17. We cannot sing redemption's hymn alone. My task is not completed until I have lifted every voice with mine.
- redemption [ridém(p)∫n] : 「贖い、贖罪、救済、解放、償い、救出」
- hymn [hím] : 「賛美歌、聖歌」
- alone [əlóun] : 「独りで、単に」
- task [tǽsk] : 「任務、職務、仕事」
- complete [kəmplíːt] : 「〜を完了する、完成する、達成する」
- until [ʌntíl] : 「〜する時まで」
- lift [líft] : 「持ち上げる、高める、向上させる」
- mine [máin] : 「私のもの」
❖ "We cannot sing ~ "「私たちは、救済の聖なる歌を独りでは歌うことが出来ない」。"redemption"も"atonement"も共に「贖罪」の意味があるが、ACIMでは、"redemption"を「救済、解放」の意味合いを強調したいときに多用しているように感じる。贖罪をはっきりと意識した時は"atonement"を使っているように思える。" My task is not completed ~ "「私の仕事は、私がすべての(同胞の)歌声を私の歌声と共に高揚させるまで、完了することはない」。救済(解放)の聖なる歌声が高らかに鳴り響くまで、と解釈したが、深読みすると、その歌声を天の王国まで持ち上げるまで、となるか。いずれにしても、神の子がたった独りで救済されても、救済は完了しないのである。すべての神の子が贖罪と救済を果たし、天の王国へ上昇してそこで統一され、一なる心にならなくては聖なる仕事は完了しない。
And yet it is not mine, for as it is my gift to you, so was it the Father's gift to me, given me through his Spirit. - gift [gíft] : 「贈り物、プレゼント」
- given [gívn] : 「give の過去分詞形」
- through [θruː] : 「〜を介して、〜を通じて」
❖ "And yet it is ~ "「しかし、それは私のものではない」。それとは、「私の歌声」、つまり、"redemption's hymn"「救済の聖なる歌」のこと。"for as it is my gift ~ "「なぜなら、それはあなたにあげた私の贈り物であるように、」"so was it the Father's ~ "「それは、私に向けられた父なる神の贈り物、神のスピリットを通して私に与えられた贈り物であったからだ」。救済の聖なる歌は、神によってイエスに与えられ、今、イエスによってあなたに与えられる。救済の聖なる歌が継承され、分かち合われ、拡張していくのである。ところで、「神のスピリットを通して」とはどういう意味であろうか? 簡単に解釈すると、神が愛を込めてイエスに与えた、という意味合いであろう。あるいは、神の息吹を込めて、となるか。いずれ、救済の歌は単なる喜びの歌ではなく、神の霊的な息吹が込められた聖なる愛の歌であるわけだ。
The sound of it will banish sorrow from the mind of God's most holy Son, where it cannot abide. - sound [sáund] : 「音、音声」
- banish [bǽni∫] : 「追い出す、追放する、払いのける」
- sorrow [sɑ́rou] : 「悲しみ、悲哀、後悔」
- abide [əbáid] : 「とどまる、居住する」
❖ "The sound of it ~ "「救済の聖なる歌声の響きは、神の最も神聖な子の心から悲しみを追放する」。"where it cannot ~ "「神の子に、悲しみは住みつくことは出来ないのだ」。
Healing in time is needed, for joy cannot establish its eternal reign where sorrow dwells. You dwell not here, but in eternity. - need [níːd] : 「〜する必要がある、〜を必要とする」
- establish [istǽbli∫] : 「確立する、達成する、樹立する」
- eternal [itə́ː(r)nl] : 「永遠の、不変の、永久の、不滅の」
- reign [réin] : 「治世、君臨、支配、統治」
- dwell [dwél] : 「住む、居住する」
- eternity [itə́ː(r)nəti] : 「永遠、無限」
❖ "Healing in time ~ "「時間という枠組みの中でのヒーリングは必要とされる」。つまり、この幻想の世界で心のヒーリングは必要である。"for joy cannot establish ~ "「なぜなら、喜びというものは、悲しみの住まう永遠の支配を確立することは出来ないからだ」。喜びは実相世界のもの。悲しみは幻想世界のもの。悲しみの住まうこの幻想世界を永遠に存続させることなど喜びのなす仕事ではない。"You dwell not ~ "「あなたはここ(悲しみの幻想世界)に住まうのではなく、永遠の中に住まうのだ」。永遠の中に住むとは、無時間無空間、永遠不変の実相世界に住むということ。
You travel but in dreams, while safe at home. Give thanks to every part of you that you have taught how to remember you. - travel [trǽvl] : 「旅する、旅行する」
- while [(h)wáil] : 「〜なのに、〜ではあるものの、〜だが」
- safe [séif] : 「安全な、無事な、安泰で」
- at home : 「在宅して、自国で」
- give thanks to : 「〜に礼を述べる、〜感謝をささげる」
- part [pɑ́ː(r)t] : 「一部、部分」
- taught [tɔ́ːt] : 「teach の過去・過去分詞形」
- remember [rimémbə(r)] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
