II. The Alternative to Projection
投影の代案
1. Any split in mind must involve a rejection of part of it, and this is the belief in separation.
- split [splít] : 「割ること、分割、分裂」
- involve [invɑ́lv] : 「〜を含む、〜に伴って生じる」
- rejection [ridʒékʃən] : 「拒絶、拒否、棄却」
- belief [bilíːf] : 「信じること、信念」
- separation [sèpəréiʃən] : 「分離、区別、離脱」
❖ "Any split in mind ~ "直訳すると「心の分裂は、その一部の拒絶を必ず含む」。つまり、心に亀裂が生じると、心のある一部が他の一部分を拒絶する、ということ。簡単に言えば、自己分裂を起こすと、自己拒絶を誘発する。"and this is ~ "「これが、分離を信じているということである」。第一段階として、神からの分離が起きる。その後、第二段階として心の分裂が起きる。従って、分離と分裂は一連の出来事としてとらえることが出来る。言い換えれば、神からの分離が起きなかったら、心の分裂も起きなかった。心の分裂が起きているということは、神からの分離が起きたということだ。しかし、ACIMでは、神からの分離は既成事実であるというとらえ方をしてはいない。それは、神から分離してしまったに違いないと心が信じてしまったことに起因する幻想である。つまり、分離に対する信仰だ(the belief in separation)。私達の心に、分離に対する信仰がある。そして、そのために心が分裂してしまうのである。
The Wholeness of God, which is His peace, cannot be appreciated except by a whole mind that recognizes the Wholeness of God's creation. By this recognition it knows its Creator.
- wholeness [hóulnəs] : 「全体、完全」
- appreciate [əpríːʃièit] : 「〜を正しく評価する、感謝する」
- except [iksépt] : 「〜を除いて、〜以外に」
- whole [hóul] : 「全部の、完全な、全体の」
- recognize [rékəgnàiz] : 「〜を認識する、認める」
- creation [kriéiʃən] : 「創作物、創造、創作」
❖ "The Wholeness of ~ "「神の平和であるところの、神の全体性は、〜による以外に正しく理解されることは不可能である」。"by a whole mind ~ "「神が創造したものの完全性を認識する完全な心による」以外に正しく理解されることはない。神の創造したものに対して完全性を認識する心は完全であるから、その完全な心をもってすれば、神の完全性も認識できる、ということ。もちろん、完全な心とは分裂を起こしていない心。"By this recognition ~ "「この認識によって、完全な心はその創造主を知ることとなる」。あなたが神によって創造された完全な神の子であると自己認識できたとき、あなたは神の完全性を受け入れることが出来るのである。それ以外に、神を認識することは出来ない。
Exclusion and separation are synonymous, as are separation and dissociation.
- recognition [rèkəɡníʃən] : 「認識、認証」
- exclusion [iksklúːʒən] : 「排除、除外、排他」
- separation [sèpəréi∫n] : 「分離、区別、離脱」
- synonymous [sinɑ́nəməs] : 「同意語の、同義の、同義語の」
- dissociation [disòusiéiʃən] : 「解離、分離、分裂」
❖ "Exclusion and separation ~ "「排他と分離は同義語である」。自分と他者が分離すると、自分は他者を排他する。"as are separation ~ "「分離と乖離(かいり)も同様に同義語である」。分離した自分は、心の中の罪の意識に耐えきれなくなって自己を乖離し、別人格の自分をでっち上げ、それを外部世界に投影する。こうして、罰せられるべき他者を生みだし、それを支持するエゴを作り出す。
We have said before that the separation was and is dissociation, and that once it occurs projection becomes its main defense, or the device that keeps it going.
- once [wʌ́ns] : 「いったん〜すると、ひとたび〜すれば」
- occur [əkə́ːr] : 「起こる、発生する、生じる」
- main [méin] : 「主要な、主な、中心的な」
- defense [diféns] : 「防衛、防御」
- device [diváis] : 「機器、装置、道具、手段、仕掛け」
❖ "We have said ~ "「私たちは以前、that以下を話したことがある」。"that the separation ~ "「分離は過去も現在も乖離であり、一度それが起きると、投影が主たる防衛機構となる」。"or the device ~ "「言い換えれば、乖離を存続させる装置である」。抑圧して無意識へと追いやった罪悪感ではあるが、それが亡霊のように巨大化していくと、もう個人の力ではどうすることもできず、自己を全くの別人に作りかえてしまう。つまり、自己を乖離させる。そして、一見罪悪感から逃れたような顔をして、他者にその罪悪感を投影する。悪いのは自分ではない、あいつが悪いのだ、という具合に自己を正当化し防衛するのだ。
The reason, however, may not be so obvious as you think.
