はあなたの眼前から消滅する。"for you will at last ~ "「なぜなら、あなたはついに正しく見ることが出来るようになったのであるからだ」。仏教用語で言えば「正覚(しょうかく)」となるか。



Redeemed perception is easily translated into knowledge, for only perception is capable of error and perception has never been.
  • Redeem [ridíːm] : 「〜を救い出す、〜を罪から救う、」
  • easily [íːz(ə)li] : 「容易に、たやすく、苦もなく」
  • translate [trænsléit] : 「〜を翻訳する、訳す、〜の形を変える」
  • knowledge [nɑ́lidʒ] : 「知識、心得、認識、知恵、知見」
  • be capable of : 「〜の能力がある、〜の才能がある、〜ができる」
❖ "Redeemed perception is ~ "「救われた知覚は容易に叡智へと形を変えることが出来る」。"for only perception ~ "「なぜなら、知覚だけが過ちを犯す可能性があり、そして、知覚はいつまでもそうではないからだ」。知覚は過ちを犯すが、それが正され救われたとき、知覚は叡智(knowledge)へと変身する。叡智とは、実相世界の直覚、すなわち、理性や知性で理解するのではなく、一瞬のうちに悟り切る般若(はんにゃ)である。仏教学者の中村元氏は般若を「智慧(ちえ)」と訳しているが、「知識」あるいは「知恵」と訳さなかった中村氏はさすがである。



Being corrected it gives place to knowledge, which is forever the only reality.
  • correct [kərékt] : 「〜を訂正する、修正する、正す」
  • give place to : 「〜に場所を譲る、〜にとって代わられる」
  • forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
  • reality [ri(ː)ǽləti] : 「現実、真実、事実、実態、実相」
❖ "Being corrected it ~ "分詞構文、理由、「知覚は正されたので、叡智に道を譲る」。"which is forever ~ "「その叡智は永遠に実在するのみである」。叡智はこの幻想世界のものではなく、永遠不変の実相世界の実体である。実体であるから、実在する。もっとも実相世界は抽象、想念の世界であるから、実体といっても具象的存在ではない。したがって、実体というより実在体と言ったほうが適切かも知れない。



The Atonement is but the way back to what was never lost. Your Father could not cease to love his Son.
  • Atonement [ətóunmənt] : 「贖罪、罪滅ぼし、償い、補償」
  • back to : 「もとの〜へ、また〜へ」
  • lost [lɔ́(ː)st] : 「lose の過去・過去分詞形」
  • lose [lúːz] : 「〜を失う、見失う、喪失する、なくす」
  • cease [síːs] : 「〜をやめる、よす、中止する」
❖ "The Atonement is but ~ "「贖罪とは、決して失われていなかったものへ帰る方法である」。贖罪は、あなたが神を裏切ったのでもなく、神から分離したのでもなく、単に深い眠りの中でそう思っていたに過ぎないこと、したがって、あなたは完全に無辜('むこ)であることを認識することである。この贖罪を通して、あなたは実相世界の神の元へ回帰できる。その世界は、あなたにとって失われた世界ではなく、忘れていた世界に過ぎない。あなたはプルーストの様に、失われた時を求めればいいのだ。"Your Father could ~ "「あなたの父なる神は、神の子を愛することを止めることなど出来ないのである」。神はあなたを常に愛し、あなたの回帰を待ち望んでいる。なぜなら、神はあなたの父であるからだ。親が子の帰郷を望まないわけがないではないか。
 
 
 

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