VIII. The Little Garden
小さなガーデン
1. It is only the awareness of the body that makes love seem limited. For the body is a limit on love. - awareness [əwéə(r)nəs] : 「認識、自覚、気付いていること、意識性」
- limit [límit] : 「限定する、制限する、制限をかける、範囲内に収める」
- limit [límit] : 「限度、制限、境界、端」
❖ "It is only ~ "ここは"It ~ that ~ "の強調構文、「愛が制限されているように見せているのは、ただ肉体に対する意思性である」。"For the body is ~ "「なぜなら、肉体は、愛の上に課せられた制限であるからだ」。あなたの実在が肉体の中に閉じこめられている信じる限り、愛も肉体の中に閉じこめられていると認識していることになる。つまり、幻想の中に実在を閉じこめて制限しているのだから、実在の愛は幻想の肉体に制限されているのだ。面白いことに、幻想は実相を制限しようとし、実相は幻想を解放しようとするわけである。この綱引きの、左右どちらに、あたなは加担するのであろうか。
The belief in limited love was its origin, and it was made to limit the unlimited. - belief [bilíːf] : 「信じること、信念、意見、信用、信頼」
- origin [ɔ́(ː)ridʒin] : 「源、起源、語源、原因、原点、基点、始点」
- unlimited : 「制限のない、無制限の、自由な、無条件の、限りない」
❖ "The belief in limited ~ "「制限された愛を信じることが、肉体の起源である」。"and it was made ~ "「つまり、肉体は、制限され得ないものを制限しようとして作られたものなのである」。神の子が神から分離し、神を裏切ってしまったことで、神の子は罪の意識を持ってしまうに至った。神はいつか罰するに違いないと恐れを抱くのだが、この時点で、神の子は神の愛に制限を設けてしまったのだ。本来、神の愛は無限であり、決して神は罰することなど出来ないにもかかわらず、その無限の愛を信じることが出来なくなったのだ。そして、同時に、それまで何の疑問も持たずに神を愛してきた神の子自身も、神を無限に愛している自分の愛に終止符を打つのである。自分の愛に対してさえ制限を掛けたのだ。
Think not that this is merely allegorical, for it was made to limit you. - merely [míə(r)li] : 「ただ単に、単に」
- allegorical [æ̀liɡɔ́ːrikəl] : 「寓話の、寓話からなる、寓意的な」
❖ "Think not that ~ "「こんなことは寓話に過ぎないなどと思ってはいけない」。"for it was made ~ "「なぜなら、肉体は、あなたを制限するために作られたのであるからだ」。寓話に過ぎなかったら、わざわざ肉体まで作らなくて済んだであろう。肉体を作らなくてはならないほど、事は重大であったのだ。つまり、神と神の子の間の愛に制限を設けて、神から、愛の側面においても分離することが、神の子には必要に思われたのである。それを脅迫的に神の子に迫ったのは、罪の意識と罰への恐れである。
Can you who see yourself within a body know yourself as an idea? - idea [aidíːə] : 「考え、着想、アイデア、発想、思い付き、イデア」
❖ "Can you who see ~ "「自分自身を肉体の中にしか認めないあなたは、あなた自身をイディアとして認識することが出来るだろうか」。本当は、あなたは実相的実在である。つまり、イディア、想念としての存在である。肉体や物質が代表するような具象的存在ではない。
Everything you recognize you identify with externals, something outside itself. - recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、〜を認証する」
- identify [aidéntəfài] : 「確認する、識別する、特定する、〜の身元確認する」
- identify with : 「〜と同一であると見なす、〜と一体感を持つ」
- outside [áutsáid] : 「〜の外に、〜の外側に」
❖ "Everything you recognize ~ "「あなたは、あなたが認識するすべてのものを、その外部に見えるもの、つまり、それ自体の外側のものと同一視するのである」。つまり、表面だけを見て、その表面がそのものだと認識するのだ。存在の内部、その想念的実在を、そのものの実体だとは認識しないのである。
You cannot even think of God without a body, or in some form you think you recognize.- think of : 「〜のことを考える」
- form [fɔ́ː(r)m] : 「形、外形、構造、姿、体つき、外見」
❖ "You cannot even ~ "「あなたは、神さえも、肉体なしには考えることは出来ない」。"or in some form ~ "「あるいは、あなたが認識出来ると思える、何らかの形に表して、神を認識する以外に、神を考えることが出来ないのだ」。素朴な例としては、神は真っ白な長い髭をもったおじいさんであり、原始的には、神は様々な偶像として描かれることになる。本来、実相世界は想念の世界であり、形というものをもたない。具象世界ではないのだ。しかし、具象世界に住む我々は、具象性を欠いた神を想像することが出来ないのである。形をもたない神さえ想像出来ないのだから、ましてや、形をもたない自分自身を想像することはなおさら困難である。そこで、これこそ自分自身であると宣言出来る肉体を作り出すことになるのだ。