❖ "You travel but ~ "「あなたは夢の中で旅をしているのだが、」"while safe ~ "「(本当は)家にいて安全に守られているだ」。あなたは深い眠りに陥って、神から分離しこの幻想世界を夢みているのだが、本当は神の元を一歩も離れてはいない。あなたは実相の世界にあって完全に安全である。"Give thanks to every ~ "直訳すると、「あなたが、あなたを思い出す方法を教えた、あなたのすべての部分に対して感謝しなさい」。さて、どういう意味だろう? まず"every part of you"「あなたのすべての部分」であるが、これはあなたの同胞達と考えたらどうであろう。あなたとあなたの同胞は分離分裂しているように見えるが、本当は一なる心として一体である(自他一如)。すると「あなたの同胞すべてに感謝しなさい」という意味になる。次に"how to remember you"「あなたを思い出す方法」であるが、あなたが神の子として神の元を一歩も離れることなく実相世界に存在していたこと、分離分裂は単なる夢に過ぎなかったこと、それを思い出す方法と考えていいだろう。その方法とは、あなたの心に住まうホーリー・スピリット、あるいはキリストの導きに従うことである。簡単に言うと、あなたは自分の心にホーリー・スピリットとキリスト住んでいることをあなたの同胞に教えたのである。ACIMでは、主体と客体は自他一如によって入れ替わる。つまり、教えることは学ぶことであり、学ぶことは教えることに等しい。だから、あなたが同胞に対して、心にホーリー・スピリットやキリストが住んでいることを教えたということは、逆に同胞があなたに教えたことと等しいのである。そういう同胞に感謝しなさい、という意味になる。そうすると全体の意味は、あなたがた神の子は深い眠りに陥って分離分裂の夢の中を旅しているが、本当は神の子として神の元を一歩も離れず安全に守られている、そのことをあなたがたに教え導いたのは心に住まうホーリー・スピリットやキリストであって、あなたがた神の子はホーリー・スピリットとキリストの名において互いに教え合い学び合って深い眠りから目覚めることになる、だからこそ、神の子は互いに感謝し合わなければならないのだ、という意味になる。かなり苦しい解釈であるが、こんなところでどうであろうか?
Thus does the Son of God give thanks unto his Father for his purity.- Thus [ðʌ́s] : 「それ故に、従って、このようにして、こんなふうに」
- purity [pjú(ə)rəti] : 「清らかさ、純正、汚れのないこと、清浄」
❖ "Thus does the Son of God ~ "「このようにして、神の子は神の子の純粋さを父なる神に感謝するのである」。"his purity"「神の子の純粋さ」とは、まさに神の子のキリスト性である。神の子の心の中にホーリー・スピリットやキリストが住んでいること、つまり、神は神の子を見捨てずに、ちゃんとホーリー・スピリットとキリストを神の子の心の中に住まわせておいてくれたことを、神に感謝するのである。そして、神の子はホーリー・スピリットとキリストの導きに従って、深い眠りから目覚め、つまり、神への回帰を果たし、神やホーリー・スピリット、キリストへの感謝はもちろんのこと、神の子同士も感謝し合うのである。感謝は喜びであり、愛であり、それを分かち合うことで拡張増大していく。実相の世界は感謝、喜び、愛にわき立ち、それは永遠に続く。これは愛の法であり、もちろん神の法でもある。
VIII. From Perception to Knowledge
知覚から叡智へ
1. All healing is release from the past. That is why the Holy Spirit is the only healer. - healing [híːliŋ] : 「治療、回復、治癒、癒やし」
- release [rilíːs] : 「解放、解き放すこと、解除、免除」
- past [pǽst] : 「過去、昔」
- healer [híːlər] : 「治療する人、治療者」
❖ "All healing is ~ "「すべてのヒーリングは過去からの解放である」。過去の出来事が単なる幻想に過ぎず、本当は過去は存在しないのだと心が悟るように仕向けることがヒーリングである。"That is why the Holy Spirit ~ "「それが、ホーリー・スピリットが唯一のヒーラーである所以(ゆえん)である」。過去からの解放を促すヒーラー自身が過去現在未来という時間の枠組みから解放された存在でなければならない。したがって、真のヒーラーは実相の世界に住まう者であって、ヒーラーの心に存在するホーリー・スピリットと完全に一体化した者のことである。言い換えれば、ヒーリングを実際に実行するのは、ヒーラー自身というよりも、ヒーラーの中に住まうホーリー・スピリットである、と思うべきなのだ。したがって、ヒーラー自身は、病める者とホーリー・スピリットの間の単なる媒介者ということになる。
He teaches that the past does not exist, a fact which belongs to the sphere of knowledge, and which therefore no one in the world can know. - exist [igzíst] : 「存在する、生きている、生存する」
- belong [bilɔ́(ː)ŋ] : 「属する、所属する」
- fact [fǽkt] : 「事実、現実、真実、実際、真相」
- belong to : 「〜に属する、〜の所有物である」
- sphere [sfíə(r)] : 「球、球体、圏、圏域、範囲、分野、領域」
- knowledge [nɑ́lidʒ] : 「知識、心得、認識、知恵、知見」
- therefore [ðéə(r)fɔ̀ː(r)] : 「それ故に、そのために、従って」
❖ "He teaches that ~ "「ホーリー・スピリットは、過去は存在しないのだと教える」。"a fact which belongs to ~ "「それは、叡智の領域に属する真実であり、」"and which therefore ~ "「この世界の誰も知ることの出来ないものである」。"knowledge"「叡智」はACIMの最重要キーワードである。単なる知識や知恵ではなく、仏教的な悟りに近いものである。したがって、般若心経でおなじみの智慧「般若(はんにゃ)」に極く近い概念であろう。ちなみに、般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)とは、智慧の完成と訳されるが、波羅蜜とは彼岸に渡るという意味なので、この世からあの世に渡って得られる智慧という意味合いがある。まさに、ACIMが教えるところの、この幻想世界から真の実相世界に渡って得られる叡智(knowledge)と符合する。ところで、叡智は実相世界における直覚であって、幻想世界の頭脳的、理性的理解をはるかに超越している。この世界の誰も知ることのできないものなのである。それを知るには、つまり、悟りを開くには、この世からあの世へ、幻想世界から実相世界へ渡らなくてはならず、それが涅槃(ねはん)、ニルヴァーナ、あるいはACIM的な神への回帰なのである。