- reason [ríːzn] : 「理由、動機、原因、根拠」
- obvious [ɑ́bviəs] : 「明らかな、明白な」
❖ "The reason, however ~ "「しかし、その理由は、あなたが思うほど明白ではないかもしれない」。この辺で、分離と投影をおさらいしておこう。ACIMの語る分離と投影は奥が深い。分離は神からの分離であるとこれまで述べてきたが、今私達が肉体に閉じ込めている心が分離したのではない。異なるレベルでの心が神から分離したのだ。例えて言うなら、今ある心を4次元時空間の心とすれば、神から分離した心は、あたかも5次元時空間の心と言えるだろう。それは、神の世界に住まう心であった。その心が神から分離した。いや、神の子は神から分離したと思い込んだのである。そして、深い眠りに陥ってしまった。その眠りの中で、5次元の心は分裂を起こし、今私達が自分の心だと感じる4次元の心が無数に生じた。その4次元の心が知覚するこの世界は、5次元の心の夢(幻想)なのである。この世界が幻想の世界だというのはそのことである。私達は今ある4次元の自分を自分自身と感じているが、したがって、本当の自分ではない。5次元の世界で夢を見ている心が本当の自分である。回帰すべき自分はそこにある。では、今ある自分は何か? これが乖離である。一種の多重人格のようなもので、私達は架空の自己を4次元の幻想の中にでっち上げたのである。これが、一段高いレベルから見たときの分離や乖離である。ところが、この状況が、一段低いレベルの、この世界でも起きる。心理学や精神分析学で取り上げている分離、投影、乖離である。意識や無意識や超意識が織りなす現象がそれにあたる。レベルを間違えると、ACIMの理解に混乱をきたす可能性がある。したがって、ACIMを読み進むとき、どのレベルでの話なのか十分に注意する必要がある。ACIMの論法は、まずこの世界における4次元の心(mind)の分離、投影、乖離から議論を始めて、やがて5次元の心の話しへと議論を深化させ、5次元の心を深い眠りから目覚めさせ、一つの心(Mind)へと統一して、神の世界へ回帰せしめ、神からの分離を解消しようとするのである。
2. What you project you disown, and therefore do not believe is yours. You are excluding yourself by the very judgment that you are different from the one on whom you project.
- project [prədʒékt] : 「〜を投影する、発射する、投げ出す」
- disown [disóun] : 「〜に責任がないと言う、〜に関係がないと言う」
- exclude [iksklúːd] : 「〜を排除する、締め出す、除外する」
- judgment [dʒʌ́dʒmənt] : 「判断、判断力、分別」
- different from: 「〜と異なる、〜と違う」
❖ "What you project ~ "「あなたが投影したものに対して、あなたは自分には関係がないと言う」。投影したものは、実際はあなたの作ったものなのだが、自分には無関係だと主張する。"and therefore do ~ "「したがって、投影したものは自分のものだと信じない」。"You are excluding ~ "「あなたは、まさにthat以下と判断して、あなた自身を除外している」。"that you are ~ "「あなたは、あなたが投影したものと違うと」判断して、自分を除外する。夜見る夢の中の様々な事象を、あなたは夢の中で自分には無関係であると主張するが、その夢を作り出して見ている張本人はあなた自身である。
Since you have also judged against what you project, you continue to attack it because you continue to keep it separated.
- continue [kəntínjuː] : 「〜を続ける、継続する」
- attack [ətǽk] : 「攻撃する、〜を襲う」
❖ "Since you have ~ "「あなたは、また、投影したものに対抗する判断を下したので、」つまり、罪があるのは他者だ、と判断したので、"you continue ~ "「あなたはそれを分離したままに保ち続けるから、あなたはそれを攻撃し続けるのだ」。あなたは投影によって作り出した夢の世界を闘争の場であると判断し、攻撃と防御を続ける。こうして、分離は温存される。
By doing this unconsciously, you try to keep the fact that you attacked yourself out of awareness, and thus imagine that you have made yourself safe.
- unconsciously [ʌnkɑ́nʃəsli] : 「無意識に、知らず知らずに」
- awareness [əwéərnəs] : 「認識、自覚、気付いていること」
- imagine [imǽdʒin] : 「想像する、思う、推測する」
- safe [séif] : 「安全な、無事な」
❖ "By doing this ~ "「無意識的にこうすることで、あなたは、あなたが自ら攻撃したという事実を意識の外に保とうとする」。"and thus imagine ~ "「そして、このようにして、あなたは、自分自身の安全を確保したと想像するのである」。あなたが目にする事象は、他者の存在も含めて、あなたが鏡に映し出したあなた自身である。その情景は、あたかもあなたの外にあるかのように見えるので、まさか鏡の中の他者が鏡の外の自分を攻撃することはないと信じる。しかし、あなたが鏡の中の他者を攻撃すれば、当然、鏡に映し出されたあなたという他者はあなたを攻撃するかのように見えるのだ。