2. The body cannot know. And while you limit your awareness to its tiny senses, you will not see the grandeur that surrounds you. - while [(h)wáil] : 「〜の間ずっと、〜する間に、〜なのに、〜ではあるものの」
- tiny [táini] : 「とても小さい、ちっぽけな、極めて小さな」
- sense [séns] : 「感覚、感覚能力、官能、感触、知覚」
- grandeur [grǽn(d)ʒə(r)] : 「偉大さ、威厳、壮大さ、雄大」
- surround [səráund] : 「包囲する、取り囲む」
❖ "The body cannot ~ "「肉体は、知ることは出来ないのである」。"And while you limit ~ "「そして、あなたが、あなたの意識性をささやかな感覚の中に制限している限り、」"you will not see ~ "「あなたは、あなたを取り囲んでいる壮大なるものを見ることが出来ないだろう」。肉体に付随する感覚器官は、具象を認識するだけの機能しか持っていない。その、いわばささやかな感覚だけを頼りに認識することが、認識のすべてであると制限するなら、肉体的な感覚器官では感知出来ない想念としての実在に気付くはずもない。般若心経の中の一節「無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法」という部分は、肉体的な感覚器官の非存在性をくどいまでに言い当てている箇所である。
God cannot come into a body, nor can you join him there. - come into : 「〜に入ってくる、〜に加わる、〜に加入する」
- join [dʒɔ́in] : 「結び付ける、結合する、連結する、合わせる」
❖ "God cannot come ~ "「神は肉体の中に入り込むことは出来ないのだ」。能力的に出来ないという意味ではない。実相的実在の神が、幻想の肉体と関係を持つ可能性はない、ということだ。"nor can you ~ "「ましてや、あなたは肉体の中において、神と結合することなど出来ないのである」。幻想の肉体を通じて、神と接触をもつことは出来ない。肉体を捨て、想念の実相世界に回帰して初めて、神と再び交わることが出来るのである。
Limits on love will always seem to shut him out, and keep you apart from him. - always [ɔ́ː(l)weiz] : 「常に、いつも」
- shut out : 「締め出す、遮る、完封する」
- apart from : 「〜から離れて、〜は別として、〜はさておき」
❖ "Limits on love ~ "「愛に対する制限は、いつも、神を締め出しているように見えるだろう」。"and keep you ~ "「そして、あなたを神から引き離しているように見えるだろう」。罪の意識と罰への恐れが、神と神の子の間の愛に制限を課してしまった。愛の制限、極端に言うなら愛の拒絶は、神と神の子を引きはがし、神をシャットアウトする。しかし、神が神の子への愛を制限しているのではない。神の子が一方的に神への愛を制限しているだけである。神の神の子に対する愛は、もちろん、永遠であり無限であり、不変である。実相世界が永遠不変の世界であることを考えれば、それは、極く当たり前のことなのである。
The body is a tiny fence around a little part of a glorious and complete idea. - fence [féns] : 「フェンス、さく、塀、囲い」
- around [əráund] : 「〜の周りに、〜の周囲に」
- part [pɑ́ː(r)t] : 「一部、部分、部品、パーツ」
- glorious [glɔ́ːriəs] : 「壮大な、壮麗な、美しい」
- complete [kəmplíːt] : 「全部そろった、完全な、全部の」
❖ "The body is a tiny fence ~ "「肉体とは、壮大で完全なイディアの、ある小さな部分を囲んでいるささやかな囲いに過ぎないのだ」。それにも関わらず、我々は、なぜこんなにも肉体にこだわるのだろうか? 肉体の美醜にこだわり、肉体の健康不健康にこだわり、肉体の安楽と痛みにこだわり、そして肉体の死にこだわる。是が非でも、肉体に我々の関心を向かわせようとする、誰かの意図を感じないだろうか?
It draws a circle, infinitely small, around a very little segment of Heaven, splintered from the whole, proclaiming that within it is your kingdom, where God can enter not.- draw [drɔ́ː] : 「〜を描く、描画する」
- circle [sə́ː(r)kl] : 「円、円周」
- infinitely [ínf(ə)nətli] : 「非常に、大いに、飛躍的に、無限に」
- segment [ségmənt] : 「部分、区分、断片、切片」
- splinter [splíntə(r)] : 「〜をバラバラにする、裂く」
- whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の、丸ごとの」
- proclaim [proukléim] : 「宣言する、宣告する、公言する、明白に示す」
- within [wiðín] : 「〜の中に、〜の内側に」
- kingdom [kíŋdəm] : 「王国、王領」
- enter [éntə(r)] : 「〜に入る、〜に参加する、〜に立ち入る」
❖ "It draws a circle ~ "「肉体は、天の王国の極く小さな断片の周りに、つまり、全体性から切り取った極く小さな断片の周りに、無限に小さな円を描く」。"proclaiming that within ~ "分詞構文、付帯状況、「そして肉体は、その円の内側にこそ、神さえも入り込めないあなたの王国があるのだと宣言しているのである」。肉体が、分離の象徴であることが、実にうまく表現されている。この、無限に小さな円の王国にあって、我こそは王国の王なり、我こそは神に代わる神なり、と宣言しているのは、実はあなたではなく、かのエゴであるに違いないのだ。