It would indeed be impossible to be in the world with this knowledge. - indeed [indíːd] : 「実に、本当に、確かに、いかにも、実際」
- impossible [impɑ́səbl] : 「不可能な、とてもあり得ない、できない」
❖ "It would indeed be ~ "ここは"It ~ to do ~ "の構文、「実際、この世界でこの叡智とともに居ることは(叡智を持つことは)不可能であろう」。
For the mind that knows this unequivocally knows also it dwells in eternity, and utilizes no perception at all. - unequivocally [ənikwívəkəli] : 「明白に、はっきりと」
- dwell [dwél] : 「住む、居住する、存在する」
- eternity [itə́ː(r)nəti] : 「永遠、無限」
- utilize [júːt(ə)làiz] : 「利用する、活用する、役立たせる」
- perception [pə(r)sép∫n] : 「知覚、知見、見識、感じ方」
- at all : 「全く〜ない、全然〜ない、少しも〜ない」
❖ "For the mind that knows ~ "「なぜなら、この叡智を明白に知る心は、」"knows also it dwells ~ "「叡智は永遠の中に住まうことをも知っているからであり、」"and utilizes no perception ~ "「知覚というものをまったく利用しないからである」。叡智は実相世界のものであり、永遠不変の世界に住む。その世界は知覚に左右されるような具象の世界ではなく、抽象、想念の世界である。したがって、実相世界に渡った心は知覚を利用することはなく、叡智に身を委ねるのである。般若心経では、知覚は空であると教えている。実相世界には知覚は存在しない(空である)。叡智(般若)が存在するのである。参考までに、その辺の事情を「The Great Heart of Wisdom Sutra (般若心経)」の中に探ってみよう。
O Shariputra, all dharmas are marked with emptiness. they do not appear nor disappear, are not tainted nor pure, do not increase nor decrease. Therefore in emptiness: no form, no feelings, no perceptions, no formations, no consciousness; no eyes, no ears, no nose, no tongue, no body, no mind; no color, no sound, no smell, no taste, no touch, no object of mind; no realm of eyes...until no realm of mind-consciousness; no ignorance and also no extinction of it...until no old-age and death and also no extinction of it; no suffering, no origination, no stopping, no path, no cognition, also no attainment with nothing to attain.舍利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不淨不增不減。是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色聲香味觸法。無眼界。乃至無意識界。無無明。亦無無明盡。乃至無老死。亦無老死盡。無苦集滅道。無智亦無得。
It therefore does not consider where it is, because the concept "where" does not mean anything to it. - consider [kənsídə(r)] : 「〜をよく考える、〜を熟考する」
- concept [kɑ́nsept] : 「概念、観念、コンセプト、考え方」
- mean [míːn] : 「〜を意味する」
❖ "It therefore does not ~ "「叡智を知る心は、それがどこにいるのか考えることなどしない」。"because the concept ~ "「なぜなら、『どこ』という概念は叡智を知る心にとって何の意味もなさないからだ」。叡智を知る心は実相世界の心である。実相世界は非時間非空間の世界であって、『どこ』とか『いつ』などという概念は存在しない。あえて言うなら、時間は永遠であり、空間は無限である。しかし、これとても、幻想世界の時空概念にしたがって表現しただけであって、時間が永遠に続くわけでも、空間が無限に続くわけでもない。時間、空間がそもそも存在しないのだから。
It knows that it is everywhere, just as it has everything, and forever.- everywhere [évri(h)wèə(r)] : 「どこでも、どこにも」
- forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
❖ "It knows that ~ "「叡智を知る心はすべての場所にあることを知っている」。"just as it has ~ "「ちょうど、叡智を知る心はすべてを永遠にもっているのと同じように」。叡智を知る心は実相世界のあらゆる場所を占め、あらゆるものを包み込んでいる。とすれば、叡智を知る心は、まさに神そのものと重なるのである。神人一体とはそういうことなのであろう。